旅人の独白

旅人の独白

思い出行


彼女とホテルで待ち合わせていた。本当に来てくれるか心配だったが、フロントで手続きをしようとしたら、彼女がロビーから入ってきた。嬉しかった。遠いところをありがとう。
人目も構わず思わず僕は彼女の肩を抱いた。ホテルでは気を利かしてくれて、奥まった静かな部屋を取ってくれた。大原美術館、屋敷町、倉敷神社、3日間の思い出は、今も僕のデジタルアルバムに取ってある。レストランでビールを飲んで、買い物で柿の葉色のショールを買ってあげたり、神社の階段はふざけて彼女をおぶって登ろうとしたが、さすがこの年の僕の体力では、いくら軽いといっても彼女の体重は応えた。穏やかで幸せな3日間だった。帰りの新幹線の中では、隣で眠る彼女の顔を見ながら、いとおしさが胸にこみ上げてくるのを抑えることができなかった。そして人目をかまわず彼女の唇にキスをして、ひざ掛けを胸まで引き上げて、目を覚ました彼女の胸をそっと弄った。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: