宝石の豆知識5(サイズ直し編)


■修理(リペア):サイズ直し

 ジュエリーの修理には、リングのサイズ直し、
 切れたネックレスのろう付、ゆるんだ真珠の糸替え、
 新品仕上げ、ゆるんだ石の石留め直しを始め、メッキし直し、
 金具の直しや取り替え等、いろいろな種類があります。
 その他、欠けたりキズついた宝石の再研磨なども修理に入ります。

1)サイズ直しの基礎知識:作業方法
 使用する工具は、製造加工で用いる工具類よりはだいぶ少なく、
 小型のものがほとんどです。
 主な工具名をあげますと、ルーペ、ヘラ(みがき棒)、
 糸ノコ、フレームとノコ刃、洗浄液、金床またはアンビル、
 ハンドモーター、バッファー、ハンドモーター用バー、青粉、
 赤粉などの研磨剤、ピンセット(中・小)、ヤットコ数種、
 爪おこし(コジアケ)、各種ヤスリ、紙ヤスリ、ケガキ、ステンレス定規、
 ガスバーナー、酸素バーナー、酸化防止液、
 それにろう付作業に必要な希硫酸、軽石、石綿板、
 フラックス(ほう砂)などです。

 a.たたいてのばす場合

 リングのサイズ直しには、のばす場合(サイズのばし)と
 縮める場合(サイズちぢめ)があります。
 縮める場合、腕の下の部分の地金を糸ノコ刃で2箇所切り、
 余分を取り除いてからろう付けします。
 のばす場合は、1箇所をノコ刃で切り、
 必要なサイズまで広げて地金を足してろう付けします。
 どちらの場合もサイズ1番(1号)は約1mmです。
 のばす場合は木槌や金槌でたたいたり、
 またサイズ直し機でのばすことも出来ますが、
 無理してたたくと腕の厚みが薄くなりすぎたり、
 細くなったりしますので注意を要します。
 たたいたりサイズ直し機でのばすのはせいぜい半番~1番位です。

 b.石入りリングを地金物リングのサイズ直し

 石入りリングを、石の入っていないリング(地金物)を比べると、
 石に熱が加わらないように注意する分だけ
 石入りリングのサイズ直しの方が難しくなります。
 地金物のサイズ直しの場合は、高温でのろう付けが出来ますから、
 ろうが十分流れず仕上がり後に
 ろう目(ろう付け箇所)が見えるというようなことは少なくなります。
 またサイズ直しで多少できる円の歪みも木槌等で簡単に直しますので
 作業が楽です。

 c.中石入りリングの3番以上の直し

 中石入りのリングを3番以上にのばすような場合は、
 完全な円にはなり難く多少縦長の楕円になります。
 石座や肩の部分は動かせない為、
 どうしてもリング部分が真円にならないのです。
 これを無理して修正しようとすると地金にヒビが入ったり
 (特にキャスト枠の場合などに多い)、
 肩部や腰部のろう付がはずれて(手作りの枠の場合)しまうことがあります。

 同じ理由でサイズを大幅に縮めた場合も真円になりません。
 この場合は横長の楕円になります。

2)サイズ直しの基礎知識:熱伝導と石の関係
 a.熱伝導

 熱伝導とは、熱が物質を伝わって高温部から低温部に移る現象をいい、
 熱伝導による熱の伝わりやすさは熱伝導率によってあらわし、
 それぞれの金属は固有の熱伝導率をもっています。
 シルバー(950、925)、ゴールド(K18)、
 プラチナ(Pt900)を比べますと一番熱伝導率が高いのがシルバーで、
 次がゴールドで一番低いのがプラチナです。
 熱伝導率の高いシルバーリングは原則として石を外してサイズ直しを行います。

 熱が伝わり易い為にサイズ直し部分のみを加熱しても
 すぐに石座まで熱がまわり石を損なう危険性があるからです。
 ふくりん留めや彫り留め等で石を外せないものは、
 基本的にサイズ直しできないと考えてください。
 K18は原則として石を外さないでサイズ直しができます。
 水分を含んだ布などで石を保護してサイズ直しを行います。
 プラチナは石を外さないでサイズ直しを行います。
 熱伝導率が低いので加熱するとその部分だけ温度が上がり、
 石に熱のかかる負担が比較的少ないからです。
 ただし安全を期して水分を含んだ布などで石を保護して作業するのが普通です。
2)サイズ直しの基礎知識:熱伝導と石の関係

 b.注意を要する石
 サイズ直しなどのろう付時の高温は、全ての宝石にとって大変危険です。
 最も耐熱性が高いといわれるダイヤモンドさえ急に高温加えたり、
 加熱後に急に水に入れると割れたり変色したりする事があります。
 特に次の石には注意が必要です。

 1.有機質の石
 真珠、こはく、サンゴ、べっ甲などは少しでも熱が加わると変色、
 破損、変形などしますので要注意です。

 2.多孔質の石
 トルコ石やさんごなどの多孔質の石も熱が少し加わるだけで
 ツヤがなくなることが多いので注意して作業します。

 3.特に熱に弱い石
 有機質の石や多孔質の石の他、オパールやアメシスト、シトリン
 なども熱に弱いので気をつけます。



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