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アメリカ軍は南西諸島とフィリピンに臨時基地を設置し、ミサイル部隊を配備すると伝えられている。すでにアメリカ軍の戦略に基づきいて自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させている。その間、韓国へも2017年4月にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が強引に持ち込まれた。 当時は日本の立場をアメリカ側は配慮している。専守防衛の建前と憲法第9条の制約があるため、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたのだ。が、その後、そうした日本の憲法に対する配慮はなくなった。 与那国島にミサイル発射施設を建設する前年、2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。安倍首相は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していた。 南西諸島にミサイルを並べつつあった2017年にアメリカ、オーストラリア、インド、日本はQuad(日米豪印戦略対話)を復活させるが、これは中国を意識してのこと。このうちインドは現在、アメリカと一線を画している。NATO(北大西洋条約機構)の事務総長を務めていたイェンス・ストルテンベルグは2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言した。 ジョー・バイデンが大統領に就任した翌年、2022年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表。その年の9月にはオーストラリア、イギリス、アメリカでAUKUSなる軍事同盟を発足させると発表され、2022年12月にアメリカではNDAA2023(2023年度国防権限法)が成立、アメリカの軍事顧問団が金門諸島と澎湖諸島に駐留し、台湾の特殊部隊を訓練していると伝えられている。 また、フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(ボンボン・マルコス)を取り込んだアメリカはJAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なる軍事同盟を築こうとしているが、これはアメリカ軍が南西諸島とフィリピンに臨時基地を設置し、ミサイル部隊を配備するというプランにつながる。 日本は韓国、台湾、フィリピン、オーストラリア、イギリス、アメリカと戦争の準備を進めている。ターゲットは中国だが、その中国と戦略的同盟関係にあるロシアも敵ということになる。 アメリカが東アジアにミサイルを配備した場合、そのロシアは中短距離ミサイルを配備して対抗する可能性があるとロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は語っている。マッハ10という極超音速で飛行する中距離弾道ミサイル、オレーシニクが配備される可能性もある。オレーシニクは広い地理的範囲を破壊することができるが、放射性物質を撒き散らすことがない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.27
厚生労働省は11月22日、今年9月分の「人口動態統計速報」を発表した。死亡者数は12万5796人。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動」が始まる前年、2019年の同じ月に比べて1万8102名増えた。「COVID-19ワクチン」の接種が始まってから死亡者の増加は高止まりしたままだ。 この「COVID-19ワクチン」が古典的な意味のワクチンでなく、遺伝子操作薬だということを知る人は少なくないだろう。この新薬は人間の細胞に病気の原因であるスパイク・タンパク質を製造させ、抗体を作るとされているが、このスパイク・タンパク質が病気の原因になる。そこで人間の免疫システムは細胞を病気の原因だと認識して攻撃、炎症を引き起こすわけだ。 そのまま放置すると非接種者を死に至らしめる可能性があり、そうした炎症を免疫の低下が抑えなければならない。そこで新薬には免疫を低下させる仕組みが組み込まれているのだが、人間の免疫システムも免疫を下げて炎症を抑制するためにIgG4交代を産生する。 いわばAIDS状態にするわけで、VAIDS(ワクチン後天性免疫不全症候群)なる造語も作られた。その結果、病気に罹りやすくなる。接種が始まる前からADE(抗体依存性感染増強)も懸念されていた。 そのほか、DNAの混入、mRNAを細胞の内部へ運ぶために使われているLNP(脂質ナノ粒子)の毒性、グラフェン誘導体の混入といった問題も指摘されている。LNPは卵巣を含むあらゆる臓器に蓄積、生殖システムが破壊される可能性があり、人類の存続を危うくしかねないのだ。こうした問題を医薬品会社や当局は「ワクチン」を世界規模で接種させる前から知っていた。 そうした事実が記載された文書をファイザーやFDA(食品医薬品局)は75年間隠そうとしたのだが、裁判所の命令で公開せざるをえなくなる。長年医薬品業界で研究開発に携わってきたサーシャ・ラティポワはその文書を分析、バラク・オバマ大統領の時代からアメリカの国防総省が「COVID-19ワクチン」の接種計画を始めたという結論に達した。 2022年2月にロシア軍はウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設を攻撃し始め、機密文書を回収した。そうした文書の分析からアメリカの国防総省に所属するDTRA(国防脅威削減局)がウクライナ国内で生物兵器の研究開発を進めていたことをロシア軍はつかんだ。 分析結果をロシア軍核生物化学防護部隊のイゴール・キリロフ中将は2022年3月7日に公表したが、それによると、研究開発はDTRAから資金の提供を受け、CBEP(共同生物学的関与プログラム)の下で進められたという。ウクライナにはアメリカのDTRAにコントロールされた研究施設が約30カ所あったとされている。2023年4月にはロシア議会が報告書を発表している。 次期大統領のドナルド・トランプが保健福祉長官に指名したロバート・ケネディ・ジュニアを保健福祉(HHS)長官は長年、医薬品問題に取り組んできた人物で、これまで隠されてきた「COVID-19ワクチン」の闇に光を当てる可能性がある。 そうした流れの結果なのか、CDC(疾病予防管理センター)の所長を2018年3月から21年1月まで務めたロバート・レッドフィールドがこの問題について語った。COVID-19は人工的に作られたもので、「バイオ防衛プログラムの一環として意図的に作られた」と彼は示唆、そうした発言をダナ・パリシュは11月15日に公開した。 COVID-19や「COVID-19ワクチン」の危険性は早い段階から指摘されていたのだが、WHO(世界保健機関)、各国の政府機関、西側の有力メディアは連携して問題を隠蔽してきた。 アメリカの場合、1948年頃から情報機関が「モッキンバード」と呼ばれる情報操作プロジェクトを始めたとされている。このプロジェクトを担当していたのはコード・メイヤーで、実際の活動はアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムが指揮していた。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) グラハムの死後、妻のキャサリーンが社主に就任、その下でワシントン・ポスト紙は「ウォーターゲート事件」を暴くのだが、その取材で中心的な役割を果たしたカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞めて「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に書いている。 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) またフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。 ウルフコテによると、CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。 大戦後にCIAが組織的な情報操作を始め、1980年代から報道統制が強まったことは事実だが、その前のメディアが独立していたわけではない。1860年代にニューヨーク タイムズ紙の主任論説委員を務めたジョン・スウィントンは1883年4月12日にニューヨークのトワイライト・クラブで次のように語っている。「アメリカには、田舎町にでもない限り、独立した報道機関など存在しない。君たちはみな奴隷だ。君たちはそれを知っているし、私も知っている。君たちの中で正直な意見を表明する勇気のある人はひとりもいない。もし表明したとしても、それが印刷物に載ることはないと前もって知っているはずだ。」**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.26
次回の「櫻井ジャーナルトーク」は12月20日午後7時から駒込の「東京琉球館」で開催します。12月のテーマは「トランプ政権樹立の直前、ロシアに〈宣戦布告〉した米英支配層」を予定しています。予約受付は12月1日午前9時からですので、興味のある方は東京琉球館までEメールで連絡してください。東京琉球館https://dotouch.cocolog-nifty.com住所:東京都豊島区駒込2-17-8Eメール:makato@luna.zaq.jp アメリカやイギリスの政府は自国のミサイル・システムをウクライナ軍がロシア深奥部に対する攻撃に使うことを許可しました。この攻撃はアメリカやイギリスによる事実上の対ロシア宣戦布告と見做されています。そこでロシア軍が極超音速の中距離弾道ミサイル「オレーシニク」でドニプロ(ドニプロペトロウシク)にあるユジュマシュの工場を攻撃しました。ウクライナの治安機関SBUは情報を機密扱いしているようですが、ユジュマシュは灰燼に帰したとする情報が現地から届き始めています。 ウクライナ軍がロシア深奥部を攻撃するのに使った兵器はアメリカが開発したATACMS(陸軍戦術ミサイル・システム)やイギリスとフランスが共同開発したストーム・シャドウ/SCALP-EG(長距離自律巡航ミサイル・システム)。こうした兵器を使うために兵器を扱える要員が必要であるだけでなく、兵器を誘導するための情報を提供する衛星、さらに目標の選定や目標に関する情報なども必要です。 つまり、こうした兵器を使うということは、兵器の供与国や情報の提供国が攻撃の主体だといことであり、今回の場合、米英がウクライナからロシア深奥部を攻撃したということになり、米英はロシアと戦争状態に入ったことを意味します。こうしたことは以前からロシアのウラジミル・プーチン大統領が繰り返し警告していました。そうした警告を無視して米英両国政府はロシア深奥部を攻撃したわけです。ATACMSやストーム・シャドウで戦局が一変することはありえませんが、ロシアから宣戦布告だと見なされるのは当然です。 アメリカは1950年代に沖縄を軍事基地化した後、イタリアやトルコに中距離核ミサイルを配備、それに対抗してソ連は1962年にキューバへミサイルと核弾頭を持ち込み、全面核戦争の寸前まで進みました。 この時はジョン・F・ケネディ大統領とソ連の最高指導者だったニキータ・フルシチョフが外交的に解決しましたが、ダニエル・エルズバーグによりますと、ソ連に対する先制核攻撃を計画していた国防総省の好戦派の間ではクーデター的な雰囲気が広がっていたといいます。 今のアメリカ政府に「ケネディ大統領」はいません。核戦争の可能性はキューバ危機当時より高いと考えられています。そうした状況について考えたいと思っています。櫻井 春彦
2024.11.25
キューバ危機を話し合いで解決、ソ連との核戦争を回避することに成功したジョン・F・ケネディ大統領は1963年6月10日、アメリカン大学の学位授与式でソ連と平和共存する道を歩き始めると宣言した。いわゆる「平和の戦略」を打ち出したのだ。それから5カ月後の11月22日、テキサス州ダラスでケネディ大統領は暗殺された。この出来事をクーデターと考える人は少なくない。 アメリカが軍事力で世界に押しつける「パックス・アメリカーナ(アメリカ支配による平和)」を否定することから演説は始まり、アメリカ市民は「まず内へ目を向けて、平和の可能性に対する、ソ連に対する、冷戦の経過に対する、また米国内の自由と平和に対する、自分自身の態度を検討しはじめるべき」(長谷川潔訳『英和対訳ケネディ大統領演説集』南雲堂、2007年)だと語りかけた。 ケネディ大統領はソ連とアメリカとの間で全面戦争が起これば、いずれの国も破壊されると指摘、冷戦の段階でも「両国はともに無知と貧困と病気を克服するためにあてることができるはずの巨額のカネを、大量の兵器に投じている」と警鐘を鳴らしている。 相手国に対して「屈辱的な退却か核戦争」を強いるのではなく、緊張の緩和を模索するべきだとしたうえで、自分たちの遠大な関心事は「全面完全軍縮」だと表明、核実験の禁止を訴え、他国がしない限りという条件付きで、アメリカは大気圏の核実験をしないと宣言している。 第2次世界大戦後、敗戦国の日本やドイツだけでなく、戦場になったヨーロッパやロシアも疲弊していた。そうした中、アメリカは国土の大半が戦場にはならず、軍事物資の生産や金融などで大儲け、しかもドイツや日本が戦争中に略奪した財宝も手に入れていたと見られている。軍事的にも経済的にもアメリカは優位な立場にあった。 それだけでなく、1944年7月22日にはアメリカのニュー・ハンプシャー州ブレトン・ウッズに連合国44カ国の代表が集まって会議を開いて通貨金融に関する協定を締結、戦後の国際通貨金融システムのあり方を決め、アメリカは国際通貨金融を支配できるようになる。世界を支配するための障害はソ連だけだったが、そのソ連はドイツとの戦争で疲弊していた。 ドイツ軍は1941年6月にソ連に対する奇襲攻撃、バルバロッサ作戦を開始している。西側には約90万人だけを残し、310万人を東側へ投入するという非常識なものだが、これはアドルフ・ヒトラーの命令で実行されたという。これだけの作戦を実行するためには半年から1年は準備のために必要なはずだが、1940年9月から41年5月までの間、ドイツ軍はイギリスを空爆していた。これは陽動作戦だったと見ることもできる。 1941年7月にドイツ軍はレニングラードを包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点に到達した。ヒトラーはソ連軍が敗北したと確信、再び立ち上がることはないと10月3日にベルリンで語っている。またウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官でNATOの初代事務総長に就任するヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測しながら傍観していた。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) しかし、ソ連軍の抵抗でこうした予想通りにことは進まず、ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入するものの、ここでソ連軍に敗北し、1943年1月に降伏。この段階でドイツの敗北は決定的だ。 そこでアメリカやイギリスの支配層は慌て始め、1943年1月にフランクリン・ルーズベルト米大統領とウィンストン・チャーチル英首相はフランスのシャルル・ド・ゴールらとカサブランカで会談している。この時に出てきた「無条件降伏」は戦争を長引かせ、ソ連対策を講じようとしたのだとも言われている。「ソ連勝利」の事実を隠蔽するために使われたのはハリウッド映画だ。 その当時、アメリカでは原子爆弾の研究開発プロジェクトが進められていた。「マンハッタン計画」だが、これを主導した国はイギリスだった。1940年2月にバーミンガム大学のオットー・フリッシュとルドルフ・パイエルスのアイデアに基づいてプロジェクトが始まり、MAUD委員会なるものが設立されている。 1943年には核兵器用のウランとプルトニウムを製造するため、テネシー州オーク・リッジに4施設が建設され、そのひとつはオーク・リッジ国立研究所へと発展した。ワシントン州に建設されたハンフォード・サイトではプルトニウムを製造するため、1944年9月にB原子炉が作られている。 この「マンハッタン計画」を統括していたアメリカ陸軍のレスニー・グルーブス少将(当時)は1944年、同計画に参加していたポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) ルーズベルトは1945年4月12日に急死、その翌月の上旬にドイツは降伏するが、その直後にチャーチルはソ連への奇襲攻撃を目論む。そこでJPS(合同作戦本部)に対して作戦を立案を命令し、5月22日には「アンシンカブル作戦」が提出された。 その作戦によると、1945年7月1日にアメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で奇襲攻撃、「第3次世界大戦」を始めることになっていた。この作戦が実行されなかったのは、参謀本部が計画を拒否したからである。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) チャーチルは1945年7月26日に退陣するが、大戦後の46年3月にアメリカのフルトンで「鉄のカーテン演説」を行い、「冷戦」の幕開けを宣言した。FBIの文書によると、チャーチルは1947年にアメリカのスタイルズ・ブリッジス上院議員に対し、ソ連を核攻撃するようハリー・トルーマン大統領を説得してほしいと求めている。(Daniel Bates, “Winston Churchill’s ‘bid to nuke Russia’ to win Cold War - uncovered in secret FBI files,” Daily Mail, 8 November 2014) 日本がポツダム宣言の受諾を通告してから約1カ月後、アメリカの統合参謀本部では必要なら先制攻撃を行うことが決められた。この決定は「ピンチャー」という暗号名で呼ばれ、1946年6月18日に発効している。(Annie Jacobsen, “Area 51”, Little, Brown, 2011) 原爆を手にしたアメリカの支配階級はソ連を先制核攻撃する計画を立てる。1949年に出された統合参謀本部の研究報告では、ソ連の70都市へ133発の原爆を落とすという内容が盛り込まれていた。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) アメリカは1952年11月に水爆実験を成功させ、核分裂反応を利用した原子爆弾から核融合反応を利用した水素爆弾に核兵器の主役は移っていく。勿論、核兵器を使うには運搬手段が必要。この当時、原爆の輸送手段は爆撃機で、その任務を負っていたのがSAC(戦略空軍総司令部)だ。1948年から57年にかけてSACの司令官を務めたのは日本の諸都市で市民を焼夷弾で焼き殺し、広島や長崎に原爆を落とし、朝鮮戦争では3年間に人口の20%を殺したカーティス・ルメイ中将にほかならない。 中国を核攻撃する場合、日本や沖縄が出撃拠点になるが、その沖縄では1950年代に「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収され、軍事基地化が推し進められていた。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づき、武装米兵を動員した暴力的な土地接収が実施され、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になっている。 SACは1954年に600から750発の核爆弾をソ連に投下、118都市に住む住民の80%を殺すという計画を立て、57年に作成された「ドロップショット作戦」では300発の核爆弾をソ連の100都市に落とすることになっていた。 その頃、アメリカではICBMの準備が進められ、統合参謀本部議長のライマン・レムニッツァーや空軍参謀長だったカーティス・ルメイを含む好戦派は1963年後半までにソ連を先制核攻撃する計画をたてた。まだソ連がICBMの準備ができていない時点で攻撃したかったのだ。その作戦の障害になっていたケネディ大統領は1963年11月22日にテキサス州ダラスで暗殺されたのだ。 しかし、ケネディ大統領の暗殺計画はその前から動いていた。大統領は1963年11月2日にシカゴを訪れる予定になっていたが、そのシカゴで大統領を暗殺する計画があるとする警告が警備当局に対し、2カ所からもたらされている。ひとつはFBIの情報提供者「リー」から、もうひとつはシカゴ警察のバークレー・モイランド警部補からだ。 FBIが入手した情報によると、パレードの途中で4名のスナイパーが高性能ライフルで大統領を狙うとされていた。その情報はシークレット・サービスへも伝えられている。ちなみに、ケネディ大統領暗殺の容疑者として逮捕され、警察で殺されたリー・ハーベイ・オズワルドはFBIの情報提供者だと言われている。シークレット・サービスのシカゴ支部は容疑者を監視、11月1日に2名を逮捕したが、残りの2名には逃げられてしまう。 また、モイランド警部補の話は「ケネディ嫌いの男がいる」というもの。10月の後半にシカゴのカフェテリアで食事をしていたモイランドは、そこの経営者からケネディ大統領に関して不穏当な話をする常連客がいることを知らされたのだ。そこで警部補はその男が来るのを待ち、トーマス・アーサー・ベイリーだと確認してからシークレット・サービスに連絡している。(James W. Douglass, “JFK”, Orbis, 2008) ベイリーは元海兵隊員で、ジョン・バーチ協会に所属。海兵隊時代にはJTAG(統合技術顧問グループ)のメンバーとして日本にいた。オズワルドも1956年7月に日本の厚木基地の第1航空管制大隊へ配属されている。(Peter Janney, “Mary’s Mosaic,” Skyhorse, 2013) ケネディ大統領がシカゴのオハラ空港へ到着する予定時刻の30分前、11月2日午前9時10分(東部時間10時10分)にベイリーは逮捕され、シークレット・サービスの取り調べを受けてから収監されたのだが、シークレット・サービスのエージェントは暗殺未遂事件に関する文書を作成していないという。担当の特別エージェント、モーリス・マーティノーの命令だった。 ケネディ大統領のシカゴ訪問が取りやめになったことは東部時間で10時15分に発表されている。少なくともその10分前に取りやめは決まっていたはずで、このケースでは10時に関係者は決定を聞いていたと言われている。つまり、大統領の訪問中止が決まった約10分後に警察はベイリーを逮捕したことになる。 そうした情況にあったため、大統領の周辺、例えばウイリアム・フルブライト上院議員たちは大統領に対し、ダラス行きを中止するようにワシントンDCで20日に忠告しているのだが、取りやめにならなかった。(Anthony Summers, "The Kennedy Conspiracy," Paragon House, 1989 ケネディ大統領のダラス訪問は1963年4月にリンドン・ジョンソン副大統領が発表している。ダラスに不穏な空気が漂っていたことは大統領自身も承知していたはずだが、大統領は予定を変えず、11月21日の夜にフォート・ワース入りした。 その日から翌日の未明まで、警備を担当するシークレット・サービスのエージェントの多くが「セラー(穴蔵)」というナイトクラブへ繰り出して騒いでいた。そのナイトクラブを経営するパット・カークウッドはジャック・ルビー、つまり、オズワルドを警察署で射殺したとされている人物の友人だという。(Robert J. Groden, “The Killing Of A President”, Bloomsbury, 1993) 大統領一行は11月22日の朝にフォート・ワースのカーズウェル空軍基地からダラスのラブ・フィールドへ移動、パレード用のリンカーン・コンバーティブルに乗り込んだ。 このリムジンは防弾仕様でなく、屋根はシークレット・サービスのウィンストン・ローソンの指示で取り外されていた。またリムジンのリア・バンパーの左右には人の立てるステップがあり、手摺りもついているのだが、パレードのときには誰も乗っていない。大統領の指示だったという話もあるが、エージェントだったジェラルド・ベーンは大統領がそうした発言をするのを聞いていないと証言している。元エージェントのロバート・リリーに言わせると、大統領はシークレット・サービスに協力的で警備の方法に口出しすることはなかった。 12時30分頃、ケネディ大統領は暗殺された。後ろの教科書ビルから撃たれたことになっているが、映像を見ても証言を調べても、致命傷になったであろう銃撃は前方からのものだった可能性がきわめて高い。教科書ビルの所有者はリンドン・ジョンソンの親友だったデイビッド・バード。そのビルに入っていてオズワルドが働いていたテキサス評価書倉庫なる会社のオーナーは、FBIに君臨していたJ・エドガー・フーバーの友人、ジャック・ケイソンだ。 銃撃が始まると、大統領を乗せたリムジンの後ろを走る自動車にいた特別エージェントのエモリー・ロバーツは部下のエージェントに対し、銃撃だと確認されるまで動くなと命令するが、これを無視してエージェントのクリント・ヒルは前のリムジンに飛び乗った。 ヒルによると、銃撃の後に喉を押さえるケネディ大統領を見てのことで、まだステップに足がかかる前、血、脳の一部、頭骨の破片が自分に向かって飛んできて、顔、衣類、髪の毛についたとしている。ステップにヒルの足がかかった時、大統領夫人のジャクリーンもボンネットの上に乗り、大統領の頭部の一部を手に触れようとしていた。その時、大統領の頭部の中が見えたという。リムジンの前方から銃撃されたことは決定的だ。(Clint Hill with Lisa McCubin, “Mrs. Kennedy and Me”, Gallery Books, 2012)事件を調査したウォーレン委員会でジャクリーンは髪の毛を元に戻そうとしたと証言しているが、委員会の報告書からは削除された。 銃撃の直後、ダラス警察のジョー・マーシャル・スミスはパレードの前方にあった「グラッシー・ノール(草で覆われた丘)」へ駆けつけ、硝煙の臭いを嗅いでいる。そこで近くの駐車場にいた自動車修理工のように見えた男を職務質問したところ、シークレット・サービスのエージェントだということを示されたのだが、そこにシークレット・サービスの人間は配置されていなかったことが後に判明している。 兵士のゴードン・アーノルドは銃撃の直前、「シークレット・サービスのエージェント」をそこで見たと語っている。パレードを見やすい場所を探してグラッシー・ノールに近づいたところ、私服の男に遮られ、近づかないようにと言われたというのだ。アーノルドが抗議したところバッジを見せながらシークレット・サービスだと名乗ったという。 銃撃が収まってから、今度はふたりの制服を着た「警察官」がアーノルドに近づいて、フィルムを渡すように命じた。アーノルドは素直に渡している。そのフィルムがどうなったかは不明だ。やはり銃撃後、グラッシー・ノールのフェンス近くを走っていたジーン・ヒルもシークレット・サービスを名乗る人物からフィルムを全て取り上げられている。ただ、エイブラハム・ザプルーダーが撮影した8ミリフィルムは後に公開されている。 事件直後、そのフィルムに関する全ての権利を写真雑誌LIFEの編集者リチャード・ストーリーが5万ドルでザプルーダーから買い取ってシカゴの現像所へ運び、オリジナルはシカゴに保管、コピーをニューヨークへ送ったとされていた。 ジャクソンはフィルムが外部に漏れることを警戒し、ストーリーに対して動画に関する権利も買い取るように指示。この契約でLIFEはザプルーダー側へさらに10万ドル、合計15万ドルを支払っている。後にオリジナルのほか3本のコピーが作られ、オリジナルはCIAと国防総省の共同プロジェクトとして設立されたNPIC(国家写真解析センター)へ送られたことがわかる。なお、NPICは1996年にNIMA(国家画像地図局)に組み込まれた。現在のNGA(国家地理空間情報局)だ。 このフィルムをNPICが保管していることを知ったCIA長官のジョン・マコーンは持ってくるように指示、映像を見ている。NPICはそれをオリジナルだとしていたが、本当のところは不明。マコーンはロバート・ケネディに対し、銃撃にはふたりの人間が関係しているという映像から受けた印象を語ったという。またNPICのスタッフで事件直後に映像を見たホーマー・マクマホンによると、銃撃は約8回、少なくとも3方向から撃たれているとしている。(Peter Janney, “Mary’s Mosaic,” Skyhorse, 2013) ザプルーダー・フィルムは長い間、一般に公表されていない。フィルムを隠したC・D・ジャクソンはアイゼンハワー大統領のスピーチライターを務めた人物で、アレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、フィリップ・グラハムを中心とするメディア支配プロジェクトの協力者でもあった。 このフィルムを公開させたのがルイジアナ州ニュー・オーリンズの地方検事だったジム・ギャリソン。これがオリジナルである保証はないのだが、ともかくそれを1969年2月に法廷で映写させた。ただ、フィルムには大きな傷があり、見えない部分がある。 その傷に関し、LIFE側は現像所の技術的なミスで損傷を与えたと説明したが、有名写真雑誌のプロがそうしたミスをするとは考えにくい。いつ、どのようにして傷つけたかを明確にするべきだが、現在に至るまで納得のできる説明はない。 本来ならフィルムを隠したC・D・ジャクソンから事情を聞くべきなのだが、大統領が暗殺された翌年、1964年9月18日に彼は62歳で死亡している。 ケネディ大統領の死亡が確認されたのはダラスのパークランド記念病院。死体を見た同病院のスタッフ21名は前から撃たれていたと証言、確認に立ち会ったふたりの医師、マルコム・ペリーとケンプ・クラークは大統領の喉仏直下に入射口があると記者会見で語っている。前から撃たれたということだ。 その後、ペリーにベセズダ海軍病院から電話が執拗にかかり、記者会見での発言を撤回するように求められたという。これは同病院で手術や回復のための病室を統括していた看護師、オードリー・ベルの証言。ペリー本人から23日に聞いたというが、数カ月後にそのペリーは記者会見での発言を取り消し、喉の傷は出射口だとする。ウォーレン委員会でもそのように証言した。(Peter Janney, “Mary’s Mosaic,” Skyborse, 2013) 大統領の死体は法律を無視してパークランド記念病院から強引に運び出され、検死解剖はワシントンDCのベセズダ海軍病院で行われた。担当した軍医のジェームズ・ヒュームスは検死に不慣れだったとも言われている。 ケネディ大統領の暗殺を調査するため、リンドン・ジョンソン新大統領は1963年11月29日に「ケネディ大統領暗殺に関する大統領委員会」を設置、アール・ウォーレン最高裁長官を委員長に据えた。委員長の名前から「ウォーレン委員会」と呼ばれることが多い。 委員会のメンバーはウォーレンのほか、リチャード・ラッセル上院議員(当時、以下同じ)、ジョン・クーバー上院議員、ヘイル・ボッグス下院議員、ジェラルド・フォード下院議員、アレン・ダレス元CIA長官、ジョン・マックロイ元世界銀行総裁がいた。そして主席法律顧問はリー・ランキンだ。 ダレスはウォール街の大物弁護士で、大戦中からOSSの幹部として破壊活動を指揮、戦後CIA長官になるが、ケネディ大統領に解任させられている。マックロイはウォール街の大物で、大戦の後に世界銀行の総裁を経てドイツの高等弁務官としてナチスの大物たちを守った。フォードはJ・エドガー・フーバーFBI長官に近く、ランキンはCIAとFBIにつながっている。ダレスは委員会の中で唯一の専従だった。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) この委員会にはCIAやFBIから情報が提供されたが、1964年1月にはCIAとの連絡係としてジェームズ・アングルトンが任命された。FBIはウィリアム・サリバンが担当している。(Michael Holzman, “James Jesus Angleton,” University of Massachusetts Press Amherst, 2008) ウォーレン委員会が暗殺に関する報告書と出した3週間後の1964年10月12日、ケネディ大統領と親密な関係にあったマリー・ピンチョット・メイヤーが散歩中に射殺された。銃弾の1発目は後頭部、2発目は心臓へ至近距離から撃ち込まれている。プロの仕業だ。 ウォーレン委員会の結論はリー・ハーベイ・オズワルドの単独犯行だが、この結論をヘイル・ボッグスは口頭で批判していたという。ボッグスは1966年、委員会の腐敗した状況をジム・ギャリソンに話しているという。ボッグスを乗せたセスナ310は1972年10月16日、アラスカで行方不明になった。(Joan Mellen, “A Farewell to Justice,” Potomac Books, 2007) ケネディ暗殺の際、CIA、シークレット・サービス、警察などに不可解な動きがあり、複数の狙撃者がいたことを示す証拠や証言が次々と明らかになる。それに対抗し、単独犯説を主張する勢力は「陰謀論」という呪文を考えつき、連呼するようになった。事実を隠蔽する呪文として多用されている「陰謀論」はこの時から盛んに使われている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.24
