BONDS~絆~

BONDS~絆~

薄れた愛

ハート(白)


「好きだよ」
彼の言葉を信じた。
わたしも彼のこと長年好きだったから。
彼は結婚していた。その事実を知っているのはわたしだけだ。
わたしが知っていることを彼は知らない。
「お前だけが好きなんだ・・・オレから離れないでくれ」
そう言ったのは彼。わたしも彼が好きだから、ずっと一緒だよって言った。
彼の子供も幾度か見た。実際に目にしたことは無いけれど、財布の中に彼と、奥さんと、子供の3人で写ってる写真を頻繁に見かけていた。
写真持ち歩いていて、本当にわたしのこと好きなのかなぁ・・・と写真を見るたびに思った。

会うのは毎週金曜日の夜。今夜はオールナイトの映画館に行く予定。
ずっと見たかったラストサムライ。
「すっごく楽しみ!」
「オレもだよ!」
わたしたちは同い年だからよく気が合う。
思えば、わたしたちが出遭ったのは中学で、高校は別々だったんだけど、大学が一緒になって合コンしたら意気投合しちゃって、いつの間にか好きになっていたんだよね。
もう、その時から彼には彼女がいて、大学卒業して、そのままゴールインしちゃったんだよね。
そのすぐ後に思いがけない告白されたんだよね。ずっと好きだったって・・・
奥さんいるの知らなかったし、わたしも彼のこと好きだったからその時はOKしちゃったんだよね。
今はわたしは知っているけど、彼はわたしが知っていること知らないんだよね。
複雑な心境・・・。
「ねぇ・・・奥さんと子供淋しがってないの?」
「えっ・・・オレには奥さんって呼ぶ奴も、子供もいないよ」
あ、嘘つきやがった。わたしの1番嫌いなことしやがった。
「ふーん。じゃあ財布に入っている写真何?」
「・・・みたのか?」
「財布開けているときに見えてたんだよ」
「そうか・・・いたけど、別れたよ」
「証拠は?」
彼はおもむろに財布を開けた。証拠はあった。
写真は無かった。
「・・・」
わたしは何もいえなくなった。
「ふーん・・・」
ちょっと悔しかった。まだ写真持っていたら、パシンって頬を叩いてサヨナラっていって彼が追いかけてきて、ゴメン・・・もう少しだけ待ってっていう展開を想像していたからだ。
「・・・何か不満?」
「うん」
何だろう。このどうでも良いやっていう感じ。
結局、わたしは彼が欲しかったわけじゃなかったんだ。
ただ、結婚していたり彼女いる人と付き合ってその”スリル”を味わいたかっただけなんだ。
いつ別れてくれるのかなぁ・・・なんていうのはちょっとした乙女心を描いただけなんだね。
「じゃあわたしもあなたと別れる」
「えっ?それじゃ向こうと別れた意味ないじゃん」
「・・・だってもう飽きた」
本心だった。
「はあ!?」
「ゴメンネ」
「意味わかんねーし」
結局『付き合う』なんて『遊び』の延長だよ。
だからあなただって意味わかんないって言いつつ、わたしに背を向けたじゃない。

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