《櫻井ジャーナル》

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2010.05.20
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 案の定、アメリカのイラン制裁案にトルコとブラジルは不快感を示している。自分たちがイランと合意した濃縮ウランとウラン燃料のスワップ取引を否定されたのだから当然のことだが、イランの核問題についてアメリカが話し合いで解決する気のないことも印象づけてしまった。アメリカへの信頼度がさらに低下するということだ。

 その結果、「西とイランの対決」という構図から「北と南の対決」という構図に変化していく可能性がある。イラン/トルコ/ブラジルのスワップ取引合意の直後にイラン制裁の強化を表明したのは戦術的に正しかったとしても、戦略的には大きな失敗だったと言えるだろう。

 イラク、アフガニスタン、パキスタンでも似たような間違いをアメリカは仕出かしている。NATOのデータでも今年1月から4月にかけて90名の市民が占領軍によって殺されているのだが、こうした殺戮が武装グループの兵士を増やしていることは否定できない。

 最近、特に問題視されているのが無人機による暗殺工作。その実態は秘密にされているのだが、無人機を使った作戦を展開され、その過程で戦闘とは関係のない多くの人々を殺害していることは間違いない。

 無人機を使用すれば、アメリカ人が殺されるリスクを冒さずターゲットを殺すことができる。そこで、アメリカ軍を撤退させて無人機や巡航ミサイルを使い、場合によっては空爆し、地上での活動が必要なら少人数の特殊部隊を投入すれば良いという議論も出てきた。が、そうした殺戮は何らかの形で自分たちに跳ね返ってくる。

 ニューヨークのタイムズ・スクエアに「爆弾」を仕掛けたファイサル・シャーザドのような人間が次々に出てくる可能性があるということだ。そうした事態に備えてイスラム教徒に対する監視を強化し、場合によっては追い出すという方向へ向かうかもしれないが、アメリカを要塞化しても根本的な解決にはならない。外に出ないわけにはいかないからである。

 現在、超小型の無人機、つまり窓から中のターゲットを殺すことのできる殺人マシーンを開発中だとも言われているが、そんなものを作り出してもアメリカが世界で孤立するだけの話だ。

 ベトナム戦争では、CIAの破壊工作部門が軍の特殊部隊と手を組んで「フェニックス・プログラム」という「皆殺し作戦」を展開した。反米的な雰囲気の地域に住む村民を皆殺しにして恐怖で屈服させようとしたのだろうが、成功していない。このプログラムの残党がジョージ・W・ブッシュ政権で要職に就いていることもイラクやアフガニスタンでの作戦に影響しているかもしれない。

 1968年3月、ウィリアム・カリー中尉に率いられた部隊がソンミ村(ミ・ライ)の住民350名以上を虐殺しているのだが、この虐殺もフェニックス・プログラムの一環だった。だからこそ、虐殺の当事者が厳罰に処されることはなかったのである。責任を問われるべきだったのはフェニックス・プログラムを指揮していた情報機関の幹部だった。アメリカ人はベトナム戦争から何も学ばず、21世紀になっても同じ失敗を繰り返している。





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最終更新日  2010.05.20 18:35:26


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