森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2015.12.17
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(学習テーマ) 素早く変化に対応する

(学習のねらい)森田先生は周囲の変化に自分を対応させて生活することを述べられています。
どういうことでしょうか。森田先生の言動から考えてみましょう。
この部分の内容は森田理論全体像の1、「生の欲望の発揮」に含まれています。

(内容説明)
森田先生のお話をいくつか紹介しましょう。
★森田先生がよく臨済録から引用されている一文は次の言葉です。
「心は万境に随って転ず、転ずる処、実に能く幽なり。流れに随って性を認得すれば無喜亦無憂なり」
とらわれのない心のままであるならば、万境にしたがって、心は刻々に流転してとどまるところがない。

その流転していくままの姿が心の本来性であることを認得するならば、喜びも悲しみも超越することができる。

不安、恐怖、違和感、不快感などにいちいち深く関わりあってはいけない。
その時一瞬は関わりあっても、谷川を流れる水のように、絶えず流していくことが大切である。
それが城のお堀の水のように淀んでしまうと、雑菌や藻が繁殖して、最後には魚の住めないような状態になってしまう。
諸行無常、変化流転の世界観が森田の考え方なのである。

★眠くなった時はケースバイケースで対応すればよい。
時と場合に応じていろんなケースがある。その時と場合に合わせることが大切である。
第1に、一人で用事もない時にはちょっと横になって寝る。
第2に、お通夜とか説教を聞くとかいう時で眠い時は、周囲の人に無作法にならぬように、眠りながら起きているふりをする工夫をする。
第3に、例えば電車を待つ時、急ぐ調べ物をする時などには、眠り込んでは都合が悪いから、外を歩き、その近辺を見物するなり何かをする。そうすれば気が変わって目が覚める。
無理に座っていて目を覚ますことは難しい。


体操の時の休めの姿勢。片足で全身の体重を支え、他の方の足を浮かして、つま先を軽く地に触れている態度をとると周囲の変化に対して、迅速に適切に反応することができる。
森田先生曰く。「わしは、電車の中で立っているときには、体操のときの休めの姿勢をとっている。つまり両足を開き、片足に全身の重みをかけ、他の方の足は浮かして、その足先で軽く床に触れるようにしている。これは不安定の姿勢であるが、この姿勢でいるときは、浮かした方の足先で鋭敏に体の動揺を感ずることができ、周囲の変化にたいして最も迅速に、しかも適切に反応することができる。それは不安定の姿勢の上に立って、しかも自然の心にしたがい、どこにも固着することがないからだ」
休めの姿勢で立っていると吊皮などを掴む必要はなく、読書ができる。
電車の動揺にも、決してじたばたすることはない。
そのうえ、降りる駅や乗り換え場所を間違うこともない。


★捨て身の態度で変化に対処する
柔道では、相手に対して強いて突っ張るとか、自分の技を無理にかけにいくという態度ではなく、自分を投げ出して、いつでも相手の変化に応じて、臨機応変の処置がとれるというのが捨て身の態度です。
心をどこにも固着していないので、その時々に、自由に心が働く。
相撲でも、四つに組んだ時は、全身の力を抜いて、相手の身体にぶら下がっているというふうで、相手が押しても引いても自由にくっついていく。
そうすると、自分よりずいぶん力の強い人でも、いつしかくたぶれて、根負けしてへとへとになり、自然に先方が負けるようになる。
この時にしいて踏ん張ると、相手にその力を利用されて、自分が負されるようになるのである。

★行動は周囲の状況に従って決める。自分の思いから動くのではない。
強行軍の時には、どんなにヘトヘトになってもついていかなければならない。
地震で津波が発生すれば、どんなに熱がでていても高いところへ逃げなくてはいけない。
自分の行動は周囲の状況によって左右されるのであって、自分の都合によって決めるのではない。

