台湾国防部は1月11日に新竹空軍基地をメディアに公開し、空軍将校3人への取材を認めた。そのひとりである 空軍第42作戦隊で副隊長を務める呉邦彦中佐は台湾軍とNATO軍との交流を明らかにしている 。
呉中佐によると派遣は6、7年前から行われていて、彼自身も2021年半ばから22年1月までの半年間、イタリアにあるNATO国防大学に派遣されて国際交流プログラムに参加したという。「学術的」な目的での派遣だとされているが、どのようなタグをつけようと目的は「軍事的」なものであり、この時点で派遣を公表すること自体が政治的だ。
イタリアではウクライナ情勢やインド太平洋地域の状況が討議されたというが、アメリカやイギリスの長期戦略、ユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸を締め上げ、世界を制覇するという戦略を叩き込まれたということだろう。
台湾の基地が公開された11日、岸田文雄首相は訪問先のロンドンでリシ・スナク英首相と「円滑化協定(RAA)」に署名している。岸は昨年1月にオーストラリアのスコット・モリソン首相ともRAAを締結している。
明治維新以来、日本は米英金融資本の影響下にあり、安全保障条約によってアメリカの支配力は格段に強まった。そのアメリカと同じアングロ・サクソン系国とRAAを結んだわけだ。
アメリカが現在、進めている世界制覇プランは19世紀から続く長期戦略に基づき、ソ連が消滅した直後の1992年から始まった。そのプランは国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で作成されたが、国防次官だったポール・ウォルフォウィッツが中心になって作成されたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
そのドクトリンへ日本を組み込んだのが1995年2月にジョセイフ・ナイが発表した「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」。そこには在日米軍基地の機能を強化、その使用制限の緩和/撤廃が謳われていた。
1997年には「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」が作成され、「日本周辺地域における事態」で補給、輸送、警備、あるいは民間空港や港湾の米軍使用などを日本は担うことになる。1999年には「周辺事態法」が成立、2000年にはナイとリチャード・アーミテージのグループによって「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて(通称、アーミテージ報告)」も作成された。
2001年の「9/11」をはさみ、2002年に小泉純一郎政権は「武力攻撃事態法案」を国会に提出、03年にはイラク特別措置法案が国会に提出され、04年にアーミテージは自民党の中川秀直らに対して「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と言明。2005年には「日米同盟:未来のための変革と再編」が署名されて対象は世界へ拡大、安保条約で言及されていた「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念」は放棄された。そして2012年にアーミテージとナイが「日米同盟:アジア安定の定着」を発表している。
安倍晋三は総理大臣時代の2015年6月、赤坂にある赤坂飯店で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で 「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」 と口にしたというが、これはアメリカの戦略を明確に示しているとも言える。そうした流れに岸田も乗っているわけだ。
アメリカは2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ作り替え、日本を太平洋側の拠点、インドを太平洋側の拠点、そしてインドネシアを両海域をつなぐ場所だとしたが、インドネシアやインドはアメリカの軍事戦略と距離を置こうとしている。
そこでアメリカ、イギリス、オーストラリのアングロ・サクソン系3カ国は2021年9月に「AUKUS」という軍事同盟を結び、日本に続く手先として台湾や韓国を取り込もうとしているわけだ。

