森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2025.05.31
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帚木蓬生氏は、精神科医になりたての頃、祈祷師、占い師、伝統治療師、いわゆるメディシンマンが嫌いでした。
患者をたぶらかして、非科学的な治療をする詐欺師だと思っていました。
その後ネガティブ・ケイパビリティの考え方を知るようになってから、その考え方は大きく変わりました。

祈祷師たちの技法を見直すと、現代のあらゆる精神療法に共通する、治療者としてのあるべき基本的態度が浮かびあがってきます。
病人の肉親や友人に対して、遠い山の薬草を採りに行かせる手法で、重要なのはおそらく薬草そのものの効果ではないでしょう。
家族や知人が、病人のために危険をおかして長旅をし、薬草とともに戻ってくるまでには、10日や20日はかかります。
いや1ヶ月か2か月かかるかもしれません。
その間、病者は ずっと希望を持ち​ 薬草が届くまで待ち続けます。

うまくいけば、その間に病が峠を越して、自然治癒力によって快方に向かうかもしれません。
そして仮に不幸な結果になったとしても、病人は家族をはじめとする親族、友人に感謝して、死に赴くでしょう。
周囲の人たちも、やるべきことはやったという思いで、悲嘆にくれつつも、悔いは少ないはずです。
いわば八方よしの結果が生まれます。

大病を患った時、自然治癒力に頼らざるをえない場合があります。
こういう場合、祈祷師たちのように、将来に希望を持たせる。
人間に備わっている自然治癒力を高めていくというやり方は理にかなっています。

もう一つ大事な点があります。
祈祷師たちが、病人の苦しみから目を離さないで見守っているという点です。
人は誰でも、見守る眼や他人の理解のないところでは、苦難に耐えきれません。
誰かからの、あなたの苦しみはよく分かっている。
あなたの奮闘ぶりもよく知っているというメッセージが伝わると、病人は持ちこたえられ、苦難を乗り越えることができるようになります。
祈祷師たちが病人に渡すお守りやお札、家族に家の四隅に置くように命じる砂や絵札なども目薬の代用になります。

(ネガティブ・ケイパビリティ 帚木蓬生 朝日新聞出版 113ページ参照)

この話から2つのことがわかります。
今すぐに解決策が見つからないことは、希望を持って時間の経過にまかせる。
軽率なその場しのぎの行動は、益々問題を大きくしてしまう。
今すぐに解決策が見つからない案件を抱えている人がいたら、しばらく寄り添ってあげて様子を見てあげるようにしましょう。

症状の違う人が集談会にやってきたときこそ、このやり方を活用しましょう。





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Last updated  2025.05.31 06:20:05
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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