小さな パンドラの箱

小さな パンドラの箱

幸せの



仕事で、重要なプロジェクトをまかされたあの人は

式の準備に時間をさけない。

そんなとき、ピンチヒッターとして声をかけられた彼が

私と何度となく打ち合わせに参加してくれた。

「当日でればいい俺の方が詳しいよ、きっと」彼はぼやく。

同じ会社だと、今の仕事の重要性が理解できる。

「わがままなことはいえないから」とわたし

「いってみたら?わがまま、結婚しませんとか」

「マリッジブルーで、白紙に戻しましょうって。びっくりするかしらあの人」

意外な言葉だったのか、彼の瞳が揺れた。

「さあ今日は衣装あわせ、好きなのに決めてっていわれたわ

どれが一番似合うか一緒にみてくれる」

「…俺がみたてていいの」

「ええ、私だけの判断じゃなく第三者の意見も聞きたいし」

「わかったよ。責任重大だな」

ほぼドレスがしぼられたが、新郎がいないのでバランスがわからない。

「着てくれないあなたが、シンプルなタキシード」

無謀な私の提案。

それでもその提案を受け入れ、数分後には私の隣に並ぶ彼の姿があった。

そして、決まったドレスを彼に見せるために、写真をとってもらった。

ドレス姿私の隣には、彼の弟が一緒にうつっている。


帰り道。なにか考えこんでいる彼にはなしかける

「どうしたの、さっきからだまりこんで」

…

「義姉のドレス姿にまいっちゃったかな」

冗談でいったつもりだった。

「…さっきの話」

「え なんだっけ」

「マジで結婚を白紙に戻さない。俺姉さんとして受け入れたくない」

若く真っ直ぐな瞳が私に問いかける。

「どうしちゃったの?急に」

「結婚を前にしてあなたを放っておく兄さんより、僕と結婚しない」

「あの人がこんなことたのむから・・・勘違いしたのね

でも恋ではないわ。これは…」

言い終わらないうちに抱きすくめられた。

私はこの人の気持ちに、答えることはできない。

「凄く、たすかったわ、あなたが手伝ってくれたこと・・・・

でもあなたはあの人の弟だから・・・困らせないで。ごめんなさい」

彼ははっとしたように私を解放した。

「でもうれしい。あの人の家族にこんなにも好かれるなんて」

そして私は悲しそうに見つめる彼に、言葉を続けた。

「私以上の素敵な奥さんを見つけて、私にはかわいい妹になるんだから、

そのときは、義姉として祝福するわ」

と、偽りの無い素直な言葉を伝えた。

恋をしてはいけない彼・・・仲の良い兄弟を引き裂かないために

私は、義姉を演じ自分の気持ちに嘘を付いた。


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