2014年6月24日投稿の再録です。
宮大工の菊池恭二さんという人がいる。
菊池さんは、木はそれぞれ強烈な個性をもっているという。
「檜」は丈夫で癖がなく木肌はつやがあり美しい。香りもいい。
何より耐久性に優れ、腐りにくく長持ちする。害虫にも強い。
このため柱や梁や桁、土台など構造材には最適です。
ただ成長が遅く、用材しては高価になります。
「欅 (
けやき )」
は、固くて強い木です。檜よりも堅い。
それだけに加工するのがとても難しい木です。
狂いも少なく、耐久性、耐水性、耐汚性に優れている。
植林できないのでとても高価です。
「樫」も非常に硬い木ですが、建築用材としてはあまり使いません。
加工がしにくく、乾燥しにくいためです。
カンナの台にするにはもってこいの木です。
「檜葉 (
ひば )」
は、殺菌効果の高いヒノキチオールを多く含むため、木を腐らせる腐朽菌に強い。
ヒバ普請の家は蚊が寄り付かない。白アリに強いなどの特徴があります。
強度も檜なみ、耐水性は檜以上です。
「杉」は檜ほどの強度はないが、それなりに水にも強く、木目がまっすぐにとおっていて加工しやすい。大量に植林されているため安く手に入ります。
「松」は、固くて曲げる力に対して強く、耐久性もあるので梁などに使われてきた。マツヤニをだし、腐りにくい。
耐久性、耐汚性に優れ、線路の枕木などに利用されてきた。
このように木は、それぞれ強烈な特徴を持ち合わせています。
その上で、同じ木でも育った場所によってそれぞれ違う個性を発揮する。
山の南側、北側、谷、峰などどの場所に育ったのか。
成育環境の違いによって、右にねじれたり左にねじれたり、節が多かったり少なかったり、柔らかかったり硬かったりする。
宮大工の大切な仕事の一つに、その癖を見極め、建物のどの部分にどう使うか決めていくことがあります。
温度や湿度の変化によって木は曲がったり割れたりします。
木は暴れるのです。これを木癖と言います。
木癖を無視して、たとえば、右にねじれる木ばかりを組み合わせたりすれば、建物は右にねじれてしまいます。
これを防ぐには右にねじれる木と左にねじれる木をうまい具合に組み合わせて、ねじれの力を相殺してやる必要があります。
木癖を読み切り、適材適所にあてがうことで、建物の歪みを防ぐとともに、長年の風雪に耐ええる堅牢社寺建築を実現するわけです。それが宮大工の技です。
これは人間にも同じようなことが言えると思います。
同じ親から生まれ、同じ親に育てられても、兄弟姉妹それぞれに顔かたちも違うし、独特な個性を持っています。
ましてや違う親から生まれた他人は、気質など大きく違うのが当然です。
森田先生は全集5巻で人間の気質を7つに分類されていました。
神経質性格の人とそれ以外の人とは水と油のようなもので、決して混ざり合うことはありません。
我々は、自分の持って生まれた独特の特徴や個性を早く自覚する。
森田理論の神経質の性格特徴を学習すればそのことはよく認識できます。
そしてその特徴や個性を磨いていく。
最終的には自分自身を活かし尽くす。高め尽くす。
またそれぞれに違う他者の特徴や個性を認める。
互いに受け入れて互いに活かしあう。
そういう人間関係を目指していく。
宮大工の菊池さんは、ないものを求めるのではない。
あるものを見つけ出して、活かしつくすことの大切さを教えてくれています。
これは森田でいう唯我独尊の考え方と同じです。
(
宮大工の人育て 菊池恭二 祥伝社文庫参照 )
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