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【仏レポ/玉宝寺 五百羅漢】 小田原まで足をのばしたのはすでに一か月も前のこと。小田原城見学が目的で出かけたのに、なんと耐震工事中だった!北条早雲が小田原に城を構えて関東八州を掌握したのは有名だが、その天守閣から眺望を楽しもうと思って出向いたのに、、、残念。 昨年末の12月は本当にあたたかく、冬とは思えない小春日和が続いた。おかげで着ていたコートを脱いで歩くほどだった。散策するには持って来いの、風もなく穏やかな天候。小田原は年末の活気にあふれていた。 「さて、どうしよう?」と、次なる目的地を考えたところ、市内に五百羅漢で有名なお寺があることを思い出した。天桂山玉宝寺である。玉宝寺までのアクセスは至って簡単。小田原駅より伊豆箱根鉄道大雄山線で五百羅漢駅まで5分ほど。下車後、歩いてすぐのところにある。 私が出向いたとき、本堂の扉は閉められていたが、おそるおそる中に入ってみた。すると、なんということだろう!ところ狭しと並んだ羅漢像に、思わず笑いがこみ上げて来た。なんだかわさわさした賑やかさなのだ。パンフレットによれば、合計526体もの羅漢像が安置されているとのこと。立像の方は高さ36~60cm、座像の方は20cmあまり。とにかくおかしな表情をしている羅漢像ばかりで、こちらまで愉快な気持ちにさせられる。ホンネを言ってしまうと、手をあわせて拝みたくなるような重厚感とか威圧感のようなものはない。どちらかと言えば、大勢のご隠居さんたちが暇を持て余して誰かが来るのをてぐすね引いて待っていたような気さくなものを感じた。 重要文化財として指定されてはいないようだけれど、仏像入門とでも言うのか、楽しく拝観するには最高のモチーフだと思った。羅漢像以外では、弁財天・毘沙門天・十一面観音などが安置されていたが、さすがに風格があって頼もしい存在である。とはいえ、様々な表情を見せて癒しを与える羅漢像は、圧倒的に庶民の味方!おもしろいものが好きな方、こちらの五百羅漢を眺めてぜひともユニークな気分を味わっていただきたい。 作家のいとうせいこうが、その著書の中で語っていたように、「仏像は帰化しないガイジンであり続けている」のだから、珍しがって眺めるだけでも充分にまっとうしているのではなかろうか。あられもない言い方だが、功徳のための拝観というより、遊山のための観光の方が健康的かもしれない。興味のある方は、ぶらりと出かけていって本堂の中をゆっくりご覧下さい。
2016.01.17
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【仏レポ/徳泉寺 木喰仏】 もともと古寺めぐりを趣味とする私は仏像を眺めるのも嫌いではない。ところが昨今、拝観料をおさめてやっと拝めるか、秘仏扱いでパンフレットでしか目にすることができないこともある。そんな中、地方にはまだまだ庶民とともに寄り添うように安置されている仏像がある。それは実に素朴で愛嬌があり、ややもすればバランスに欠いていて、決して芸術的に優れているかどうかは疑問だ。それでもその一つ一つの仏像に作者の並々ならぬ思いとかロマンを感じないではいられない。それこそが歴史であると私は思うからだ。 さて今回私が訪れたのは、静岡県浜松市浜北区堀谷という集落である。県道296号線を道なりに北上するのだが、すれ違う対向車はなく、昼間だというのに長い静寂と孤独なドライブだった。たどりついた堀谷には、それでも何十軒かの住宅が点在しており、生活の足音が聴こえて来た。目指すのは徳泉寺。そこには、浜松市指定有形文化財でもある木喰仏が安置されている。 ◆木喰仏ってなに? 木喰仏とは、いわゆる木喰上人が残した仏像のことだ。行き着いた先によっても違うが、大きくて立派な仏像を刻むこともあれば、わずか20センチ足らずの小さな仏を宿泊のお礼として農家に残すこともあった。 ◆木喰上人とは? 木喰上人と名乗った僧は何人かいる。これは木喰戒と言って、五穀を口にせず、木の実やそばの実を食べて修業した徳の高い僧のことだ。この堀谷の地に訪れたのは木喰五行上人(もくじきごぎょうしょうにん)と言い、庶民に布教するため日本全国を回った作仏聖(さくぶつひじり)である。 徳泉寺の境内には、樹齢何年(年数を記録し忘れてしまった)というモクレンの木が茂っている。その美しい稜線に、思わず目を奪われる。 目的の11体の木喰仏の隣には、お地蔵さまが仲良く並んでいる。冬のあたたかな陽射しを背中に浴びて、のどかに微笑んでおられるのだ。 木喰仏はさすがに市の文化財ということもあり、頑丈なケースに安置されていた。盗難防止のためなのか、物々しく鉄格子のようなケースだ。(表面のガラス材を通して撮影したため、光ってしまったのが残念。) 堀谷地区は、バスや電車などの公共交通が来ていないため、意志がなければなかなか訪れる機会のないところである。今回、知り合いのN美さんがわざわざ車を出してくださり、草深い徳泉寺まで出向くことができた。この場をお借りして厚く御礼申し上げたい。 【参考文献】『静岡県の仏像めぐり』静岡新聞社
2015.12.07
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