《櫻井ジャーナル》

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2010.12.01
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 イランでふたりの核物理学者が11月29日、シャヒド・ベヘシティ大学の近くで襲撃された。そのうちのひとりマジド・シャーリアリが死亡、別の場所で襲われたフェレイドーン・アッバシは負傷し、それぞれ一緒にいた妻も負傷している。両ケースとも、近づいてきたオートバイの一団がターゲットの自動車に爆発物を取り付け、数秒後に爆発したという。

 アッバシは核計画に関わっている国防省の高官。シャーリアリも核関連の仕事をしていて、「SESAME(中東における実験科学及び応用のための放射光国際センター)」にも参加していた。今年1月にはSESAMEに参加していた別のイラン人科学者、マッスード・アリ・モハッマディもテヘランの自宅前で、同じように殺されている。

 SESAMEはユネスコが賛助する機関として設立され、ヨルダンに国際共同研究施設がある。加盟国はイランのほか、ヨルダン、バーレーン、エジプト、キプロス、パキスタン、トルコ、そしてイスラエルとパレスチナ自治政府で、そのほかに日本を含む11カ国がオブザーバーとして加わっている。

 襲撃したのはアメリカやイスラエルの情報機関だとイラン側は主張している。確かに両国はイランの核開発を激しく非難、先制攻撃も辞さないと主張してきたわけで、「ありそうな話」だが、決定的な証拠が示されたわけではない。

 WikiLeaksが公開した文書によると、サウジ・アラビアもイランを攻撃するように求めてきたらしいが、やはり最も強くイラン攻撃を望んできたのはイスラエルだ。アメリカの親イスラエル派(ネオコン)がイラクからサダム・フセインを排除すべきだと叫んでいた1990年代、イスラエルは「イランの脅威」を盛んに宣伝していた。

 言うまでもなく、「脅威」の根拠としていたのが核兵器開発だ。AIPACのようなイスラエル・ロビーはホワイトハウスにも圧力を加え、ビル・クリントン大統領はイランに対する「経済制裁」を実行した。そして、ジョージ・W・ブッシュ政権になるとイランの体制を転覆させる動きを強め、メディアのプロパガンダも激しくなった。その過程でイラン政府を攻撃するため、「誤訳」が利用されたことは本コラムでも指摘した通りだ。言うまでもなく、イランの選挙にも介入した。

 アメリカにしろイスラエルにしろ、イラン攻撃の目的が「民主化」にあるわけでないことは、イラクやアフガニスタンの例を見ても明らかである。そもそも、イスラエルはアラブ系住民を人間扱いしない「人種差別国家」であり、白人政権下の南アフリカよりも徹底した「アパルトヘイト」を実行している国。またアメリカは憲法を機能停止にしてファシズム化を進めている。

 アメリカを後ろ盾とするイラク政府が目障りな勢力を一掃するため、拉致、拷問、殺害を繰り返してきたことはすでに報告されているが、WikiLeaksの公表した文書でも確認された。

 イラク占領に備えてアメリカの特殊部隊はイスラエルで訓練を受け、そうしたアメリカ軍の下にイラク政府の「特殊警察部隊」が編成され、暴虐の限りを尽くしてきたのである。部族間、宗派間の対立という構図は占領軍の宣伝にすぎず、実際は占領軍とレジスタンスの戦いが続いていると少なからぬジャーナリストによって明らかにされている。



 前原誠司外相は情報の「所有権」が政府にあると考え、秘密文書の公開を「言語道断」だと記者会見で言い放ったらしいが、この発言だけでも彼が民主的な人物でないことが明確になった。国の情報は主権者である国民のものなのであり、政府や官僚の勝手にできるものではないのである。この鉄則は「民主主義国家」であるための絶対条件であり、この鉄則が守られていない国を「民主主義国家」と呼ぶことはできない。民主化の第一歩は、権力者による情報支配システムの破壊である。





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最終更新日  2010.12.01 16:06:10


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