《櫻井ジャーナル》

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2009.06.23
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 何か大きな出来事が起こったとき「何が語られていないか」は、重要な情報のひとつである。先入観や思い込み、あるいは希望的観測のため、目の前で起こっている事実に気づかないこともあるし、自分たちにとって不都合な事実を意図的に隠すこともある。語られない事実の中に本質が隠されていることは少なくない。

 現在、イランでは「改革派」と呼ばれる勢力が「保守派」とされる現職の大統領を攻撃する示威行動を続けているのだが、「改革」というラベルには良いイメージがない。かつて、小泉純一郎も「改革」を叫んでいたが、結局のところ、庶民階級から富を徹底的に搾り取るシステムを導入しただけだったからだ。今でも「小泉改革」を支持している日本人は少ないだろうが、イランでも似たようなことが起こっていると指摘する人もいる。

 投票の3週間前にイラン国民の選挙に関する意識を調査した報告書で、「改革派」は決して多数派からは支持されていなかった。その報告書を作成したのは「TFT(恐怖のない明日)」。あれぼど激しくイランのマフムード・アフマディネジャド大統領を攻撃していたイギリスのメディアも、TFTの調査結果を伝えざるをえなくなっているのだが、日本のマスコミはまだ無視しているようだ。

 何しろ、イスラエル、日本、イギリス、アメリカなどに嫌われているアフマディネジャドがライバルのホセイン・ムサビをダブル・スコアでリードしていたとTFTは報告しているわけで、取り上げたくないのだろう。「改革派」は「善玉」で、「国民」から支持されているという自分たちのシナリオに反する情報は受け入れられないわけだ。小泉の「改革」を支援、「郵政民営化」は絶対的に正しいと叫んでいた日本のマスコミはイランでも似たようなことをしている。

 このTFTはアメリカのワシントンDCを拠点とするNPO(非営利団体)で、アメリカでは政府やメディアから一目置かれている存在であり、その調査結果を否定することは難しい。選挙で不正があったことを示す事実が出ているようだが、それでもTFTの報告書を否定はできないのだ。逆に、アフマディネジャド大統領としては、投票結果を操作する必要はなかったわけで、明らかになった不正に大統領が絡んでいた可能性は低いという見方も成り立つ。

 ジョージ・W・ブッシュ大統領の要請を受け、アメリカ議会がイランでの秘密工作をエスカレートさせることを認めたのは2007年の終わり頃だった。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、秘密工作の中心になっていたのはCIAやJSOC(統合特殊作戦司令部)で、イランのMEK(ムジャヒディン・ハルク)やクルドの分離独立派と協力関係にある。

 かつて、MEKをアメリカ政府は「テロリスト」に分類していたのだが、状況が変われば「自由の戦士」になるようだ。この逆がアル・カイダだった。イギリスのテレグラフ紙は2007年2月25日付けの紙面で、イランを混乱させるため、アメリカが「テロ・グループ」に資金を提供していると伝えている。

 さらにその前、ニューヨーカー誌の2006年4月17日号に掲載されたハーシュ記者の記事によると、この時点でアメリカはイラン領内での秘密工作を活発化、イラン空爆を検討していた。つまり、この時点からアメリカやイスラエルはイランに戦争を仕掛けているわけだ。

 イランの庶民階級にとって、「改革派」の経済政策は好ましいものでなかった。しかもアメリカやイスラエルとの見えない戦争が続いている。こうした実態を理解しなければ、庶民階級がアフマディネジャドを支持した理由はわからないだろう。が、こうした背景を日本のマスコミは語ろうとしない。(09.06.23)





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最終更新日  2009.06.23 13:34:43


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