《櫻井ジャーナル》

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2013.09.29
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カテゴリ: カテゴリ未分類
シリアにおける化学兵器の廃棄を定めた決議案

 勿論、化学兵器はシリア情勢の本質とは無関係な話。シリアの体制を転覆させるためのプロジェクトを推進してきた国々、つまりアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルなどは、化学兵器の使用を直接的な軍事介入の口実に使おうとしただけだ。こうした勢力は目的を達成するため、傭兵を雇い、武器/兵器を供給、戦闘員を軍事訓練してきた。が、思惑通りには進んでいない。

 ターゲット国の体制を倒すために「反体制派」を利用した後に正規軍を直接介入させるというシナリオはアメリカの得意技。そのプロトタイプと言えるのがキューバへの軍事侵攻計画だろう。

 テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、1957年にアメリカ軍はソ連に対する先制核攻撃計画をスタートさせ、63年後半にはソ連を核攻撃するというスケジュールになっていたという。その頃になれば核弾頭の輸送手段として長距離爆撃機のほかICBM(大陸間弾道ミサイル)も準備できるという見通しが立っていたようだ。

 当時のソ連としては中距離ミサイルで対抗するしかなかったのだが、そのためにはアメリカ本国の近くに発射基地を建設する必要がある。そこでキューバは米ソ両国にとって重要な場所になった。アメリカの好戦派がキューバを軍事制圧しようと試み、ソ連がミサイルを持ち込もうとした理由はここにあるだろう。

 キューバへの体制転覆プロジェクトは1950年代、ドワイト・アイゼンハワー政権の時代に始まるのだが、亡命キューバ人がキューバのピッグス湾(プラヤ・ギロン)への上陸を試みた1961年4月当時はジョン・F・ケネディが大統領になっていた。亡命キューバ人の部隊が軍事侵攻に失敗すると、すぐにチャールズ・キャベルCIA副長官は待機していたアメリカ軍の戦闘機を出撃させようと大統領に進言する。が、この要求を新大統領は却下してしまった。

 そのとき、アメリカ軍の直接的な軍事介入を正当化する目的で立てられていた計画がある。ノースウッズ作戦だ。アメリカの諸都市で「偽装テロ」を実行、最終的には無線操縦の旅客機をキューバ近くで自爆させ、キューバ軍に撃墜されたように見せかけ、「反撃」という形で軍事侵攻しようという「偽旗作戦」だ。この作戦で中心的な役割を演じていたのはライマン・レムニッツァー統合参謀本部議長である。

 結局、キューバの軍事制圧、ソ連への先制核攻撃を目論んでいたCIAのアレン・ダレス長官やキャベル副長官は解任され、レムニッツァー統合参謀本部議長は再任が拒否されている。このように好戦派の野望に立ち向かったケネディ大統領は1963年11月にテキサス州ダラスで暗殺された。



 今年3月、こうした外部勢力はシリア政府軍が化学兵器を使ったと配下のジャーナリストに宣伝させるが、このときは攻撃されたのがシリア政府軍の検問所であり、死亡したのはシリア軍の兵士だということから反政府軍が使ったと イスラエルの新聞 にも指摘される始末。国連独立調査委員会メンバーの カーラ・デル・ポンテ も反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言していた。この件に関し、 ローレンス・ウィルカーソン退役大佐 はイスラエルが「偽旗作戦」を実行した疑いがあると発言している。

 そして8月のダマスカス郊外における「攻撃」。今度は反政府軍が支配している地域で起こったのだが、国連の調査団がダマスカスに来るのに合わせるかのような攻撃で、しかも被害者はラタキアなどほかの地域から連れ去らてきた人びとだという疑いが指摘されている。( PDF

 相当無茶な設定の話に思えたのだが、アメリカの有力メディアはシリア政府軍が化学兵器で攻撃したと大合唱、一旦は攻撃必至という状況だった。この流れを変えたのが ロシア政府が国連で示したとされる衛星写真などの証拠 。反シリア政府軍が支配しているドーマから8月21日未明に2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾したことをそれらは示していたとされている。この後、バラク・オバマ政権は窮地に陥る。その後、 化学兵器を搭載した大型ミサイルを反政府軍が発射するところだとする映像 もインターネットに登場した。

 さらに、9月の上旬にも反政府軍が化学兵器を使用したとする情報が加わる。 反政府軍に拉致されていたイタリア人ジャーナリストとベルギー人教師 が解放されたのだが、その教師は、彼らを拘束していた戦闘員が8月に化学兵器を使ったのは反政府軍だと話しているのを聞いたと証言しているのだ。

この辺の事情 は本ブログで書いたことなので、今回は割愛したい。

シリアの体制を転覆させようとしている目的 として考えられるのはイスラエルの戦略、エネルギー資源の利権問題、戦争ビジネスの思惑など。体制転覆を狙う勢力はプロジェクトを放棄したわけではないはずで、いかにして今回の国連決議を打ち破るかを必死に考えているはずだ。





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最終更新日  2013.09.29 19:58:54


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