ロシア軍は11月21日、マッハ10という極超音速で飛行する中距離弾道ミサイル、オレーシニクでドニプロにあるユジュマシュの工場を攻撃した。射程距離は約6000キロメートルだとされているが、今回使われた派生型は短いという。これは新型極超音速中距離ミサイルのテストを兼ねた警告だ。 ウクライナ軍は11月19日に6発のアメリカ製ATACMSでロシア深奥部を攻撃、また11月20日にはイギリス製ストームシャドウとHIMARSミサイルで複合攻撃した。いずれの場合もミサイル供与国は攻撃を許可しているはずだ。 ATACMSやストームシャドウで戦局が一変することはないのだが、その攻撃における供与国の役割を考えると無視できないということだろう。そうした攻撃はロシアに対するミサイル供与国による攻撃とみなされるとウラジミル・プーチン大統領は明確に警告していた。 バイデン政権はロシアとの戦争を引き起こすことでドナルド・トランプの大統領就任を妨げようとしていると推測する人もいる。トランプ政権の誕生を恐れる関係者が国防総省、CIA、FBI、保健福祉省には少なくないだろう。 ATACMSやストームシャドウでの攻撃に対する報復としてロシアはオレーシニクで攻撃したのだが、米英をはじめとするNATO諸国への警告だったことから核弾頭は外されていた。 ATACMSのようなミサイルでロシア深奥部への攻撃は兵器を扱えるオペレーターが必要であるだけでなく、兵器を誘導するための情報を提供する衛星、さらに目標の選定や目標に関する情報などもなければならないとウラジミル・プーチン大統領は以前から指摘していた。 このミサイルがウクライナから発射されたとしても、実際に攻撃したのは兵器を供給し、オペレーターを派遣、情報を提供した国こそが攻撃の主体だということだ。今回の場合、アメリカとイギリスがロシアを攻撃したことになる。プーチン大統領はATACMSなどでロシア深奥部が攻撃された後、ウクライナでの戦争は局地的なものから世界的なものへ性格が変わったと主張した意味はそこにある。 西側はロシアが保有しているオレーシニクは数機にすぎないと主張しているが、ロシアは200機程度をすでに持っているとも言われている。オレーシニクはMIRV(複数個別誘導再突入体)を使用、一度に4ないし6都市を破壊することが可能だ。今後、弾頭に通常の爆弾、あるいは核爆弾を搭載して攻撃する場合、事前に警告することをロシア政府は約束した。 アメリカがネオ・ナチを使ったクーデターを始めたのはバラク・オバマが大統領だった2013年11月のこと。翌年の2月にはビクトル・ヤヌコビッチ政権が暴力的に倒され、ネオ・ナチ体制が樹立された。ウクライナの制圧はロシア侵略の最終局面であり、「ネオバルバロッサ」を始めたとも言える。この段階でロシア政府が動かなかったことをポール・クレイグ・ロバーツ元米財務次官補は批判していた。 今後、米英が戦闘をエスカレートされてロシア深奥部を繰り返し攻撃するようになった場合、ロシアは攻撃目標をウクライナの外へ拡大させる可能性がある。そこで指摘されているのがポーランドに建設されたアメリカのミサイル基地。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.23
CDC(疾病予防管理センター)の所長を2018年3月から21年1月まで務めたロバート・レッドフィールドがCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)について語り、その発言をダナ・パリシュが11月15日に公開した。レッドフィールドによると、このウイルスは人工的に作られたもので、「バイオ防衛プログラムの一環として意図的に作られた」と示唆している。パンデミック騒動にアメリカは重要な役割を果たしたもと彼は主張している。 アメリカ国防総省とCOVID-19の関係は以前から指摘されていた。例えば、製薬業界で25年以上にわたってデータ分析、臨床試験、技術に携わってきたサーシャ・ラティポワ。彼女によると、COVID-19騒動は国防総省がバラク・オバマ政権の時代に始めた作戦。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至ったという。 国防総省のDTRA(国防脅威削減局)がウクライナ国内で生物兵器の研究開発を進めていたことはロシア軍が指摘、同国の議会は2023年4月に報告書を発表している。 アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月にウクライナをネオ・ナチを使ったクーデターを開始、翌年の2月にビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒してネオ・ナチ体制を樹立させた。 それから8年かけてアメリカ/NATOはウクライナの軍事力を増強、22年に入ると反クーデター軍が支配するドンバスの周辺に部隊を配備し、砲撃を激化させた。ドンバスに対する大規模な軍事作戦を開始、住民を虐殺してロシア軍を要塞線の内側へ引き入れ、封じ込めようとしていたと見られているが、その直前、2月24日にロシア軍はウクライナに対する攻撃を始めた。 その攻撃でウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設から機密文書を回収、分析結果をロシア軍核生物化学防護部隊のイゴール・キリロフ中将は2022年3月7日に公表した。それによると、DTRAから資金の提供を受け、CBEP(共同生物学的関与プログラム)の下で進められたという。ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が約30カ所あったとされている。 キリロフが記者会見した翌日の3月8日、アメリカの上院外交委員会でビクトリア・ヌランド国務次官はウクライナの施設で研究されている生物化学兵器について語っている。マルコ・ルビオ上院議員の質問を受け、兵器クラスの危険な病原体がロシア軍に押収されるかもしれないと語ったのだ。つまりウクライナの研究施設で生物化学兵器の研究開発が行われていたことを否定しなかった。 ロシア議会は2023年4月、アメリカの生物化学兵器の研究開発に関する報告書を発表した。それによると、アメリカの研究者は人だけでなく動物や農作物にも感染でき、大規模で取り返しのつかない経済的損害を与える「万能生物兵器」を遺伝子組換え技術を利用して開発していたとしている。そうした兵器を秘密裏に使い、「核の冬」に匹敵する結果をもたらすつもりだという。この特性は「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」と酷似。その推測が正しいなら、日本で生物兵器が大量生産されることになる。 レッドフィールドによると、COVID-19の研究はNIH(国立衛生研究所)のほか国防総省、そしてCIAの資金を扱うUSAIDが資金を提供していたが、研究の中心はノースカロライナ大学チャペルヒル校のラルフ・バリック教授。ウイルスの発祥地がチャペルヒルだった可能性は十分にあるとレッドフィールドは推測している。 アンソニー・ファウチが所長を務めるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)は2014年からコロナウイルスの研究費としてエコヘルス連合へ数百万ドルを提供、その一部は「武漢病毒研究所(WIV)」の研究員へ提供されていたと伝えられている。 エコヘルス連合はWHO(世界保健機関)へアドバイスする立場にある団体で、NIAIDの上部機関であるNIHからWIVの石正麗へ研究費として370万ドルが提供されていたとも伝えられていた。 石正麗を中心とするチームはSARSに似たコロナウイルスのスパイク・タンパク質が人間などの細胞のACE2(アンジオテンシン変換酵素2)と結びつくメカニズムを研究、石はラフル・バリックとも協力関係にあった。 石とバリックは2015年11月にSARSウイルスのスパイク・タンパク質をコウモリのウイルス(SHC014-CoV)のものと取り替えて新しいウイルスを作り出すことに成功したとも言われ、またコウモリのコロナウイルスを操作してほかの種を攻撃させる方法をバリックは石に教えたともいう。 モデルナはNIAIDと共同開発した「mRNAワクチン」の候補について2019年12月初旬に守秘義務契約を結び、その候補をノースカロライナ大学チャペルヒル校に譲渡することで合意している。 その直前、武漢では2019年10月18日から27日にかけて国際的な軍人の競技会が開かれ、アメリカも選手団を派遣。その前、10月18日にはコロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーション「イベント201」がニューヨークで開かれている。主催者はジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、そしてWEF(世界経済フォーラム)だ。 イベント201には中国疾病預防控制中心の高福主任も参加していた。この人物は1991年にオックスフォード大学へ留学、94年に博士号を取得した人物で、99年から2001年までハーバード大学で研究、その後04年までオックスフォード大学で教えている。NIAIDの所長を務めてきたアンソニー・ファウチの弟子とも言われている。高福に限らず、中国のビジネスやアカデミーはアメリカ支配層の強い影響下にあり、それを政治が抑えている。 中国の湖北省武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見されたという報告があったのは2019年12月のこと。高福は武漢市内の海鮮市場で売られていた野生動物から人にウイルスが感染したとする見方を示し、ウイルスは武漢の海鮮市場から世界に広がったというストーリーが世界中で語られるようになった。 しかし、2020年2月からCOVID-19対策は中国軍の陳薇が指揮しはじめた。中国政府は高福の正体を知っていたはずで、信用していなかった可能性がある。陳はSARSの時の経験を活かし、インターフェロン・アルファ2bを使って短期間に沈静化させている。 この医薬品はキューバで研究が進んでいるもので、リンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされている。吉林省長春にも製造工場があり、中国の国内で供給できた。この事実は中国やキューバなどで報道され、中国の習近平国家主席がキューバのミゲル・ディアス-カネル大統領に謝意を述べたとも伝えられている。 COVID-19騒動がアメリカ国防総省のプロジェクトだということは以前から指摘されていたが、元CDC所長がそれについて触れる発言をしたのは興味深い。COVID-19の問題は「COVID-19ワクチン」と呼ばれる遺伝子操作薬の問題につながり、それは生物兵器である可能性が高い。その生物兵器を開発し、大規模な「治験」をしているグループはウクライナでネオ・ナチを利用したクーデターを成功させ、ロシアとの戦争を始めている。その戦争でネオコンはロシアに敗北したが、それだけでなくCOVID-19の闇にも光が当てられるかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.22
ウクライナは11月19日、ロシアのブリャンスクに向かって6機の長距離ミサイルATACMを発射したという。ATACMSでロシア深奥部を攻撃することをジョー・バイデン政権が許可したとニューヨーク・タイムズ紙が伝えた2日後のことだ。長距離ミサイルの使用許可を国防総省へは伝えていなかった可能性が指摘されている。これらのミサイルをすべて撃墜したとロシア側は主張している。バイデン大統領はウクライナに対して対人地雷を供与するともいう。 長距離ミサイルで攻撃するためには、この兵器を扱えるオペレーターが必要であるだけでなく、兵器を誘導するための情報を提供する衛星、さらに目標の選定や目標に関する情報などもなければならない。つまりアメリカやイギリスをはじめとするNATO諸国の支援なしにウクライナは長距離ミサイルを使うことはできないのだ。 ロシアのウラジミル・プーチン大統領は11月19日、最新版の「核抑止力の分野におけるロシア連邦の国家政策の基礎」に署名した。そこには核保有国の支援を受けた非核保有国によるロシアまたはその同盟国への侵略は共同攻撃とみなすと書かれている。ブリャンスクに対するウクライナのミサイル発射はアメリカとの共同攻撃ということだ。空中および宇宙ベースの攻撃システムの発射確認、ロシア国境への侵攻、ロシアやその軍隊に対する大量破壊兵器の使用なども核兵器使用の条件になっている。 ロシア軍は2022年2月にウクライナを攻撃し始めた後、破壊したウクライナの軍事施設や生物化学兵器の研究開発施設で機密文書を回収、それを分析した結果をロシア議会は報告書として2023年4月に発表した。その中で、アメリカがウクライナで「万能生物兵器」を開発していたと指摘されている。その生物兵器の特性は日本ですでに接種し始めた「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」と似ている。 ロシア議会が発表した報告書の180ページから181ページにかけて次のような記述がある。「アメリカは人間だけでなく動物や農作物も標的にできる普遍的な遺伝子操作生物兵器の開発を目指している。その使用はとりわけ敵に大規模で回復不可能な経済的損害を与えることを前提としている。」「避けられない直接的な軍事衝突の可能性を見越して、秘密裏に標的を定めて使用することで、たとえ他の大量破壊兵器を保有している相手であっても、アメリカ軍が優位に立てる可能性がある。アメリカ軍の戦略家によれば、ある特定の時期に、ある特定の地域で、異常な伝染病を引き起こす可能性のある生物学的製剤を、秘密裏に、かつ標的を定めて使用した場合の結果は核の冬に匹敵する可能性がある。」 製薬業界で25年以上にわたってデータ分析、臨床試験、技術に携わってきたサーシャ・ラティポワによると、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動はアメリカ国防総省がバラク・オバマ政権の時代に始めた作戦だ。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至ったという。日本の「ワクチン」政策は国防総省の命令に基づく可能性がある。 しかし、アメリカ国防総省がウクライナに建設した生物化学兵器の研究開発施設はロシア軍に破壊され、拠点は移動している。そのひとつが日本である可能性は否定できない。この推測が正しいなら、日本はロシアや中国にとって攻撃目標になる。ウクライナを見れば明白だが、攻撃されれば短期間に日本は壊滅する。 2022年2月以降、ウクライナ軍は一貫して劣勢。当初、兵士の数はロシア軍より多かったのだが、戦闘はロシア軍が優勢だった。ロシア側で重要な役割を果たしたのはワグナー・グループ。この会社のオーナー、エフゲニー・プリゴジンは料理人だが、周辺には有力な軍人が存在している。 ワグナー・グループはロシアの情報機関によって創設され、ロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めているウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将がその背後にいたと言われ、後にミハイル・ミジンチェフ上級大将が副司令官を務めていた。このミジンチェフが本当の司令官だと考える人もいた。 プリゴジンはセルゲイ・スロビキン上級大将やミハイル・ミジンチェフ上級大将とも友好的な関係にあった。スロビキンは2022年10月からドンバス、ヘルソン、ザポリージャの戦闘を指揮していた軍人であり、ミジンチェフはマリウポリを解放した作戦の指揮官だ。スロビキンが指揮するようになった頃からロシア軍は戦闘を本格化させていく。 国防相だったセルゲイ・ショイグやワレリー・ゲラシモフ参謀総長をプリゴジンは批判していたが、そのショイグは今年5月に安全保障会議書記へ移動、副首相を務めていた経済を専門とするアンドレイ・ベローゾフが後任に選ばれた。その後、ロシア政府はウクライナ問題を西側と話し合いで解決することを断念したと見られている。 昨年秋までにウクライナ軍は壊滅状態で、イギリスのベン・ウォレス前国防大臣は昨年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。それだけ兵士が死傷しているということにほかならない。この段階でウクライナ側の戦死者数は50万人から100万人、ロシア側はその1割程度だと見られていた。実際、ウクライナの街頭で徴兵担当者に拉致される男性の映像がインターネットで流されている。 すでにウクライナは降伏するか「総玉砕」するかという状況になっているのだが、ネオコンやEUのエリートはロシアを勝たせるわけにはいかないと主張、つまりウクライナを「総玉砕」させようとしている。 それでもダメならバイデンはドナルド・トランプの大統領就任式までに核ボタンを押すのではないかと懸念されている。大統領選挙でトランプの勝利が決定した後に民主党や有力メディアがおとなしいのは、そうした類のことを目論んでいるからではないかという人もいる。西側の好戦派に残された最後の切り札は核戦争による人類の死滅だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.21
ジョー・バイデン米大統領はウクライナ政府に対し、長距離ミサイルのATACMSでロシア深奥部を攻撃することを許可したとニューヨーク・タイムズ紙が伝えたが、ウクライナは6カ月で自前の長距離弾道ミサイルを開発できるともしている。いずれの場合でも、こうした兵器を扱える兵士、兵器を誘導する情報を提供する衛星、さらに目標の選定や目標に関する情報なども必要であり、少なくとも現段階ではアメリカやイギリスをはじめとするNATO諸国の支援なしに長距離ミサイルを使うことはできない。 ロシアのウラジミール・プーチン大統領は今年9月、西側諸国がキエフに対してロシアを攻撃するために長距離兵器の使用を認めれば、それはNATOとロシアが戦争状態になることを意味すると宣言した。ニューヨーク・タイムズ紙の報道が正しいなら、ロシア政府はそれを自国に対する宣戦布告とみなすとも理解できる。ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官は、報道が事実ならば、それは劇的な軍事的なエスカレーションだとしている。 少なくとも現在のバイデン大統領がこうした問題について判断する能力があるとは思えないが、誰が判断したにしろ、アメリカ側がこうした軍事的な緊張を高める政策を打ち出した。そうした中、プーチン大統領は最新版の「核抑止力の分野におけるロシア連邦の国家政策の基礎」に署名した。それによると、核保有国の支援を受けた非核保有国によるロシアまたはその同盟国への侵略は、共同攻撃とみなすとされている。つまりNATO加盟国がロシアやその同盟国を侵略した場合、アメリカやイギリスを含むNATO全体の侵略とみなすということだ。 1990年8月にイラク軍がクウェートへ攻め込んだ。その前にイラクとクウェートは領土や石油の盗掘をめぐる問題で対立していたのだが、解決の見通しは立っていなかった。そうした中、アメリカ政府はイラク軍がクウェートへ侵攻することを容認するかのようなメッセージを出す。 PLOのヤセル・アラファト議長やヨルダンのフセイン国王はイラクのサダム・フセインに対し、これは罠の可能性があると警告するが、イラクは軍事力を行使したのだ。 イラクが侵攻すると、アメリカ下院の人権会議に「ナイラ」なる少女が登場、イラク軍の残虐性を涙ながらに告発、アメリカで好戦的な雰囲気を高めることに成功し、アメリカ軍は1991年1月にイラクを軍事侵攻した。 しかし、この「告発劇」は広告会社ヒル・アンド・ノールトンが演出したもので、主演の少女はアメリカ駐在クウェート大使の娘。つまり全くの作り話だった。 この戦争でイラクはダメージを受けるが、ジョージ・H・W・ブッシュ政権はフセイン体制を倒さない。ブッシュやその後ろ盾はイラクをペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤だと考えていたからだ。 それに対し、イラクに親イスラエル体制を樹立させ、シリアとイランを分断して個別の倒すという戦略を立てていたネオコンは怒るのだが、その経験からアメリカが軍事力を行使してもソ連軍は出てこないと考えるようになった。 それ以降、アメリカのどの政権でも大きな影響力を維持したネオコンは、ロシアも脅せば出てこないと信じている。今回、バイデン政権はウクライナに対してATACMの使用を許可したとされているが、バイデン大統領やその周辺の好戦派はロシア政府の警告をハッタリだと考え、ウクライナを解き放ってもロシアは反応しないと思い込んでいるようだ。彼らは「脅せば屈する」という信仰から抜け出せない。これを否定すると彼らの信仰体系が崩壊してしまうからだろう。 ロシアに対する挑発、あるいは長距離ミサイルによるロシア深奥部への攻撃を正当化するつもりなのか、アメリカ、韓国、ウクライナは、朝鮮軍がロシアへ兵士1万2000人を派遣していると評価しているのだが、例によって証拠は示されていない。もしそれだけの部隊が戦闘に参加しても戦況を変化させることはできない。 しかも、実際にそうした攻撃が行われた場合、それはアメリカをはじめとするNATOによるものだとロシアは判断する。いや、クリミアなどに対してはすでに使われているので、ロシアは自国をアメリカをはじめとするNATOが攻撃していると考えているはずだ。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2022年2月にロシアがウクライナへの攻撃を始めた直後、ロシアのプーチン政権と停戦交渉を開始、ほぼ合意に達していたことが判明している。その交渉を潰したのがイギリス政府で、アメリカの政界も戦争を後押しした。 その2年前、ゼレンスキーはイギリスを公式訪問したのだが、その際にロンドンでイギリスの対外情報機関MI6のリチャード・ムーア長官と会談した。その際、ゼレンスキーの周辺から情報が漏れていると指摘され、ゼレンスキーの周辺にはイギリス人スタッフが配備されたという。 それ以降、ゼレンスキーはMI6のエージェントであり、ハンドラーはムーア長官だと考えられるようになった。ゼレンスキーの大統領就任は西側諸国の情報機関による綿密な計画に基づく作戦によるとも言われている。そう考えれば、ゼレンスキーがネオコンのためにウクライナを破壊し、ウクライナ人の大量死を招いた理由が理解できる。MI6の背後にはイギリスの金融界が存在している。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、ゼレンスキーはウクライナをアメリカや西側諸国の新型兵器システム、ネオナチで編成された戦闘員、生物化学兵器の研究開発施設などのための実験場にした。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.20
このブログは読者の皆様に支えられています。ブログを存続させるため、カンパ/寄付をお願い申し上げます。【振込先】巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦 ドナルド・トランプが次期アメリカ大統領に選ばれました。世界を支配してきた「ディープ・ステート」、つまりシティやウォール街を拠点にする金融資本を中核とする強大な私的権力に彼が挑戦してくれると期待する人も少なくないようですが、革命家でない彼が支配構造そのものを壊すことはないでしょう。 ロバート・ケネディ・ジュニアが保健福祉省の長官に、またトゥルシー・ギャバードが国家情報長官に指名され、これによって政策の民主化は期待できるかもしれませんが、支配構造自体が民主化されるとは思えません。勿論、ケネディやギャバードに対する利権集団の攻撃は予想できます。 ハリウッド映画も「政府機関の悪事」を描くこともありますが、それは悪い個人やグループによるものであり、システムは健全だとされています。最後には自浄作用が働き、「正義が勝つ」ということになっています。こうした自浄作用のひとつとしてトランプの勝利を見る人も少なくありません。 問題の本質は支配構造の腐敗にあるのですが、そこへ人びとが目を向けないように情報を操作しているのが有力メディアや「権威」と呼ばれる人びとです。そうしたプロパガンダに対抗し、事実を伝える人びとがインターネット上にはいますが、西側ではそうした情報を封印しようと言論統制を強めています。こうした統制と戦うため、皆様の御支援をお願い申し上げます。櫻井 春彦【追加】 ジョー・バイデン大統領はウクライナ政府に対し、長距離ミサイルのATACMSでロシア深奥部を攻撃することを許可したとニューヨーク・タイムズ紙が伝えている。ウクライナで米英を中心とする西側諸国が続けてきたロシアとの代理戦争を終わらせるとしているドナルド・トランプの大統領就任が2カ月後に迫っている中でのことだ。 ATACMSでロシアの深奥部を攻撃しても戦況に変化はないが、こうした兵器を使用するためには兵器を扱える兵士、兵器を誘導する衛星からの情報、ターゲットの選定やその情報なども提供する必要がある。つまりアメリカ/NATOがロシアに対する攻撃に直接タッチしなければならないということだ。 ロシアのウラジミール・プーチン大統領は9月、西側諸国がキエフに対してロシアを攻撃するために長距離兵器の使用を認めれば、それはNATOとロシアが戦争状態になることを意味すると宣言している。バイデンがATACMSによるロシア深奥部への攻撃を許可したという情報が正しいなら、ロシア政府はそれを自国に対する宣戦布告とみなすということだ。実際、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、報道が事実ならば、それは劇的な軍事的なエスカレーションだとしている。 これまでアメリカでは国防総省が長距離ミサイルの使用を許可しないようにブレーキをかけていたようだが、国務省や安全保障部門、あるいはイギリス政府はウクライナに長距離ミサイルでロシアの深奥部を攻撃させようとしていた。 バイデン大統領やその周辺のネオコンたちは任期が2カ月になった時点でロシアに対して事実上の戦線布告をし、戻れない一線を超えるつもりなのだろう。
2024.11.19
ドナルド・トランプ次期大統領がイーロン・マスクをニューヨークでイランのアミール・サイード・イラバニ国連大使と会談させたとニューヨーク・タイムズ紙が伝えたが、イラン外務省はこの報道を否定した。 同紙はこれまでアメリカ支配層の意向に沿う偽情報を流してきたので嘘だとしても驚きではないが、アメリカやイスラエルによるイランに対する攻撃が近いとする推測が流れる中での出来事だ。 ちなみに、トランプは大統領として2017年4月に巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射、18年4月にはイギリスやフランスを巻き込み、100機以上のトマホークをシリアに対して発射したが、成功しなかった。 そして2018年5月にトランプ大統領はイラン核合意から自国を正式に離脱させ、20年1月にはイランのコッズ軍を指揮してきたガーセム・ソレイマーニーとPMU(人民動員軍)のアブ・マフディ・ムハンディ副司令官をバグダッド国際空港で暗殺している。 また、民主党に所属するふたりの上院議員、ジャック・リード上院軍事委員会委員長と外交委員会メンバーのジーン・シャヒーンはマスクがロシアの高官数人と連絡を取っていたという情報について調査するべきだと要求しているが、今後、こうした話を突破口にしてマスク攻撃を展開するつもりなのかもしれない。 トランプ政権が中東に対してどのような政策を打ち出すのか明確でないが、ロシアとの戦争を回避しようとしている可能性は高い。それに対し、一貫してロシアとの戦争に執着しているのがイギリスの支配層だ。 ロシア軍は2022年2月24日にウクライナ軍に対するミサイル攻撃を開始したが、その直後にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシアのウラジミル・プーチン政権と停戦交渉を始めた。仲介役はイスラエルのナフタリ・ベネット首相とトルコ政府で、ほぼ合意に達していた。 停戦が内定したことを伝えるためにベネットは同年3月5日にドイツへ向かい、オラフ・シュルツと会うのだが、その日、ウクライナの治安機関SBUはキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。 そして4月9日、ボリス・ジョンソン英首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。 2022年10月8日にクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)が爆破された。ロシアのFSB(連邦保安庁)によると、容疑者は12名。そのうち8名が逮捕されたという。トラックに積まれた建設用のフィルム・ロールに偽装したプラスチック爆弾で、爆破工作を計画したのはウクライナ国防省のGUR(情報総局)だとされたが、計画の黒幕はイギリスの対外情報機関SIS(通称MI6)だとする情報もあった。この情報機関はイギリスの金融界、通称「シティ」との関係が深い。 このクリミア橋爆破を含む工作にイギリスの退役した軍人や情報機関のメンバーで組織された一団をイギリス国防省は組織し、「プロジェクト・アルケミー」と呼ばれるようになった。この計画を作り出したのはイギリス軍のチャーリー・スティックランド中将だとされている。このスティックランドがプロジェクト・アルケミーの最初の会議を招集したのは2022年2月26日だという。 イギリスの情報機関は第2次世界大戦の終盤、アメリカの情報機関と共同で「ジェドバラ」なるゲリラ部隊を組織した。メンバーにコミュニストが多かったレジスタンスに対抗するためだとされている。 大戦後、アメリカではジェドバラの一部メンバーは軍へ移動してグリーン・ベレーをはじめとする特殊部隊の創設に関わり、一部は極秘の破壊工作部隊OPCの中核メンバーになった。またヨーロッパでは「ソ連の軍事侵攻に備える」という名目で破壊工作機関のネットワークが構築された。 NATOが組織されると、そのネットワークは吸収され、メンバー国には秘密部隊が作られている。その中で最も有名な組織はイタリアのグラディオだろう。こうしたグラディオのような組織がウクライナでも作られたという。 ウクライナは2014年2月22日、アメリカのネオコンが仕掛けたクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権が倒され、ネオ・ナチが主導権を握る体制が築かれた。 ネオ・ナチを率いてきたひとりがドミトロ・ヤロシュ。この人物はドロボビチ教育大学でワシル・イワニシン教授の教えを受けたことが切っ掛けになってOUN-B(ステパン・バンデラ派)系のKUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)に入るが、この人脈はソ連消滅後に国外からウクライナへ戻り、活動を始めている。2007年にヤロシュはKUNの指導者になり、そのタイミングでNATOの秘密部隊ネットワークに参加したとされている。 プロジェクト・アルケミーのメンバーはウクライナにおける代理戦争を長引かせ流ことでプーチン大統領に対するロシア内外の信頼性を失わせ、NATOと戦う能力を低下させることができると考えた。ドンバスでロシア軍が敗北すればプーチン政府崩壊の引き金になってロシアを西側が支配する金融秩序へ吸収でき、ロシアが敗北すればロシアの安い天然ガスや穀物を手に入れられる。おそらく、ヨーロッパ諸国はその「おこぼれ」にあずかれると思ったのだろう。 アルケミーはICC(国際刑事裁判所)にあらゆる可能な支援を提供するよう提案、イギリスの著名な弁護士はICTY(旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所)に類似した組織を設立しようと目論んでいたとも言われている。マックス・ブルーメンタールによると、イギリスはカリム・カーンのICC主任検察官任命で重要な役割を果たしたとされている。 そのカーンは2023年3月にプーチン大統領と子どもの権利オンブズマンであるマリア・リボバ-ベロバに対する逮捕令状を発行、5月にはロシア当局がカーンに対する逮捕令状を発行した。ICCは2024年6月にロシアの元国防大臣セルゲイ・ショイグとロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長に対する逮捕状も発行した。 こうした西側の妄想はロシアがウクライナで軍事的に劣勢にならなければ成立しないのだが、実際はロシアの軍や経済の強さを明らかにすることになっている。西側は窮地に陥った。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.18
