日々、考察中。

日々、考察中。

ガンダム世代!

ガンダム世代!

2004/6/2
 ガンダム世代は実在する。
 ただし、定義付けは思ったより難しい。いわゆるファーストガンダムが最初に放映された当時、ガンダムにのめり込んでいったのは少数派なのではないか。実際、人気に火がついたのは最初の放映からしばらくしてからであったし、本当の所の火付け役はプラモデルであったように思う。となると、最初の放映から2年程度の月日が経ってからであろうか。
 最初の放映でガンダムマニアになった少数派を"ガンダム第1世代"とすると、僕は"ガンダム第2世代"に属するようである。再放送及びプラモデルでガンダムを知った世代だ。統計的に見ると、この"ガンダム第2世代"が最も多数派であると考えられる。
 では、ガンダム第2世代は最初の放送の時期どのような印象を持っていたのであろうか。その当時、完璧なるロボットヒーローもの"ダイターン3"を見て来て、新作"機動戦士ガンダム"に移行したときの僕自身の印象が多数派であるのではないか、と推測されるため、それについて記していく。

 "強烈無比な超人的ヒーロー像で強大なロボットを巧みに操り悪者を撃破していく男、波乱万丈"。これが"ダイターン3"のベースである。それへの味付けとしてパトカー型の車が飛行機に変形するマッハアタッカーや、波乱万丈を囲む2人の美女レイカとビューティー、とぼけた雰囲気ながらも実はしっかりしているトッポ、全てを包み込むような広大な心を持ったまとめ役のギャリソン。脇役も魅力的で、ヒーローを盛り上げていく、完全なるロボットアニメだった。ダイターン3が終了を迎えて、同枠で始まったのが機動戦士ガンダムである。第1話、敵であるジオン軍のモビルスーツから逃げ、避難をする主人公アムロ・レイ。そばかすのヒロイン(?)フラウ・ボウ。柔道着を着た無粋な脇役ハヤト・コバヤシ。ダイターン3の波乱万丈とはあまりにも違うヒーロー像。変形するロボットアニメに続いて見るにはあまりにもリアルな背景設定。そして、動作において敵であるザクに圧倒されるガンダム。当時小学生の中学年から高学年あたりだったヒーロー大好きっ子(笑)にとっては、あまりにも飛躍した内容の物語だったのだ。
 数週間は見てみたものの、やはり小学生の心に訴えかけてくるものを感じられず、見るのを辞めてしまった機動戦士ガンダム。こうしてガンダム第1世代になることを放棄した多数派が、後に第2世代の核となるのだ。少数派であると言える第1世代は、この時点でガンダムに食い付いた人達である。ということは、この戦争的リアリズムを持った物語を考える事が出来、理解出来た人達であるといえるのだ。結論を記すと、ガンダム第1世代は、当時すでに大人びた中学生であったか、それ以上の思考の持ち主であったのだ。現在の年齢で言えば(2004年6月現在)40代に手が届く人達である。それ以下の年齢の人達は、第2世代以降に所属する可能性が高いのだ。

 ガンダム第2世代は、再放送とプラモデル中心にして広がった世代であるという説明は前記したが、この世代の異常とも思える広がりの原因は何だったのであろうか。僕と同世代、現在30代前半から30代半ばの人が中心になっている第2世代の核となる部分は、"おもちゃ"である。再放送が寄与した部分が小さいとは言えないが、それ以上に影響を及ぼしたのは、"ガンプラ"であることは間違いない。
 急速に売上を伸ばしたガンプラは、町の模型屋やデパートのおもちゃ売り場に行列を作った。売り切れ店は続出し、ゾックやゴックといった不人気機種のみが残った棚はあたかもホワイトベースが去った後のジャブローのようであった。商売上手と言うか、商売がきたない模型屋は、店先に並んですでに10いく年になるお城のプラモデルと抱き合わせて売ったりしていた。経済状態が普通の家に生まれ育ち、限られたお小遣いでたくさんの種類のガンプラが欲しい人は、300円付近の価格帯であった144分の1モデルを。普通の家に生まれ育ったが、もうちょっと本物志向でこだわり派は800円程度の100分の1モデルを、お金持ちの家に生まれ育ったか、相当のがんばりやさんでこだわりやさんは2000円もする60分の1を。あらゆるニーズに答えてスケールを作ったバンダイの頭脳はたいしたものだった。さらに"ガンダムカラー"と命名された小ビン入り3色セットのプラモデル専用エナメル系塗料は、薄め液という名のシンナーを使わなければならなく、1色当たりの値段が高いという事で比較的敬遠されていた塗装作業を、"小学生レベルでも出来る"と思わせる事に成功した。実際はシンナーを使って、それなりの腕で塗装しなければうまく塗れないのだが、ガンプラを買う子供達は、同時にガンカラーも買っていたのだ。しかも薄め液という名のシンナーは、特別な許可無しに購入可能であり、さらに初めから小さめのビンに入っているから使い勝手も良い(?)という所から、プラモデル以外の分野でも消費されたらしい。(噂である。)ガンプラを買って同時にガンカラーを買う少年と、不良と呼ばれる少年少女の間で絶大なる売上を得た(?)薄め液とで、グンゼ産業は次に訪れるバブル景気も手伝って、多額の設備投資をしたに違いない。その後、色付きプラモデルが主流となってどうなったのかは知らないが。
 とにかく、競い合うようにして買ったガンプラはブームとして定着し、10年以上の時を経た現在でも新グレードが発表されるほどである。

