BONDS~絆~

BONDS~絆~

夏の思い出

「よぉ」
真っ白な半袖のシャツと私よりひとつ上のレベルの高校の制服を着た朋。
隣には同じ色の制服を着た彼女。
手なんか繋いじゃってさ。何も見せつけなくったって良いじゃない。
ほら、彼女さん私を警戒してるじゃない。
私を下から上へとなめるように見てから朋の顔へと視線を移した彼女の瞳には明らかに疑いの意味が込められていた。
朋は彼女に顔を見られていることの気付いていないみたいだったから、私から関係を切り出さなくてはいけなかった。
もう・・・朋のバカ。

「こんにちは、朋の友達です。朋ー彼女さん連れて何してんのよ!良いなぁ~!どうして私より先に新しい恋人見つけちゃってるのさ~羨ましいなぁ!もぉ、こうなたらアンタの友達紹介しなさいよー!」
「はぁ?嫌だよ、面倒臭い」
以前と同じ。笑いながら私の言うことを否定してばかりだった。こんな会話が出来て嬉しいよ。でも、出来れば自分の口から【友達】って言葉は出したく無かったな。
一応・・・今、アナタがいるその位置にも私もいたことがあるんですよ。
なんて、口が裂けても彼女にはいえないけれど。
未練たらしい女だって彼女にも朋にも思われるのも嫌だしさ。

「嘘、嘘。冗談に決まってんでしょ!そちらのエリート学校並みの良い男は、こっちの学校にもいますよからー!」
「そうだよな」
えっ?どうして普通に返すのよ?笑い飛ばされると思ってたのに・・・そんな反応されたらどう返せばいいのか分からないじゃない。
「お前、良い女だからすぐ新しい男出来るよ」
朋には1番言われたくなかった言葉・・・。
今でも朋のこと好きなの隠して高校生かつ楽しんできたつもりだったのに、何もまた別れの言葉を言うことないじゃない。
ほら、彼女もまた不安そうな顔してるじゃない・・・。
全く世話が焼けるなぁ。

「コラッ!そんなこと言ったら彼女さん不安になるでしょー!!バカだねー、こんなんですが、お願いしますね?」
私、笑えていたよね。
今も大好きな元彼とその隣にいる今の彼女を目の前にして、別れてすぐのときはこんな光景見たら、喋れなくなるかもしれないって思ったけど、案外普通に話せるもんなんだ。
でも、本当はわかってる。焦ってずっと早口だった。気付いていたけど口が勝手に動いて止めることが出来なかった。

真夏の炎天下、彼よりひとつ下のレベルの高校に通う私は、ふたりにサヨナラをした後、彼の背中にもそっとサヨナラを告げた。


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