ドナルド・トランプ次期米大統領はロバート・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官(HHS)に任命、タルシ・ガッバード元下院議員を国家情報長官候補に指名、イーロン・マスクをニューヨークへ派遣してイランのアミール・サイード・イラバニ国連大使と会談させたという。 HHSを構成する部局の中にはCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で中心的な役割を果たしたCDC(疾病管理予防センター)やFDA(食品医薬品局)も含まれている。アメリカを支配している人たちは医療システムを支配の道具として利用、COVID-19騒動の背後に国防総省が存在しているので、HHSは重要な省だと言える。 国家情報長官は情報機関を統括する重要な役職だが、それだけに情報部門を支配しているネオコンがガッバードをすんなり受け入れることはないと見られている。 トランプは前回、国家安全保障補佐官にマイケル・フリン元DIA(国防情報局)局長を選んだのだが、この人物が局長だった当時のDIAは、バラク・オバマ政権が中東で進めていたアル・カイダ系武装集団への支援を危険だと指摘していた。 オバマ大統領はムスリム同胞団を使い、地中海沿岸国で体制転覆作戦を展開するため、2010年8月にPSD-11を承認。「アラブの春」はその結果だ。 その作戦ではムスリム同胞団だけでなくサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)も投入、リビアではNATOも連携させた。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はその年の10月に倒され、カダフィ本人を惨殺された。 シリア軍はリビア軍と違って強く、アル・カイダ系武装勢力だけではバシャール・アル・アサド政権を倒せない。そこでオバマ政権はリビアから兵器や戦闘員をシリアへ移動させるだけでなく、新たな軍事支援を実行した。 DIAはオバマ政権が支援している「反シリア政府軍」の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと実態は同じだと指摘、その中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと報告している。 報告書の中でDIAは、オバマ政権の政策によってシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域が作られると警告しているが、2014年にそれがダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で現実になった。そのダーイッシュは残虐さを演出してアメリカ/NATOの介入の口実を作ろうとしたが、2015年9月末にシリア政府はロシア政府に軍事介入を要請、ロシア軍がダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していった。 トランプはこうした背景を持つフリンを国家安全保障補佐官に任命した人事をヒラリーを支えていたネオコンや戦争ビジネスは怒り、フリンに最も近い副補佐官とされていたロビン・タウンリーがNSC(国家安全保障会議)で働くために必要なセキュリティ・クリアランスの申請をCIAは拒否、フリンは2017年2月に解任された。ガッバードを国家情報長官に据えられるのか、長官に据えても仕事をできるのか、不明だ。 2015年の6月に欧米の一部支配グループはヒラリー・クリントンを次期大統領にすることを内定していたと言われている。この月の中旬にオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合へジム・メッシナというヒラリー・クリントンの旧友が出席していたからだ。 オバマ大統領は2015年12月にロシアの外交官35人の追放を命じ、アメリカとロシアとの関係を悪化させようとした。アメリカの大統領選挙に介入しようとしたからだとされているが、この「ロシアゲート」は民主党幹部がCIAやFBIと手を組んで仕掛けたでっち上げであることは明確になっている。 ヒラリー勝利の流れが変わったとする噂が流れ始めたのは2016年2月10日。この日、ヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問し、ウラジミル・プーチン露大統領と会談している。ドナルド・トランプが注目されるようになるのはその後だ。 その一方、3月16日にウィキリークスがヒラリー・クリントンの電子メールを公表、その中にはバーニー・サンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう民主党の幹部に求めるもの、民主党幹部たちが2015年5月26日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆するものもあった。こうした情報はサンダースを支持していた人びとを怒らせることになる。 オバマ政権で副大統領を務めていたジョー・バイデンはオバマと同じようにロシアとの関係を悪化させ、軍事的な緊張を高めた。2016年の大統領政権でヒラリーが勝利していたならオバマやバイデンと同じようにロシアとの軍事的な緊張を高めていただろう。もっとも、トランプもネオコンの好戦的な政策を変えることはできなかった。 トランプは今回、エリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツというシオニストを要職につけた。トランプがイスラエルと親密な関係にあることは否定できない。そこで注目されているのがマスクの動きだ。 トランプが大統領選挙で勝利した3日後、FBIはイラン系アメリカ人のファルハド・シャケリの話を発表した。ファルハド・シャケリがイランの革命防衛隊に指示されてトランプを暗殺しようと計画していたというのだが、ラリー・ジョンソンによると、この話はCIAの工作である可能性が高い。 シャケリは2019年にスリランカで逮捕された。92キロのヘロインを運ぼうとしていたのだが、この逮捕にはアメリカのDEAが協力、その後DEAはシャケリを情報提供者として採用、シャケリをイランの情報機関員だとする話に信憑性を持たせるため、彼をイランに移住させ、職を得るよう指示したという。シャケリの話を利用し、トランプが大統領に就任する前にイランを攻撃しようとしていた疑いが持たれている。 このストーリーはジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された際に使われたシナリオに似ている。当時、軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃を計画、それを正当化するため、ソ連やキューバが暗殺の黒幕だとする話が流されていた。 シャケリの訴追が発表された後、マスクをイランの国連大使と会談させたのは、イランと間接的な協議しか行わなかったバイデン政権と対照的だ。マスクの派遣は好戦派のシナリオを潰すことが目的で、それは成功したのではないかと言われている。 少なからぬシオニストを抱えたトランプ次期大統領はイスラエルを支援すると見られているが、マスクの動きに関する分析が正しいなら、和平に向かう可能性もある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.17
アゾフ海に面したマリウポリは戦略上、重要な港湾都市だ。2014年2月にバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターでキエフを制圧した後、ネオ・ナチ政権は戦車部隊をマリウポリに突入させて建造物を破壊、住民を殺傷している。その様子を撮影した映像を住民が世界に発信していた。 その後、マリウポリはクーデター軍に占領され、少なからぬ住民がロシアなどへ避難し、残った住民の一部はクーデター軍に拘束された。住民が避難したことから空いたスペースに親欧米派が多い西部から入植したが、クーデター体制が崩壊状態になったこともあり、避難していた住民の約30%が戻ったと伝えられている。 クーデターの後、4月12日にCIA長官だったジョン・ブレナンがキエフを極秘訪問、14日にはクーデター政権の大統領代行が東部や南部の制圧作戦を承認し、22日には副大統領だったジョー・バイデンもキエフを訪問、その直後から軍事力の行使へ急速に傾斜していった。そのタイミングでオデッサ攻撃についての会議が開かれたという。 ここにきてイスラエルのフーリガンがアムステルダムで乱暴狼藉を働いて問題になっているが、2014年5月2日にはウクライナ南部の港湾都市であるオデッサでもサッカー・ファンの暴力が引き金になって虐殺事件が起こっている。 その日の午前8時にフーリガンが列車で到着、赤いテープを腕に巻いた一団(UNA-UNSOだと言われている)が襲撃して挑発し、反クーデター派の住民が集まっていた広場へ誘導した。 広場に集まっていた住民は右派セクターが襲撃してくるので労働組合会館へ避難するように説得され、女性や子どもを中心に住民は建物の中へ逃げ込むのだが、その建物の中でネオ・ナチのグループは住民をそこで撲殺、さらに火を放って焼き殺した。皆殺しにするため、屋上へ通じるドアはロックされていたとも言われている。 このとき50名近くの住民が殺されたと伝えられているが、これは地上階で確認された死体の数にすぎず、地下室で惨殺された人を加えると120名から130名になると現地では言われていた。そして5月9日、住民が第2次世界大戦でドイツに勝利したことを祝っていたマリウポリにクーデター政権は戦車を突入させ、住民を殺し始めたのである。 オバマ政権はクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのだが、マリウポリやオデッサを含む東部や南部はヤヌコビッチの支持基盤で、2010年の大統領選挙では有権者の7割がヤヌコビッチに投票していた。 クーデター直後、ウクライナでは軍人や治安機関メンバーの約7割は新体制を拒否、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱したと伝えられている。離脱した軍人やメンバーの一部は東部ドンバス(ドネツクやルガンスク)の反クーデター軍に合流したとも伝えられている。 クーデターの状況をいち早く掴んだクリミアでは3月16日にロシアとの統合を求める住民投票を実施、80%以上の住民が参加した投票の結果、95%以上が加盟に賛成した。 クリミアは黒海に突き出た半島で、セバストポリは黒海艦隊の拠点。ロシアはこの拠点を確保するため、1997年にウクライナと条約を結び、基地の使用と2万5000名までのロシア兵駐留が認められていた。この条約に基づき、クーデター当時には1万6000名のロシア軍が実際に駐留していたのだが、ウクライナ軍の約9割が反クーデターだったことから、ロシア軍の存在には関係なく、クーデター政権はクリミアを制圧できなかった。 オデッサと同じで、戦略的に重要なマリウポリはネオ・ナチが制圧したのだが、2022年2月24日にロシア軍はウクライナに対する軍事作戦を開始、地下があった都市のひとつ、マリウポリを解放する。 マリウポリのほか、ソレダル、マリーインカ、そしてアブディフカにも地下要塞が存在、それらを結ぶ要塞線がドンバス周辺に2014年から8年かけて築かれた。 キエフ政権が送り込んだ親衛隊が敗走した後、人質になっていた住民が脱出、外部のジャーナリストと接触できるようになった。そうした住民はマリウポリにおける親衛隊の残虐行為を証言、映像をツイッターに載せていた人もいた。その人のアカウントをツイッターは削除したが、削除しきれていない。(例えばココやココ) その後も脱出した市民の声が伝えられている。現地で取材していいる記者がいるからで、その中にはフランスの有力メディアTF1やRFIのほか、ロシアやイタリア人の記者もいたという。ヨーロッパではそうしたジャーナリストに対する弾圧が続いている。 マリウポリにある産婦人科病院を3月9日に破壊したのはロシア軍だという話を西側の有力メディアは広げていたが、そうした「報道」でアイコン的に使われたマリアナ・ビシェイエルスカヤはその後、報道の裏側について語っている。 彼女は3月6日、市内で最も近代的な産婦人科病院へ入院したが、間もなくウクライナ軍が病院を完全に占拠、患者やスタッフは追い出されてしまう。彼女は近くの小さな産院へ移動した。最初に病院には大きな太陽パネルが設置され、電気を使うことができたので、それが目的だろうと彼女は推測している。 そして9日に大きな爆発が2度あり、爆風で彼女も怪我をした。2度目の爆発があった後、地下室へ避難するが、その時にヘルメットを被った兵士のような人物が近づいてきた。のちにAPの記者だとわかる。そこから記者は彼女に密着して撮影を始めた。彼女は「何が起こったのかわからない」が、「空爆はなかった」と話したという。 病院についてはオンライン新聞の「レンタ・ル」もマリウポリから脱出した別の人物から同じ証言を得ている。その記事が掲載されたのは現地時間で3月8日午前0時1分。マリウポリからの避難民を取材したのだが、その避難民によると、2月28日に制服を着た兵士が問題の産婦人科病院へやってきて、全ての鍵を閉め、病院のスタッフを追い払って銃撃ポイントを作ったとしている。 イギリスのBBCは3月17日、ロシア軍が16日にマリウポリの劇場を空爆したと伝えたが、それを伝えたオリシア・キミアックは広告の専門家だ。マリウポリから脱出した住民はカメラの前で、劇場を破壊したのは親衛隊だと語っている。 アゾフスタル製鉄所から脱出したナタリア・ウスマノバの証言をシュピーゲル誌は3分間の映像付きで5月2日に伝えたが、すぐに削除してしまった。親衛隊の残虐な行為を告発、ロシアへ避難し、戻る場所はドネツクしかないとし、ウクライナを拒否する発言が含まれていたからだ。 シュピーゲル誌はこの映像をロイターから入手したとしているが、ロイターが流した映像は編集で1分間に短縮され、アメリカのジョー・バイデン政権やウクライナのゼレンスキー政権にとって都合の悪い部分が削除されていた。 親衛隊に占領されていた地域から脱出した住民はウスマノバと同じように親衛隊の残虐な行為を非難、ウクライナ軍の兵士も親衛隊を批判している。こうした証言を西側の有力メディアは隠していた。 こうした虐殺の後もクーデター軍はドンバスの住宅街を攻撃、約8年間に住民1万4000人が殺したと言われている。 クーデター軍を恐れて多くのウクライナ人がロシアへ避難、その中にも勿論子どももいたのだが、ICC(国際刑事裁判所)は子どもをウクライナから「強制移住」させたとしてロシアのウラジミル・プーチン大統領と子どもの権利オンブズマンであるマリア・リボバ-ベロバに対する逮捕令状を発行している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.16
情報を不特定多数の人びとへ伝える手段の発達には情報操作という闇の側面もある。こうしたことはマスメディアが登場した当時からあっただろうが、1970年代後半から闇の部分が急速に広がっていることも確かだ。 その闇の側面の一端をアムステルダムでの出来事は明らかにした。アムステルダムでは11月7日にサッカーの試合、マッカビ・テルアビブ対アヤックスが開催されたのだが、イスラエルから来たフーリガンが市街で乱暴狼藉を働き、反撃された。フーリガンは地元住民の家と思われる建物に飾られていたパレスチナ国旗を引きずり下ろした上で引き裂き、燃やし、通りかかったタクシーを襲撃、アムステルダムの市民と衝突したのだ。 それを西側の政府や有力メディアは正しく伝えない。例えば、オランダのディック・シューフ首相は「容認できない反ユダヤ主義の攻撃」だと主張している。また同国のデービッド・ファン・ウィール安全保障相は、例によって証拠を示さず、人びとがユダヤ人だということを理由に攻撃され、脅迫されたのは事実だ主張した。アメリカのジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官は公式声明で、この暴力行為の爆発は「反ユダヤ主義的」だと直ちに宣言している。 事件直後、イギリスのスカイ・ニュースはマッカビ・テルアビブのフーリガンが襲撃したことを伝え、パレスチナの旗を引き裂く様子を流していたのだが、「スカイニュースのバランスと公平性の基準を満たしていなかった」として再編集、視聴者がイスラエルの暴徒に同情的するような内容へ変えられている。 また「マッカビのファンが地元住民を攻撃しているのが見られ、パトカーが通り過ぎるのが見られる」という説明は削除され、「ソーシャルメディアに投稿された動画には、フードをかぶった大勢の男たちが黒い服を着て通りを走り、人々を無差別に殴っている様子が映っている」というように変更され、その夜の出来事と西側諸国の政治家がどのように反応したかの要約もカットされた。 こうした嘘を暴いたいのは市民にほかならない。そうしたひとりが10代の少年ユーチューバー。別の目撃者も画像と共にインターネットで実際に何があったのかを証言している。西側世界のプロパガンダ機関に市民が立ち向かっている構図だ。 アメリカでは第2次世界大戦の後、情報を操作するためのプロジェクト「モッキンバード」がスタートしたと言われている。ジャーナリストのデボラ・デイビスによると、プロジェクトの中心にいたのはワシントン・ポスト紙の社主を務め、戦争中は陸軍の情報部に所属していたフィリップ・グラハム、大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、破壊工作を担当する秘密機関OPCの局長でダレスの側近だったフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) この4名は金融界との関係が深い。ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士であり、ヘルムズの祖父であるゲイツ・マクガラーは国際的な投資家で、BIS(国際決済銀行)理事会の初代議長、フィリップ・グラハムの妻、キャサリンの父、ユージン・メイヤーは世界銀行グループの初代総裁で、FRB(連邦準備制度理事会)の議長も務めた。 メイヤーは1933年に競売でワシントン・ポストという倒産会社を競り落とし、自分自身の人脈を利用してこの新聞社を「一流紙」と呼ばれるように作り上げた。 フィリップはキャサリーンと離婚して再婚し、ワシントン・ポスト紙を自分ひとりで経営すると友人に話していたが、1963年6月に精神病院へ入院、8月に自殺する。新聞社はキャサリンが引き継いだ。フィリップと親しくしていたジョン・F・ケネディが暗殺されたのはその3カ月後のことだ。 1970年代の半ばにアメリカの議会では情報機関の秘密工作に対する調査が進められたが、それに対抗して情報機関やその後ろ盾である私的権力は情報統制を強化、メディアの集中支配を可能にするために規制を緩和、今では有力メディアの大半を少数のグループが支配している。 2019年にはCOMCAST(NBCなど)、ディズニー(ABC、FOXなど)、CPB(NPR、PBSなど)、Verizon(Yahooニュース、ハッフィントン・ポスト)、ナショナル・アミューズメンツ(VIACOM、CBS、MTVなど)、AT&T(CNN、TIME、ワーナー・ブラザーズなど)、グーグル、ニューズ・コープ(FOXニュース、ウォール・ストリート・ジャーナルなど)というようになっている。 日本でも1980年代にマスコミの統制が強化された。その直前、毎日新聞の西山太吉記者は沖縄返還協定の背後に密約が存在する事実をつかんで報道するのだが、ライバルのメディアは何者かに操られているかのように情報の収集方法を問題にし、密約自体は曖昧なまま幕引きになった。その出来事で毎日新聞は攻撃の矢面に立たされて経営が悪化している。日米支配システムのタブーに触れると巨大メディアも潰れてしまうことが示されたとも言える。 また、1987年5月には朝日新聞の阪神支局が散弾銃を持った人物に襲われ、ひとりが射殺され、別のひとりが重傷を負った。この襲撃事件で縮み上がったマスコミ関係者は少なくない。 そして1991年。「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する講演会の冒頭、むのたけじは「ジャーナリズムはとうにくたばった」と発言した。(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.15
シリアのアル・マシア丘の頂上にあるレーダー施設がイスラエル軍から2度の攻撃を受けた11月9日、ロシア国防省は同国の航空宇宙軍とシリアの空軍がシリア領内で合同演習を実施したと発表した。 11月11日にアメリカ中央軍はシリア領内の標的に対して攻撃を実施したことを明らかにし、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)で報道官を務めているヤヒヤ・サリーは11月12日、彼らはアラビア海でアメリカ海軍の空母「エイブラハム・リンカーン」をミサイルで攻撃したと主張している。ガザやレバノンで住民が虐殺しているイスラエルをイエメンは攻撃、そのイスラエルを支援しているアメリカの軍艦を攻撃したことになる。 11月13日にはロシア大統領の中東担当特使アレクサンダー・ラブレンチェフはイスラエルに対し、シリアの基地付近への攻撃を避けるように要求したと語った。 ドナルド・トランプはジョー・バイデンやカマラ・ハリスと同じようにイスラエルと緊密な関係にあり、次期政権の要職にシオニストを配置すると見られている。 中でも注目されているのはエリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツで、親イスラエルの下院議員であるステファニックは国連大使のポストが提示され、国務長官になると言われているルビオ上院議員もシオニスト。国家安全保障補佐官に任命されると言われているウォルツは陸軍のグリーンベレーに所属していた経歴の持ち主で、好戦的なシオニストだ。 トランプを資金面から支えていたシェルドン・アデルソンはユダヤ系の富豪で、アメリカのラスベガス(ネバダ州)、ベスレヘム(ペンシルベニア州)、さらにマカオ(中国)、マリナ湾(シンガポール)でカジノを経営、日本にもカジノを作らせるように要求していた。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とも親しく、2013年にはイランを核攻撃で脅すべきだと語っていた。2021年1月11日に非ホジキン・リンパ腫で死亡、遺体はイスラエルに埋葬されたが、アデルソンの人脈は今も生きている。 大統領選挙でドナルド・トランプの勝利が確定した後、イスラエルはこれまで以上に好戦的な姿勢を見せ、ロシア軍のシリアにおける拠点とされるフメイミム空軍基地の近くにある倉庫を空爆、ロシアを威嚇、あるいは挑発している。これまでロシアはアメリカやイスラエルとの関係を配慮してシリアやイランに対する支援を抑制してきたが、それを逆手に取っている。 これまでアメリカの外交や安全保障分野の政策は基本的にシオニストが取り仕切ってきた。トランプ政権も例外ではないだろうが、アメリカやイスラエルの軍事力や経済力の優位が失われた現在、そうしたこれまでの仕組みが機能しなくなっている。イスラエルも現状を打破するためにロシアを頼るかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.14
ドナルド・トランプはホワイトハウスから新自由主義の信奉者を排除し、1973年頃のアメリカを復活させようとしていると言われているのだが、そうした話に反することも行われている。 トランプが嫌っているというこの経済イデオロギーを広めたのはミルトン・フリードマンやフリードリッヒ・フォン・ハイエク。一部の私的権力へ富を集中させることになるが、必然的に貧富の差が拡大、国は疲弊する。 ハイエクは1929年にアメリカの株式相場が暴落した後、1930年代に私的な投資を推進するべきだと主張、政府の介入を主張するジョン・メイナード・ケインズと衝突した学者だ。ハイエクの教え子にはデイビッド・ロックフェラーも含まれている。 フリードマンは1962年に出版された『資本主義と自由』の中で、企業の利益追求を制限する試みは「全体主義」へ通じていると主張、70年9月にはニューヨーク・タイムズ・マガジンで企業の経営者は社会的な責任を無視するべきだとしていた。この政策を推進すれば富はシステム上優位な立場にある一部の人びとに富が集中、政府を上回る力を持たせることになる。 1933年3月から45年4月までアメリカ大統領を務めたフランクリン・ルーズベルトは1938年4月、人びとが容認する私的権力が民主主義国家そのものより強くなると民主主義国家の自由は危うくなり、その本質はファシズムだと主張している。新自由主義はファシズムの別名だと言えるだろう。この経済イデオロギーはネオコン(新保守)と呼ばれる政治イデオロギーと結びついている。 ネオコンはシオニストの一派で、好戦的だ。ジェラルド・フォードが大統領だった1970年代に台頭した。フォードはリチャード・ニクソン大統領が失脚した後、1974年8月に副大統領から昇格した人物だ。 ネオコンが台頭する前からシオニストはアメリカの外交や安全保障分野を仕切っていた。シオニストと対立したジョン・F・ケネディ大統領も選挙期間中は慣例に従う姿勢を見せていた。 シオニストとユダヤ人を混同する人が少なくないが、シオニズムは16世紀の後半、エリザベス1世が統治するイギリスで広がったキリスト教のイデオロギー。その当時、アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物が支配層の中に現れ、「ユダヤ人の国」を作らなければならないと信じるグループが現れた。ブリティッシュ・イスラエル主義だ。このカルトにはユダヤ教のエリートも加わったものの、一般のユダヤ教徒からは相手いされなかったようだ。 こうした話を信じた人の中には、スチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)、そしてオリヴァー・クロムウェルの周辺も含まれていた。クロムウェルは1657年にユダヤ人がイングランドへ戻ることを認めている。こうした動くと連動する形でオカルトが支配層の内部で広がっていく。 イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査している。イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) シオニズムという用語はナータン・ビルンバウムなる人物が1893年に初めて使ったとされているが、近代シオニズムの創設者とされているのは1896年に『ユダヤ人国家』を出版したセオドール・ヘルツル。ユダヤ教に興味はなかったとされている。 ユーラシア大陸の周辺を海軍力で支配、内陸部を締め上げるという戦略を立てていたイギリスにとってスエズ運河は重要な意味を持つ。その運河近くにイギリスがサウジアラビアとイスラエルを作ることになる。 イギリス外務省アラブ局はエージェントを後のサウジアラビア国王でワッハーブ派のイブン・サウドに接触させ、1916年6月にアラブ人を扇動して反乱を引き起こした。トーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」もその部署に所属していた。オスマン帝国を解体し、中東を支配することが目的だ。 ローレンスが接触していたフセイン・イブン・アリにイギリスのエジプト駐在弁務官だったヘンリー・マクマホンは書簡を出し、その中でイギリスはアラブ人居住地の独立を支持すると約束した。フセイン・マクマホン協定である。このイブン・アリを追い出したイブン・サウドを中心として1932年に作られた国がサウジアラビアにほかならない。 その一方、イギリスのアーサー・バルフォア外相はロスチャイルド卿に宛てに出した書簡の中で「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と約束している。1917年11月のことだ。 また、イギリスとフランスは石油資源に目をつけ、サイクス・ピコ協定を1916年5月に結んでいる。フランスのフランソワ・ジョルジュ・ピコとイギリスのマーク・サイクスが中心的な役割を果たしたことからそう呼ばれている。 イギリスは1919年、石油利権を手に入れるためにペルシャを保護国にし、その2年後に陸軍の将校だったレザー・ハーンがテヘランを占領する。そして1925年にカージャール朝を廃して「レザー・シャー・パーレビ」を名乗るようになった。 第2次世界大戦後、そのイランは独立の道を歩み始め、1951年4月には議会での指名を受けて国王が首相に任命したムハマド・モサデクがAIOC(アングロ・イラニアン石油、後のBP)の国有化を決める。それはイギリスにとって死活問題だったことからアメリカに頼み込み、クーデターを実行することになる。 米英やその属国がイスラエルと緊密な関係にあるのは、こうした歴史的な背景があるからだ。「ユダヤ人が世界を支配している」という見方は正しくない。「ユダヤ人」は欧米の私的権力、古い表現を使うならば帝国主義者がカモフラージュのために使ってきたと言うべきだ。 ユダヤ系シオニストはそうした帝国主義者の手先として活動してきたのだが、ここにきて問題が起こっているように見える。帝国主義者の手先だったイスラエル人の一部が暴走し始めている。 トランプは新自由主義や新保守主義者を排除するとしているが、アメリカの有力メディアはシオニストが政府に入ると伝えている。中でも注目されているのはエリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツ。 ステファニックは親イスラエルの下院議員で、国連大使のポストが提示され、受け入れたとされている。国務長官になると言われているルビオ上院議員はキューバ系アメリカ人で、シオニスト。出世欲はあるものの、外交面の能力はないとみなされている。ロシアや中国に対して好戦的な姿勢を見せてきたが、「風見鶏」とも言われている。国家安全保障補佐官に任命されると言われているウォルツは陸軍のグリーンベレーに所属していた経歴の持ち主で、好戦的。シオニストでもある。 トランプもシオニストから離れられないようだが、そのシオニストが作ったイスラエルからアムステルダムへ乗り込んだフーリガンは乱暴狼藉を働いた。有力メディアはそのフーリガンを被害者だと宣伝しているが、その嘘は現地の少年ユーチューバー、ベンダーが撮影した映像でもわかる。しかもフーリガンは何者かの指揮の下で行動、警官隊も連携しているように見える。フーリガンの一行にイスラエルの情報機関、モサドが同行していたことをエルサレム・ポストが紹介していたことは本ブログでも紹介した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.13
次期アメリカ大統領に選ばれたドナルド・トランプが11月7日にロシアのウラジミル・プーチン大統領と電話でウクライナにおける戦争について話し合ったとワシントン・ポスト紙が10日に報じたが、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官はそれを否定、トランプの広報担当スティーブン・チュンもこのやりとりを認めていない。またウクライナ外務省は、キエフがトランプとプーチン大統領の電話会談について事前に知らされていたという報道は誤りだと述べた。 ワシントン・ポスト紙を含む西側の有力メディアは支配層が人びとを操る道具にすぎないことは明確になっている。今回の記事を書いた記者は「ロシアゲート」なるフィクションを宣伝していたひとりでもある。有力メディアは人びとに幻影を見せ、支配層が望む方向へ国を進めるのが役割であり、ワシントン・ポスト紙が事実を伝えると考えることはできない。 トランプがプーチンに対してウクライナ戦争をエスカレートさせないよう助言、アメリカがヨーロッパにかなりの軍事力を有していることを思い起こさせたと同紙は伝えているのだが、現在、ウクライナ軍は戦死者の山を築きながら後退している状況。ロシア軍は進撃のスピードを速めていると伝えられている。またロシア軍と戦うだけの戦力はヨーロッパに配備されていない。「エスカレート」なる表現が入り込む余地はないのが実態。 ウクライナで戦争を始めたネオコンは「膠着状態」を演出したかったのか、8月6日に1万人から3万人の兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻した。国境警備隊しか配置されていないクルスクを狙ったのかもしれないが、ロシア軍はすぐに航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けている。増援部隊を投入しようとしたとも言われているが、成功しなかったようだ。 この軍事作戦には虎の子の「精鋭部隊」が投入されているが、兵士の数が圧倒的に足りないため、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵が参加、東アジアからもウクライナ側へ兵士が派遣されているとする噂もある。 この作戦でウクライナ側はすでに3万1000人以上が死亡したとも言われている。戦死者の遺体交換でロシアは563体をウクライナ側へ引き渡し、ウクライナは37体をロシア側に引き渡したとも言われ、こうしたことからウクライナ軍の戦死者数はロシア側の10倍以上だと見られている。ネオコンはウクライナ兵に「玉砕攻撃」を繰り返させ、ロシア兵の死傷者を増やそうとしたようだが、成功したとは言えない。 プーチンはアメリカ側と話し合う用意があるとしているが、西側に対する信頼を失っているロシア政府は軍事力で解決するしかないと覚悟しているはずで、米英が得意とする「幻術」は通用しない。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーはイギリスの情報機関、イギリスの対外情報機関SIS(通称MI-6)のエージェントで、MI6長官のリチャード・ムーアがハンドラーとして操っているとスコット・リッターは自身が作成した2部構成のドキュメント「エージェント、ゼレンスキー」の中で指摘した。(パート1、パート2)イギリス、あるいはシティは厳しい状況に陥っている。 リッターはアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官。調査にはフランスの元情報機関員エリック・デネーゼが協力している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.12
