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シリアのデモは混迷の度を極めています。戦車投入だとか、無差別発砲だとか…確かに金曜日の礼拝後にデモが起きるようですが、実際のシリアでは国内のほとんどが通常は静まり返っている状態だということです。
ニュースだけを聞いているとシリア国内全体が緊急事態という印象を受けることでしょう。が、シリア人の中には政府支持者も多く、反体制派が多数を占めているような報道は誤解を招きます。デモに関しては、当のシリア人が戸惑っているというのが現実かもしれません。
実はシリアのデモには、エジプトの民主化デモなどとはまた一味違った怪しげな面も見え隠れします。シリアのアサド大統領は、民衆に向かって演説を行った初めの時から「このデモは外国勢力の工作によるもので、今こそシリア国民の団結と一致が試されている」というようなことを主張しておりました。
そんな矢先、アメリカのワシントン・ポスト紙で明らかになった事実があります。それは実際にアメリカがシリアの反体制派を資金援助しているという事実。ブッシュ大統領の時代に始まったこの資金援助、オバマ大統領の代になっても続けられていたとのこと。少なくとも昨年の9月までは。米国務省は2006年から総額6百万ドル(約4億9000万円)規模の資金援助をシリア反体制派にしているということです(記事を一部抜粋)。
さて、政治の世界はとことん腐っていて、誰がどんなふうに絡んでいるかは当人と神のみぞ知る世界でしょう。今回のシリアのデモに関しても、どこまでが外国勢力の「工作」で、どこからが民衆の熱き思いか確かなことは分かりません。
ただ分かっていることは、反体制派が多額の資金を持ち、一般の民衆にお金を渡して情報工作しデモを拡大しているということです。これは実際に私の友達に起きた経験です。正確に言うと、友達の妹の職場仲間に起きた話。ホムス出身の彼女は、アレッポで教師の仕事をしています。ホムスで大規模なデモが起きたことを知ったある日、家族の安否が心配でバスに乗り、ホムスへ向かっていました。
ホムスの手前で、突然バスが止められます。男性の乗客は全て降ろされ、バスには女性だけが残されました。一人の男が乗ってきます。かばんを開けて取り出したのは…マイク。彼女に職業は何か、なぜホムスに向かっているか聞きだします。そして、「アサド大統領に対する不満を何でもいいから話しなさい」と強要しました。「″給料が安い″でもいい、とにかく何でもいい」というのです。
彼女が「何もない。何も言いたくない」と拒否すると、この男はマイクのスイッチを切り、「家族のところへ向かっているんだろう? 家族に会いたいだろう? 何も言わなかったら、家族の身の上は保証しないよ」というのです。
ショックを受けた彼女は、マイクに向かってアサド大統領を非難する内容のコメントをせざるを得ませんでした。言い終わって泣いていた彼女に、この男は「Good Girl」と言ったということです。
情報は明らかに工作
されています。純粋な民主化デモと言えるのでしょうか。また反体制派が多額の資金を有していることも明らかです。
前にも書いたとおり、シリアの政治事情は特殊で、言論の自由はないし、「圧政」と言うこともできるでしょう。不満を持つ人々がいることは否定できません。そもそも、誰もが満足する政治などというのはあり得ません。また時代の流れには逆らえません。民衆の声がかつてなく強くなっているのは、起こるべくして起きたこと。
ただ、反体制派の情報工作や一般民衆の買収について、いったいどこまで報じられているのでしょう。メディアは本当に中立の報道をしているのでしょうか? 「中東の民主化のドミノ現象がシリアにも普及」などとは一言で言えない事情があるのです。シリアのことを本当に知っているジャーナリストでなければ、公平な報道はできないでしょう。この点、日本のメディアも中東から遠くかけ離れているような気がしてなりません。
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