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「こんなことになるとは!?」
スタッフの3番が慌てていた。なぜかハイになっている裕子。カッコいいと言われたタムタムだったが本気で心配している。
「裕子さん 具合が悪いと言ってませんでしたか」
「わたくしそんなことありませーん」
「そうでしたか!?」
奥から本を持ってきた28番だったが事情が分からない。
裕子は自分の娘がご主人の転勤で仙台に行ったことがあったから港町のことをメモにして渡したそう。ライブラリーでその港のことを調べようとまたうろうろしたときに3番に偶然会えたからここまで来れた。それが
「タムタムさんカッコいい!!」
となる。裕子は今度は機嫌が悪くなった。別にタムタムが好きなわけじゃないのに自分と仲が良い聡美がタムタムとベタベタするのはいやらしい。
裕子は上着のポケットにメモを入れていたから探し出したのに見つからない。3番が心配して
「片山さん右のポケットに入れてらっしゃいましたよ」
言われた裕子は左のポケットをゴソゴソ探す。
「あー 右です右です」
理解した裕子だが右のポケットの中も何やらメモがいっぱい入っていて訳がわからない。
「なんとかいう港町で」
例によってタムタムが説明。
「チビタベッキアはイタリアのラツィオ州にある港町で日本人にとって歴史的な繋がりが深い場所です。1615年に支倉常長が慶長遣欧使節団として上陸した地であり 宮城県石巻市とは姉妹都市の関係にあります。1613年仙台藩の支倉常長の慶長使節団が石巻のそばから船出して二年後に到着したそうですよ」
びっくり顔の聡美。
「辛抱強いんですね」
裕子も甲高い声をあげた。
「そうだ!? 娘も支倉常長さんのこと言ってました!! あーよかった 思い出して!!」
「教会もあるそうだから急死した方も来たかったでしょうね」
裕子はそれどころではなく
「聡美さん どなたのこと!? わたくしは知りません」
「えっ!?」
そして今度は裕子が「えっ!?」と叫んだ。
その瞬間28番は持っていた本を隠した。だがタムタムに貸すはずの本を裕子が気づいてしまったのだ。
「娘が言ってた支倉常長さんのご本ね」
結局本は裕子に取り上げられてしまった。
「ではお借りしまーす」
裕子は部屋に戻り3番が追った。
タムタムは一言。
「裕子さんも少し変わったね」
「私も裕子さんのところに」
と聡美は追いかけようとした。その背中に
「認知症は忘れるだけじゃない 子どもに戻るんだよ」
「子どもに」
「しかも子どもにもいろいろいる 叫ぶの 泣くの こもるの 逃げるの そしてみんな気分屋だよ 付き合ったらあなたがボロボロになるよ 適当にしなさい」
何か答えようかと思ったが聡美は何も言わずにライブラリーを出ていった。
59 タムタムさんカッコいい 2025.11.11
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