愛し愛されて生きるのさ。

愛し愛されて生きるのさ。

その2

○日吉ミミ『男と女のお話』(1970 作詞・久仁京介/作曲・水島正和)

フラれた女を慰めるというスタイルを取った歌である。男と女の恋の歌というのはどんな時代にも存在するものである。人は当たり前のように恋をして、そして恋は終わる。そんなよくある話を描いた、妙に冷めた歌でもある。

「恋人にふられたの よくある話じゃないか」
「涙なんかをみせるなよ 恋はおしゃれなゲームだよ」
「むかしを忘れてしまうには 素敵な恋をすることさ」
「スマートに恋をして 気ままに暮らしていけよ」

という風に、どことなくスカした歌詞であるが、その裏「そうも簡単に割り切って恋なんかできないよ」と言っているようにも聞こえる。よく言われる「恋ははかないもの」という言葉がどっしりとのしかかる歌である。日吉ミミの感情をあまり出さない歌い方も、どこかはかない。

○岩崎宏美『聖母たちのララバイ』(1982 作詞・山川啓介/作曲・木森敏之、John Scott)

岩崎宏美は本当に歌が上手い。小手先のテクニックは使わずに、直球で伸びやかな美声を聴かせてくれる。私は本当に歌が上手い人は高音ではなく、低音を綺麗に響かせられる人ではないかと思う。岩崎宏美はそんな低音が綺麗に歌える歌手だと思う。

この『聖母たちのララバイ』は言わずと知れた、岩崎宏美の代表曲である。恋といった儚いものではなく、「無償の愛」とでも言おうか、深い愛を歌った曲である。曲の構成もさることながら、岩崎宏美の憂いを含んだ迫力のある歌声でこの歌の神々しさが増している。

岩崎宏美は「声は楽器」ということを実感させてくれる歌手の1人である。

○狩人『あずさ2号』(1977 作詞・竜真知子/作曲・都倉俊一)

兄弟デュオである狩人の代表曲。言うまでもないと思うが「あずさ2号」というのは東京から信州へ向かう中央線の特急である。そんなモチーフを用いて、どうしようもない女の心情を浮き彫りにした曲である。

心が離れてしまった男のことを思っていながらも、どうしようもなく淋しい気持ちに駆られてしまい、違う男と旅に出る女の話である。

昭和の歌謡曲には「別れの予感がするから、自分から消える」という類の歌が多い。この『あずさ2号』もそんな部類に入るだろう。

決して「さよなら」と言うことはできない未練がましい部分もあるが、帰らない相手を待つくらいならあえて自分から消える、という女の難しい心情が歌われている。そこは女のプライドなのかもしれない。そして傷を負った心を癒すのは旅が一番かもしれない。旅の途中で過去を思い出しながらも、離れることで前を見据えるという切ない曲である。


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