《櫻井ジャーナル》

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巣鴨信用金庫
店番号:002(大塚支店)
預金種目:普通
口座番号:0002105
口座名:櫻井春彦

2013.04.02
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 破綻が明らかになったキプロスの2大銀行、キプロス銀行とライキ銀行(キプロス・ポピュラー銀行)をどう処理するかが決まったようだ。伝えられるところによると、10万ユーロまでの預金は保護されるのだが、キプロス銀行の場合、保険対象外の預金者は最大60%の損失負担が求められ、ライキ銀行の保険対象外の預金者は預金のほぼ全額が失われるという。

 大口の預金者に厳しい内容なのだが、それを事前に知った有力政治家や会社経営者が預金を避難させていた。しかも、その中に ニコス・アナスタシアディス大統領 の義理の息子の実父が所有する企業もあるということで、問題になっている。この会社、預金への課税が決まる直前、3月12日と13日にライキ銀行から2100万ユーロを引き出し、半分をロンドンへ、残りの半分をキプロス銀行へ送金したという。

 確実に資産を隠し、課税を回避したいなら、ロンドンを中心にして張り巡らされたオフショア市場のネットワークを利用するべきだと言われている。そうした意味で、ロンドンに送金した心情は理解できる。ロンドンのシステムは信託の仕組みを利用しているようで、誰がどの程度の資産を持っているかを調べることは至難の業だという。

 キプロスにはロシアの富豪やマフィアが資金を預け、マネーロンダリングもしていたというのだが、もし本当だとするならば、隠す気が希薄だったのか、間抜けなのか、どちらかだろう。ボリス・エリツィン時代に不公正な手段で巨万の富を築いた「オルガルヒ」の多くはロンドンかイスラエルへ逃亡している。勿論、EUであろうと、IMFであろうと、ロンドンのネットワークにメスを入れることはない。

 今回の一件で「ロシア・マネー」がキプロスから逃げ出すと予測する人も少なくないだろうが、これこそが今回の「救済策」の目的だと見る人もいる。アメリカやイギリスにとってキプロスは戦略的に重要な場所にある。そこにロシアの影響力が及ぶことを「西側」の支配層は好ましく感じていないはずだ。

 キプロスから東へ約100キロメートル進むとシリア、北へ約65キロメートルの場所にはトルコ、南へ400キロメートル進とスエズ運河があり、ロシアを監視するにも最適である。1953年にイランで民族主義政権を倒したクーデターでもキプロスの施設が利用された。

 1960年にキプロスはイギリスから独立、最初の大統領選挙でギリシャ系のマカリオス大司教(ミカエル・モースコス)が当選するのだが、アメリカの支配層にとって新大統領は好ましくない人物だった。非同盟諸国やソ連とも友好関係を結ぼうとしていたのだ。そこでアメリカは彼を追放しようとする。

 この計画は1960年代の後半に実現する。まず1967年にギリシャで軍事クーデターがあり、それと並行する形でキプロスでは右翼(親米)団体EOKA-Bが活動を激化させる。言うまでもなく、ギリシャのクーデターもEOKA-Bも裏ではCIAが蠢いていた。



 そして1974年、警告された通り、EOKA-Bが武装蜂起する。マカリオス大統領は死亡したと伝えられたが、実際は生きていた。その当時、イギリスの首相だった労働党のハロルド・ウィルソンは軍にキプロスへ部隊を派遣してマカリオスを救出するように命じたのだが、アメリカは終始、傍観していた。イギリス軍部隊はマカリオス大統領を救出、ヘリコプターでキプロス南部にあるイギリス軍基地に運び、そこからマルタ島経由でロンドンへ連れ出している。

 キプロスは人口の約8割がギリシャ系、残りの2割がトルコ系。ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された直後、住民同士の対立が内乱に発展するのだが、その背後ではアメリカ政府のキプロス分割計画があった。ギリシャ系とトルコ系で分けようとしたのだ。

 マカリオスが排除された後、アメリカのキプロス分割計画が実現する。トルコ軍がキプロスに軍事侵攻して北部地域を占領したのだ。

 NATOに加盟している国同士が衝突するという本来なら危機的な状況だったのだが、アメリカ政府は動かない。キプロスの国家警備隊も動きが鈍かった。すぐに動いたのはソ連で、艦船を黒海から地中海に移動させている。このソ連の動きにアメリカはすぐに反応した。

 戦略的に重要な場所にあるだけでなく、キプロスの近くには天然ガスが眠っている。これは本ブログで何度も書いたことだが、21世紀に入ってから、 地中海の東側に膨大な量の天然ガスや石油が眠っている ことが知られるようになった。USGSの推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガス、そして34億バーレルの原油が眠っている。

 キプロスの財政問題を解決する最善の方法はここにあるのだが、無視したり、屁理屈をこねて無理だと言ったりするのが「西側」の支配層。どうやら、この海域にある天然ガスをアメリカはイスラエルへ贈呈するつもりらしい。シリアもレバノンもガザもエジプトも目障りだと考える人がいても不思議ではない。





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最終更新日  2013.04.03 14:07:02


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