ロシア国防省は11月9日、同国の航空宇宙軍とシリアの空軍がシリア領内で合同演習を実施したと発表した。シリア北西部のグレーター・イドリブ地域でテロリスト集団が政府軍に対する大規模攻撃を開始する準備を進めていると伝えられているが、その対策かもしれない。11月9日にはシリアのアル・マシア丘の頂上にあるレーダー施設がイスラエル軍から2度の攻撃を受けたともいう。 また、アメリカやイギリスなど西側諸国を後ろ盾とするイスラエルがガザやレバノンで住民を虐殺するだけでなく、イランやシリアに対する攻撃も激化させて中東の軍事的な緊張を高めていることも意識している可能性が高い。 イスラエル軍は4月1日にダマスカスのイラン領事館を空爆し、IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊と言われているコッズのモハマド・レザー・ザヘディ上級司令官と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害した。7月31日にはテヘランでハマスのイスマイル・ハニヤが暗殺されたが、イスラエルが実行したと信じられている。 8月5日にはロシアの安全保障会議で書記を務めるセルゲイ・ショイグがイランを訪問してマスード・ペゼシュキアン大統領らと会談。ショイグはイスラエルに対する報復についてイラン側と話し合ったのだろうと見られている。イスラエルは「一線」を超えることでアメリカを戦争へ引き込もうとしていると言われている。 次期大統領のドナルド・トランプは2017年1月にもアメリカ大統領に就任している。その3カ月後、アメリカ海軍の駆逐艦2隻、ポーターとロスは地中海から巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したが、その6割が無力化されてしまった。 ロシア製防空システムの能力に興味を持ったのか、その年の10月5日にサウジアラビアのサルマン国王はロシアを訪問、ロシア製防空システムS-400を含む兵器/武器の購入を打診したと言われているが、アメリカの圧力で実現しなかったという。 2018年4月にトランプ政権はイギリスやフランスを巻き込み、100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射したが、今度は7割が無力化されてしまう。ECM(電子対抗手段)の能力が注目されているが、前年には配備されていなかった短距離用の防空システムのパーンツィリ-S1が効果的だったとも言われている。 この当時、ロシアはシリアやイランへの防空システム供与に慎重だった。アメリカやイスラエルからの圧力があったと言われている。シリアに配備された新しいタイプの防空システムは基本的にロシア軍の基地を守ることが目的だったようだ。 しかし、欧米の支援を受けたイスラエルの攻撃が激しくなり、イランとイスラエルとの戦争が勃発する危険性が高まる中、ロシアはこれまで供与してこなかった兵器も渡し始めた可能性がある。 イラクにしろリビアにしろシリアにしろ、戦争に巻き込んだのはアメリカにほかならない。イスラエルへ供給されている武器の69%はアメリカから、そして30%はドイツから。輸送の拠点はイギリスで、キプロス経由で運ばれている。 中東などでアメリカが侵略戦争を本格化させたのは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてから。 ジョージ・W・ブッシュ政権は従属国を従えて2003年3月にイラクを先制攻撃したが、この軍事作戦は思惑通りに進まず、09年1月にアメリカ大統領となったバラク・オバマはムスリム同胞団を中心とする武装集団を編成して代理戦争を始めた。この戦術はオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に考えたものだ。 オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認、北アフリカからシリアにかけての地中海沿岸国で体制転覆作戦を進め始めた。いわゆる「アラブの春」だ。 オバマ政権は2011年2月にリビア、同年3月にはシリアを攻撃し始めているが、その作戦ではムスリム同胞団のほかサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とするアル・カイダ系武装集団が投入された。リビアはその年の10月にムアンマル・アル・カダフィ体制を倒し、カダフィ本人を惨殺したが、シリアのバシャール・アル・アサド政権は倒されていない。 アサド政権を倒せないため、オバマ政権はリビアから武器弾薬や戦闘員を移動させただけでなく、新たな戦闘集団を編成している。イラクのサダム・フセイン政権時代に軍人だった人びとが参加したと言われている。 そうした動きを危険だと判断したのがDIA。オバマ政権が支援している反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと名称が変わっても実態は同じだと指摘している。その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。 DIAは報告書の中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告、それがダーイッシュ(IS、ISISなどとも表記)という形で現実になった。2014年1月にダーイッシュはファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧する。 その後、この武装集団は残虐さを演出、アメリカ/NATOの介入を誘う。2015年9月30日にロシア軍はシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していくのだが、本格的な介入は行ってこなかった。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.11
アメリカの大統領選挙で勝利したドナルド・トランプは選挙期間中、ウクライナでの戦闘を終わらせると約束していた。この公約を実現できるのかどうかを人びとは注目しているが、トランプも万能ではない。 ウクライナでの戦闘は1992年2月、アメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)をネオコンが作成したところから始まった。 この計画に基づいてアメリカはドイツや日本を自分たちの戦争マシーンに組み込む一方、旧ソ連圏を解体しはじめる。まずユーゴスラビアの解体を進め、NATOは99年3月にユーゴスラビアを先制攻撃して破壊している。世界制覇戦争が本格化するのは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてからだ。 アメリカが旧ソ連圏の解体を進め、ウクライナの独立を認める。そこでソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された東部や南部の住民はウクライナからの独立や自治権獲得を望むが、これを西側は認めないのだが、それでもウクライナでは西側にもロシアにも与しないという方針を打ち出した。 しかし、ロシア征服の鍵を握るウクライナを制圧したいアメリカの支配層は中立を認めようとしない。2004年の大統領選挙で中立を掲げるビクトル・ヤヌコビッチが勝利すると、アメリカは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれたクーデターを実行、西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。ユシチェンコ政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買う。 2009年1月にバラク・オバマが大統領に就任、その翌年にはウクライナでも大統領選挙があった。その選挙で再びヤヌコビッチが勝利。そこでオバマ政権は2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にした。 この戦争を主導したのはネオコンで、ホワイトハウスの中では副大統領だったジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、そして副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンが中心的な存在だったとされている。 しかし、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデタを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは内戦が勃発したのである。こうした経緯を無視してウクライナ情勢を語ることはできない。 2014年にネオ・ナチを主体とするクーデター政権が成立しているのだが、軍や治安機関の約7割は新体制を拒否、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱、一部は東部ドンバス(ドネツクやルガンスク)の反クーデター軍に合流したと伝えられている。そのため、当初、ドンバスでの戦闘は反クーデター軍が優勢だった。 そこでロシアと戦う態勢を整えるための時間が必要になり、出てきたのがミンスク合意だ。これをアメリカなど西側諸国は時間稼ぎに使い、8年かけて武器弾薬を供与、兵士を育成、訓練、ドンバス周辺に地下要塞をつなぐ要塞線を構築した。 2021年1月にバイデンが大統領に就任、ロシアのウラジミル・プーチン大統領を人殺し呼ばわりするだけでなく、ロシアに対する軍事的な挑発を始めた。バイデン大統領の下でそうした好戦的な政策を推進していたのは国家安全保障補佐官に就任したサリバン、国務次官になったヌランド、そしてアントニー・ブリンケン国務長官だろう。 2022年に入るとウクライナのクーデター体制はドンバス周辺に部隊を集め、砲撃を活発化させた。そうした状況を見て、少なからぬ人が大規模な軍事作戦が始まると推測していた。そうした時、ロシアはウクライナに対する攻撃を始めたのだ。 こうしたアメリカの好戦派は自国の軍事力や生産能力を過大評価、ロシアの軍事力や生産能力を過小評価し、ロシアと戦争しても簡単に勝てると信じていたようだが、その背景には優生思想、あるいは信仰があるのかもしれない。 アメリカをはじめとする西側諸国はウクライナ人とロシア人を戦わせて「漁夫の利」を得ようとしていた、あるいは共倒れを目論んでいたかもしれないのだが、2022年以降、ロシアの優位は変わらないまま推移し、すでにウクライナ軍は降伏するか全滅するしかない状況だ。 ここにきて西側の有力メディアは「朝鮮兵話」を流しているが、これは西側の軍隊を入れる布石だとする見方もある。そうしたことをロシア側が認めるとは思えず、アメリカ軍とロシア軍が直接衝突することも考えられる。通常兵力では劣勢のアメリカ軍は核兵器を使うことになる可能性も否定できない。朝鮮兵の話を持ち出してきたブルース・W・ベネットはアメリカ国防総省系シンクタンクRANDの上級国際/防衛研究者である。 ロシア政府はウクライナの非武装化、非ナチ化、中立性の回復などを求めてきた。ソ連時代にロシアからウクライナへ一方的に割譲された地域のロシアへの返還も実現しようとするだろう。いかなる形でもNATOがウクライナへ入ることは許さないはずだが、西側の好戦派はロシア政府を甘く見て入ってくる可能性がある。核戦争で脅し続ければロシアは最終的に屈服するとネオコンは今でも信じているかもしれない。 ロシアが実現しようとしている目標の中で最も難しいのは非ナチ化だろう。ナチスはシティやウォール街、つまり米英金融資本から資金援助を受けていた。第2次世界大戦後はアメリカの政府機関に逃亡を助けられ、保護され、雇用され、後継者も育成されてきた。ウクライナでもナチスの後継者、いわゆるネオ・ナチが使われた。米英金融資本を中心とする西側の支配システムが存在している限り「非ナチ化」は不可能だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.10
アムステルダムで11月7日にサッカーの試合があった。イスラエルのマッカビ・テルアビブとオランダのアヤックスが対戦したのだが、その際にイスラエルのフーリガンが地元住民の家と思われる建物に飾られていたパレスチナ国旗を引きずり下ろして引き裂き、燃やすという挑発行為を繰り広げた。また通りかかったタクシーを襲撃、オランダのファンと衝突している。 これに関し、オランダの新聞が伝えた興味深い話をイスラエルのエルサレム・ポストが紹介している。オランダに遠征するマッカビ・テルアビブのチームにイスラエルの情報機関モサドのエージェントが帯同するとしているのだ。このチームはアラブ差別で知られ、アムステルダムで問題を起こすことは見通されていただろう。 11月6日から7日にかけてマッカビ・テルアビブのフーリガンはオランダ人の個人住宅からパレスチナの国旗を引き剥がし、タクシー運転手を襲撃、その様子は撮影され、インターネットで流されている。そうしたフーリガンにモサドのエージェントも混じっていた可能性が高い。 この暴動に関し、オランダのディック・シューフ首相は「容認できない反ユダヤ主義の攻撃」と呼び、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「アムステルダムのイスラエル市民に対する非常に暴力的な事件」と非難しているのだが、オランダを含む欧米諸国でもイスラエルに対する感情はさらに悪化、その怒りはユダヤ人全体に向けられる可能性もある。 ネタニヤフ政権は中東で戦乱を拡大させ、イランとの戦争にアメリカを引き摺り込もうとしているが、そうした政策はイスラム世界を刺激、イスラエルへの攻撃を招き、経済を破綻させている。その結果、イスララエルから脱出する人が増え始めた。脱出する先はヨーロッパやアメリカなどだが、そうした国々でイスラエルに対する怒りが膨らめば脱出先にはならなくなるだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】https://sakuraiharuhiko.substack.com/
2024.11.09
オランダのアムステルダムで11月7日にUEFA(欧州サッカー連盟)の試合があった。対戦したのはイスラエルのマッカビ・テルアビブとオランダのアヤックス。その際、イスラエルのフーリガンが地元住民の家と思われる建物に飾られていたパレスチナ国旗を引きずり下ろして引き裂き、燃やすという挑発行為を繰り広げ、通りかかったタクシーを襲撃し、オランドの若者とも衝突したと伝えられている。 パレスチナを支持するデモは禁止されていたが、現場で取材していた記者によると、衝突は数千人のマッカビ・テルアビブのファンがデモを組織したことから始まった。そうしたファンは試合前、スタジアムに向かいながら「IDF(イスラエル軍)にアラブ人をぶっ殺させてやれ」と叫び、子どもがいないガザには学校がないとも合唱していた。 そうした状況についてオランダのディック・シューフ首相は「容認できない反ユダヤ主義の攻撃」と呼ぶ一方、フーリガンによるオランダ国民への暴行については言及していない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「アムステルダムのイスラエル市民に対する非常に暴力的な事件」と非難、救援機を派遣すると発表した。 こうした人びとや西側の有力メディアはこの衝突を「ユダヤ人弾圧」と宣伝する材料に使い始めている。オランダ第二院の第1党で反イスラムの自由党を率いるヘルト・ウィルダースは今回の衝突を「ポグロム」であり「ユダヤ人狩り」だと表現している。 タグ付けでイメージを作り出そうとしているのだが、イスラエルは実際にパレスチナやレバノンで住民の大量虐殺を繰り広げてきた。これは戦争の巻き添えではなく、計画的。ネタニヤフ首相は昨年10月7日にハマスがイスラエルへ攻め込んだ後、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という旧約聖書の一節を引用している。神の命令として、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は天の下からアマレクの記憶を消し去れと書かれている。パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、歴史から彼らが存在したことを消し去るとネタニヤフは主張しているのだ。 また、サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれている。これこそがガザやレバノンでイスラエルが行っていることにほかならない。 ガザでは昨年10月7日から4万3469人がイスラエル軍に殺されたとされているが、瓦礫に埋もれ、カウントされていない死体は少なくとも数千あると推測する人もいる。ランセット誌が今年7月に掲載した論文によると、「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」。犠牲者の約4割は子どもであり、女性を含めると約7割に達する。イスラエルのフーリガンはこのことを歌ったと言える。 EU諸国の政府はイスラエルを支持、パレスチナ人虐殺を容認する姿勢を示したきたが、アラブ系の人びとだけでなく、一般の人びとのイスラエルに対する怒りは募っている。その怒りのエネルギーをイスラエルのフーリガンは刺激した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.09
今回のアメリカ大統領選挙で勝利したのはドナルド・トランプでもカマラ・ハリスでもなくネオコンだとする人がいる。トランプもハリスも外交や安全保障分野はネオコンの世界制覇戦略に従っているということだ。 ネオコンが表舞台に登場したのはジェラルド・フォードが大統領だった1970年代。デタント(緊張緩和)を打ち出したリチャード・ニクソン大統領はウォーターゲート事件で1974年8月に失脚し、副大統領を務めていたフォードが昇格したのだ。 大統領になったフォードはFBI長官だったJ・エドガー・フーバーと近く、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された後、リンドン・ジョンソン新大統領が設置した「ケネディ大統領暗殺に関する大統領委員会」のメンバーでもあった。 最高裁裁判長だったアール・ウォーレンを委員長に据え、メンバーにはフォード下院議員、ヘイル・ボッグス下院議員、リチャード・ラッセル上院議員、ジョン・クーバー上院議員、アレン・ダレス元CIA長官、ジョン・マックロイ元世界銀行総裁。主席法律顧問を務めたのはリー・ランキンだ。 言うまでもなくダレスはウォール街の弁護士で、大戦中から破壊活動を指揮、ケネディ大統領にCIA長官を辞めさせられた人物。マックロイはウォール街の大物で、大戦の後に世界銀行の総裁を経てドイツの高等弁務官を務め、ナチスの大物たちを守っている。委員会の中で唯一の専従はダレスだった。ダレスの側近で1966年6月から73年2月までCIA長官を務めたリチャード・ヘルムズによると、彼がダレスを委員にするように説得したのだという。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) フォード大統領はジョージ・H・W・ブッシュをCIA長官に、ドナルド・ラムズフェルドを国防長官に据え、ポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・パイプスもこの時に表舞台へ出た。ラムズフェルド、チェイニー、ウォルフォウィッツ、パイプスはネオコンと呼ばれる一派に属していた。 ブッシュの父親プレスコットは銀行の元幹部で、ウォール街時代にダレスと親しくしていた。そうしたこともあり、エール大学時代にジョージはCIAからリクルートされたと信じられている。 ネオコンには「元トロツキスト」が多いと言われている。トロツキストはレフ・トロツキーの理論を信奉する人びとだが、この人物は1917年の「二月革命」当時、ニューヨークに住み、メンシェビキのメンバーだった。 トロツキーは1917年3月にニューヨークを離れたが、途中で彼の乗った船がイギリス海軍に拿捕されてしまう。釈放されたのは4月のこと。ロシアへ着いたのは5月に入ってからだ。トロツキーがボルシェビキに加わるのはその後、十月革命の直前になってからである。 ボルシェビキの幹部も二月革命当時、革命の現場にはいなかった。刑務所に入れられていたか、ウラジミル・レーニンのようにスイスへ亡命していた。そのレーニンたちボルシェビキの幹部32名をドイツ外務省は列車でロシアへ運ぶ。当時、第1次世界大戦が始まっていたが、レーニンたちは即時停戦を主張していたからだ。ボルシェビキの幹部がロシアへ戻ったのは1917年4月のことだ。 アメリカのトロツキストで有名な人物のひとりはジェームズ・バーナム。1929年にニューヨーク大学の教授に就任、30年代の半ばからトロツキストだったとされているのだが、第2次世界大戦中にアメリカの戦時情報機関OSS(戦略事務局)入りし、大戦後にはジョージ・ケナンの推薦で極秘の破壊工作機関OPCへ参加したことも知られている。バーナムの周辺からネオコンへ流れた人がいるようだ。 しかし、ネオコンの思想的な支柱はシカゴ大学のレオ・ストラウス教授だとされている。この人物は17歳の頃にウラジミール・ジャボチンスキーのシオニスト運動へ接近、1932年にはロックフェラー財団の奨学金でフランスへ渡り、プラトンやアリストテレスの研究を始めた。 ストラウスは1937年にアメリカへ渡り、コロンビア大学の特別研究員になる。1944年には教授として受け入れられ、49年から73年までシカゴ大学で教えている。ストラウスと同じようにシカゴ大学の教授を務めたアルバート・ウォルステッターもネオコンを支えたひとりだ。 このネオコンの人脈を見ると、彼らの背後にはアメリカやイギリスの金融資本が存在、トランプもハリスも、つまり共和党も民主党も米英金融資本を中心とする私的権力に操られている。ファシズム、あるいは帝国主義と呼ぶべき体制だ。アメリカにおいて選挙は単なる儀式にすぎず、この国の体制を民主主義と呼ぶことはできない。 それにもかかわらずアメリカを「民主主義国」だと信じている人が少なくないのはそのように信じさせる強力な仕組みがあるからだ。教育で思考のベースが形成され、メディアや映画などでイメージが作られている。ハリウッドにはカバラの信者が巣食っているが、CIAはシナリオをチェックしていると言われている。 CIAの検閲基準に従っても支配システム内の犯罪、悪事を描くことは許されるが、あくまでも個人やグループによるとしなければならない。システム全体は健全で、最後にはそのシステムが犯罪や悪事を正すとしなければならないのだ。ハリウッドの外でも、ある政治勢力はダメだが別の政治勢力は良い、システム内の善玉が悪玉を処罰する、といった類の話は眉に唾をつけながら聞いた方が良い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.08
アメリカ大統領選でドナルド・トランプがカマラ・ハリスを破り、次期大統領に選ばれたようだ。トランプは2016年の選挙でも勝利しているが、その際には民主党だけでなくCIA、FBI、有力メディアから攻撃を受け、国家安全保障担当補佐官に選ばれたマイケル・フリン元DIA局長がホワイトハウスから追い出されている。 2009年1月から17年1月まで大統領を務めたバラク・オバマはロシアとの関係悪化に力を入れ、2010年8月にはPSD-11を承認してムスリム同胞団を利用して北アフリカからシリアにかけての地中海沿岸国で体制転覆作戦を進めた。いわゆる「アラブの春」だ。 シリアやリビアではムスリム同胞団のほかサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とするアル・カイダ系武装集団を投入、リビアでは体制転覆に成功、今では無法国家。シリアでは戦乱が続いている。 シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒せないため、リビアから武器弾薬や戦闘員を移動させるだけでなく、新たな戦闘集団を編成している。イラクのサダム・フセイン政権時代に軍人だった人びとが参加したと言われているが、その新戦闘集団をオバマ政権は支援した。 そうした動きを危険だと判断したのがDIA。オバマ政権が支援している反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと名称が変わっても実態は同じだと指摘している。その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。 DIAは報告書の中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告、それがダーイッシュ(IS、ISISなどとも表記)という形で現実になった。2014年1月にダーイッシュはファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧する。 その後、この武装集団は残虐さを演出、アメリカ/NATOの介入を誘うのだが、2015年9月にシリア政府はロシア政府に軍事介入を要請、ロシア軍がダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していった。 こうした経緯があるため、フリンはオバマ政権がダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団の後ろ盾だったことを熟知していた。武装集団を操っていたオバマ政権のネオコン、CIAなどはフリンが安全保障担当補佐官として活動することを嫌っていたはずだ。 今回、トランプは民主党だったロバート・ケネディ・ジュニアやタルシ・ガッバード元下院議員を要職につけると見られているが、このふたりを民主党幹部は恐れているだろう。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動の暗部、ロシアとの核戦争に向かった政策に関する情報が明るみに出ることも恐怖しているかもしれない。 しかし、トランプ政権が外交や安全保障分野の政策を大きく変更することはないと見られている。ウクライナでの戦闘を「現状維持」で終わらせることは不可能であり、トランプの人脈はガザやレバノンでの住民虐殺を支援している。イスラエルではレバノンへの軍事侵攻に慎重だったヨアブ・ガラント国防相が解任された。イスラエル政府は戦乱を望んでいるのだろうが、その先には破滅が待つ。ペルシャ湾岸の産油国はアメリカやイギリスの従属、イスラエルとの関係を強めてきたが、その政策を続ければ彼らも破滅する可能性が高い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.07
アメリカの時期大統領を決める選挙が実施される。民主党のカマラ・ハリスと共和党のドナルド・トランプの争いになるそうだ。ウクライナを舞台とした対ロシア戦争をハリスは推進しようとし、トランプは止めようとしていると言われているが、パレスチナでの住民虐殺に関しては両者に大差はない。皆殺しにしろということだ。 しかし、過去を振り返ると、どの政権も政策に大差はない。外交や安全保障分野の政策はシオニストが決めてきた。ジョン・F・ケネディ政権まではそれでもイスラエルに対して厳しい姿勢を示す大統領もいたのだが、ケネディが暗殺されて以降、そうしたことは無くなっていった。 フランクリン・ルーズベルト政権は反植民地、反ファシズムを掲げていたが、第2次世界大戦後、侵略、殺戮、破壊、略奪という帝国主義的な政策を継続してきた。ベトナム戦争のようにアメリカ軍が直接出てくることもあったが、傀儡軍を使ったクーデター、アル・カイダ系武装集団やネオ・ナチで編成された戦闘集団による侵略という手法が取られることが多い。 ウラジミル・プーチンに言わせると、アメリカではあらゆる政策が大統領ではなく「黒いスーツと青いネクタイの男たち」が決めている。 イギリスをはじめとするアングロ・サクソンの支配者は19世紀以来、侵略の最終目標をロシア征服においている。1941年6月にドイツが始めた「バルバロッサ作戦」でもそうだったが、ロシアへの突入はウクライナから始まる可能性が高い。 シオニストの一派であるネオコンは1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を作成した。 ウクライナで実施された2004年の大統領選挙で中立を掲げるビクトル・ヤヌコビッチが勝利すると、アメリカは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれたクーデターを実行、西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。 ユシチェンコ政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買い、2010年の大統領選挙では再びヤヌコビッチが勝利。そこでアメリカのバラク・オバマ政権は2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にしたわけだが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデタを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは内戦が勃発した。 アメリカ/NATOはその内戦をエスカレートさせ、ドンバスに対する本格的な軍事作戦を始めようとしていた2022年2月にロシアは機先を制してウクライナに対する攻撃を開始、その月のうちにキエフ側の敗北は決定的。そこでウォロディミル・ゼレンスキー政権は停戦交渉を開始、ロシア側とほぼ合意しているのだが、それをイギリスとアメリカ両政府が壊してしまった。彼らにとってウクライナはロシアをできるだけ疲弊させるための道具にすぎなかった。 アメリカ/NATOは兵器を供与、兵士を訓練、さらに傭兵や自国兵を送り込んできたが、限界に達している。これ以上続けるためにはアメリカ/NATOが前面に出てこなければならない状況だ。 そうした中、アメリカはジョージアとモルドバの支配を確たるものにしようとしている。ジョージアでは苦戦しているようだが、モルドバの選挙結果は反ロシア派が優勢。11月3日の投票ではハーバード大学ケネディ行政大学院を卒業した反ロシア派のマイア・サンドゥが大統領に選ばれた。 サンドゥに対抗する政党が分裂、投票率が54%にすぎない。投票率の低さは投票しにくい環境が作られていることもある。投票に向かう自動車で大規模な渋滞が発生している様子を撮影した映像も流れている。 モルドバの選挙は国外からの投票で左右されるのだが、「反EU、親ロシア」の有権者の投票をサンドゥ政権はブロックしているとする人もいる。ロシアにいるモルドバの有権者50万人のために設置された投票所の数は2カ所にすぎず、十分な数の投票用紙がなかった。反EU派の投票数を抑えたということだ。親ロシアのトランスニストリアには約45万人のモルドバ人がいるが、そこには投票所がない。勿論、西側諸国には十分な数の投票所が設けられた。 アメリカ支配層にとって都合の良い結果をもたらす選挙は何があっても「公正」であり、都合の悪い結果をもたらす選挙はどれだけ公正な仕組みでも「不正」だとされる。それが西側流の民主主義である。アメリカの選挙には事実上、選択肢がないと言う人もいる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.06
