森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2018.01.08
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憑依(ひょうい)現象という言葉があります。
これは自分の体の中に他人や動物の霊が入ってきて、自分を意のままに支配するということだそうです。自分自身が他者にのっとられて支配されているような状態を言います。
森田先生は高知に伝わる犬神憑きの研究をされていました。精神異常をきたした人の研究です。
昔は精神病になった人は、その人の中に悪霊が入り込んだと思われていたのです。
その悪霊を祈祷などによって追い出さなければならないと考えられていたのです。
森田先生は、それは迷信だと発表されています。
ヨーロッパでも魔女狩りというのがありました。これもその類です。

そこまでいかなくても、神経症で悩んでいる人はなにか悪霊のようなものがとりついたように見えることがあります。例えば対人恐怖症の人は人の思惑がとても気になります。
人の思惑を気にして、自分の意志を前面に押し出した自由自在な行動が極端に制御されています。
これは周りから見ると、金縛りにあった一種の「憑依現象」に見えるのではないでしょうか。
自分という1人の人間の中に、他人が入り込んでいるような状態です。
しかも元々存在していた自分を押しのけて、勝手に入り込んできた他人がすべてを取り仕切っているようなものです。他人が支配者で、元々存在していた自分はその子分のようです。
そのような状態が継続すると、ストレスがたまり、生きていることに意味を見いだせなくなってしまいます。私はその原因を「かくあるべし」という思考方法にあるとみています。

販売の仕事をしている女性が、自分が商品説明をしている途中で、お客さんが視線をそらしてしまうと、 「このお客さんは私の事をたいした人間ではないと思っている」に違いないと感じてしまう。
そうすると、急に商品説明をする意欲がなくなり、上の空になって商品説明がしどろもどろになる。
すると、お客さんはこの店員は商品知識が全くないのだ。その上接客態度がおどおどしてみっともない。
その店員から離れたくなる。 「もういいです。自分でゆっくり見てみたい」などという。
するとその女性は、 「やっぱりあのお客さんは自分を馬鹿にしていたのだ」と感じてしまう。
このような考え方をする人は、「他人から馬鹿にされたり、批判されるような人間であってはならない」という強い「かくあるべし」が居座っていることが考えられます。
別の表現をすれば、かけがいのない自分の中に、他人がしっかりと居場所を持っている「憑依現象」が起きている状態と理解しても差し支えないと思うのです。自分では分からなくても、症状を持った人の言動を見ていると、そのように見えてしまう。

そのような人はどうすれば本来の自分を取り戻すことができるのでしょうか。

森田理論では、事実を無視した「かくあるべし」という完全主義、理想主義の考え方が神経症を作り出す原因になっていると指摘しています。
理想と現実のギャップに翻弄されて、格闘したり、苦悩するために神経症に陥ってしまうという。
その状態は、他人という第三者が、自分の頭脳を占拠して、傍若無人な要求を自分に押し付けているようなものではないでしょうか。
赤ちゃんや幼児だった頃は、まだ第三者である他人が自分の頭の中に乗り込んではいなかった。
それが成長するとともに、元々いた自分が片隅に追いやられて、第三者である他人が我がもの顔ですべてのことを取り仕切り始めたのだ。本末転倒状態です。

そういう人は、よそから入ってきた第三者が、元々いた自分に「かくあるべし」を押し付けるのは、なんかおかしいと認識することが大事です。

自分はもともと自由でのびのびと生を謳歌して人生を楽しみたいと思っていたのだ。
もし「憑依現象」が自分の中に起きているのならば、何とかして自分の中に入り込んできた他人という第三者を追い出すことに取り組まなければならない。
自分自身が自分の主人公としての誇りを取り戻すべく努力する必要があるのです。

森田理論では、相手の思惑が気になったとき、自分の素直な気持ちを見つめてみることだという。
これを純な心といっている。いつもそこを出発点にするという気持ちを失わないことだ。
あくまで自分が主人公なのだ。

例えば、自分の仕事で手一杯な時に上司から、 「これを急いでやってくれ」などと言われる。
それを優先して無条件に引き受けるとなると、自分の仕事を一時中断することになる。
でも、本心では素直に受け入れている訳ではない。本当は急ぎの自分の仕事を優先したいのだ。
その「本心」に立ち戻れば、 「すみませんが、私の仕事の納期が迫っているのですぐにはできません。他の人に頼んで頂けませんか」という言葉が出てくる。
それでも 「つべこべ言わずにすぐにやれ」と言われれば、 「それでは今の仕事を急いで処理しますので、少し待っていただけませんか。納期はいつまでですか」と返答する。
自分の本心を偽って、いつも上司の言いなりになっていると、上司はこの部下は使いやすい部下だと思って、無理難題の仕事を次にも押し付けてくる。
すると自分は精神的に苦しくなって、自滅してくる。負のスパイラルに入り込んでしまう。

「純な心」「私メッセージ」「winwinの人間関係作り」などを応用して、険悪な対立関係を避けながらも、上手に自己表現をする方法を身につけなければならない。
これは他人本位の生き方から、自分中心の生き方に転換することになる。
自分の心の領域に勝手に土足で入り込んできた他人を追いだすことが、森田理論学習の大きなテーマである。「かくあるべし」を少なくする方法は、よく学習してぜひとも身につけていただきたいと思う。






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Last updated  2018.01.08 06:30:05
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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