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2005年12月08日
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色彩間苅豆を観て

 醇風小学校相生分校六年 不二豊

 (原文まま)


 九月の歌舞伎公演は、吉右衛門と玉三郎の出演なので、案内を見た時から気合いを入れて楽しみにしていた。

 しかも当日はいまだかつて足を踏み入れたことのない歌舞伎座の一階席最前列で見るという幸運にめぐまれて、あまりの嬉しさに、もうすでに筋書きが配られているのを忘れてもう一冊カタログを買ってしまった。

 演目が始まった。

 最初にシャンッと幕の開く音がして、玉三郎演じるかさねがスタタタタと風のように花道を走り過ぎていった。そして、彼女がかぶっていた紫の布をぱっと取った時、スポットライトの中で白粉がふわっと舞ったのだった。

 また玉三郎がお風呂から帰ってきてお化粧をしている場面と、扇子を片手でパララララリと優雅に開くところがきれいで印象に残った。


 しかし、彼は彼で地道な動きをしていたのだった。

 ときにこの話の吉右衛門の役は、ひどい悪党だ。吉右衛門は図太くて冷徹な悪党の役を、実に魅力的に演じていた。

 物語の前半は実に平穏無事で、きれいなのだが少々眠気を誘われた。しかし、ガイコツが卒塔婆に乗って流れてくる──この設定もなかなか唐突でいい──頃から俄然面白く、昂奮の様相を呈してくる。

 吉右衛門演じる与右衛門は、実はかさねの母親を奪おうとした上、その主人を殺したという徹底したワルで、かさねの顔が醜くただれるとしつこく鏡を見せようとするいじわるさんでもある。

 そこでまたかさねのことを「殺してしまえ」と決めるや、鎌でバッサバッサと切りかかるのも明快でよろしい。
 そして、男の裏切りを知ってからのかさねの変貌がすさまじく、迫力があった。

 肩越しにふり返って与右衛門をにらむ目つきの激しさは、背後に怨念の炎が見えたようだったし、解けた帯をバシッバシッと床に叩きつけながら詰め寄るところは、悔し哀しの気持ちが炸裂していた。最初のかさねと後のかさねとでは、まるで人が違ってしまっていた。

 かさねの強い怨霊によって引き戻された与右衛門、すなわち吉右衛門は、幕が引かれる時、荒い息をつきながら、ギラギラと気迫を放っていた。

 このような舞台を人生の前半で見られたことは、ぼくの幸運でした。
 関係者各位に心からの御礼を申し上げます。




 本日の日記---------------------------------------------------------


 楽だったぁ(笑)!

 さて、昨日に続き、豊たちが観た演目のあらすじをもう一度掲載させていただきます。

 【色彩間苅豆について】
 歌舞伎演目「色彩間苅豆」は、通称は『累』(かさね)といい、清元(きよもと)の舞踊劇です。敵(かたき)同士とは知らずに恋人となった与右衛門(よえもん)と累(かさね)が登場する作品です。

 累は恋人の与右衛門を追って川べりまでやってきます。

 与右衛門が髑髏を取り上げると累の顔が醜く急変します。髑髏は与右衛門に殺された累の義父のもので、義父の祟りが累に乗り移ったためでした。

 醜く変わった累は、殺そうとする与右衛門と争いますがついに殺されてしまいます。前半では、累が清元のしっとりとした曲調に合わせて恋心を訴える「クドキ」が見せ場です。後半になると曲調ががらりと変わり、醜く変わってしまった累が与右衛門に襲いかかる場面が見どころです。


 これが演目のあらすじですが、 舞夜じょんぬ さまに教えていただいたことによると、日舞にもかさねを演じることがあるそうです。 じょんぬさまのお師匠さまがおっしゃるには、「ものすごくお金がかかる舞台」だとか。

 さて、じょんぬさまは一度、「薫樹累物語」を歌舞伎座でご覧になったことがあるそうです。こちらはいわゆる「累」の中でも切ない話だということです。夏に上演されることが多いようで、いわゆる怪談ものとしてですが、正直、かなりスプラッタな物語という印象を受けられたそうです。

 以下、じょんぬさまからいただいたメッセージを掲載させていただきます。

 ──コメントのところでちょこっと気になったので玉三郎さんと「色彩間苅豆」で検索してみたところ、玉三郎さんの年表が出てました。たぶん豊くんや綾一郎くんたちが見たのは、歌舞伎座かな。修学旅行で観たのかしらん?でも六年の子どもたちにとって歌舞伎は好き嫌い分かれるし、下手したら騒ぐか寝ちゃうかのどっちかじゃないかなあとか、ついつい心配してしまいました。

 じょんぬさま、ご明察です。
 たしかに綾一郎くんは豊のとなりで絶対に健やかな寝息をたてていたと思います!(笑)。
 昨日今日と二日にわたって教えを乞わせていただきました。本当にありがとうございました。この場をお借りして、御礼申し上げます。


 明日はこの章のおわり●玉三郎、豊を見い出す●です。
 県の教育委のおじさま、豊の態度に怒っとんさらんかいな。
 タイムスリップして、事の顛末を見届けにきなんせ。



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最終更新日  2005年12月08日 13時47分30秒 コメント(4) | コメントを書く


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