 僕はといえば、裕福な家庭に生まれ育ったわけでもなく、お小遣いなど貰った事もなかったが、144分の1から60分の1まで、時と場合と好みに任せて買いあさっていた。そうする事が出来たのは、小学校3年生のころからお小遣い欲しさに始めた田舎の新聞配達で、月3000円程度の収入を得ていたからであった。60分の1モデルは、主にプラモデルのコンテスト出品のためで、シャア専用ザクで作ったカットモデルはジオラマコンテスト小中学生の部で最高賞である金賞を受賞した。1500円もしたホットナイフを駆使して、プラ板とランナーとライターのヘッド部分の部品を考えに考え抜いて組み合わせた内臓メカニズムを、カットした機体の中に詰め込む。カットした所から内側が見える部分には、ガンカラーには組みこまれていないつや消し黒で塗装する。カット面には金属らしさを出すためのシルバー、機体のあらゆる角部には塗装がこすれてかすれたかのように見せる金属汚し。ここまでやった僕のシャアザクは、1年後の同コンテストまで店内に飾られていた。金賞の商品は60分の1モデル量産型ザクで、家に帰って包装紙をあけて見た時は少々うんざりしたが、2000円もする商品を手にして上機嫌でもあった。
 全く同じ道のりではないであろうが、似たようなガンプラロードを走ってきたガンダム第2世代を現在の段階で見分けるのは比較的簡単である。ジャスコなどのおもちゃ売り場でプラモデルのコーナーに行ってみれば、必ず1人や2人はいるのだ。子供をだしに10000円もするパーフェクトグレードのシャアザクをじっくりと見ている30代らしき父親が。間違いなく、ガンダム第2世代の代表である。

 それ以降のガンダム世代は定義しづらい。理由は簡単である。僕が知らない世代であるからだ。知っている部分だけで書いてしまおう。
 爆発的人気を誇ったガンプラもピークが去って、中心だった世代が年齢を重ねることで少しだけ離れていった後に起こった変形ガンプラの小ピーク、この辺りがガンダム第3世代ではなかろうか。代表的なものは、足がついたジオング、ゾゴック、アッグガイなどだ。実際に機動戦士ガンダムの中に出てこなかったモビルスーツが多数作られていたのである。その辺りにはSDシリーズなども入ってくるのか。世代格差があるため、時代がわからない。
ガンダム第4世代以降になると、最初がファーストガンダムではない人達になってくる。第4世代はZガンダム世代であると言えようか。Zガンダム自体はファーストガンダムファンからの評価も高く物語的にも成功したらしいが、僕的には登場モビルスーツの多様化について行けず、さらに他の事が面白い年代になって連続してみる事が出来ず、途中で断念した形になっている。では、第4世代とは話が出来ないのか、と思えばそうではないのだ。どうやら"ガンダムシリーズ"は、新しいものを見ると古いもの、ルーツを確認したくなるような話であるらしく、ガンダム各世代に属する人の全てはファーストガンダムを語るのである。温故知新アニメとでも言おうか。

 第5世代以降は、ZZや、SEEDやなんやら僕の知らない世界になっているから、定義も何も不可能だ。唯一、映画"逆襲のシャア"は見たから、それだけはわかるが。
というわけで、現在ガンダム第何世代であるのかわからないまま閉じてしまう事となるこのエッセイ。しかし、「僕はガンダム第何世代だ。」と語る資格は、ファーストガンダムをしっかり見てから得られるものなのである。



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: