好きなものを見ると元気になる

 好きなものを見ると元気になるらしい。これが、ものづくりに携わる自分の性格についてあらためて実感したことだ。
 とても寒くなった日曜日の昼下がり、代官山へ向かうバスを途中下車して駒沢通りを歩いた。顔なじみの中古家具屋『 AVALON 』と、年初にオープンした『 目黒区総合庁舎 』(旧千代田生命本社/設計:村野藤吾/1966年)を見たかったからだ。
 まずは『AVALON』に入る。なぜか誰もいない。相変わらずぎっしりと家具が詰まっているものの、姉妹店であり、ウチのオフィスの下階にある『SONE CHIKA』と比較すると、少し格が上の品物を余裕を持って並べた店内が落ち着いた雰囲気をつくっている。店の奥を覗くと裏口の扉が開いていて、外にトレードマークの帽子姿の西垣くん(スタッフ)が見えた。洗剤のボトルとぞうきんを手にしゃがみ込んで、店に並べる前の商品をゴシゴシと磨いている。こちらには、まだ気がつかない。そんな以前と変わらぬ姿に和まされる。そう、この『AVALON』が昨年オープンする前は、彼も『SONE CHIKA』にいたのだ。
 「こんにちわ~、久しぶりです~。」と声をかける。「あっ、どぉもぉ~、こんにちわぁ~。」とすぐに店の中に入ってきた。「こっちに一人でいて寂しいですか?」と、すかさずメンタルな部分を攻撃。「そうなんですよぉ~、たまにSONE CHIKAの頃から知っているお客さんが来ると、もう離さないんです。」と話しながら、彼の手には洗剤とぞうきんがずっと握られたまま。「いつもバスの中から眺めているんですよ。例のイタリアの白いソファ、まだありますね。座ってみてもいいですか?」「どーぞ、どーぞ!」座ってみると、今度は目の前の黒いソファに目がいく。「おっ、これは何ですか?いいですね~。コルビジェ…、みたいですよね。」「それが、コクヨらしいんです。」「ええ~っ、コ、コクヨ…?」値札を見てみる。「やっ、安い~!」
 彼の制止で即決は何とか避けたが、サイズ等を詳しく教えてもらって店を出る。ふたつめの目的『目黒区総合庁舎』は、休みらしく閑散としていたので、外観を眺めるのにとどめて、足早に代官山へ。『SONE CHIKA』の前を通り過ぎると、「あっ、西垣くんから聞きましたよ~。」と坂本さん(SONE CHIKAのスタッフ)に声をかけられる。はっ早い…。「いま、オーナーが留守なんで、良かったら店を閉めてから、お部屋まで持っていきますよぉ~。一度合わせてみてください。」こうなってくると、もう止められない。古いエレベーターが、いつもよりさらに遅く感じる。
 その夜、11時過ぎ。その「コクヨソファ」が持ち込まれる。いい…。「これ、頂きます。」その後も、終電ぎりぎりまで「コクヨソファ」と遊ぶ。支払いはまだだが、いい買い物?をしたと思う。う~ん、久々に物欲な日記になった。

Sofa
画像:一見コルビジェを連想させるソファはコクヨ製らしい?


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