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廃墟島 ~瓦礫地区~
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2006.07.19
■特別政令001号 第六話■
テーマ:
連載小説を書いてみようv(10391)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
よく分からないが、金が限界に達しそうなところまで行きたかったこともあって、ぎりぎりまでバスの料金メーターとチキンレースをしていたら読みが外れて数十円、タダシに借りる結果となった。「なんたら交番前」の次のバス停。なんだかよく分からないけど、車通りの多い道だ。人目に付くとやばそうだから、とりあえず歩道橋を渡って通りから抜けた道へと歩を進める。少し歩くともうそれだけで車通りは少なくなった。学生が逆向きに歩いてくるところを見ると、近くに中学か高校があるんだろうか。連中からする逆方向に歩く俺、同じ学生服だけど、色が薄い俺を見て「部外者」とか思っているに違いないと一発で分かる目を向けてくる。あぁ、そうだよ。俺は遠く遠くから来た正義を貫く男だからな。そう、これはきっと正義だ。
ふっ、と話し声が聞こえた。相当な人数だ。全部学生。中にはいかにも部活後、といった格好の奴もいる。時間は八時二十分すぎ、とうの昔に帰っているべきだろ?よく見ると、俺と平行して伸びていたフェンスの向こうにもう高校があった。この学校の生徒だったのか。田舎くせぇな。俺の高校とはえらい違いだ。体育館らしい建物のところまで来たときに、俺の目は釘付けになった。アイスだ。体育館の横で何人かたむろしてこそこそとアイスを食ってやがる。なんだかとんでもなく幸せそうな笑顔だ。田舎って規制が緩いんだろうか。なんだかめちゃくちゃ腹が立ってきた。目の前の小さな門には、存在に意義が見いだせないほど役に立たない有刺鉄線があったが、なんとか別の場所に手をついて飛び越えた。今日一日でどれだけカロリーを消費しただろう。ゲームなら絶対経験値過剰でレベルが二桁くらい上がっているはずだ。目の前のスポーツマンどもは、見知らぬ格好の見知らぬ人間が登場して、緊張しているらしかった。ざまー見ろ。お前らは暗がりで俺が見えないだろ。俺は見えるぜ。今日だけで歴戦の勇士になったからな。
とりあえずその横の、体育館と対の建物の奥、畳を見る限り柔道部と剣道部だろう、に見えていた木刀を取りに行く。中では道着を着替えている連中がいたが、気にしない。土足で上がり込んで、ぽかんとしている間に木刀を拝借する。そしてそのままその横の体育館へ。まだ座り込んでいた連中の前に、木刀を肩にかけて立つ。
「お前ら、それ、置いて、どっか、行け。」
なんだかよく分からない、という顔の男子高校生達。とりあえず手短にいたアイスバーを一人で三本も抱えている男子を殴り飛ばした。袋から出ていない二本は地面に落ちても何ら障害はない。
「聞こえなかったか?お前ら、それ置いてさっさとどこへでも行け。早くしろ。」
思い切り不機嫌にいってやった。せきを切ったかのようにそいつらは俺が殴りつけたやつを担いで逃げ出した。奴らが座っていた場所に残ったアイス。四本、五本、六本・・・やれやれ、一本手に入れるのに死にかかってるってのに、なんなんだこの違いは。
とりあえず近くにあったモナカ風アイスを口に咥える。背後では道着を着替え終えた剣道部だか柔道部だかの連中がこっそりこちらを伺っている。畜生、見せ物じゃねぇぞ。俺は来たくて来たわけでも、暴れたくて暴れてるんでもない。被害者なんだよ。きっと。
体育館の影から出よう、というタイミング。並んでいる木の影の合間から見える正門。車も少なく、自転車を転がす帰宅高校生がちらほら。そのはずだったのに、なんなんだ。あの光景は。何も動いていない。自転車が止まっている。バイクが止まっている。そして、学生の目が一転に集中している。さっき逃げ出したスポーツマンどもも、正門駐車場の前で立ちつくしている。何だ。一体何があったんだ。これじゃまるで時間が止まったみたいじゃないか。
そこにあるのは一台の車。それに乗るのは最悪の、静かなる鬼。そして、その目は確実に俺を捕らえた。
あのスポーツマンどもの影になって見えなかった。あいつが、もうあの糞じじいが来やがった。ベンツのドアが閉まる。それと同時にまたあの構え。ロケットだ。ロケットが飛んでくる。何とかして回避しようときびすを返したとき、壁にぶつかった。
「何だ、君は!」
壁じゃなかった。ジャージで背の高い教師だ。百七十センチ無い俺からすればそれは驚異であり、命を奪う障害でもあった。ってかまさに壁だろ。この高さは反則。さっきまで居た連中が居座っていた、体育館の横という場所から判断するに、この人はそいつらの部活の顧問だろう。
後ろは駄目だ。前も駄目だ。じゃあ、
「おい!君!」
長身の教師を突き飛ばし、といってもたいした抑止力にはならなかったが、とりあえず俺は中庭とおぼしき場所に走った。天を仰ぐ銅像がある。あぁ、俺もそうやって現実から逃れたいよ。とりあえず右の玄関に土足で走り込む。その選択は、少しでも糞じじいから離れたい。その一心で。
邪魔な後輩とおぼしき女子を突き飛ばした。悪いね。俺は生死の境をさまよってるんだ。募金したつもりで突き飛ばされてくれ。玄関から左へ向かう。すぐに中庭に続くドアに出くわしたが、向こうでスタート音がした。外に出る選択しは残っていない。俺は階段を駆け上がる。必殺、三段とばし。背が高くて髪の長い女の先生がいた。やっぱり俺より背が高い。でも、これならいける。本当に、ごめんなさい。突き飛ばした。「キャッ」なんて言いながら、いきなりの後ろからの奇襲になすすべ無く倒れる。英語の教科書やらなんやらが散乱する。振り返らずに三階へ。俺に止まることは不可能だ。三階ロビー。厳ついメガネで白衣の先生がいる。畜生、こんな時になんでこんなに人に会うんだ!学校って、終わっていて然るべき時間じゃ無いのか。こんな時間に見回りだなんて、学年主任か何かか?
