chocoolique の世界あちこち日記

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Aug 7, 2004
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テーマ: ペットの死(562)
カテゴリ: 鎌倉





今日通りかかったら、運良く、これから脱皮しようとしている一個体がいた。私たちはセミの脱皮の観察をしたことがないので、これ幸いと、連れて帰ることにした。私はアブラゼミをひょいとつまむと、掌に乗せた。

家には観察ケースがたくさんある。私たちはそのうちのひとつに月桂樹の木の枝をいくつかと葉っぱを何枚か入れた。そうしてそこにアブラゼミを入れた。

時は夕暮れ。私はアブラゼミをしばらく休ませてやることにした。

そうして夜中になった。時刻が変わる頃、私は、そうっと、邪魔しないようにアブラゼミの観察ケースをのぞいてみた。地中から這い出したセミは、脱皮し、翌早朝にセミへと変化する。私はその瞬間を見たかったのだ。

が! 観察ガラスを覗き込んだ私はぎょっとした。アブラゼミがひっくり返っているのだ! 目をこすってようく見ると、仰向けになったアブラゼミの隣には抜け殻が落っこちている。アブラゼミの抜け殻とアブラゼミ本体。双子のようだ。注意深く観察してみる。ひっくり返ったアブラゼミはモジモジと動いている。

私は、このアブラゼミをうつ伏せに戻してやるかそのままにするか、大いに迷った。しかし、やはり、余計な手出しはしないほうがよいだろうと結論付けた。アブラゼミをそのままに、私は就寝した。

そして翌朝。セミが死んでる! セミが死んでる! 誰彼ともなくそう言った。私は観察ケースに近づいて見た。ひっくり返ったアブラゼミには弱弱しい羽が生えていたが、それが出切らないうちに力尽きたようだった。

観察ケースの底部には、どういうわけか、タコが吐くような墨状の黒い液体が粘着していた。セミは変化の際、白い体が除序に黒ずんでくるものだが、その際の脱色だろうか。ひっくり返って死後硬直の始まったアブラゼミは、すでにセミ色になっていた。

私はセミの亡骸を眺めながら、いったい何が悪かったのだろうと考えた。ひっくり返ったことが直接の死因だったのだろうか。アブラゼミの宝庫を思い浮かべてみる。塀や木にブローチのようにくっついた抜け殻たち……。



そうか!


体勢を縦にキープしなければセミは変化できないんだ! 脱皮まではできたとしても、羽を伸ばし、乾かすのは、横になっていてはできないんだ! このアブラゼミは、観察ケースでひっくり返ったが最後、起き上がることができなくなってしまったんだ!

私たちは口々に、かわいそうなことをしたね、とつぶやき合った。と、そのとき……。


ア゛ッ! 生きてるゾッ!


誰かが叫んだ。アブラゼミは死んでいなかった。瀕死だが、かすかに動いているのだ。もともと、変化したら逃がそうね、とは言ってたのだが、こうしてはいられない。墨で固まった羽を丁寧にはがすと、私たちは、外に出て、木の上の平らになっている部分にアブラゼミを横たえた。

アブラゼミは少し動いた。私は、落ちたらかわいそうだから地面に置いたほうがいいんじゃないか、と提案した。しかし、地面になんか置いたらアリに運ばれちゃうよ、と姉が答えた。そうして、せめてもの罪滅ぼしにと昆虫ゼリーを持ってきた。

アブラゼミは自分の背丈ほどもある昆虫ゼリーには目もくれず、不完全な羽をバタバタとさせていた。


それから一時間後。私が様子を見に行ったら、アブラゼミはいなくなっていた。昆虫ゼリーもなくなっていた。飛んでいったんだね、良かったね。姉が言った。私たち残り一堂は、それは違うんじゃ、と思った。


しかし誰も何も言わなかった。







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