ドイツ連邦議会の有力議員、ノルベルト・レットゲンはアメリカの大統領選挙でドナルド・トランプが勝利することを懸念している。レットゲンはドイツがアメリカ軍に占領されている状態を受け入れている政治家で、トランプが勝利するとウクライナにおける戦争でロシアの勝利、つまりアメリカ/NATOの傀儡軍の敗北が決まり、西側諸国は分裂するとしている。 1941年6月にドイツはロシアに対する軍事侵攻作戦「バルバロッサ」を始めるが、最初に侵攻した国がウクライナにほかならない。米英の傀儡軍事組織であるNATOがウクライナを支配下に置くことは新たなバルバロッサ作戦の始まりにほかならず、それをロシアが容認するはずはなかったが、アメリカの外交や安全保障分野を支配しているシオニストはウクライナ制圧を目論む。 ソ連は1991年12月に消滅したが、その前、1990年にウクライナ議会はソ連からの独立を可決している。それに対し、ソ連時代に民意を無視してロシアからウクライナへ割譲されたクリミアでは1991年1月にウクライナからの独立を問う住民投票を実施、94%以上が賛成しているのだが、クリミア議会は住民の意思を無視してウクライナに統合されることを決めてしまった。クリミアと同じようにロシアからウクライナへ割譲された東部ドンバスでも独立や自治権の獲得を目指した。そうした事情を配慮して1990年代のウクライナでは中立を掲げている。 それを気に入らない西側は中立政策をやめさせ、欧米に従属するように要求するのだが、2004年の大統領選挙では東部や南部を支持基盤にし、中立政策を進めようとしていたビクトル・ヤヌコビッチが勝利。その結果を翻すため、アメリカは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれたクーデターを実行、西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。 ユシチェンコ政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買い、2010年の大統領選挙では再びヤヌコビッチが勝利。そこでアメリカのバラク・オバマ政権は2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にしたわけである。 このクーデターをヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部は拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは武装闘争を開始。軍や治安機関の約7割は新体制を拒否したと言われているが、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱したと伝えられている。東部や南部を制圧することは困難な状況だった。そこで西側はキエフ体制の戦力を増強するために必要な時間を稼ごうとする。そこでミンスク合意だ。 8年間に兵器を供給、兵士を訓練、地下要塞を中心とする要塞線を築き、2022年に入るとドンバス周辺に部隊を集中させ、大規模な軍事作戦を始める様相を見せた。のちにそうした作戦があったことを裏付ける文書が出てきている。 その作戦が始まる直前、ロシア軍は2月24日からウクライナに対する攻撃を始めた。ミサイルなどでドンバス周辺に集結していたウクライナ軍の部隊を壊滅させ、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を破壊し始める。これでロシア軍の勝利は確定的だった。 そこでイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットを仲介役として停戦交渉を開始、双方とも妥協して停戦の見通しが立ち、ベネットは3月5日にモスクワへ飛ぶ。彼はウラジミル・プーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功した。 その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会うのだが、その3月5日にSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。クーデター後、SBUはCIAの下部機関だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 こうした交渉を潰すため、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令し、4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓った。それ以降、西側はウクライナに対し、ロシアを疲弊させるために戦い続けさせてきた。「総玉砕」を求めたのだ。 ロシアとの戦争で欧米は簡単に勝てると思っていたようだが、戦力的に優位だった段階でも戦況はロシアが優勢で、ロシア側の態勢が整った2023年になるとウクライナの敗北は決定的だった。アメリカ・NATOは軍事支援を強化したが、その流れを変えることはできず、ウクライナは兵士も兵器も足りなくなり、アメリカ/NATOの兵器庫も空。最近ではアメリカやその従属国からのウクライナで戦う戦闘員が増え、必然的に死傷者が出ている。 ウクライナに対する侵略作戦は1992年2月にネオコンがアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として作成した世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)と結びついている。このドクトリンはソ連が消滅、ロシアを含む旧ソ連圏はアメリカの支配下に入ったということが前提になっている。そのプロジェクトが本格始動する切っ掛けが2001年9月11日の出来事、つまりニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎への攻撃だ。 このプロジェクトはロシアの再独立で破綻するのだが、その後もネオコンは世界制覇を諦めない。その結果、西側は窮地に陥り、ウクライナでもアメリカ/NATOは敗北しつつある。その敗北をいかに敗北に見せないかを西側支配層の一部は考えているようだが、あくまでロシアと戦うと主張している人もいる。そのひとりがレットゲンだと言える。 レットゲンのような人びとの政策によってドイツ経済は壊れ始めている。そのひとつの現れがフォルクスワーゲンの工場閉鎖と従業員の大量解雇計画。国内の少なくとも3工場を閉鎖し、数万人の従業員を解雇するという情報。 ドイツを破綻に導いた政策のひとつはロシアとドイツがバルト海に建設した2本のパイプライン、「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」の破壊だ。ウクライナでのクーデターでロシア産の安い天然ガスを入手できなくなっていたが、そのウクライナを迂回して建設されたパイプラインが爆破されたのだ。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したとする記事を発表した。 ハーシュによると、アメリカのジョー・バイデン大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合ったという。そして2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。 ハーシュが書いているように、この破壊工作はアメリカが実行した可能性が高いことを状況証拠も示している。 例えば、ドナルド・トランプ政権下の2020年7月にマイク・ポンペオ国務長官がNS2を止めるためにあらゆることを実行すると発言。2021年1月に大統領がジョー・バイデンに交代しても状況に変化はなく、22年1月27日にビクトリア・ヌランド国務次官はロシアがウクライナを侵略したらNS2を止めると恫喝している。2月7日にはジョー・バイデン大統領がNS2を終わらせると主張し、アメリカはそうしたことができると記者に約束した。 破壊直後には、ポーランドで国防大臣や外務大臣を務めたラデク・シコルスキーが「ありがとう、アメリカ」と書き込み、その後、ノードストリームの破壊はプーチンの策略の余地を狭めるとも書いた。パイプラインが爆破された1分後にはイギリスの首相を務めていたリズ・トラスはiPhoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送ったと伝えられている。 こうした破壊工作をドイツ政府は知らされていたのではないかという疑いがある。これが事実なら、ドイツの政治家たちはアメリカの命令に従い、自国の経済を破壊、国民を塗炭に突き落としたわけだ。ロシアとの戦争に執着するひとつの理由は、その責任から逃れたいからかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.05
アメリカでは軍も情報機関もウクライナ戦争を膠着状態と表現することはできないと判断しているという。2004年に「オレンジ革命」を仕掛け、2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行したネオコンに敗北が迫っていることをアメリカの有力メディアも否定できなくなってきたようだ。 ウクライナ軍は東部戦線でロシア軍に押されて後退、クルスクに攻め込んだ部隊も壊滅状態。1万人から3万人が軍事侵攻、さらに増派したと見られているが、すでに3万人程度が戦死したと言われている。2022年2月から戦死したウクライナ兵は50万人とも言われているが、実際は100万人に達していると推測する人もいる。 西側メディアはウクライナ軍の戦死者数はロシア軍の半分だと戯言をいまだに主張しているが、実際はロシア軍の10倍程度だと見られている。ウクライナでは街中で男性が拉致され、ろくな訓練をせずに戦場へ送り込まれ、数日から数週間で80%以上が死亡しているという。 ウクライナでの戦闘はロシアの生産力が西側を圧倒していることも明らかにしている。アメリカ政府の命令に従ってきたEUの経済悪化は深刻で、これまでその経済を牽引してきたドイツではフォルクスワーゲンが国内の少なくとも3工場を閉鎖、数万人の従業員を解雇すると伝えられている。 それに対し、ロシアでは外国資本の撤退が追い風になり、国内の企業が急成長、社会生活に変化は見られない。その様子はロシアに住む外国人がインターネットで伝えていたが、タッカー・カールソンも報告していた。彼はロシアのウラジミル・プーチン大統領をインタビューしているが、それ以上にモスクワのレポートは西側の人びとに大きな影響を及ぼしたかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.04
アメリカ政府はジョージアとモルドバが自立するのを防ごうと必死のようだ。ジョージアでは2003年11月の「バラ革命」を経てヘイル・サーカシビリ政権が登場したが、その新自由主義的で反ロシア的な政策が人びとを不幸にすることを国民は知り、アメリカ離れを起こしている。モルドバも同じ道を歩み始め、その親米政権を維持することは難しい情勢になっているが、ウクライナでの敗北が決定的になっているアメリカとしては、新たなロシア侵略拠点としてジョージアやモルドバを重視しているはずだ。 サーカシビリの経歴を調べると、1994年にコロンビア・ロー・スクールで学び、翌年にはジョージ・ワシントン大学ロー・スクールに通っている。その後、ニューヨークの法律事務所パターソン・ベルクナップ・ウェッブ・アンド・タイラーで働き、そこでエドゥアルド・シェワルナゼの下で働いていた旧友に誘われて政界入りしたとされている。アメリカの支配システムの中から出てきた人物だと言えるだろう。 サーカシビリは2008年1月から大統領を務めたが、その年の8月に南オセチアを奇襲攻撃、ロシア軍の反撃でジョージア軍は完敗した。そのジージア軍に兵器を供与、兵士を訓練していたのはイスラエルとアメリカだったことは本ブログで繰り返し書いてきた。 ウクライナでクーデターが始まった2013年11月にサーカシビリは大統領を辞め、18年12月から大統領を務めているのが親米派のサロメ・ズラビシビリだ。 この人物は1952年にフランスのパリで生まれ、1974年にフランス外務省へ入っている。2003年から04年にかけての期間、ジョージア駐在大使を務めたが、2003年11月にジョージアでは「バラ革命」が引き起こされ、サーカシビリが実権を握っている。サーカシビリと連携していたことは間違いないだろう。 ウクライナへNATOを侵攻させるため、ネオコンをはじめとするアメリカ/NATOの好戦派は2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを使ったクーデターを実行したが、東部や南部をはじめクーデターに反対するウクライナ人は少なくなかった。軍や治安機関の約7割は新体制を拒否、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱したと伝えられている。そこでロシアと戦う態勢を整えるための時間が必要だった。そこで出てきたのがミンスク合意だ。 アメリカ/NATOは兵器の供与や兵士の育成などに8年かけ、ドンバスに要塞線を築いた。マリウポリ、マリーインカ、アブディフカ、ソレダルの地下要塞を結んでいたのだが、今年2月にアブディフカが陥落、要塞線は崩壊。東部戦線でウクライナ軍は圧倒されはじめた。 今年8月6日にウクライナ軍は外国人傭兵を含む1万人から3万人ほどの兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻したが、惨憺たる状況だ。当初、クルスクには国境警備隊しかいなかったことから装甲車両を連ねたウクライナ軍に攻め込まれたが、すぐにロシア側は航空兵力で反撃を開始した。ウクライナ側は傭兵を使うだけでなくドンバスから部隊をクルスクへ移動させ、虎の子の機械化部隊を投入したのだが、壊滅状態で、ドンバス戦線ではロシア軍の進撃スピードが速まっている。 ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官によると、ロシアがサンクトペテルブルクで海軍記念日のパレードを開催した7月28日、勢揃いした要人を暗殺しようという計画があったという。この計画が成功していたならロシア国内が混乱する可能性は高く、それに乗じてロシアへ攻め込むつもりだったのだろう。 クルスクの西側にあるブリャンスクでは約20人の部隊が侵入、ロシア側の反撃で侵入部隊のメンバーは死傷したのだが、死亡した4名の出身国はアメリカ、カナダ、ポーランドで、ひとりはアメリカ陸軍の第75レンジャー連隊第2大隊の入れ墨をしていた。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.03
アメリカ、ウクライナ、韓国の政府は朝鮮兵がロシアへ派遣され、ウクライナで戦うと主張しているが、これらには証拠がない。そのように批判する人は少なくない。 そうした状況の中、あるウクライナのチャンネルはドネツクのセリドボ近くで捕虜になった「朝鮮兵の身分証明書」を公表したのだが、そこに貼られていた写真は韓国のベテラン俳優だった。Netflixで配信された韓国のドラマ「イカゲーム」で主演した李政宰だったのである。短期間で嘘が発覚することは明白だったが、アメリカの大統領選挙まで騙せればと思ったのかもしれないと言われている。 アメリカの外交や安全保障分野を支配しているネオコンは2004年に「オレンジ革命」を仕掛け、2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行したのだが、ソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された東部と南部の住民はクーデターで成立したネオ・ナチ体制を拒否、内戦が勃発した。その内戦はアメリカ/NATOとロシアの戦いになり、ロシアの勝利は決定的だと見られている。 戦闘が続いていれば配下の有力メディアを利用して人びとに「勝利の幻影」を見せることで国民から責任を問われないようにしようと目論んでいるが、ウクライナ、つまりアメリカ/NATOの敗北が決まるとこれまで以上の窮地に陥る。ネオコンに支えられ、ウクライナでの戦闘を拡大させてきた民主党政権としては、11月の大統領選挙で負けられない。 そうした状況の中、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はロシアがウクライナへ全面侵攻する計画には「朝鮮の戦争への実際の関与」も含まれると述べた。さらにウクライナのメディアは「西側の外交官」の話として朝鮮がロシアへ1万人の兵士を派遣したと語ったと報道、韓国の通信社は朝鮮がウクライナ戦争でロシアを支援するため大規模な軍隊を派遣することを決定、すでに派遣を開始していると同国の情報機関、NIS(国家情報院)が推測していると伝えた。 この評価は尹錫悦大統領が緊急安全保障会議を招集した後に出され、朝鮮が特殊部隊を含む1万2000人の兵士からなる4個旅団をウクライナ戦争に派遣することを決定したとNISはしている。日本のマスコミもそうした話を垂れ流し始めた。 しかし、ウクライナ軍は兵士が足りず、市外で街を歩いている男性を拉致し、短期間の訓練で彼らを戦場へ送り込まざるをえない状況だ。そうした光景を撮影した少なからぬ映像がインターネット上を流れているが、ロシア国内でそうした光景は見られない。ロシアの兵力には余裕があり、ローテーションで交代しながら戦っているだけでなく、予備の部隊も用意されている。 イギリスの国防大臣を2019年7月24日から23年8月31日まで務めたベン・ウォレスは2023年10月、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘した。徴兵年齢を下げる必要があるということだ。 ウクライナの武器弾薬不足も深刻。これはアメリカ/NATOの兵器庫も空になっていることを意味している。 アメリカ/NATOは核ミサイルを発射できるF-16戦闘機をウクライナへ供与し始めたが、操縦できるパイロットがほとんどいない。そこで白羽の矢が立ったのは韓国のパイロット。韓国の第19航空団のパイロット16人がルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ近くにある空軍基地に到着、モルドバとの国境近くにある空軍基地にも駐留していると言われている。韓国政府は兵器だけでなく兵士もウクライナへ送り込まなければならなくなってきた。ウクライナへの援助の増額または変更に対する国内の支持はほとんどない。 当初、アメリカの国防総省は朝鮮兵の話に対して慎重な姿勢を見せていたが、10月30日にロイド・オースティン国防長官は朝鮮兵がロシアへ派遣されたことで戦争が長期化すると述べた。また朝鮮軍の兵士約1万人がすでにロシア東部に派遣されていて、ロシアの軍服を着用、ロシアの装備を携行しているとも主張。クルスクにおけるロシアの戦闘を支援しているという様相が強まっているとしているのだが、そうした様相は見られない。 イギリスの国連常駐代表バーバラ・ウッドワードは「プーチン大統領がロシア人を砲弾の餌食として募集するのが難しくなればなるほど、彼は朝鮮に頼る用意が強くなる」と主張しているが、イギリスやアメリカはウクライナ人を「砲弾の餌食」にしてきた。これは本ブログでも繰り返し書いてきたことだ。だからこそ、ウクライナ兵はいなくなり、兵士の平均年齢が40歳代に上昇しているのだ。ウクライナ軍が敗走していることは西側でも否定できなくなっている。 死傷者数についても言えることだが、アメリカやイギリスの支配層は自分たちの行なっていることを相手が行っていると主張する。これは彼らの詐欺師的な常套手段だ。 2014年にクーデターで実権を握ったネオ・ナチだが、東部や南部では反クーデター軍に押されていた。そこでアメリカ/NATOは戦力を増強、ドンバス周辺に要塞線を築くことにするのだが、そのためには時間が必要だった。そこで出てきたのが「ミンスク合意」だが、この手法にロシアは2度と乗らないだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.02
イスラエル政府は安全上の懸念から首相官邸や軍の本部などで会合しないことを決めたと伝えられている。防空システムの「アイアン・ドーム」でイランやヒズボラなどのミサイル攻撃を防げないという判断からだろう。 イランは10月1日にイスラエルの軍事基地や情報機関の本部を180機以上の弾道ミサイルで攻撃、防空システムの「アイアン・ドーム」を突破している。ほとんどのミサイルを撃墜できず、F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、モサドの本部やその周辺に着弾した。10月19日にはベンヤミン・ネタニヤフの自宅にヒズボラのドローンが命中している。 そうした状況を現地で取材していたアメリカ人ジャーナリストのジェレミー・ロフレドがイスラエル当局に逮捕された。10月1日にミサイルの着弾地点を取材したジャーナリストのひとりだ。ロフレドがインターネットを通じて流した映像にはイスラエル政府の説明とは違う光景が映っていた。 10月25日にイスラエル軍はイランを攻撃、テヘランを含む複数の地域で爆発音が聞こえたものの、市内の光景を撮影した映像には攻撃されている様子は映っていない。イランの防空ミサイルがイスラエルのミサイルを撃墜する際の爆発音だと推測されている。 イスラエルのミサイルと思われるものが撮影された映像もあるが、イランがイスラエルを攻撃した時とは違い、大半が撃墜されている。ロシアが防空システムを供与、ECM(電子対抗手段)も使われたようだ。この結果にイスラエル政府は動揺していると言われている。イスラエル軍は子どもや女性を含む一般市民を殺すことしかできないと評価されている。 イランを攻撃するためにイスラエル軍は100機以上の戦闘機をシリアやイラクのアメリカ軍が管理している空域へ侵入させ、200機程度のミサイルを撃ち込んだと見られているが、そのミサイルは撃墜され、イランは平穏だ。 アメリカとイスラエルには自国の軍隊を「神軍」だと信じる人が少なからず存在している。アメリカの場合ベトナム戦争で敗北、その妄想は崩れてしまい、1967年の第3次中東戦争で圧勝したイスラエル軍に飛びついた。そのイスラエル軍を「神軍」だとする妄想も崩れ始めている。西側の有力メディアはこの妄想を維持しようと必死だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.01
Meiji Seika ファルマなる製薬会社が立憲民主党の原口一博議員を東京地裁に近く提訴すると伝えられている。同社が製造販売する「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」について、安全性が確認されていないと議員が批判してきたことが誹謗中傷に当たるとしているのだ。 しかし、議員の主張は事実である。少なからぬ研究者が科学的根拠な根拠に基づいて原口と同じようにmRNA技術を利用した新薬を批判、特にレプリコン・ワクチンのリスクが高いとしている。「Meiji Seika ファルマの現役社員」を名乗る人、あるいはグループが書いた『私たちは売りたくない!』という書籍も出版されている。 このタイプの新薬が高リスクであることを製薬会社や厚生労働省が認識しているであろうことは、重要な情報が開示されていないことからも類推できる。つまり「国と取り組んできた公衆衛生向上への取り組み」が問題なのであり、これは水俣病などの公害と同じ構造だ。 原口議員の主張が「非科学的断定でないなら名誉毀損等は成立しないので、製薬会社も提訴しません」と別の議員がXに書き込んでいたが、この議員は会社が提訴した時点で原口議員の主張は「非科学的断定」であると断定していることになる。原口議員に対する誹謗中傷だと言われても仕方がないだろう。 原口議員に批判的なこの議員は「科学的判断は科学的機関が行」うと考えているようだが、その「科学的機関」とは何を指しているのだろうか。そもそも判断するのは人間であり、この場合は科学者だと言うべきだ。さまざまな判断が出てくるだろう。何が正しいのかはそこから議論することになる。 過去の薬害や公害では政府主導の「科学的判断」が押し付けられ、少なからぬ人を苦しめることになった。mRNA技術を利用した新薬の場合、そうしたケースよりもリスクは大きい。 COVID-19騒動が始まって間もない頃からサーシャ・ラティポワは騒動の黒幕はアメリカ国防総省で、バラク・オバマ政権が始めたと主張している。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至ったという。 しかも、レプリコン・ワクチンの仕組みから想定される特性はアメリカがウクライナで研究開発していた「万能生物兵器」と似ている。ロシア議会が発表した報告書の180ページから181ページにかけて次のような記述がある。「アメリカは人間だけでなく動物や農作物も標的にできる普遍的な遺伝子操作生物兵器の開発を目指している。その使用はとりわけ敵に大規模で回復不可能な経済的損害を与えることを前提としている。」「避けられない直接的な軍事衝突の可能性を見越して、秘密裏に標的を定めて使用することで、たとえ他の大量破壊兵器を保有している相手であっても、アメリカ軍が優位に立てる可能性がある。アメリカ軍の戦略家によれば、ある特定の時期に、ある特定の地域で、異常な伝染病を引き起こす可能性のある生物学的製剤を、秘密裏に、かつ標的を定めて使用した場合の結果は核の冬に匹敵する可能性がある。」 かつて日本では軍医学校、東京帝国大学医学部、京都帝国大学医学部が中心になって生物化学兵器の開発が進められていた。その一環として生体実験をおこなう加茂部隊を中国に設置している。その責任者が京都帝国大学医学部出身の石井四郎中将であり、その後ろ盾は小泉親彦軍医総監だったとされている。その後、加茂部隊は東郷部隊へと名前を替え、1941年には第七三一部隊と呼ばれるようになり、捕虜として拘束していた中国人、モンゴル人、ロシア人、朝鮮人を使って生体実験していた。 こうした部隊の隊長を1936年から42年、そして45年3月から敗戦まで務めた人物が石井四郎。途中、1942年から45年2月までを東京帝国大学医学部出身の北野政次少将が務めている。こうした第七三一部隊の幹部の大半は日本へ逃亡、1946年に入ると幹部たちはアメリカ軍の対諜報部隊CICの尋問を受けることになるが、厳しいものではなく、資料はアメリカ側へ引き渡された。 尋問の過程でGHQ/SCAPの情報部門G2の部長を務めていたチャールズ・ウィロビー少将と石井は親しくなり、隊の幹部たちはアメリカの保護を受けるようになる。日本が提供した資料や研究員はドイツから提供された知識と同じように、アメリカにおける生物化学兵器開発の基盤になった。 1950年6月に朝鮮戦争が勃発、52年2月に朝鮮の外務大臣はアメリカ軍が細菌兵器を使用していると国連に抗議した。アメリカ側は事実無根だと主張したが、1970年代にウィリアム・コルビーCIA長官は議会証言の中で、1952年にアメリカ軍が生物化学兵器を使ったと認めている。 朝鮮戦争が始まると、アメリカ軍は輸血体制を増強しなければならなくなり、「日本ブラッドバンク」が設立されたが、北野政次が顧問に就任するなど、この会社は第七三一部隊と深い関係がある。後に社名は「ミドリ十字」へ変更され、「薬害エイズ」を引き起こすことになった。現在は田辺三菱製薬の一部だ。 大戦後、第七三一部隊を含む日本の生物化学兵器人脈は「伝染病対策」の中枢を形成し、その拠点として1947年には国立予防衛生研究所(予研)が創設された。当初は厚生省の所管だったが、1949年には国立になる。1997年には国立感染症研究所(感染研)に改名され、現在、「COVID-19対策」で中心的な役割を果たしている。 Meiji Seika ファルマが原口議員を提訴した場合、正常な裁判が行われれば、これまで隠されていた情報が出てくる可能性もある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.31
朝鮮軍の兵士がウクライナへ部隊を派遣したという話を広げようという動きが強まっているが、いつものように、証拠や根拠は示されていない。ロシアとの戦争に積極的な姿勢を見せているNATOの新しい事務総長、マーク・ルッテはロシアに派兵された朝鮮軍部隊がロシアのクルスク地域に配備されたことを確認したと主張しているのだが、どのように確認したのかは不明。そもそもクルスクはロシアだ。 この怪しげな話を流し始めたのは韓国のようだが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領やアメリカ政府の好戦派も同調している。ウクライナでの戦闘でアメリカ/NATOがロシアに敗北したことは明確で、東部戦線ではロシア軍の進撃が続いている。 1万人から3万人ほど兵力でウクライナ軍は8月6日にクルスクへ軍事侵攻したが、ロシア軍の反撃により、すでに2万数千人が戦死していると見られ、残った部隊はロシア軍に包囲された。 兵器も兵士も不足しているウクライナ軍にはアメリカ、イギリス、フランス、ポーランドなどの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加しているのだが、クルスクのケースでも基本的に同じだ。クルスクの北西にあるブリャンスクではウクライナ軍の破壊工作/偵察部隊がロシア軍の待ち伏せにあい、4名が戦死した。そのうちのひとりの腕にはアメリカ軍のレンジャー連隊を示す刺青があった。そのほかカナダ国旗、ポーランドの祈祷書、英語で戦術を記したメモ帳などもFSB(ロシア連邦保安庁)は公開している。 すでにウクライナ軍は降伏するか殺されるかという状態。2004年にオレンジ革命という形でウクライナ制圧プロジェクトを始めたネオコンは2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、ウクライナを植民地化するのだが、クーデターに強く反発した東部と南部の住民は戦い続けてきた。 その戦闘でキエフ政権は敗北が必至の状態だが、ロシアに戦争を仕掛けた欧米の勢力はロシアに勝利させないと主張し、NATO諸国をロシアとの戦争へ引き摺り込みつつある。 2013年5月から16年5月までSACEUR(NATO軍作戦司令部の司令官)を務めたアメリカ空軍のフィリップ・ブリードラブは2022年4月7日付け記事の中で、ウクライナにロシアが軍事介入した直後に「私たちは核兵器と第3次世界大戦をあまりにも心配したため、完全に抑止されてしまった」と語っている。 NATOの新事務総長に選ばれたルッテはオランダで首相を務めた経験があるが、独身で親しい友人も少ない。本ブログでも繰り返し書いてきたことだが、NATOは米英の支配層がヨーロッパを支配するために作り上げたシステム。そうした支配層はルッテのことを熟知しているのだろうが、一般人は彼の私生活について知らない。 そうしたルッテは事務総長に就任した当日、ウクライナがNATO諸国から受け取った兵器をロシアの深奥部を攻撃するため、自由に使用できると主張。ウクライナをできるだけ早くNATOに加盟させるともしている。ロシアと戦争をすると宣言したわけだ。そうした考えはルッテを新事務総長に選んだ人びとの意思でもある。 彼らがロシアと戦わせるウクライナ人は不足、イギリスの国防大臣を2023年8月31日まで務めたベン・ウォレスは同年10月、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘。最近では45歳とも言われている。国外から兵士を連れてきたいのはロシアでなくアメリカ/NATOだ。 アメリカ/NATOは核ミサイルを発射できるF-16戦闘機をウクライナへ供与し始めたが、操縦できるパイロットがほとんどいない。そこで白羽の矢が立ったのは韓国のパイロットだった。韓国の第19航空団のパイロット16人がルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ近くにある空軍基地に到着、モルドバとの国境近くにある空軍基地にも駐留していると言われている。韓国はアメリカに従属している国の中でウクライナへ兵器を供与する余裕がある国のひとつでもある。 NATOを含む西側諸国から兵士をウクライナへ送り込まなければロシアとの戦争を継続できない。地上部隊も韓国を含む東アジアの国から派遣されているとする噂もある。そうした戦力増強策を正当化するために朝鮮軍兵士の話が流された可能性もあるが、韓国内部の事情もあると言われている。 韓国の尹錫悦大統領は検事時代の2016年、大統領だった朴槿恵を巻き込む崔順実スキャンダルの捜査を指揮、朴大統領弾劾につながった。2017年5月から19年7月までソウル中央地方検察庁検事長を、また19年7月から21年3月まで検事総長を務めているが、その間、アメリカから嫌われていた文在寅政権を攻撃し、文大統領に近い曺国法務部長官を起訴、曺を辞任させた。 アメリカの支配層は文在寅だけでなく朴槿恵も嫌っていた。彼女が中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたからだ。尹の働きがなければTHAADを韓国へ搬入することは難しかっただろう。 尹錫悦は大統領に就任してからアメリカ政府の好戦的な政策に従い、中国やロシアとの関係を悪化させ、国民の支持率は20%台に低下したと言われている。韓国をアメリカの戦争マシーンに組み込み、経済を悪化させているからだろう。 尹錫悦は妻の金建希が引き起こしたスキャンダルでも苦しんでいる。税金を払わず賄賂を受け取ったと言われ、輸入車販売会社ドイッチェ・モーターズの株価を操作した疑惑で捜査対象になっている。さらに論文の盗作も指摘されている。検事総長や大統領の権限を使っても揉み消しきれない何かがあるのかもしれないと言う人もいる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.30
ウクライナと同様、アメリカによる内政干渉のターゲットになってきたジョージアで10月26日に議会選挙が実施され、与党である「ジョージアの夢」が過半数を獲得した。その結果を親米派のサロメ・ズラビシビリ大統領は認めず、自分自身を「この国に残された唯一の独立機関」だと称し、抵抗運動で選挙を否定するよう国民に呼びかけている。「カラー革命」、つまりクーデターを扇動しているわけだ。 ズラビシビリは1952年にフランスのパリで生まれ、1974年にフランス外務省へ入った。2003年から2004年にかけての期間、ジョージア駐在大使を務めているが、2003年11月にジョージアでは「バラ革命」が引き起こされ、アメリカ支配層の手先だったミヘイル・サーカシビリが実権を握っている。 サーカシビリの経歴を調べると、1994年にコロンビア・ロー・スクールで学び、翌年にはジョージ・ワシントン大学ロー・スクールに通っている。その後、ニューヨークの法律事務所パターソン・ベルクナップ・ウェッブ・アンド・タイラーで働き、そこでエドゥアルド・シェワルナゼの下で働いていた旧友に誘われて政界入りしたとされている。 2000年10月にサーカシビリはシェワルナゼ政権の司法大臣に就任するがすぐに辞任、2001年10月にUNM(統一国民運動)なる政党を創設。ジョージアでは2003年11月に議会選挙があり、シェワルナゼの政党が勝利するのだが、サーカシビリは選挙に不正があったと主張、混乱がはじまった。 実は、選挙前にCIA系のUSAIDは投票のコンピュータ化を求め、150万ドルを提供している。コンピュータ化によって投票数の操作が容易になることはいうまでもない。コンピュータ化を求めたのはアメリカが不正選挙を目論んでいたからだと推測する人もいる。 クーデターの黒幕はジョージア駐在のアメリカ大使だったリチャード・マイルズ。工作資金はCIA系のNEDを経由して配下のNGOなどへ供給されているが、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ・インスティテュートも重要な役割を果たした。 マイルズはジョージア駐在大使の前にブルガリア駐在大使、1996年から1999年までセルビア・モンテネグロの在外公館長を務めている。その頃、アメリカでは有力メディアがユーゴスラビアに対する先制攻撃を主張、ビル・クリントン政権はそれを拒否していた。 しかし、国務長官がウォーレン・クリストファーからマデリーン・オルブライトへ交代した後、1998年4月にアメリカ上院はNATOを東へ拡大することを承認、その年の秋にオルブライト国務長官はユーゴスラビア空爆を支持すると表明、99年3月にアメリカ/NATO軍はユーゴスラビアを先制攻撃している。その際、スロボダン・ミロシェヴィッチ大統領の自宅を破壊し、中国大使館を爆撃した。この攻撃でもマイルズは重要な役割を果たしていたと言われている。 2001年9月にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、本格的な調査をしないまま「アル・カイダ」の犯行だと断定、そのアル・カイダが弾圧されていたイラクを2003年に先制攻撃した。 2004年にズラビシビリはジョージア国籍を取得、同国の外務大臣になった。2008年1月にはズラビシビリと同じ従米派のミヘイル・サーカシビリが大統領に就任、その年の8月7日にジョージア軍は南オセチアを奇襲攻撃した。その翌日から北京で夏季オリンピックが開催される予定で、ロシア政府は動きにくいという計算があったと見られている。 その当時、南オセチアに駐留していた平和維持部隊は軍事的な能力は低く、アメリカやイスラエルの軍事訓練を受けているジョージア軍の前になす術がなかったが、ロシア軍は戦闘車両150両を送り込むなど即座に反撃、ジョージア軍に対する空爆も開始、ジョージア軍を粉砕した。 この攻撃の約1カ月前、7月10日にアメリカの国務長官だったコンドリーサ・ライスがジョージアを訪問、奇襲攻撃から間もない8月15日にもライスはジョージアを訪問、サーカシビリと会談している。 ジョージア軍の攻撃を無謀だという人もいたが、イスラエルは2001年からジョージアへ武器を提供、それと同時に軍事訓練を行っていた。訓練を担当していたのはイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将(予備役)が経営する「防衛の盾」で、予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士が教官としてジョージアへ入っていた。 それだけでなく、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズは元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣している。MPRIはユーゴスラビアへの攻撃でも名前が出てきた会社だ。 イスラエルがジョージアを軍事面から支えてきたことはジョージア政府も認めている事実であり、アメリカのタイム誌によると、訓練だけでなくイスラエルから無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどの提供を受けている。(Tony Karon, “What Israel Lost in the Georgia War”, TIME, August 21, 2008) このジョージア軍による南オセチアへの奇襲攻撃はアメリカとイスラエルが入念に準備した作戦であり、しかも衝突した部隊の規模はほぼ同じ。その戦闘でロシア軍は圧勝した。勝利までに要した時間は96時間にすぎない。同じ規模のロシア軍とアメリカ軍が通常兵器で戦った場合、同じ結果になるということである。(Andrei Martyanov, “Losing Military Supremacy,” Clarity Press, 2018) ジョージアの近くにあるカスピ海の周辺には石油が存在しているが、それだけではなく、ロシアに対する攻撃の拠点、イランに対する出撃基地として重要な場所だ。 ズラビシビリは2018年の大統領選挙に出馬するが、彼女がフランス国籍を放棄したのは選挙を2か月後に控えた同年8月23日のこと。そして選挙で勝利、大統領に就任している。任期は今年までだ。アメリカとしては今回の議会選挙を何としてもひっくり返したいだろう。 自分たちの描いた計画通りにならなかった選挙に「不正」というタグをつけ、「カラー革命」で政権を奪取するのはアメリカの常套手段である。すでにアメリカの植民地になっている国では軍、検察、警察が手先になっているが、そこまで支配が及んでいなくてもメディアやNGOが手先として利用されている。 ジョージアでも外国の政府や私的権力が内政干渉のためにNGOが使われている。その活動を透明にするため、同国の議会はアメリカのFARA(外国代理人登録法)をベースにして、外国から一定以上の資金を受け取っている団体は登録し、資金提供者を開示するよう求める法律を制定した。その法律をジョージアのNGOだけでなく、西側諸国が批判している。そうした法律が「カラー革命」を仕掛けづらくするからだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.29