★森田先生は人間の感情について次のように言われている。
人間の感情というものは、いつまでも同じ状態にとどまっているものではない。
水の流れと同じで、絶えず流転している。
またそれは、鏡に写る影のようなものである。
明鏡止水というのは、鏡に影の写らないことではなく、写っては消え、写っては消え、止まらないさまをいう。
悲しいときには悲しいままに悲しみ、苦しいときには苦しいままに苦しんでいれば、心は自然と転換されてゆくが、悲しむまい、苦しむまいと努力するから、何時までも悲しみや苦しみから抜け出せなくなるのである。
宇宙の営みも絶えず流動変化しています。
変化しないで固定していることが、安定しているように考える人がいますが、変化しないで固定するということは、存在すること自体不可能なことです。
独楽は回転しているときが一番安定しています。
自転車は前に進んでいるときが、倒れないで安定しています。
常に動いて変化しているということが、安定するためには必要不可欠となります。
不安、恐怖、不快な感情も流動変化を心がけて生活すれば、いちばん安楽な対応となります。

★柿原美恵さんが森田先生の自動車に同乗させていただいたときのこと。
森田先生曰く、「電車に乗っている時は、片足に体重を乗せて、他の片足の力を抜いておくと、電車の大きく揺れた時にも転ばない」
森田先生は以前、人力車に乗っていて、何かに衝突して放り出されたけれども、柔術の心得があったから、飛び下りて怪我をされなかったとのことである。
また、「僕は冬の寒い時でも、決して右手の手袋は使わない。右手に手袋をはめていては、とっさの場合に右手を十分活用できないからだ。だからこの通り、右手は洋服のかくしに突っ込んでおく。ほれ、右手の手袋は一度も使ってないだろう」と言って見せてくださってから「柿原さんにやろう」といって記念に私に下さった。
この2つのエピソードから学ぶことは、森田先生はいつもこれから予測される事態に備え準備されていたということである。
いつも変化に対応した生活を心がけておられたということです。
自分の思いどおりにならない出来事に対して、悲観したり、恨んだりするのではなく、自分から先にその変化を予測して、変化に合わせていこうとする態度です。
これは「かくあるべし」を押し進めるのではなく、事実に積極的に従おうとする態度です。
こんな身近なことから森田理論の本質に迫っていくことができるのです。
こうしたことが自然に実践できるような態度を身につけてゆきましょう。

★風邪をひくということを森田先生が説明している。
風邪をひくというのは、必ず常に気のゆるんだときで、周囲の事情とこれに対する自分の反応が適応性を失った時に起きる。
周囲と自分との釣り合いが取れていれば、そんなシクジリは起きない。
暖かいところではゆったりし、寒いところでは気が引き締まっておればよいけれども、暖かいところから急に寒いところに入り、寒いところから暖かいところへ入る時に、これに対する心の変化が適応せず、気が緩んだところで風邪をひくのである。
ゆえにうたたねのようなことがよくない。しかし精神が自然になれば、うたたねでも風邪をひかないようになる。(森田正馬全集5巻59ページ)
ここで森田先生が言わんとしていることはなんであるか。
これは周囲の状況に合わせて生活することを言われているのだと思う。
寒いところから、こたつに入ると急に手足が暖かくなる。するとぶるぶる震えていた体が緩みほっとしてくる。収縮してきた血管が拡がり緊張状態が取れてくる。
ふつうはここで心身ともにリラックスしてくる。ついうたたねもしなくなる。
つまり心身の緊張状態が、急に弛緩状態に変化しているのである。
こたつに入ったのだから、それでいいのではないかと思う人が多いのではないかと思う。
それは自分のいるところはそうかもしれない。でも外は寒い。トイレに立つときも寒い。
風呂に入る時も服を脱ぐと寒くてたまらないのである。
そういう周囲の事情はお構いなしに、全くの弛緩状態に入り込み、リラックスしすぎてはいけないといっているのである。
武士が轡の音にもすぐに目を覚ますのは、自分の置かれた周囲の状況に敏感になり対応しているからである。
そんな時はうたたねをしても決して風邪をひくようなことはないといわれている。

(話し合うテーマ、課題)
どの話が一番興味がありましたか。
自分が生活に応用するにはどんなことから始めますか。





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Last updated  2024.06.02 23:48:07
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
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