《櫻井ジャーナル》

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2014.12.01
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 アメリカ/NATOの戦略に従ってきたドイツの動きに変化が見られる。脅せば相手を思い通りにできるというアメリカ流の遣り方を突き詰めると、何をしでかすかわからない凶人だと思わせ、相手を従わせるという「凶人理論」になる。この「戦術」から離脱しようとしているのだろう。アメリカは「同盟国」からも見放され始めた。

 今年の8月、ドイツの経済紙ハンデスブラットの発行人、 ガボール・シュタイガートは「西側の間違った道」と題する評論を発表 した。ウクライナが不安定化する中、「西側」は戦争熱に浮かされ、政府を率いる人びとは思考を停止して間違った道を歩み始めたと批判しているのだ。

 彼が指摘しているように、アメリカ議会ではウクライナへの武器供与が議論され、ズビグネフ・ブレジンスキー元大統領補佐官は市民を武装させるように提案、ドイツ首相は厳しい対応をとる準備ができていると発言していた。こうした流れはドイツの利益に反しているとも主張しているが、その通りだろう。

 この編集長は次のように問いかける:始まりはロシアがクリミアを侵略したためだったのか、それとも「西側」がウクライナを不安定化したためだったのか?ロシアが西へ領土を膨張させているのか、それともNATOが東へ拡大しているのか?ふたつの大国が同じ意図に動かされて無防備な第三国へ向かい、深夜、同じドアで遭遇し、内戦の第1段階で泥沼にはまり込んでいるのか?

 アメリカにとっての現実的な目的とヨーロッパにとってのそれは全く違うとも主張、バラク・オバマやヒラリー・クリントンは次の選挙で勝てるか、次の大統領を民主党から出せるかということに関心があるだけだとし、クリントンがウラジミル・プーチンをアドルフ・ヒトラーに準えたのは、外国のことに関心のないアメリカ人の多くが知っている外国人はヒトラーくらいだからだと切り捨てている。

 また、ドイツの有力紙、フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の元編集者でヘルムート・コール首相の顧問を務めた経験もあるウド・ウルフコテはドイツの腐敗した編集者や記者の実態を 自著 の中で告発している。 ドイツだけでなく多くの国のジャーナリストがCIAに買収され、例えば、人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開している というのだが、その通りだろう。



 もっとも、こうした指摘は昔からある。例えば、ウォーターゲート事件を調べた記者のひとり、カール・バーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を辞めた後、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書いている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 それによると、まだメディアの統制が緩かった当時でも400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。

 アメリカでは1948年頃に情報活動や破壊活動を行う機関を創設している。1970年代まで存在すら知られていなかった秘密機関もあるが、そうした中、情報操作を目的とするプロジェクトもスタートした。

 そのプロジェクトの中心にいたのは4名。ウォール街の弁護士で大戦中から破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、その側近で破壊工作を実行する極秘部隊OPCの局長だったフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)

 フィリップ・グラハムは1963年8月、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺される3カ月前に自殺、ワシントン・ポスト紙は妻のキャサリン・グラハムが引き継ぐ。ウォーターゲート事件の調査を指揮したということで、日本では「言論」の象徴として崇めている人も少なくないようだが、1988年にCIAの新人を前にして次のように語っている:

 「我々は汚く危険な世界に生きている。一般大衆の知る必要がなく、知ってはならない情報がある。政府が合法的に秘密を維持することができ、新聞が知っている事実のうち何を報道するかを決めることができるとき、民主主義が花開くと私は信じている。」

 彼女が考える「民主主義」とは特権階級のものにすぎず、庶民は主権者として扱われていない。これがアメリカ流の「民主主義」であり、「ジャーナリズム」だ。これはワシントン・ポスト紙だけではなく、ウォール・ストリート・ジャーナル紙にしろ、ニューヨーク・タイムズ紙にしろ、ロサンゼルス・タイムズ紙にしろ、同じこと。例えば、ジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃する前に偽情報を流していた記者、ジュディス・ミラーはニューヨーク・タイムズ紙に所属していた。アメリカの「有力メディア」は単なるプロパガンダ機関にすぎなくなっている。有り難がっても仕方がない。





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最終更新日  2014.12.02 04:22:43


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