ガザやレバノンで住民を虐殺しているイスラエル、そのイスラエルを支援している米英をはじめとする欧米諸国を批判する声が西側でも高まっている。廃墟と化した街と殺害された子どもの凄惨な状況はテレグラムなどで全世界へ伝えられたことも大きい。 こうした虐殺を戦争の巻き添えだとすることは間違っている。イスラエルは1948年5月の「建国」以来、先住民のアラブ系住民を虐殺、パレスチナから追い出してきた。ナチスと同じように、民族浄化を始めたのである。 今回の軍事衝突はイスラエルの警察官が2023年4月1日にアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺したところから始まった。このモスクはイスラム世界で第3番目の聖地だとされ、イスラム世界に対する挑発だったと言える。 4月5日にはそのモスクへイスラエルの警官隊が突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/昨年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃、さらにユダヤ教の「仮庵の祭り」(昨年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。こうした挑発行為を西側の自称「民主主義国は黙認していた。 そして10月7日にハマスがイスラエルに対する軍事作戦を実行、それを利用してイスラエル政府はガザに対する本格的な軍事攻撃を始めた。ハマスが攻撃してきた直後、イスラエル政府は敵の人質になる可能性があるイスラエル人を殺して構わないという「ハンニバル指令」を出したと言われている。 その際、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における旧約聖書)」を持ち出し、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用している。 そこには神の命令として、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は天の下からアマレクの記憶を消し去れと書かれている。パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、歴史から彼らが存在したことを消し去るとネタニヤフは主張しているのだ。 また、サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれているが、これこそがガザやレバノンでイスラエルが行っていること。パレスチナからアラブ系住民を一掃するために建造物を破壊し、住民を虐殺し、生き残った人は追放する計画だ。イスラエル政府が行おうとしていることは民族浄化にほかならない。 こうした大量殺戮の実態を西側の有力メディアは「ダメージ・コントロール」しながら伝えている。パレスチナ人は戦争の犠牲になっている可哀想な人だというストーリーだが、西側メディアが擁護するイスラエルによる意図的な大量殺戮にほかならない。 それに対し、ウクライナではアメリカ政府が2004年から05年にかけて選挙へ介入(オレンジ革命)、13年11月から14年2月にかけてのネオ・ナチを利用したクーデターでウクライナを植民地化することに成功して西側の強大な私的権力にとって都合の良い体制を樹立させた。そして戦乱が始まったのである。これを西側の有力メディアは「ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻」だと宣伝してきた。 クーデター後、新体制に反対する人は多く、東部や南部では特にそうした傾向が強かった。そうした反クーデター軍を倒すため、ロシア政府を巻き込んで時間を稼いでクーデター政権の軍事力を増強させる。そのために利用されたのがミンスク合意だ。 この合意でアメリカ/NATOは8年という時間を稼ぎ、兵器を供与、兵士を訓練、そして反クーデター軍が制圧していたドンバスの周辺には地下要塞を結ぶ要塞線を築いている。 そうした準備が整い、ドンバスに対する本格的な軍事侵攻が行われる兆候が見られ始めた2022年2月、ロシア軍が先手を打った。ミサイルでドンバス周辺に集結していたウクライナ軍や軍事基地、生物兵器の研究開発施設などを攻撃したのだ。 その後、アメリカ/NATOはウクライナへの支援を強めていくが、戦況はロシアが優位なまま推移、すでに要塞線は突破され、ウクライナ軍の兵士は少なくなり、アメリカ/NATOの兵器庫も枯渇、今年初めにアメリカは日本や韓国にウクライナ支援を命じる事態になっている。 今年8月6日にウクライナ軍は1万人から3万人ほどの兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻したが、予想通り失敗した。この作戦に投入した虎の子の兵器は破壊され、ウクライナ側は2万数千人がすでに死亡、残った部隊はロシア軍に包囲されているようだ。降伏しなければ殺される。 この軍事侵攻にはウクライナに残された機械化部隊が投入され、ドンバスの部隊も移動させたが、それでも戦力が足りないため、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランドの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加している。そうした部隊も壊滅的な状況だ。 その直前にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はF-16戦闘機を飛ばし始めたと発表しているが、このタイプはすでに旧式。空飛ぶダンプカーと呼ばれているF-35よりはマシかもしれないが、ロシアの戦闘機と空中戦を戦う能力はない。ロシアが問題にしているのはF-16が核ミサイルを発射できることだ。 ソ連製兵器を使ってきたウクライナ軍はアメリカ/NATOの中長距離ミサイルやF-16戦闘機に慣れていない。そこで兵器供与国はその兵器を動かせる要員をウクライナへ派遣する必要がある。ウクライナ兵を訓練しているとされていたが、簡単ではない。そこで、CIAはF-16を飛ばすために韓国のパイロットをルーマニアへ連れて行くとも言われていた。 韓国の第19航空団のパイロット16人がルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ近くにある空軍基地に到着、モルドバとの国境近くにある空軍基地にも駐留しているという。パイロットに限らず、すでに韓国はウクライナへ将兵を派遣しているようだ。 朝鮮が兵士1万人をロシアへ派遣したとウクライナのメディア、キエフ・インディペンデントが伝えたのは、そうした情報が伝えられる中でのことだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.28
日本では現行の健康保険証制度が今年12月2日に終了し、日本に住む人びとを監視するために導入されたマイナンバーカードと一体化させた「マイナ保険証」へ移行させる。 このシステムはさまざまな個人情報、例えば学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、クレジット・カードのデータ、航空券の購入記録、映画や舞台のチケット購入歴、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、図書館の利用状況、そして勿論投薬記録などが一括管理される可能性がある。こうした情報管理をアメリカではDARPA(国防高等研究計画局)などが遅くとも1970年代から開発してきた。(William D. Hartung, “Prophets Of War”, Nation Books, 2011) ACLU(アメリカ市民自由連合)によると、フロリダ州を拠点とするシーズント社はスーパー・コンピュータを使い、膨大な量のデータを分析して「潜在的テロリスト」を見つけ出そうとしていた。どのような傾向の本を買い、借りるのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、個人の性格や思想を洗い出そうとしたのだ。図書館や書籍購入の電子化、スマートテレビの普及などと無縁ではない。勿論、インターネット上でのアクセス状況も監視される。 アメリカの国防総省にはCIFA(対諜報分野活動)というデータ収集活動があり、TALON(脅威地域監視通告)というデータベースに情報を記録、このデータを分析することで情報活動をモニター、将来の脅威を見通すとしていた。TALONは2007年に中止されたとされているが、確認はできていない。(前掲書) アメリカやイギリスの電子情報機関の活動を1970年代から暴いてきたイギリスのジャーナリスト、ダンカン・キャンベルによると、1993年から西側諸国の捜査機関高官は毎年、会議を開いて通信傍受について討議を重ねてきた。そうした国際的な流れの中で、日本も1999年に通信傍受法(盗聴法)を制定したのである。(Duncan Campbell, "Development of Surveillance Technology and Risk of Abuse of Economic Information Part 4/4: Interception Capabilities 2000," April 1999) アメリカの植民地と化している日本でも個人情報を一括管理するシステムを導入するため、2016年1月にマイナンバーカードの交付と運用が開始された。そして2021年10月にマイナ保険証の本格的な運用が始まり、監視システムに健康保険証も組み込まれるわけだ。 2022年2月には日本でも「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」の接種が始まったが、その年の6月に政府は現行の健康保険証の原則廃止を打ち出し、10月に河野太郎デジタル相は2024年秋に保険証を廃止すると表明した。 その「ワクチン」は深刻な副作用を引き起こし、死亡者数を増やしてことは明確になっているが、それでも日本政府は接種を強行、同じようにマイナ保険証の発行も強行している。 日本だけで推進されている「COVID-19ワクチン」の接種は治験だと考えられているが、そのためには接種歴のほか、少なくとも今後30年程度は病歴を追跡調査する必要がある。その調査にとってマイナ保険証は有効な手段だ。 新しい兵器にとって、その効果を調べることは使う側にとって重要なことである。原子爆弾が開発された時にもそうした調査は重要だったはずだ。 アメリカは1945年8月に原子爆弾を広島と長崎へ投下したが、その翌月に原子爆弾が人体へどのような影響を及ぼすか調査するため、「日米合同調査団」を編成した。その調査結果は核攻撃の準備に使われたと言われている。 アメリカ軍が1954年に作成した計画では、ソ連を破壊するために600から750発の核爆弾を投下し、118都市に住む住民の80%、つまり約6000万人を殺すことになっている。この年の終わりにはヨーロッパへ核兵器を配備した。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) 沖縄では1950年代に「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収されて軍事基地化が推し進められるが、これもアメリカの核攻撃計画が深く関係していた。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づき、武装米兵が動員された暴力的な土地接収で、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になっている。 そして1957年の初頭、アメリカ軍はソ連への核攻撃を想定したドロップショット作戦を作成した。それによると300発の核爆弾をソ連の100都市で使い、工業生産能力の85%を破壊する予定になっていたという。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、統合参謀本部のライマン・レムニッツァー議長やSACの司令官だったカーティス・ルメイなど好戦派は、1963年の後半にソ連を奇襲攻撃る予定だったという。その頃になればアメリカはICBMを配備でき、しかもソ連は配備が間に合わないと見ていた。 ソ連が反撃するためにはアメリカの近くから中距離ミサイルを発射するしかない。そこでソ連はキューバへ中距離ミサイルを運び込み、キューバ危機になる。1962年10月のことだ。この危機を回避することに成功したジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月22日に暗殺された。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、COVID-19騒動はアメリカ国防総省のプロジェクトであり、「ワクチン」というタグのつけられた遺伝子操作薬は生物兵器であると推測できる。ウクライナで開発していたとされる生物兵器の特性が「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」によく似ている。マイナ保険証を利用した調査の分析結果は生物兵器戦に利用されるだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.27
イスラエル軍は10月25日にイランの首都テヘランの軍事目標を空爆したいう。F-35戦闘機を含む100機以上の航空機が使われたと伝えられているが、テヘランは平穏で、現地で住民が撮影した映像の大半は攻撃を感じさせない。例外的な映像には相当数のミサイルが迎撃されている様子が撮影されている。ロシアの防空システムが使われたと思われ、迎撃ミサイルが発射されただけでなくECM(電子対抗手段)も利用されたのだろう。イランのミサイルを撃墜できなかったイスラエル/アメリカの防空システムとの違いが明確になったようだ。 イランにしろ、イエメンのアンサール・アッラー(西側では蔑称のフーシ派を使っている)にしろ、レバノンのヒズボラにしろ、イスラエルを攻撃している原因はパレスチナにおける住民虐殺にある。 イスラエルは1948年5月の「建国」以来、「大イスラエル」の実現を目指して侵略、破壊、略奪、殺戮を繰り返してきた。そうした犯罪的な行為を「国際社会」を自称する西側諸国は受け入れ、現在、アメリカやイギリスは積極的に支援し、虐殺の範囲をパレスチナからレバノンへ広げつつある。 昨年10月からガザで殺された住民は4万5000人を超えたと言われ、その約4割が子どもで、女性を含めると約7割に達するというが、そのほか相当数の遺体が瓦礫の下に埋まっている。 これだけでも大量殺戮だが、ランセット誌が今年7月に掲載した論文は「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」と指摘している。当時報告されていた「死者37,396人に直接的な死者1人につき間接的な死者4人という控えめな推定を当てはめると、ガザにおける戦闘による死者は最大18万6000人、あるいはそれ以上」とした。 その惨状はテレグラムなどを通じて世界に発信され、イスラエルに対する怒りは高まっている。パレスチナ人虐殺を支援しているアメリカで行われている大統領選挙の候補者、カマラ・ハリスはインタビューの中で「人びとが抱く強い感情を否定するつもりはありません」と言わざるをえなかった。そして「画像を見た人の中で、何が起こったのか強い感情を抱かない人がいるとは思いません」と語っている。 しかし、その後に彼女の本音が現れる。「この問題に関心を持つ多くの人々は食料や雑貨の価格を下げることにも関心がある」うえ、「私たちの民主主義」を気にしていて、「ファシスト」がアメリカ大統領にならないように願っていると主張している。ハリスの周辺が作成したシナリオだけに集中し、イスラエルによる侵略、破壊、略奪、殺戮を機にするなと言っているように聞こえる。 いわゆる「グローバル・サウス」の人びとはイスラエルの背後にアメリカやイギリスをはじめとする西側諸国が存在していることを熟知している。イスラエルはそうした西側諸国の手先として機能、その役割を利用して自分たちの利益を図ってきた。 その結果、中東で大規模な戦争が勃発する方向へ進んでいる。そうした状況を先日のBRICS首脳会議でもロシアのウラジミール・プーチン大統領が警告していたが、そのロシアはイスラエルに配慮し、積極的に介入することはなかった。2015年にアメリカがシリアへ軍事介入する直前にロシアは介入したが、それも限定的だ。今後、ロシアがイランをどこまで支援するか注目されている。戦争反対、和平実現と叫んでも米英やイスラエルのような国には通用しない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.26
ウクライナでアメリカ/NATOの傀儡軍がロシア軍に負けていることは本ブログでも繰り返し書いてきた。日本はともかく、その事実を西側の有力メディアも否定できなくなっている。兵士も兵器も枯渇し、ウクライナの街頭では男性が拉致されて不十分な訓練で最前線に送られ、1、2カ月で83%が戦死しているとネオコン系シンクタンクのISWも伝えている。 それに対し、ロシア軍の戦死者はウクライナ軍の1割程度だと見られ、兵士はローテーションで交代しながら戦い、予備部隊も存在している。ロシアが兵器を製造する能力はアメリカ/NATOの4倍程度だという。 昨年8月の段階で、2022年2月24日にロシア軍がウクライナに対するミサイル攻撃を始めてから約50万人のウクライナ兵が戦死したと言われていた。ウォロディミル・ゼレンスキー政権は当初から18歳から60歳の男子が出国することを禁止、動員の対象にしていた。45歳以上の男性だけでなく少年兵も前線へ送り込んでいると言われていたが、最近は60歳程度の男性が街角で拘束され、前線へ送り込まれていると報告されている。その様子を撮影した少なからぬ映像が伝えられてきた。 イギリスの国防大臣を2019年7月24日から23年8月31日まで務めたベン・ウォレスは2023年10月、テレグラフ紙でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘している。最近では45歳とも言われている。それだけ兵士が足りないということだ。 こうした戦場での劣勢を挽回するつもりだったのか、ウクライナ軍は8月6日に1万人から3万人の兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻した。この地域には国境警備隊しか配置されていなかったことから装甲車両を連ねた部隊に攻め込まれたようだが、すぐに航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けているようだ。 この作戦でウクライナ側はすでに2万数千人が死亡したとも言われている。この軍事作戦には虎の子の「精鋭部隊」が投入され、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵が参加しているとも言われている。東アジアからもウクライナ側へ兵士が派遣されているとする噂もある。 ロシア軍は今年1月16日にハリコフを攻撃したが、その際、軍事施設のほか旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊した。この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたという。ここで自国兵が死亡したことを隠したい政府は情報統制を強化するだろう。 ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官によると、ロシアがサンクトペテルブルクで海軍記念日のパレードを開催した7月28日、勢揃いした要人を暗殺しようという計画があったという。同じことをアメリカの秘密工作機関OPCは1949年に中国で計画していたと伝えられている。 ウラジミル・プーチン政権の要人を暗殺してロシア国内を混乱させ、その上でクルスクへ攻め込む予定だったのだろうが、失敗した。この計画を作成したチームには、反プーチン工作を指揮、アラブの春を仕掛けたグループにも属していたマイケル・マクフォール元駐露アメリカ大使も含まれていたようだ。 ウクライナの戦況を考えると、ロシアが他国の兵士を必要としているとは思えないのだが、ウクライナ、アメリカ、韓国などの有力メディアは朝鮮の兵士がロシアへ入った、あるいはウクライナで戦っているとする話を盛んに流している。この話を口実にして韓国はウクライナへ兵器を供与する可能性を示しているが、すでにNATO加盟国はそうしたことをする余裕がなくなっている。韓国や日本に頼るしかない。 自らが仕掛けた戦争で窮地に陥ったアメリカはイスラエルを支援して戦火を中東全域に拡大させる動きを見せ、東アジアでも軍事的な緊張を高めている。アメリカ軍が日本列島から台湾、そしてフィリピンにかけての島々にミサイル発射基地を建設、オーストラリアを軍事拠点化していることは本ブログでも繰り返し書いてきた。 国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」は2022年4月、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を発表したが、その前から実行に移している。2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成している。今後、南西諸島周辺へアメリカ軍とその装備を移動させる可能性があるという。 その間、韓国へも2017年4月にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が強引に持ち込まれている。2013年2月から韓国の大統領を務めた朴槿恵は中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたが、朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなっていた時期に搬入され、その後、朴槿恵は失脚した。また、アメリカは中国との戦争に備えて台湾を自分たち側へ引き寄せ、軍事拠点化しようとしている。そのオーストラリア、そしてイギリスとアメリカはAUKUSという軍事同盟を組織し、日本や韓国と軍事的な連携を強めている。 そうした動きにロシアと中国は朝鮮を巻き込み、対応する姿勢を示した。6月にプーチン大統領は朝鮮を公式訪問、金正恩労働党委員長と会談し、包括的戦略パートナーシップ条約を締結している。政治経済面だけでなく軍事面でも両国は連携するということだろう。その朝鮮の部隊をロシアが訓練する可能性はあるが、ロシアには朝鮮系を含むアジア系の国民も多く、作り話はいくらでもできるだろう。 ところで、現在の「ウクライナ体制」は2004年から05年にかけての「オレンジ革命」を経て、2013年11月から14年2月にかけてのネオ・ナチを利用したクーデターで成立した。東部や南部の人びとはクーデターを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスは反クーデター軍を編成して抵抗を始めた。オデッサもクーデターに反対する住民が多かったが、ネオ・ナチによる虐殺で制圧されている。 オレンジ革命までウクライナは「中立」を掲げていたが、その背景には東部や南部のソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された地域の住民がウクライナからの独立や自治権獲得を要求していたことがある。その民意をアメリカやイギリスをはじめとする西側の私的権力は拒否、ロシア政府も彼らを助けようとはしなかった。 しかし、ウクライナでクーデターに反対する人は多く、軍人や治安機関隊員の約7割は新体制を拒否したと言われている。クリミアの場合は9割近い兵士が離脱、米英を後ろ盾とするネオ・ナチ体制はこの半島を制圧することができなかった。そのように離脱した兵士や隊員の一部は反クーデター軍に合流、当初はクーデター軍を圧倒していた。そこで欧米諸国はクーデター政権の戦力を増強し、戦争の準備をするために時間を稼いた。それがミンスク合意にほかならない。8年間に兵器を供給、兵士を訓練、地下要塞を中心とする要塞線を築いている。 2022年に入るとキエフ政権がドンバス周辺に配置した部隊は住民に対する砲撃を激化させ、近いうちに大規模な軍事作戦が始まると少なからぬ人が予想していた。 そうした中、2月24日からロシア軍はウクライナをミサイルなどで攻撃し始め、ドンバス周辺に集結していたウクライナ軍の部隊を壊滅させたほか、航空基地、レーダー施設、あるいは生物兵器の研究開発施設を攻撃している。 この段階でロシア軍の勝利は確定的。そこでイスラエル政府やトルコ政府の仲介で停戦交渉が始まり、ほぼ合意に達したという。仲介役を務めていたイスラエルのナフタリ・ベネット首相は3月5日にモスクワへ飛び、ウラジミル・プーチンと数時間にわたって話し合ってウォロディミル・ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でドイツへ向かい、オラフ・ショルツ首相と会う。 ところが、その3月5日にSBUのメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを裏切り者だと称して射殺。クーデター後、SBUはCIAの下部機関だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われた。アフリカ各国のリーダーで構成される代表団がロシアのサンクトペテルブルクを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と昨年6月17日に会談しているが、その際、プーチン大統領は「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案を示している。その文書にはウクライナ代表団の署名があった。つまりウクライナ政府も停戦に合意していたのだ。 こうした交渉を潰すため、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令し、4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓った。それ以降、西側はウクライナに対し、ロシアを疲弊させるために戦い続けさせてきた。「総玉砕」を求めたのだ。 この段階ではロシアに勝てるとアメリカやイギリスの好戦派は信じていたようだが、工業生産力や兵器の性能、兵士の戦闘能力でロシアはウクライナやアメリカ/NATOを圧倒する。戦場からウクライナ兵は減り続け、武器弾薬も枯渇している。こうしたことはロシアが軍事介入した直後から明白で、だからこそゼレンスキー政権も停戦交渉を始めたのである。**********************************************【Sakurai’s Substack】h
2024.10.26
イスラエルのベザレル・スモトリッチ財務大臣はエルサレムをダマスカスまで拡大すると公言している。パレスチナ人を虐殺し、殺されたくないならパレスチナから出て行くように強制しているのだが、彼だけがそう考えているわけではない。これは民族浄化であり、イスラエル政府は1948年5月の「建国」以来、大イスラエル構想を捨てていないのだ。 しかし、忘れてならないのはイギリスがイスラエルを作る礎を築いたということである。パレスチナに「ユダヤ人の国」を作ろうという運動、シオニズムはエリザベス1世が統治するイギリスで生まれたのだ。 アメリカの外交安全保障政策を動かしているネオコンはシオニストの一派で、1991年12月にソ連が消滅した直後、アメリカが世界を制覇するプロジェクトを国防総省のDPG草案という形で作成、2001年9月にそのプロジェクトを本格的に開始した。 欧州連合軍のウェズリー・クラーク元最高司令官によると、DPG草案が作成される前からネオコンの中心的なグループに属していたポール・ウォルフォウィッツ国防次官はイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。そして2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、クラークは国防長官の周辺で攻撃予定国のリストが作成されていたことを知る。そのリストに載っていた国はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランだ。(ココやココ) 2003年にはイラクを先制攻撃で破壊、スーダンの西部、ダルフールでは資源をめぐる戦闘が激化している。当初、欧米の国々は南スーダンの石油利権に集中、ダルフールの殺戮を無視していたが、ネオコンはダルフールへ積極的に介入、その資源に目をつけた隣国チャドの政府が反スーダン政府のJEM(正義と平等運動)へ武器を供給して戦闘を激化させる。リビアのムアンマル・アル・カダフィは生前、チャドの背後にはイスラエルが存在していると主張していた。2011年にはシリアやリビアに対する軍事作戦を開始、アメリカ軍はエチオピア軍と共同でソマリアを軍事攻撃する。そして今、アメリカをはじめとする欧米諸国の支援を受けたイスラエルはレバノンを破壊しつつあり、次にイランを攻撃し始めている。 蛮行を働くイスラエルを無批判に擁護しているアメリカだが、1960年代までは違った。例えば、ジョン・F・ケネディ大統領はイスラエルの核兵器開発には厳しい姿勢で臨んでい流。ダビッド・ベングリオン首相と後任のレビ・エシュコル首相に対し、半年ごとの査察を要求する手紙を送りつけているのだ。核兵器開発疑惑が解消されない場合、アメリカ政府のイスラエル支援は危機的な状況になると警告していた。(John J. Mearsheimer & Stephen M. Walt, “The Israel Lobby”, Farrar, Straus And Giroux, 2007) こうした姿勢が劇的に変化したのはケネディ大統領が暗殺された後にリンドン・ジョンソンが副大統領から大統領に昇格してからだ。ジョンソンのスポンサーはシオニストの富豪、アブラハム・フェインバーグ。この人物はハリー・トルーマンのスポンサーでもあった。 ジョンソンがイスラエルに対するアメリカ政府の姿勢を変えたことを示す象徴的な出来事が1967年6月に勃発した第3次中東戦争にほかならない。 戦争が勃発した4日後にアメリカは情報収集船の「リバティ」を地中海の東部、イスラエルの沖へ派遣したのだが、イスラエル軍はその船がアメリカの情報収集船だということを確認した上でロケット弾、ナパーム弾、魚雷などを使って攻撃、撃沈させようとしている。 最初の攻撃でリバティの通信設備を破壊したのだが、船の通信兵は寄せ集めの装置とアンテナでアメリカ海軍の第6艦隊へ遭難信号を発信することに成功、それに気づいたイスラエル軍はジャミングで通信を妨害している。 空母サラトガの甲板にはすぐ離陸できる4機のA1スカイホークがあったことから艦長は船首を風上に向けさせて戦闘機を離陸させ、艦隊の司令官に連絡、司令官は戦闘機の派遣を承認。その事実はジョンソン大統領へすぐに報告されたが、ロバート・マクナマラ国防長官は第6艦隊に対して戦闘機をすぐに引き返させるようにと叫んでいる。自国の艦船を見殺しにしろと言っているに等しい。リバティはからくも沈没を免れたものの、乗組員9名が死亡、25名が行方不明、171名が負傷している。(Alan Hart, “Zionism Volume Three”, World Focus Publishing, 2005) アメリカ政府は真相を隠す工作をすぐに開始、その責任者に選ばれたのがアメリカ海軍太平洋艦隊の司令官だったジョン・マケイン・ジュニア、つまりジョン・マケイン3世上院議員の父親だった。リバティの交信記録や近くにいたアメリカ海軍の潜水艦が集めていた情報を廃棄されている。 この出来事の背後にはアメリカ政府の「サイアナイド作戦」が存在していると言われている。ジョンソン政権では「303委員会」が秘密工作を統括、1967年4月に「フロントレット615」という計画が説明されたという。リバティを潜水艦と一緒に地中海の東岸、イスラエル沖へ派遣するというもので、実際、後にリバティや潜水艦は派遣された。 それだけでなく、この計画には「サイアナイド作戦」なるものが含まれていた。リバティを沈没させ、その責任をエジプト、あるいはソ連に押しつけて戦争を始めようとしたと推測されている。この話が事実ならば、トンキン湾事件の再現を狙ったジョンソン政権がリバティ撃沈をイスラエルの要請したということになるだろうが、リバティは沈没を免れた。 リバティに対する攻撃の後、アメリカ政府は関係者に箝口令を敷き、重要な情報を公開していない。イスラエルの法律では攻撃に関する資料が2017年に公開されるはずだったが、10年7月にベンヤミン・ネタニヤフ首相は情報公開の時期を20年間遅らせることを決めた。アメリカもイスラエルもこの攻撃に関する情報を隠し続けようとしている。 こうした推測が正しいなら、イスラエルはアメリカの弱みを握ったことになるが、そもそもジョンソンは親イスラエルの政治家である。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.25
