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ムジブでわいわいと楽しい時を過ごして、さあ帰りましょう、という時に携帯が鳴りました。見慣れない番号なので無視しようとも思ったのですが…仕事用の携帯にかかってきましたので、これは仕事関係だと思い直しました。
電話を取ると、ワディラムのスレイマンからの電話でした。私が取引をしているキャンプ場です。いつもは彼のお兄さんの Atieg (アタイグ) がかけてくるので、あれ? なんでアタイグじゃないのかな? と一瞬思ったその変な予感が的中してしまいました。スレイマンの声は非常に遠くて聞き取りにくいものの、いつもとは違うとてもシリアスな様子。
「昨日ナオコからアタイグに送ったメールを見た」と切り出します。そうです、お客様の予約のメールを入れていました。「アタイグについて本当のことを言わないといけない。アタイグとナオコはとても良い友達だったから、隠しておけないと思った」などと言い始めるので、へ? へ? よく分からないけど、絶対に何か重要なことみたい…と思ったのもつかの間、「アタイグが○○してしまった」。
アラビア語で話すうえに、この「○○」の部分が今まで聞いたことがないアラビア語の単語なので、何度聞きなおしても分かりません。でもすごく嫌な予感がしました。「何言っているのか分からない」と何度聞きなおしたことでしょう。どうもアタイグに大変なことが起こったようです。
私がこの単語を知らないことが分かったのか、スレイマンは英語でひとこと、「アタイグが死んだ」と言いました。本当にびっくりしました。というか信じられませんでした。アタイグは32歳で、死というイメージからは程遠い働き盛り。しかも私はつい先日、お客様のアテンドの時にアタイグに会ったばかり。冗談を言ったり笑ったりしていたではありませんか。
スレイマンによると、アタイグは突然に亡くなったとのこと。家で家族と過ごしていた時に、本当に突然に呆気なく息を引き取り、お医者さんに連れていく時間すらなかったのだそうです。たぶん心臓発作だったのでしょう。
190センチ近くある長身の彼は、いつもベドウィンの衣装に身を包み、こんがりと日焼けして、その背に似つかわしくない童顔をしていました。彼は6人兄弟ですが、その中でも特に人の良さがにじみ出ていました。3人の小さな子どもたちのお父さんでもありました。私が特に信頼するビジネス・パートナーだったのです。

その知らせから3日ほどはかなりショックでした。つい先ほどまで息をしていた人が突然いなくなるというのは、本当に不自然で不合理なことです。後に残された家族たちの気持ちを思うと、胸が痛みます。
つい最近まで「ヤー、ムディーラ!!」(ねえねえ、社長さん!!)と電話をかけてきていた声がもう聞けないというのも何とも寂しいものです。
アタイグの亡き後は、弟のハーリドが代わりとなって、兄のスレイマンと引き続きキャンプ場を経営していくとのこと。「自分たちにはこれしかないから」と言います。アタイグのメールアドレスも、銀行口座も、携帯電話番号もそのまま使ってほしいということで、もうアタイグはいないのですが、その相手にメールを送るのはとても変な感じ。そして、ハーリドはアタイグの名前で返事を書いてくるのです。
スレイマンは「ぜんぶ神様が決めているからね。すべてあらかじめ書かれているんだ」と、そればかり言っていました。悲しみを乗り越えるためなのでしょうが、それだと悲しみが募るばかりだと思います。「あらかじめ書かれているんじゃないよ、でもアタイグは神様の記憶の中に残っているから、もう一度会えるよ」と一生懸命伝えようとしたのですが…
心臓発作で亡くなる人はヨルダンでとても多いのです。食べ物の影響がとても大きいと思います。野菜を食べずにお肉ばかり。タバコは四六時中ぷかぷか、そして砂糖がどっさり入った甘い甘いシャイ(紅茶)をひっきりなしに飲みます。これではね…。それでも80歳まで長生きしている人も多いので、アタイグのようなケースはやはりあってはならないことです。
アタイグの子供たちがおじ様たちの行き届いた世話を受けて、良い若者に育ってくれるよう願ってやみません。
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