「何をしている!うちの生徒じゃないな!」
ヤバイ。声で分かる。この人は突き飛ばしても倒れない。登山とかやっていそうな手足をしてるし。どうしよう、どうしよう。上か、上しか・・・。
上からもまた教師が来た。妙にのんびりとした恰幅の良い教師だ。臭ぇ、こいつは臭ぇ!俺の嫌いな世界史の臭いがぷんぷんしやがるぜ。ってか手元の教科書がすでに世界史じゃねえか。それをさっさとどこかにやってくれ!よく見れば、この先生も耐久性が強そうだ。なんだかいつの間にか下の階からはさっきの女の先生と最初の長身の男の先生が上がってきた。ヤバイ。三方を囲まれた。逃げ場がない。前を見る。怖い。下を見る。多い。上を見る。厳しい。捕まるしかないか・・・。俺もここまでか・・・。
そのとき、ガラスが割れる。それこそ盛大に、渡り廊下のガラスが、あっちからこっちに。そう。奴が入った棟から、俺の入った棟へ。踏切だ。踏み切ったときの衝撃波で割れたんだ。あぁそうだ。何人の教師にぼこぼこにされるのもたいしたことはない。ただ、あのじじいに捕まったら確実に殺される。きっとデコピン一発で首が飛ぶ。肩に手を添えられたら縦に畳まれる。腰を持たれて上に投げられれば上半身は天井に刺さる。そんなのはいやだ!捕まってたまるか。
一番可能性があるとすれば、上だった。恰幅の良い先生の横を紙一重ですり抜けて階上へ駆け上がる。それ以上がない。四階で最上階みたいだ。そこには天井の付いていない渡り廊下。ためらうことなくそちらへ進む。すっかり辺りは暗くなっていた。半分ほど渡ったところで、下からあの女の先生の悲鳴が聞こえた。奴が走ったんだ。きっと百メートルなんて五秒もかからない。俺が渡り終える。そのとき、室内なのに土埃を上げて奴が、「役人」がやって来た。直線距離で百メートル無い。一旦止まって、じじいは俺を凝視した。
怖い。
何も考えないでとにかく、そのサングラスから隠れるように左に曲がった。そのまままっすぐ行って、真っ暗な部屋閉まっていること前提で俺は扉に蹴りをかました。ドアが外れる。俺はそのままその部屋、図書室に駆け込み、可動式の書架の間に隠れた。膝を抱えてるのに、ふるえが止まらない。俺は死ぬのか。俺は捕まって、死ぬのか。逮捕者の多くは死ぬ。それは捕まるときの恐怖によるショック死が一番多いらしい。そんな話を朝のニュースで見たぞ。どれだけ怖いのか、これはこの場を体験した人じゃないと分からねぇよ。本当に心臓が止まりそうな感覚が・・・。あぁ、いやだいやだいやだ。死にたくない。死にたくない。遠くでガラスの割れる音。俺が壊した扉を踏みつけているんだ。見つかる。見つかる。こんな中で隠し通せる訳がない。絶対に見つかる。見つかったら死ぬ。死ぬのはいやだ。死にたくない。足音が近づく、革靴の乾いた音。革靴で走ってたのか、今まで。化け物だ。く、喰われる。いやだ、いやだ、月明かりの入る図書館。影が伸びる。近づいてくる。書架の奥でガタガタ震える俺を、引き裂いて喰らいに来る。助けて。誰か助けて。死にたくないよ。死にたく
短い言葉。書架の間の細長い空間。その奥に俺。入り口に「役人」。二文字の命令に、俺は校長にも出したことのない様な声で「はい。」と素直で純粋な返事をして、立ち上がった。手足が操られているように、自分の意志を介さなかった。
とある日の夜、たった今、俺は、死んだ。
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最終更新日 2006.07.19 20:33:51
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