イスラエルのシオニストが行なっていることはドイツのナチスが行ったことに酷似している。 イスラエルは虐殺の範囲をパレスチナからレバノンへ広げつつある。昨年10月からガザで殺された住民は4万5000人を超えたと言われているが、そのほか相当数の遺体が瓦礫の下に埋まっている。ガザ保健省によると、その約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達すると言われている。 これだけでも大量殺戮だが、それだけでなくレバノンでも空爆で住民を虐殺しはじめた。ランセット誌が今年7月に掲載した論文は「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」と指摘している。当時報告されていた「死者37,396人に直接的な死者1人につき間接的な死者4人という控えめな推定を当てはめると、ガザにおける戦闘による死者は最大18万6000人、あるいはそれ以上」とした。イスラエルに対する怒りは高まっている。 パレスチナやレバノンで大虐殺が止まらないのは「国際社会」、つまりアメリカやその従属国が本気で止めようとしていないからだ。イスラエルは兵器なしに虐殺することはできないが、そのイスラエルへ供給されている武器の69%はアメリカから、30%はドイツから。予想の拠点はイギリスで、キプロス経由で運ばれている。停戦を望んでいると口にしているジョー・バイデン政権だが、行動は逆。つまり戦争を推進している。 こうした虐殺を副次的な被害だと言うことはできない。例えば、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は昨年10月7日にハマスがイスラエルへ攻め込んだ後、「われわれの聖書(キリスト教における旧約聖書)」を持ち出し、「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用している。そこには神の命令として、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は天の下からアマレクの記憶を消し去れと書かれている。パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、歴史から彼らが存在したことを消し去るとネタニヤフは主張しているのだ。 また、サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」ということが書かれているが、これこそがガザやレバノンでイスラエルが行っていることだ。イスラエル政府が行おうとしていることは民族浄化にほかならない。 こうした狂気の政策を推進しているのはネタニヤフ首相のほか、財務大臣を務めるベザレル・スモトリッチと国家安全保障大臣を務めるイタマル・ベン-グビルだとされている。所属政党はネタニヤフがリクード、スモトリッチは宗教シオニスト党、ベン-グビルはユダヤの力。 スモトリッチはパレスチナ人を「人間以下の存在」だと信じ、エルサレムの将来はダマスカスまで拡大すると公言している。大イスラエル構想だ。 ベン-グビルはテロ組織イルグンの一員であったイラクのクルド系ユダヤ人の息子。イルグンは1931年にハガナ(後にイスラエル軍の母体になる)から離脱して組織された。当初、ゼエブ・ジャボチンスキーが率いていたが、ジャボチンスキーが死んだ後はメナヘム・ベギンが率いている。ジャボチンスキーは1940年8月にニューヨークで死亡するが、その時に秘書を務めていたのがベンシオン・ネタニヤフ、つまりベンヤミン・ネタニヤフの父親だ。 ベギンは1913年にロシアのブリスク(現在はベラルーシ)で生まれたが、ここは1919年から39年にかけてポーランド領。1939年当時、ベギンはシオニストの指導者グループのひとりだったが、ポーランドのユダヤ人には嫌悪されていたという。(レニ・ブレンナー著、芝健介訳、『ファシズム時代のシオニズム』法政大学出版会、2001年) この時期、この場所に限らず、ユダヤ人の大半はシオニズムを支持していなかった。シオニストは1933年8月、ユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることでナチス政権と合意した。「ハーバラ合意」だが、ヨーロッパのユダヤ人は文化も風習も違うパレスチナへ移住したがらない。 そうした中、1938年11月にドイツではナチスがユダヤ系住民を襲撃して多くの人を殺害、収容所へ送り込み始める。この「水晶の夜」以降もユダヤ教徒はパレスチナでなく、アメリカやオーストラリアへ逃れている。後にシオニストはイラクなどに住むユダヤ教徒に目をつけ、テロで脅してパレスチナへ移住させた。 ユダヤ人の多くはシオニズムを支持していなかった。この計画を打ち出したのはイギリスの支配層だ。シオニズムは16世紀の後半、エリザベス1世が統治するイギリスで広がったのである。アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物が支配層の中に現れたのだ。ブリティッシュ・イスラエル主義である。こうした話を信じた人の中には、スチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)、そしてオリヴァー・クロムウェルの周辺も含まれていた。 クロムウェルを支援者していた富裕層の中にポルトガル出身のフェルナンデス・カルバジャルというコンベルソ(ユダヤ教からキリスト教へ改宗した人びと)が含まれていた。そうした関係もあり、クロムウェルは1657年にユダヤ人がイングランドへ戻ることを認めている。イングランドでは13世紀からユダヤ教徒が追放されていた。 イギリス外務省は20世紀初頭、ロシアとドイツを戦わせようと画策している。イギリス外務省はドイツとの戦争に反対していたグレゴリー・ラスプーチン排除するため、1916年にサミュエル・ホーアー中佐を責任者とする情報機関SIS(通称MI6)のチームをペトログラードへ派遣。そのメンバーに含まれていたオズワルド・レイナーはオックスフォード大学の学生だった当時からフェリックス・ユスポフ公と親密な関係にあり、流暢なロシア語を話した。 暗殺には3種類の銃が使われているが、トドメを刺したのは455ウェブリー弾。イギリスの軍用拳銃で使われていたもので、殺害現場にいた人の中でその銃弾を発射できる銃をもっていたのはレイナーだけだった。スティーブン・アリーはユスポフ家の宮殿で1876年に生まれたと言われている。(Joseph T. Fuhrmann, “Rasputin,” John Wiley & Son, 2013) 戦争の障害になっていたラスプーチンが排除された後、1917年3月にロシアではメンシェビキ、エス・エル(社会革命党)、産業資本家が革命を成功させ、アレクサンドル・ケレンスキーの臨時革命政府を成立させた。二月革命だ。この政府はドイツとの戦争を継続させる。 この展開を嫌ったドイツは亡命中だったボルシェビキの幹部をロシアへ運び、11月の十月革命に繋がった。その際、シオニストはボルシェビキと対立するが、イギリスのウィンストン・チャーチルたちはシオニストを支援している。 蛇足ながら、「ロシア革命」は二月革命と十月革命、全く別のふたつの革命の総称だ。つまり、「ロシア革命はボルシェビキの革命だ」と言うことはできない。イギリスの金融資本が仕掛けた革命をボルシェビキはドイツの支援で潰してしまったのだ。 その一方、イギリスは中東を支配する拠点として新たな国、サウジアラビアとイスラエルを作り、イギリスやアメリカの金融資本はナチスを資金面から支援していた。ナチスは1918年にドイツで創設された「トゥーレ協会」と関係が深い。協会の名前は北方神話の土地、ウルチマ・トゥーレに由来し、そのシンボルはナチスと同じ鉤十字だ。(Christopher Simpson, "The Splendid Blond Beast," Common Courage, 1995) キリスト教を生み出したのがユダヤ人だという話を受け入れられないヨーロッパ人の中には、その源流を北極周辺に求める人もいた。そこにはアトランティスという大陸があり、そこから文明は広まっていったというのだ。トゥーレとアトランティスは同じものを指しているとする人もいる。 トゥーレ協会の源流は「ゲルマン騎士団」だとされ、メンバーには多くの貴族が名を連ねていたという。トゥーレ協会が母体となり、1919年に「ドイツ労働者党」が結成され、その翌年には「国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)」へ改称される。アドルフ・ヒトラーが指導者となるのは1921年からだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.24
イランに対するイスラエルの攻撃計画に関するアメリカの国防総省とNSA(国家安全保障局)の機密文書とされるものを10月18日に中東スペクテイターがテレグラムで公開した。国防総省の国家地理空間情報局からの視覚情報報告書を含む文書には、イランへの攻撃に備えてイスラエル空軍の基地で進行中の活動の詳細も記載されている。これらの文書は本物だと見られている。 公開された文書によると、イスラエル空軍はイラン攻撃の準備を継続し、10月13日に実施された演習に続いて2回目の大規模な軍事演習を実施したとしている。またハツェリム基地、ラマト・ダビド基地、ラモン基地で16発のALBMと40発の空中発射ミサイルなどの兵器が取り扱われていたという。 文書全体は外国人には公表しない最高機密に分類され、項目によってはアメリカとイギリス、あるいは「ファイブアイズ」、つまりアングロ・サクソン系のアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが閲覧することを許している。中東スペクテイターが公開するまでアメリカの「同盟国」もアクセスできなかった文書があるわけで、イスラエルによるイラン攻撃計画の全体像を彼らは知らされていなかったことになる。 ファイブアイズはアメリカとイギリスの情報機関の組織であり、イスラエルと連携しているのだが、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの機関は米英の配下にあるメンバー。この6カ国に含まれない西側諸国はそれ以下の存在だ。 この文書をリークした人物はイスラエルによるイラン攻撃にブレーキをかけようとしたのだと推測されている。イスラエル側にはアメリカ政府が意図的にリークしたと疑っている人もいるようで、両政府の信頼関係が損なわれる可能性があるだろう。 日本ではイスラエルがハマス、ヒズボラ、そしてイランを軍事的に圧倒しているかのように伝えられているが、本ブログで繰り返し書いてきたように、イスラエルは窮地に陥っている。 イスラエルは10月16日にハマスの指導者だったヤヒヤ・シンワルを殺害しているが、シンワルは戦闘の最前線でイスラエル軍と戦い、最後まで屈服しなかった。イスラエル軍はハマスを制圧できてなことを示している。ヒズボラはイスラエルに対する激しいミサイル攻撃を継続中であり、イランでは親米派の政権もイスラエルと戦わざるをえない状況になっている。 1967年6月にイスラエル軍はエジプトを奇襲攻撃して完勝、占領地を広げることに成功したが、73年10月にはヘンリー・キッシンジャーと親しいエジプト大統領のアンワール・サダトがシリアと連携してイスラエルを奇襲攻撃した。 窮地に陥ったイスラエルではゴルダ・メイア首相の執務室で核兵器の使用について議論されている。その際、モシェ・ダヤン国防相は核兵器を選択肢として見せる準備をするべきだと発言したという。アメリカのウィルソン・センターの調査によると、核兵器使用の準備をするという提案はメイア首相が拒否して実行されなかったというのだが、閣議で核兵器の使用が決まったという情報もある。 その後、10月16日にイスラエルの機動部隊がスエズ運河を越えてエジプト軍の背後に回り込みはじめ、エジプト陸軍の第3軍が壊滅の危機に陥った。キッシンジャーはメイア首相に対し、軍の動きを抑えるように頼むが、失敗した。 その日、ソ連のアレクセイ・コスイギン首相はエジプトへ飛んで停戦するように説得し、キッシンジャーは20日にモスクワへ飛ぶ。22日にキッシンジャーはイスラエルから停戦の内諾を得るのだが、イスラエルはエジプトへの攻撃をやめない。アメリカの足下を見透かしての強硬策だ。 それに対し、10月24日にソ連のアナトリー・ドブルイニン駐米大使は米英両国が平和維持軍を派遣してはどうかとキッシンジャーに提案する。その一方、レオニード・ブレジネフ書記長はリチャード・ニクソン大統領宛の手紙の中で、アメリカがソ連と手を組めないのならば、ソ連は単独で行動すると警告していた。(Len Colodny & Tom Shachtman, “The Forty Years War,” Harper, 2009/William Colby, “Honorable Men”, Simon & Schuster, 1978) その直後、キッシンジャーはすぐにWSAG(ワシントン特別行動グループ)を招集して討議しているが、ニクソンには知らされていない。その会議で決まったことは、ニクソン名義でブレジネフへソフトな内容の返信を送り、その一方でアメリカが核戦争の警戒レベルをDEFCON(防空準備態勢)を通常の5から3へ引き上げているということ。ニクソンはこの決定を追認している。25日には全世界のアメリカ軍に対して「赤色防空警報」が出されたともいう。(Len Colodny & Tom Shachtman, “The Forty Years War,” Harper, 2009) メイアは核戦争の危機が迫っていると考え、ダヤン国防相は核攻撃の準備を始める。2基のミサイルに核弾頭をセット、目標をダマスカスとカイロに定めた。キッシンジャーはイスラエルに停戦を強く求め、停戦は実現したものの、イスラエルに「懲罰」を与えるという計画は失敗に終わった。 その後イスラエルは中性子爆弾、あるいは未知の核兵器を使ったという噂もあるが、そうしたことがなかったとしても、第4次中東戦争の際には核兵器を使おうとしている。今回、イスラエルがイランを核攻撃しても不思議ではない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.23
BRICSの首脳会議が10月22日から24日までロシアのカザンで開催される。ロシアのウラジミル・プーチンのほか、中国の習近平、インドのナレンドラ・モディ、南アフリカのシリル・ラマポーザ、エジプトのアブドルファッターフ・アル・シーシー、アラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン、エチオピアのアビ・アハメド、そしてイランのマスード・ペゼシュキヤーンが参加する。ブラジルのルイス・シルバは直前に転倒、軽い脳出血を起こしたことからビデオでの参加になるという。 その前、10月15日と16日にはパキスタンのイスラマバードでSCOサミットが開催された。現在、SCOの正式加盟国は中国、ベラルーシ、インド、イラン、カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、ロシアの10カ国。 この会議にはオブザーバー加盟国としてモンゴルが、また対話国としてアルメニア、アゼルバイジャン、バーレーン、カンボジア、エジプト、クウェート、モルディブ、ミャンマー、ネパール、カタール、サウジアラビア、スリランカ、トルコ、アラブ首長国連邦が、さらにゲストとしてトルクメニスタンも参加。当初、オブザーバー国として参加すると言われていたアフガニスタンは招待されなかったが、繋がりは強化されている。 BRICSとSCOの加盟国が重複、両組織がひとつになることも考えられるが、アメリカによる支配の柱であるドルをBRICS諸国は放棄し、貿易の85%を現地通貨で支払っている。それに続いてCISも外国取引の85%を国内通貨で決済しはじめた。アメリカによる支配からの離脱が進んでいるとも言える。こうした動きの中心はロシアと中国だ。 ロシアのプーチン大統領はイスラエルとの関係を重視していた。ソ連がイスラエルと一線を画し、アラブ寄りだったことを戦略的な間違いだと考えていたようだが、その戦略変更をガザとレバノンの状況が揺るがしている。イスラエルとロシアとの間に亀裂が入り、イランとロシアとの関係が強まってきたのだ。イランへロシアの防空システムS-400が運び込まれたとする推測もある。 イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は10月11日、トルクメニスタンのアシガバートでプーチン露大統領と会談、中東情勢について協議したという。プーチン大統領はペゼシュキアン大統領に対し、モスクワとテヘランの国際情勢に関する立場は非常に近いと語ったとされ、両国の友好的な関係を示したと言える。その数時間前にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はイスラエルがイランの民間核施設を攻撃した場合、「深刻な挑発」になると警告している。 しかし、ペゼシュキアン政権とプーチン政権との関係は5月19日に搭乗していたアメリカ製のベル212ヘリコプターが墜落して死亡したエブラヒム・ライシが大統領だった当時より良くない。このヘリコプター墜落はアメリカにとって好ましいものだった。 その親欧米政権をも動かしたのがイスラエル軍による9月27日の南レバノン空爆。「バンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)」約85発が投下され、ヒズボラ幹部を殺害している。その中には指導者だったハッサン・ナスララも含まれていた。 この攻撃でペゼシュキアン大統領も動かざるをえなくなり、イランはイスラエル南部と中部に180機以上の弾道ミサイルを発射、イスラエルが誇る防空システム「アイアン・ドーム」を突破してイスラエルの軍事基地や情報機関の本部周辺に着弾、相当数の戦闘機が破壊されたともされている。その光景はインターネット上で伝えられた。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.22
ウクライナのウォロディ ミル・ゼレンスキー大統領は10月16日、議会で「勝利計画」の要点を明らかにした。ウクライナのNATOやEUへの加盟を実現し、ロシア深奥部を攻撃するための長距離ミサイルの使用制限を緩和することが含まれている。 長距離ミサイルによるロシア深奥部への攻撃はアメリカ/NATOの軍事衛星、偵察機、人的な情報網などが集めた情報を必要とするだけでなく、オペレーターもミサイル供与国は派遣する必要が生じる。つまりアメリカ/NATOが直接ロシアを攻撃することを意味し、ロシアはアメリカ/NATOを直接攻撃することになる。つまり世界大戦の勃発であり、それは核戦争になる可能性が高い。 それをロシアのウラジミル・プーチン大統領は指摘、核戦争に勝者はいないと警告しているのだが、それを西側ではプーチンが核戦争で脅したとする人がいる。そうした主張は、ロシアに対しておとなしく攻撃されて殺されろと言っているに等しい。米英の情報機関にコントロールされている有力メディアはともかく、西側の支配層でもゼレンスキーの要求が受け入れられていない理由はそこにある。 ウクライナがNATOに加盟できない場合、残された唯一の選択肢は核兵器を保有することだとドナルド・トランプに伝えたとゼレンスキーは10月17日、欧州理事会で語っている。核武装されるのが嫌ならNATOへ加盟させろというわけだが、NATOに加盟するとはアメリカの命令に従う属国になることを意味する。 ウクライナを戦乱へと導いたのはアメリカにほかならない。アメリカの外交/安全保障政策を決めてきたネオコンは1991年12月にソ連が消滅した直後、翌年の2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。 ネオコンは1991年1月の湾岸戦争でソ連軍が動かなかったのを見てロシアも「脅せば屈する」と確信、中立政策を掲げていたウクライナをアメリカの属国にするため、2004年から05年に「オレンジ革命」を仕掛けた。 しかし、この「革命」政権が行った新自由主義政策は西側の私的権力の手先になった特権集団を生み出す一方、大半の国民を貧困化させた。ボリス・エリツィン時代のロシアと同じだ。そこで2010年の大統領選挙では「オレンジ革命」で大統領への就任を阻止されたビクトル・ヤヌコビッチが当選。そこでバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使い、クーデターを実行した。 このクーデターをホワイトハウスで指揮したのは副大統領のジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、そして副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンだとされている。 このクーデターでキエフにはネオ・ナチ体制が樹立されたが、ウクライナがソ連から「独立」するのと同時にウクライナからの独立や自治権を求めていた東部や南部は反クーデターの抵抗運動を開始した。この抵抗運動を潰すためにアメリカ/NATOはキエフ政権を支援、軍事力を増強し、反クーデター軍が支配する東部のドンバス周辺に複数の地下要塞を結ぶ要塞線を築いた。 2021年1月にバイデンが大統領に就任すると、サリバンは国家安全保障補佐官になり、ヌランドは同年5月から国務次官を務め始め、このチームにアントニー・ブリンケンが国務長官として参加している。 クーデターから8年後の2022年にキエフ政権はドンバスに対する大規模な攻撃を仕掛ける動きを見せるが、実際に動く直前にロシア軍がミサイル攻撃を開始してウクライナ軍に大きなダメージを与え、ウクライナ政府はロシア政府と停戦交渉を開始、ほぼ合意に達した。これを潰したのがアメリカやイギリスだということは本ブログでも繰り返し書いてきた。 一連の戦いはネオコンが冷戦でソ連に勝利したと考えたところから始まった。21世紀に入ってロシアが再独立に成功するが、そのロシアも簡単に制圧できると西側諸国は考えたようだ。 その判断が間違っていたことに気づいた人が西側でも少なくないようだが、ネオコンは今でも世界制覇の妄想から抜け出せないでいる。そのネオコンの後ろ盾になっている私的権力はロシアの富を奪うことを前提にして多額の投資をしてきた。ロシアに勝たせるわけにはいかないはずだ。ウクライナに核武装させ、ロシアとの核戦争へと導いて共倒れにさせて「漁夫の利」を得ようとしているとも見られている。彼らは核戦争になっても自分たちのいる場所は安全だと信じているのだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.21
イスラエルは10月16日、ガザで戦っていたハマスの指導者だったヤヒヤ・シンワルを殺害した。戦闘の中でイスラエル軍の戦車がある建物を砲撃、その中にいたハマスの覆面をした戦闘員はふたつの手榴弾を投げて応戦したという。その後、イスラエル軍はドローンを送り込んで調べた上で砲撃して殺害した。翌日の朝にイスラエル側はその戦闘員がシンワルだということに気づき、DNAを調べて確認したとされている。その死をイスラエルの国防大臣が発表、ハマスも確認した。 イスラエルはシンワルが人質に囲まれた状態で隠れていると宣伝してきたが、その嘘をイスラエル軍がばらしてしまった。彼を英雄にしたとも言える。そのイスラエル軍はイスラエル建国の前からパレスチナに住むアラブ系住民を虐殺してきたが、今行われている攻撃は2023年春に開始されている。 2023年4月1日にイスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だというアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺し、4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクへ突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/昨年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃、さらにユダヤ教の「仮庵の祭り」(昨年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。こうした挑発行為を西側の自称「民主主義国」は黙認していた。 そして10月7日、ハマスを中心とする武装グループがイスラエルを攻撃して今回の戦闘が始まった。この軍事作戦をハマスが「アル・アクサの洪水」と名付けたのはそのためだが、そこにイスラエルの影を見る人もいる。ハマスの歴史がそうした見方をさせるのだ。 イスラエルはPLOを率いていたヤセル・アラファトの力を弱めるためにライバルとしてハマスを創設した。イスラエルの治安機関であるシン・ベトはムスリム同胞団のメンバーだったシーク・アーメド・ヤシンに目をつけ、1973年にムジャマ・アル・イスラミヤ(イスラム・センター)を、そして1976年にはイスラム協会を設立させた。ハマスは1987年にイスラム協会の軍事部門として作られたのである。 1967年の3月から4月にかけてイスラエルは軍事的な緊張を高めるため、シリアを挑発した。ゴラン高原のシリア領にトラクターを入れて土を掘り起こしたのだ。シリアが威嚇射撃するとイスラエルは装甲板を取り付けたトラクターを持ち出し、シリアは迫撃砲や重火器を使うというようにエスカレートさせ、その年の6月に第3次中東戦争が勃発した。 この戦争でイスラエルは圧勝、約43万9000人の新たなパレスチナ難民がヨルダン川東岸へ移動しているが、この時にゲリラ戦でイスラエル軍を苦しめたのがファタハであり、そのスポークス・パーソンを務めていたのがヤセル・アラファトだ。1969年2月にアラファトはPLO(パレスチナ解放機構)の執行委員会議長に選ばれ、アラブ人社会の中でファタハの存在は大きなものになっていくと同時にイスラエルから命を狙われるようになる。 2004年11月11日にアラファトは死亡(おそらく暗殺)しているが、同じ年の3月22日にヤシンはイスラエル軍に暗殺されている。 アラファトとヤシンは同じ2004年に死亡したが、イスラエルの首相へ返り咲いたネタニヤフは09年、ヤシンなきハマスにパレスチナを支配させようと計画。そのためにカタールと協定を結び、カタールはハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたという。 しかし、ハマスの内部でも世代交代があり、若い世代はパレスチナ解放を重視するようになる。そこで創設時に近い考え方をするハマス幹部はカタールに住み、パレスチナ解放を目指す幹部はパレスチナやレバノンを拠点にするようになったようだ。シンワルやイスマイル・ハニヤは新しい世代だと言えるだろう。 昨年10月以降、ガザで殺された住民は4万5000人を超えたと言われているが、瓦礫の下に埋まっている遺体は相当数に及ぶと見られている。ランセット誌が今年7月に掲載した論文は「間接的な死者は直接的な死者の3倍から15倍に及ぶ」と指摘、当時報告されていた「死者37,396人に直接的な死者1人につき間接的な死者4人という控えめな推定を当てはめると、ガザにおける戦闘による死者は最大18万6000人、あるいはそれ以上」とした。イスラエルに対する怒りは高まっている。 こうした状況の中、ハマスの求心力は強まりそうだ。しかもヒズボラやイランのミサイル攻撃をイスラエルの防空システムが対応できないことが明確になっている。 10月19日にはヒズボラのドローンがイスラエルの防空システムを掻い潜り、イスラエルの軍用ヘリコプターの横を通ってテルアビブ北部にあるネタニヤフ首相の自宅に命中している。首相本人はいなかったようだが、首相を直接狙えることを示した。ウクライナ同様、パレスチナでもアメリカは窮地に陥っている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.20
ウクライナのウラジミール・ゼレンスキーは自国が核兵器を保有するか、NATOに加盟したいと語った。ゼレンスキーは9月下旬にアメリカを訪問、ジョー・バイデン大統領のほかふたりの大統領候補、つまり民主党のカマラ・ハリスと共和党のドナルド・トランプと会談、その際、トランプにも同じことを伝えたというが、この主張は西側にロシアとの核戦争を求めているのだと理解する人もいる。 アメリカ/NATOはウクライナを舞台にした戦闘でロシアに負けている。その結果、ウクライナ側兵士の死傷者は増え、武器弾薬が不足している。さすがに「ウクライナは勝っている」という宣伝は無理になり、「ロシアを勝たせてはならない」という主張に変化した。 そうした状況をイギリスのベン・ウォレス前国防大臣も明らかにしている。昨年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘しているのだ。 また、ドイツのボリス・ピストリウス国防相は今年2月、ドイツのウクライナへの砲弾供給を昨年に比べて今年は3から4倍に増やすと述べた。ウクライナへ十分な弾薬供給を維持するのに苦労しており、同盟国からの軍事援助が減ったことで懸念が高まっているとしていた。EU外相を務めていたジョゼップ・ボレルは1月31日、EUは3月までにウクライナに約束していた砲弾100万発のうち、約半分しか提供できないと述べている。 しかし、実際のところ、アメリカ/NATOの兵器供給は2022年にロシア軍が軍事介入した直後の段階で不足、ウクライナの戦死者も膨らんでいた。だからこそ、ゼレンスキー政権はロシアのウラジミル・プーチン政権と和平交渉を開始、合意に達していたのだ。その交渉を壊し、戦争を継続させたのがアメリカとイギリスにほかならない。そうした西側の判断が間違っていたのだ。 アメリカの選挙システムは事実上、民主党と共和党の二者択一を要求している。それ以外の政党、あるいは個人として立候補し、当選することは至難の業だ。 勿論、例外的な人物もいた。例えば2000年の大統領選挙では、その前年に実施された世論調査でジョン・F・ケネディ・ジュニア、つまりジョン・F・ケネディ大統領の息子が共和党や民主党の候補者を5ポイントほどリードしていたのだ。ケネディ・ジュニアは出馬の意思を示していなかったが、彼の大統領就任を望む有権者が多かったということである。 もしケネディ・ジュニアが立候補したなら、投票数でトップになる可能性は高い。そこで選挙人が投票結果に拘束されるのかどうかという点が議論された。選挙人が別の候補者に投票することは可能なのか、不可能なのかということだ。アメリカの大統領選挙は候補者本人に投票するのではなく、選挙人を選ぶからだ。アメリカの大統領選挙が機能不全に陥る可能性すらあった。 しかし、そうした懸念を吹き払う出来事が1999年7月16日に起こる。ケネディ・ジュニアが操縦する単発のパイパー・サラトガが墜落したのだ。目的地であるマサチューセッツ州マーサズ・ビンヤード島へあと約12キロメートルの地点だった。本人だけでなく同乗していた妻のキャロラインとその姉、ローレン・ベッセッテも死亡している。 いくつかの点から考えて操縦ミスで落ちた可能性は小さい。例えば、墜落した位置からするとパイパー機は自動操縦で飛んでいた可能性が高い。 現在、こうした例外的な人物は見当たらない。ハリスかトランプになると一般的には考えられている。通常、アメリカの外交/安全保障政策はどの政権でもシオニストが握っている。ジョン・F・ケネディ大統領は在任中、シオニストの命令に従わなくなったが、暗殺された。 ジョー・バイデン政権の場合、外交/安全保障政策はアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官を中心に動いている。バイデン政権が始まった当初はバイデン大統領や今年3月まで国務次官を務めていたビクトリア・ヌランドもこのグループに加わっていた。このグループはシオニストの中でも好戦的なネオコンだ。 しかし、アメリカの支配システムが揺らいでいることもあってアメリカの支配層は割れている。システムが安定していれば、次の政権も基本的に同じ政策を実行するはずだが、状況が違う。ウクライナで戦争を主導してきたネオコンはアメリカの支配層で孤立しつつあるようで、戦争を継続してロシアを破壊、分裂させようと必死だ。トランプが大統領に選ばれた場合、状況は変化する可能性がある。 そこで、イスラエルやロシアがトランプ政権の誕生を見通して様子を見る一方、ウクライナはバイデン政権の間に何とかしたいのだと考える人もいる。パレスチナやレバノンでイスラエルが住民を虐殺しているにも関わらず動きの鈍いロシアにイランが苛立っている原因もそこにあると分析する人もいる。 ロシアはイスラエルによる攻撃に備え、イランに防空システムS-400を配備済みだろうと推測されているが、もしその推測が間違っていたなら、ロシアにとって困難な状況を作り出すことになるかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.19
