《櫻井ジャーナル》

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2010.05.26
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 アメリカはイランの核開発を激しく批判し、軍事侵攻も否定していない。自らが世界最大の核兵器保有国だということを忘れ、中東にはイスラエルという世界有数の核兵器保有国があることを無視した説得力のない主張だ。

 イスラエルはNPT(核不拡散条約)に加盟していない。イランはNPTのルールの中で曲がりなりにも査察を受けてきたにもかかわらず、激しく批判され、制裁されているのだが、イスラエルはお咎めなし。アメリカはイランを含む特定の国が核開発することを嫌っているのか、そうした国々を単に破壊しただけ・・・そう見られても仕方がないだろう。

 アメリカがイスラエルの核開発に気づいたのは1958年のことである。CIAが飛ばした偵察機U2がネゲブ砂漠のディモナ近くで建設中の施設を発見したのだが、担当者は原子炉の疑いがあると判断した。

 そこで、画像情報本部の責任者だったアーサー・ランダールはドワイト・アイゼンハワー大統領に対し、ディモナ周辺の詳細な調査を行うように求めるのだが、それ以上の調査が実行されることはなかった。後に、施設はフランスとの秘密協定に基づいて建設された2万4000キロワットの原子炉だということが判明している。

 また、イスラエルの科学者は1960年2月にサハラ砂漠で行われたフランスの核実験に参加しているが、この直後にイスラエルは原爆を手にしている。1963年になると、イスラエルとフランスは共同で核実験を南西太平洋、ニュー・カレドニア島の沖で実施するのだが、両国の関係は1967年の第3次中東戦争で悪化、核開発の協力関係も崩れた。

 フランスと入れ替わりで登場してきたのが南アフリカ。1968年に両国は核開発に関して協力することで合意し、イスラエルはウランを入手するかわりに核技術や兵器を提供することになる。

 アメリカの研究者、サーシャ・ポラコフ・スランスキーは新著の中で、1975年に南アフリカの国防大臣だったP・W・ボタとイスラエルの国防大臣だったシモン・ペレスが会談、イスラエルが南アフリカに核弾頭を提供することで合意したことを明らかにしている。

 その後、両国の関係は深まったようで、1976年1月に南アフリカはイスラエルのテルアビブに大使館を開設、同年4月には南アフリカのジョン・フォルスター首相がイスラエルを訪問している。

 勿論、こうした動きをアメリカが知らなかったとは思えないが、ソ連も気づく。1977年8月、ソ連のレオニド・ブレジネフ書記長がカーター米大統領に対し、カラハリ砂漠で南アフリカが核実験を準備している証拠をコスモス衛星がつかんだと警告、この話はイギリス、フランス、そして西ドイツにも伝えられた。その直後、アメリカの衛星もカラハリ砂漠で地下核実験の準備が進んでいることを確認した。



 そして1986年10月、イギリスのサンデー・タイムズ紙がイスラエルの核施設で働いていた技術者の証言を写真付きで報じた。その技術者がモルデカイ・バヌヌである。

 バヌヌはイスラエルが保有する核弾頭の数を200発以上だとしていたが、イスラエルの軍情報部の幹部だったアリ・ベンメナシェは1981年で300発以上の原爆を保有、この年には水爆の実験にも成功しているとと主張、また1977年から81年までアメリカの大統領を務めたジミー・カーターは150発という数字を示している。

 バヌヌの告発があるまで、アメリカのCIA(中央情報局)やDIA(国防情報局)はイスラエルが保有する核弾頭の数を24から30発と推測していたという。現在でもこの数字に若干上乗せした数を主張している人もいるようだが、堅めにみて百数十、おそらく数百発は持っていると考えるべきだろう。ともかく、世界有数の核兵器保有国である。

 記事が掲載される前、バヌヌはイタリアでイスラエルの情報機関によって拉致された。大きな箱に押し込められ、船でイスラエルへ運ばれ、裁判にかけられている。拉致したイスラエル政府が制裁されることはない。1988年3月に懲役18年の判決を受けている。

 2004年にバヌヌは出所したのだが、外国人と接触したという理由で2007年7月に懲役6カ月を言い渡され、再び収監されている。そして今年5月、また収監されている。理由は同じである。どうしてもイスラエル政府はバヌヌの口を封じておきたいようだ。

 イスラエルが世界有数の核弾頭保有国であり、アメリカが核兵器の開発や核物質の入手などを容認してきた事実を語られれば、イランを批判しにくくなる。あるいは、公表されていない秘密がまだあるのかもしれない。





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最終更新日  2010.05.27 01:51:16


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