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2024.04.05
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 アメリカの​ カート・キャンベル国務副長官が3月19日から23日にかけて日本とモンゴルを訪問した ​。日本では政府高官らと会談、4月10日に予定されている岸田文雄首相のワシントン公式訪問について話し合ったと伝えられている。ロシアや中国を敵と考えているアメリカ支配層にとって日本とモンゴルは戦略的に重要な国であり、戦争を想定しているだろう。

 キャンベルが国務副長官に就任したのは今年2月12日。それまでビクトリア・ヌランドが副長官代理を務めていたのだが、彼女が主導して始められたウクライナでの戦闘は失敗、アメリカの敗北は決定的になっている。戦闘を継続するため、資金と兵器を投入し続けようとしているものの、限界が見えている。

 正規軍の戦いで負けた勢力がテロに切り替えることはある。3月22日にはモスクワ近くのクラスノゴルスクにあるクロッカス・シティ・ホールが襲撃され、銃撃と火災で140名以上が死亡しているが、これもそうした例だろう。このテロの黒幕はアメリカやイギリスの情報機関だと見られ、ヌランドにも疑惑の目が向けられている。このテロ事件とヌランドの辞任は関係があると見る人もいる。そうした背景はあるが、キャンベルの副長官就任はアメリカが東アジアに軸足を移動させようとしているとも言えるだろう。

 本ブログでは繰り返し書いてきたことだが、日本は1990年代半ばにアメリカの戦争マシーンへ組み込まれた。「戦争できる国」ではなく、「戦争する国」になったのだ。そのベースはソ連消滅直後の1992年2月にアメリカ国防総省で作成されたDPG(国防計画指針)草案、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンである。その中でドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、新たなライバルの出現を防ぐことが謳われている。

 そうしたアメリカの戦略に日本側は抵抗する。細川護煕政権の諮問機関、防衛問題懇談会は1994年8月に「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」というタイトルの報告書発表、国連中心主義を前面に出した。

 樋口レポートには「今後の日本の安全保障政策の重要な柱の一つが,平和維持活動の一層の充実をはじめとする国際平和のための国連の機能強化への積極的寄与にある」と書かれていて、「世界の諸国民が協力の精神に基づいて、持続的な「平和の構造」を創りあげるために能動的・建設的に行動するならば、今までよりも安全な世界を作り出す好機も、また、生じているのである」とされている。

 ネオコンのマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはこうした日本側の動きを知って怒る。ふたりは日本が自立の道を歩き出そうとしていると主張、友人のカート・キャンベル国防次官補(当時)を説得してジョセフ・ナイ国防次官補(同)らに自分たちの考えを売り込んだのである。そして1994年4月に細川政権は崩壊。そして1995年2月にナイ次官補は「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表した。そこには在日米軍基地の機能を強化、その使用制限の緩和/撤廃が謳われている。

 日本側は1994年6月に自民党、社会党、さきがけの連立政権を成立させるが、そこから衝撃的な出来事が相次ぐ。例えば1994年6月の松本サリン事件、95年3月の地下鉄サリン事件、その直後には警察庁長官だった國松孝次が狙撃された。8月にはアメリカ軍の準機関紙と言われるスターズ・アンド・ストライプ紙が日本航空123便に関する記事を掲載、その中で自衛隊の責任を示唆している。

 1995年には日本の金融界に激震が走っている。大和銀行ニューヨーク支店で巨額損失が発覚、98年には長銀事件と続き、証券界のスキャンダルも表面化した。証券界は日本経済の資金を回すモーター的な役割を果たしていた。つまり証券界のスキャンダルの背後には大蔵省(現在の財務省)が存在していた。大蔵省を中心とする日本の経済が揺さぶられたとも言えるだろう。

 この騒動の中、日本はアメリカの軍門に降り、1997年には「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」が作成され、「日本周辺地域における事態」で補給、輸送、警備、あるいは民間空港や港湾の米軍使用などを日本は担うことになった。「周辺事態法」が成立した1999年にはNATOがユーゴスラビアを先制攻撃する。

 2000年にはナイとリチャード・アーミテージのグループによって「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて(通称、アーミテージ報告)」も作成された。この報告では武力行使を伴った軍事的支援が求められ、「日本が集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している」と主張、「この禁止を解除すれば、より緊密かつ効果的な安保協力が見込まれる」としている。

 この年にはネオコン系シンクタンクのPNACがDPGの草案をベースにして「米国防の再構築」という報告書を発表、その中で劇的な変化を迅速に実現するためには「新パール・ハーバー」が必要だと主張している。その翌年の9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、これを利用してアメリカの好戦派は国内で憲法の機能を停止させ、国外では軍事侵略を本格化させた。

 2010年6月に発足した菅直人内閣はそうしたアメリカの政策に合わせる。解決すべき領有権の問題は存在しない」と閣議決定、1972年9月に日中共同声明の調印を実現するために田中角栄と周恩来が合意した「棚上げ」を壊したのである。

 この合意で日中両国は日本の実効支配を認め、中国は実力で実効支配の変更を求めないことを決めていたわけで、日本にとって有利な内容。それを壊した理由は日本と中国との関係を悪化させることにあったとしか考えられない。

 そして同年9月、海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕した。棚上げ合意を尊重すればできない行為だ。その時に国土交通大臣だった前原誠司はその月のうちに外務大臣になり、10月には衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と答えているが、これは事実に反している。

 こうした状況について総理大臣だった​ 安倍晋三は2015年6月、赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている ​。安倍政権下、着々と対中国戦争の準備が進められていることを明らかにしたのだ。日本は戦争への道を進んできたのだが、進む方法はアメリカの支配層から指示されている。日本は「頭のない鶏」状態だと言えるだろう。

 そこからアメリカの支配層はさらに前へ進む。国防総省系のシンクタンク​ 「RANDコーポレーション」が発表した報告書 ​には、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画が記載されているのだ。

 そうしたミサイルを配備できそうな国は日本だけだと分析しているのだが、その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるためにASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたとされている。2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設された。

 2017年4月には韓国でTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が運び込まれ始めた。2013年2月から韓国の大統領を務めた朴槿恵は中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたのだが、朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなっていたことからミサイル・システムを搬入できたのである。結局、朴槿恵は失脚した。

 THAADが韓国へ搬入された後、2019年に奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成した。ミサイルが配備されることになる。

 アメリカはオーストラリア、インド、そして日本と「クワド」を編成、NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言した。

 2021年9月にはオーストラリア、イギリス、アメリカがAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があり、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。

 山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明、岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。

 2022年10月には、​ 「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道 ​があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。自力開発が難しいのか、事態の進展が予想外に早いのだろう。

 トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されていると言えるだろう。

 そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。

 この過程でアメリカは日本と韓国の軍事同盟を推進し、台湾では「独立派」を利用して中国を挑発、さらにフィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(ボンボン・マルコス)も取り込み、日本はフィリピンとの軍事的なつながりを強めている。JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)だが、日本とフィリピンをAUKUSへ加盟させるという動きもある。日本がAUKUSに参加することで、ロボット工学とサイバー技術の分野で成果を上げることが期待されているのだという。

 またジョー・バイデン政権が中国敵視を明確にした2022年の12月、アメリカでは​ NDAA 2023(2023年度国防権限法)が成立 ​、アメリカの軍事顧問団が金門諸島と澎湖諸島に駐留し、台湾の特殊部隊を訓練していると伝えられている。






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最終更新日  2024.04.05 01:56:44


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