パレスチナやレバノンで住民を虐殺しているイスラエルをイエメンのアンサール・アッラー(西側では蔑称のフーシ派を使っている)は攻撃している。そこで、イスラエルによる虐殺を支援しているアメリカとイギリスはイエメンの首都サナアの周辺を6回、サアダ州を9回にわたって空爆したが、攻撃は山岳地帯、サアダの小さな通信網、そして空っぽのキャンプを狙ったもので、兵器庫は攻撃していない。 その攻撃でアメリカ空軍はB-2ステルス爆撃機を使用した。イエメン軍は過去1年間に11機以上の無人攻撃機MQ-9 リーパを撃墜、アメリカ軍はイエメンの防空能力が高いと判断していると見られている。そのイエメンのアンサール・アッラーは報復を宣言している。 アメリカやイギリスをはじめとする欧米諸国はイスラエルによる残虐行為を支援してきた。イスラエルの命令に欧米諸国が従っているとする人たちもいるが、中東を支配するため、米英が汚い仕事をイスラエルにやらせているという見方もある。その仕事を請け負っているのがシオニストだが、最近はシオニストの中でも狂信的な勢力が力を持っている。 そうした勢力に属しているベザレル・スモトリッヒ財務大臣はフランス語チャンネル「アルテ」が制作・放映したドキュメンタリー「イスラエル:権力の極右派」の中で、パレスチナ全土だけでなくシリアまで及ぶユダヤ人国家の設立を目指していることを認めた。ユーフラテス川とナイル川で挟まれた地域、ヨルダン、シリア、レバノン、イラク、エジプトの領土も含む場所は神がユダヤ人に与えたのだと主張する「大イスラエル」構想だ。これは1948年の「建国」時点から消えていない。 パレスチナに「ユダヤ人の国」を築くというシオニズムは遅くとも16世紀後半に生まれている。エリザベス1世が統治していたイギリスで出現したブリティッシュ・イスラエル主義から派生しているのだ。 その当時、イギリスのエリート層の中に、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物が現れた。アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だというのだ。 例えばスチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)、あるいはオリヴァー・クロムウェルの周辺にもそう信じる人がいたという。ピューリタンの少なくとも一部はそのように信じていたようだ。 ちなみに旧約聖書の記述によると、イスラエル民族の始祖はヤコブ。彼には12人の息子があり、それぞれ支族を形成、そのうちユダ族とベニヤミン族の後裔とされる人びとが「ユダヤ人」と呼ばれている。残りは行方不明で、旧約聖書を信じる人びとから「失われた十支族」と呼ばれているのだが、ユダヤ人の定義から外れるので無視されたのだろう。 キリスト教はユダヤ教から派生したのだが、ヨーロッパでキリスト教が支配システムに組み込まれると、自分たちを神と結びつけるために聖書を都合よく解釈するようになる。もっとも、その前に新旧聖書は改竄されているようだが。 イギリスのシオニストは自分たちが救済されるためには、パレスチナにユダヤ人を集めなければならないと考えた。そこで彼らはユダヤ教徒のエリートとも手を組むのだが、大多数のユダヤ人からは拒否されていた。 その後、ユダヤ人の中にもシオニストが増えていくが、ベンヤミン・ネタニヤフ政権の閣僚にはそうした類の人が少なくない。スモトリッヒ財務大臣だけではないのだ。 例えば、昨年10月、ネタニヤフ首相はパレスチナ人虐殺を正当化するため、「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、ユダヤ人と敵だと記述されている「アマレク人」とパレスチナ人を重ねて見せた。 彼は「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたという。 また、サムエル記上15章3節には、「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。 パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、彼らが生活していた歴史を消し去るということだろう。その宣告通りのことをイスラエルは行っている。彼らにとって「アマレク人」はパレスチナ人だけを指しているわけではない。 アメリカ、イギリス、イスラエルはブリティッシュ・イスラエル主義で結びついている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.18
朝鮮が兵士1万人をロシアへ派遣したとウクライナのメディア、キエフ・インディペンデントが伝えた。「この問題に詳しい西側外交官」の情報だというのだが、その話を裏付ける証拠や根拠は示されていない。その怪しげな話をウォロディミル・ゼレンスキーも主張している。 アメリカが東アジアにおける軍事的な緊張を高める中、ロシアは朝鮮との関係を強化しているが、そうした朝鮮軍派兵の話をウラジミール・プーチン大統領の報道官は否定、ドミトリー・ペスコフ外相は偽情報だと一蹴している。 ウクライナにおける戦闘はアメリカ/NATOの傀儡軍とロシアとの間で行われているのだが、戦況は圧倒的にロシアが優勢。ウクライナ軍だけでなくアメリカ/NATO全体の兵器が枯渇している。 当然のことながら多くのウクライナ兵が死傷、イギリスのベン・ウォレス前国防大臣は昨年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘。街中で兵士にできそうな男性が徴兵担当者に拉致される様子が撮影され、世界に発信されている。西側諸国はウクライナ人に対し、最後のひとりまでロシア軍と戦え、つまり「総玉砕」しろと命じているが、それでは追いつかない。 アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵がウクライナ軍へ加わり、相当数の死傷者が出ている。アメリカのやり方を考えると、朝鮮の名前を出してきたのは東アジアからも戦闘員がウクライナ軍へ参加しているのかもしれない。 8月6日には1万人から3万人ほどの兵力でウクライナ軍がロシアのクルスクへ軍事侵攻したが、この作戦は西側でも無謀だと言われていた。戦力不足を補うため、この侵攻部隊にもアメリカ、イギリス、フランス、ポーランドの特殊部隊、そして各国から集められた傭兵が参加しているが、壊滅的な状況だ。 ウクライナ軍はクルスクでの作戦に参加させるため、残り少なくなった精鋭部隊を投入しただけでなく、ドンバスから部隊を回したのだが、ロシア軍はドンバスから部隊を移動させることなく予備部隊を投入して対応。その結果、ドンバスでロシア軍の進撃スピードが高まった。8月以降、ウクライナ軍の死傷者数はそれまで以上に膨らんでいる。それを誤魔化すため、アメリカ政府は主語を入れ替え、「ウクライナ」を「ロシア」にしているようだ。ロシア軍はクルスクに侵攻したウクライナ軍を包囲し、ドンバスの接触線沿いの村や町を数多く占領している。 バラク・オバマ政権が始めたロシアとの戦争は悲惨なことになっているのだが、オバマ政権の副大統領はジョー・バイデンにほかならない。そのバイデンが大統領に就任してから対ロシア戦争を本格化させた。ルビコンを渡ったのだ。その戦争にアメリカが負けていることを選挙前に認めることはできない。 アメリカのニューズウィーク誌によると、ウクライナでロシア軍が発射している砲弾の数はウクライナ軍の4倍だというが、これは生産力の差でもある。現在、ロシアの生産力はアメリカ/NATO諸国の数倍だと言われている。必然的にウクライナ兵の死傷者数はロシア兵の死傷者数より多くなる。ロシア兵の死傷者数はウクライナ兵の1割程度というのが常識的な見方だ。 ロシアが朝鮮やイランから兵器を調達する必要はないのだが、ロシアが両国との関係を強化していることは事実だ。プーチン大統領は6月に朝鮮を公式訪問、金正恩労働党委員長と会談し、包括的戦略パートナーシップ条約を締結した。政治面だけでなく軍事面でも両国は連携することを定めている。 アメリカはオーストラリアやイギリスとAUKUSという軍事同盟を組織し、日本や韓国と軍事的な連携を強めているが、そうした動きにロシアと中国は朝鮮を巻き込み、対応する姿勢を示したとも言える。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.17
イスラエルが30日以内にガザの悲惨な人道状況を改善しなければ、アメリカからの武器供給が影響を受けるリスクがあるとアントニー・ブリンケン国務長官やロイド・オースチン国防長官はイスラエルの指導者に書簡を送ったとアメリカのニュース・サイト、アクシオンが伝えた。 アメリカの政府がイスラエルによるガザでの破壊と虐殺を止める気があるならば、武器供給を止めれば良いと指摘されてきた。アメリカからの供給が止まれば1、2カ月でイスラエルの武器は枯渇し、戦闘を継続できなくなるからだ。 一見、アメリカはイスラエルによる残虐行為を止める気になったように思えるが、少なからぬ人が30日後にはアメリカの大統領選挙が終わっていると指摘している。選挙前には何もしないと言っているのだ。選挙が終われば約束は忘れられる。 この宣伝は、イスラエルによるパレスチナ人虐殺を支援しているジョー・バイデン政権に対するアメリカのイスラエル教徒の怒りを鎮めることが目的だろうと言われている。本気なら30日も待つ必要はない。しかも、この話が政府の公式発表でなくメディアの「報道」という形であることも嘲笑されている。 ワシントン・ポスト紙によると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はバイデン政権に対し、イランに対する攻撃は石油施設や核施設でなく軍事施設を目標にすると伝えたという。イランの石油施設を攻撃した場合、アメリカの利権である中東の従属産油国の石油関連施設が破壊される可能性が高く、アメリカからイスラエルに対し、そうした施設を攻撃目標から外すように命令された可能性はある。そうした条件の下、この攻撃をアメリカ政府は承認しているようだ。イスラエルがイランを攻撃した後に30日以内云々の約束が守られるようには思えない。そもそもアメリカもイスラエルも、これを約束だとは考えていないだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.16
日本を取り巻く環境は厳しい。東アジアでも軍事的な緊張が高まり、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で人類の存続を危うくしかねない遺伝子操作薬を世界規模で接種、経済状況は悪化しつつある。いずれも原因を作ったのはアメリカだ。 アメリカの安全保障分野を支配しているシオニストの一派であるネオコンは1992年から世界制覇プロジェクトを始めた。これは本ブログでも繰り返し書いてきたことだ。 1990年代からネオコンは旧ソ連圏を分割、ユーゴスラビアを先制攻撃で破壊し、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された2001年9月11日以降、アメリカは世界制覇戦争を始めた。2011年からはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を手先として使い、中東を戦乱で破壊、ウクライナはネオ・ナチを使って植民地化、さらにガザで住民虐殺を続けるイスラエルを支援してエネルギー資源の供給を危うくしている。そして東アジアでは中国を挑発する一方、日本などで戦争の準備を進めている。 日本やEUはアメリカが短期間で勝利すると信じていたのかもしれないが、ウクライナではロシアに圧倒され、テロでインフラやロシア市民を虐殺しようとし、パレスチナではイスラエルによるアラブ人の大量殺戮を支援している。東アジアでは日本列島から台湾にかけてミサイル発射基地を建設、中国やロシアを攻撃する準備を進めている。 このまま進めば世界は破滅する可能性が高いのだが、日本ではそうしたことを懸念する声をあまり聞かない。日本は明治維新以降、イギリスやアメリカの巨大金融機関の影響下にある。これは第2次世界大戦の前も後も同じだ。その支配システムは米英金融資本の下に築かれた天皇制官僚構造にほかならない。 その構造は日本の人間、社会、自然を破滅へと導いているのだが、その構造を変える動きは見られない。せいぜい、その枠組のなかにおける「政策の民主化、または自由主義的な妥協」を目指すだけだが、そうした動きも頼りない。ヨーロッパ諸国はナチズムが復活、日本より状況は悪い。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.16
THAAD(終末高高度防衛)ミサイル砲兵連隊とそれに関連するアメリカ軍人約100名をイスラエルへ配備することをアメリカの国防総省が承認したと発表された。THAADは成層圏よりも上の高度で目標を迎撃するために開発されシステムだ。ジョー・バイデン大統領は昨年にもアメリカ軍にTHAADバッテリーを中東へ配備するよう指示している。 イスラエル軍が9月27日に南レバノンを約85発のバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)で攻撃した後、10月1日にイラン軍は180機以上の弾道ミサイルを発射、F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、そしてモサドの本部などを攻撃した。 イスラエル政府は厳しい報道管制を強いているが、目標の周辺にミサイルが着弾していることが確認されている。イスラエルの防空システム、アイアン・ドームは「撃墜率が高い」と宣伝されてきたが、それは御伽話にすぎないことが明確になった。THAAD配備の理由はそこにあるのだろうが、THAADの性能もロシア製の防空システムに比べてかなり低いと見られている。 シオニストの一派であるネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制を倒し、シリアとイランを分断して弱体化させると主張していた。 欧州連合軍のウェズリー・クラーク元最高司令官によると、1991年に国防次官だったポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると口にし、2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された10日ほど後、クラークは統合参謀本部でイラクを攻撃するという話を聞いたという。その後、国防長官の周辺で攻撃予定国のリストが作成されていたことをやはり統合参謀本部で知らされている。そのリストに載っていた国はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランだ。(ココやココ) そのイランをアメリカ政府のネオコンやイスラエル政府は破壊しようと目論んでいる。イランの現大統領は親欧米派のマスード・ペゼシュキアンだが、イスラエルやアメリカがイランを攻撃すれば、イラン政府は報復攻撃せざるをえない。イスラエル/アメリカはイランを混乱させた上でカラー革命を計画している可能性もあるが、イスラエル軍によるパレスチナ人虐殺もあり、難しいだろう。 ネオコンは1992年2月に国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を作成したが、その中で、中東や南西アジアにおける彼らの目標はこの地域を支配し続けること、欧米諸国によるこの地域の石油へのアクセスを維持することだとし、さらに中東や南西アジア、ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏で脅威が出現しないようにするともしている。潜在的なライバルを抑え込むということだ。 本ブログでもすでに書いたことだが、ネオコンの思想的な基盤であるシオニズムは、16世紀後半、エリザベス1世が統治するイギリスで出現したブリティッシュ・イスラエル主義から派生している。自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物がエリート層の中に現れたのだ。例えばスチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)のほか、オリヴァー・クロムウェルの周辺にもそう信じる人がいたという。彼らの信仰によると、自分たちが救済されるためには、パレスチナにユダヤ人を集めなければならない。そこで彼らはユダヤ教徒のエリートとも手を組むことになる。 イスラエルは1948年5月に建国されるが、大多数のユダヤ教徒はナチスの弾圧後でもパレスチナへ向かわず、オーストラリアやアメリカへ逃げた。そこでイラクなどに住むユダヤ教徒に対するテロを実行、安全な場所はイスラエルだけだと信じさせようとしている。 そうした経緯もあり、パレスチナへ集まったユダヤ教徒は宗教色が濃くなり、現在ではカルトとしか言えない集団の影響力が強まっている。イスラエルのベザレル・スモトリッヒ財務大臣はフランス語チャンネル「アルテ」が制作・放映したドキュメンタリー「イスラエル:権力の極右派」の中で、パレスチナ全土だけでなくシリアまで及ぶユダヤ人国家の設立を目指していることを認めた。ユーフラテス川とナイル川で挟まれた地域、ヨルダン、シリア、レバノン、イラク、エジプトの領土も含む場所は神がユダヤ人に与えたのだと主張する「大イスラエル」構想だが、これは1948年の「建国」時点から消えていない。 ユーフラテス川とナイル川で挟まれた地域は神がユダヤ人に与えたのだとする主張の根拠とされているのはキリスト教徒が言うところの旧約聖書。ユダヤ教では旧約聖書の初めにある部分を「モーセ5書(トーラー)」と呼ぶ。土地を所有しているのは神であり、ユダヤ教徒はトーラーを守るという条件の下でその土地に住むことを許されたのだが、シオニストは神によってユーフラテス川とナイル川で挟まれた地域はユダヤ人のものになったと主張している。 昨年10月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はパレスチナ人虐殺を正当化するため、「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、ユダヤ人と敵だと記述されている「アマレク人」とパレスチナ人を重ねて見せた。彼は「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を引用、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神に命じられたとしている。 また、サムエル記上15章3節には、「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。パレスチナ人を皆殺しにするだけでなく、彼らが生活していた歴史を消し去るということだろう。その宣言通りのことをイスラエルは行い、アメリカをはじめとする西側諸国はその大量殺戮を支援しているのだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.15
ヒズボラは10月13日にもイスラエルの軍事施設を攻撃した。ヒズボラの力が衰えたようには見えない。 イスラエル軍は9月27日に南レバノンを約85発のバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)で攻撃、ハッサン・ナスララを含むヒズボラの幹部を殺害した。その報復としてイラン軍は10月1日に180機以上の弾道ミサイルを発射、F-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、そしてモサドの本部などを攻撃している。 ミサイルが衛星で誘導されていなければ精度は落ちるが、モサドの本部から約300メートルの地点にミサイルが着弾していることは確認されている。軍事基地にも被害が出ているようだ。イスラエルが宣伝してきた防空システム、アイアン・ドームは機能していない。 イランの攻撃はイスラエルによる挑発攻撃への報復。イスラエル空軍は4月1日にゴラン高原の方向からダマスカスを攻撃してイラン大使館領事部を破壊、IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊コッズの上級司令官であるモハマド・レザー・ザヘディ准将と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害、7月31日にはテヘランにいたハマスのイスマイル・ハニヤを暗殺している。 10月1日の攻撃に対し、アメリカのジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は「イランの攻撃には重大な結果が伴う」と語っているが、イランに対する報復は行われていない。攻撃の相手はレバノンばかりだ。しかも、イスラエル軍は地上部隊をレバノンへ軍事侵攻させたが、ヒズボラの待ち伏せ攻撃に苦しんでいる。 アメリカ主導軍は1991年1月にイラクへ軍事侵攻したが、サダム・フセイン体制を倒す前に停戦。欧州連合軍のウェズリー・クラーク元最高司令官によると、その直後に国防次官だったポール・ウォルフォウィッツは怒り、イラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。(ココやココ) ウォルフォウィッツが属すネオコンは1980年代からイラクのフセイン体制を倒して親イスラエル体制を樹立させ、イランとシリアを分断してシリアを体制を転覆させ、イランを弱体化させるというプランを持っていた。裏では、イラクをイスラエルの植民地的にして石油を確保するつもりだったとも言われている。現在でもアメリカ軍はシリアの油田地帯を不法占領しているが、その目的も同じだ。 2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、その出来事を利用してジョージ・W・ブッシュ政権は1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいて世界制覇戦争を本格化させる。 この攻撃から10日ほどのち、クラークは統合参謀本部でイラクを攻撃するという話を聞いたという。そこのスタッフは攻撃する理由がわからないと口にしていたという。その6週間ほど後、国防長官の周辺で攻撃予定国のリストが作成されていたことをやはり統合参謀本部で知らされている。 そのリストに載っていた国はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイラン。5年間に7カ国を破壊することになっていた。リストのトップに書かれているイラクが攻撃されたのは2003年3月、そして今、イランに矛先を向けている。 しかし、アメリカはイランに勝つことはできない。圧倒的に戦力が不足しているからだ。イラクでの経験から考えて、イランを占領するためにアメリカ軍は約240万人を投入する必要があると推計されている。予備役を投入してもアメリカ軍にそれだけの戦力はない。 イギリスの首相がリシ・スナックからキア・スターマーへ交代してからキプロスにあるイギリス空軍の基地からイスラエルへアメリカ特殊部隊を運ぶ頻度が倍になったと言われているが、それでイランに勝てるわけではない。 しかし、アメリカはイギリスの戦略を引き継ぎ、中東全域を掌握しようと考えている。その手先として機能しているのがイスラエルだが、今後、どうなるかは不明だ。アフガニスタンの管理を任せるために組織したタリバーンは自立し、アメリカの命令に従わなくなった。イスラエルではカルトが影響力を強め、コントロールが難しくなりそうだ。ウクライナではネオ・ナチを使っているが、ウクライナの敗北が避けられない状況の中、ネオ・ナチのコントロールが難しくなっている。 しかも、イランの場合はロシアや中国と同盟関係に入っている。イランがイスラエル/アメリカに攻撃された場合、ロシアや中国が傍観する可能性は小さい。すでにイランへはロシアの防空システムが持ち込まれている可能性が高く、イスラエル/アメリカの軍事侵攻を待ち構えているのだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.14
イスラエル当局はアメリカ人ジャーナリストのジェレミー・ロフレドを逮捕した。10月1日にイラン軍は180機以上の弾道ミサイルを発射、イスラエルの軍事基地や情報機関の本部を攻撃した。イスラエル政府は否定しているが、周辺でミサイル攻撃の様子が撮影されたほか、何人かのジャーナリストが着弾地点を実際に調べている。そうした取材、報道していたひとりがロフレドだ。保釈にはなったが、出国は禁止されている。 攻撃された場所はF-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、そしてモサドの本部など。ロフレドは、ネゲブのネバティム空軍基地からテルアビブのモサド本部まで、イランのミサイル攻撃を受けた軍事基地や情報機関モサドの本部を訪れて被害を確認している。 このイランによる攻撃はイスラエルに対する報復だった。イスラエル空軍は4月1日にゴラン高原の方向からダマスカスを攻撃してイラン大使館領事部を破壊、IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊コッズの上級司令官であるモハマド・レザー・ザヘディ准将と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害、7月31日にはテヘランにいたハマスのイスマイル・ハニヤを暗殺している。 こうした攻撃に対するイラン政府の報復は不可避だと考えられたが、動きは鈍かった。焦らしているとする推測もあったが、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領によると、イスラエルを攻撃しなければイランに対する実質的な制裁の解除と、ハマスの条件に沿ったガザでの停戦保証を欧米の当局者は提案、その提案をペゼシュキアは信じというのだが、それが事実ならあまりにもお粗末。愚かすぎた。 そして9月27日、イスラエル軍は南レバノンにバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)約85発を投下して破壊。レバノン社会医学協会のライフ・レダ会長はイスラエルがバンカー・バスター爆弾BLU-109の弾頭に劣化ウラン弾を使っている疑いがあると語った。サイード・ナスララをはじめとするヒズボラの幹部が殺されたほか、少なからぬ市民が犠牲になっている。そのイスラエルによる攻撃でペゼシュキアンは目が覚めたのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.13
核兵器廃絶の訴えに反対する人は少ないだろうが、現在、核戦争勃発の可能性はかつてなく高まっている。1962年10月のキューバ危機よりも危険な状態だという人もいる。それにもかかわらず、大多数の人は気にしていないようだ。「核兵器廃絶」は中身のない掛け声にすぎないと言われても仕方がないだろう。 2013年5月から16年5月までSACEUR(NATO軍作戦司令部の司令官)を務めたアメリカ空軍のフィリップ・ブリードラブ退役大将は2022年4月7日付け記事の中で、ウクライナにロシアが軍事介入した直後に「私たちは核兵器と第3次世界大戦をあまりにも心配したため、完全に抑止されてしまった」と語っている。核兵器と第3次世界大戦を気にせず、ロシアを攻撃しろということだろう。2022年4月9日、イギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令している。 アメリカには核兵器を脅しの道具に使った歴史がある。例えば、ドワイト・アイゼンハワーは1953年に大統領となった直後、泥沼化した朝鮮戦争から抜け出そうと考え、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) その後、アメリカは矛先をインドシナへ向けるのだが、そうした中、1958年8月から9月にかけて台湾海峡で軍事的な緊張が高まる。1971年にベトナム戦争に関する国防総省の秘密報告書を有力メディアへ流したダニエル・エルズバーグによると、1958年の危機当時、ジョン・フォスター・ダレス国務長官は金門島と馬祖に核兵器を投下する準備をしていた。 アイゼンハワー政権で副大統領を務めたリチャード・ニクソンは大統領になっていた1972年4月、北ベトナムを核攻撃してはどうかと国家安全保障補佐官を務めていたヘンリー・キッシンジャーに語ったというのだが、キッシンジャーの側近だったロジャー・モリスによると、ニクソンは北ベトナムに対する核攻撃の計画を1969年10月から11月の期間に指示したとしている。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) アイゼンハワーが朝鮮戦争を終わらせる手法を見ていたニクソンは「凶人理論」の信者になり、核攻撃しかねないと思わせればアメリカ主導の和平に同意すると考えていたようだ。パキスタンの政治学者、エクバル・アーマドによると、北ベトナムの代表団と和平交渉している間にキッシンジャーは12回にわたって核攻撃すると脅したという。(前掲書) また、イスラエルのモシェ・ダヤン将軍は狂犬のように思わせなければならないと語ったが、その意味するところは同じである。ジョー・バイデンを担いでいるシオニストの一派、ネオコンも脅せば屈すると信じている。 ネオコンは1991年12月にソ連が消滅して以降、核兵器の使用にも前向きになった。彼らはアメリカが唯一の超大国になったと信じ、他国に配慮することなく好き勝手に振る舞えると考えたのである。 ロシアや中国は相当数の核兵器を保有しているが、それでも問題ないとアメリカの支配層は考えるようになったようだ。例えば、外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文には、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日が近い、つまり核戦争で中露に勝てる日が近づいているとしているのだ。 彼らの論理によると、ソ連の消滅でアメリカは核兵器の分野で優位に立ち、近いうちにロシアや中国の長距離核兵器を先制攻撃で破壊できるようになるだろうというのだ。リーバーとプレスはロシアの衰退や中国の後進性を信じ、アメリカが技術面で優位にあるという前提で議論している。ブリードラブも同じように考えている。 バラク・オバマはアメリカ大統領に就任した後に「核兵器のない世界の平和と安全を求めるアメリカの決意」を表明、2009年4月にオバマ大統領はロシアの元大統領ドミトリ・メドベージェフ氏とともに「核のない世界を実現する」と誓約し、その直後にプラハで「核兵器のない世界の安全」を求めると演説しているが、口先だけで終わった。オバマはかつてないほど核兵器を増強することになる。 そもそも核兵器はソ連を破壊するため、イギリス主導で開始された。1940年2月にバーミンガム大学のオットー・フリッシュとルドルフ・パイエルスのアイデアに基づくプロジェクトが始まり、MAUD委員会が設立されている。アメリカでは1941年6月にフランクリン・ルーズベルト大統領がEO(行政命令)8807という大統領令を出し、OSRD(価格研究開発局)が設置された。 MAUD委員会のマーク・オリファントは1941年8月にアメリカへ派遣されてアーネスト・ローレンスと会い、アメリカの学者も原子爆弾の可能性に興味を持つようになったと言われている。この年の10月にルーズベルト大統領は原子爆弾の開発を許可、イギリスとの共同開発が始まった。日本軍が真珠湾を奇襲攻撃する2カ月前のことである。 マンハッタン計画を統括していた陸軍のレスニー・グルーブス少将は1944年、ポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。(前掲書) そして1945年7月16日にアメリカのニューメキシコ州トリニティ実験場でプルトニウム原爆の爆発実験を行い、成功。それを受けてハリー・トルーマン大統領は原子爆弾の投下を7月24日に許可。そして26日にアメリカ、イギリス、中国はポツダム宣言を発表、8月6日に広島へウラン型を投下、その3日後には長崎へプルトニウム型を落としている。 日本は8月15日に「玉音放送」と呼ばれる天皇の声明が放送されたが、その半月後にグルーブス中将に対し、ローリス・ノースタッド少将はソ連の中枢15都市と主要25都市への核攻撃に関する文書を提出。9月15日付けの文書ではソ連の主要66地域を核攻撃で消滅させるには204発の原爆が必要だと推計している。そのうえで、ソ連を破壊するためにアメリカが保有すべき原爆数は446発、最低でも123発だという数字を出した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.12
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