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2005年01月27日
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カテゴリ: 読書
犠牲サクリファイス~わが息子・脳死の11日~


【楽天ブックス】犠牲(サクリファイス)

犠牲(サクリファイス)~わが息子・脳死の11日
著者: 柳田邦男
出版社:文藝春秋
出版:1995年(単行本)、1999年(文庫本)
ISBN:4-16-350490-7(単行本)、4167240157(文庫本)



重いテーマの本である。先に読んだ妻に薦められて読んだのだが、読後の感想をどのような言葉で表現したらよいのか、何に焦点を当てればよいのか当惑している。



著者の柳田邦男の次男の洋二郎が脳死に状態となり、ルポライターである筆者が患者の家族の立場から脳死についてその経緯、所信、心情の揺れをまとめたものである。
儀母が人工呼吸器をつけて意識が戻らぬまま入院し、約3ヶ月看取った私には頷かせる記載が随所にあり、とても貴重な本となった。




筆者の家族は、妻が神経症、長男は脳炎由来のてんかん症、次男は対人恐怖等の強迫神経症を病んでいる。
ある日、次男が自宅で自殺を計り、救急救命センターの医師た看護婦達の的確な処置にもかかわらず、植物状態から徐々に脳死状態に向かう。
徐々に死に向かいつつ言葉を発せぬ次男を看病しながら、父親である筆者は息子を理解できていなかったことに気づき愕然とする。骨髄移植のドナー登録していた次男を尊重し、医師に申し出るがレシピエントが現れず、脳死状態での腎臓提供を提案され提供した。



(次男は)心の病ゆえに、「誰の役にも立てず、誰からも必要とされない存在」となっていることを悩んでいるがゆえに、密かな「自己犠牲」の行為を「ごく自らが志す信念」と位置付け、骨髄バンクにドナー登録していたのであろう。




その過程で、死を向かえる家族を持つ人間の心情が、記載されている。


〇私と長男が次男にあれこれ話しかけると、次男は脳死状態に入っているのに、いままでと同じように体で答えてくれる。おそらく、喜びや悲しみを共有してきた家族でなければわからない感覚だろう。

〇(救急センターの)先生は確かに次男の命を救えなったけれど、彼がよりよい最後を迎え、私たち家族がその彼の最後を援けてやれるだけの十分な時間を創ってくださった。看護婦さんたちのひたむきであったかいケアや私たちへの励ましは、私たちのとってかけがえのない支えでした。よりよく死ぬことの難しくなっているいまの時代に、救急医や救急ナースのそういう取り組みは、それだけで重要な仕事だと思うんです。







〇死を大事にすることは、死にゆく時間を大事にすることだと思う。脳死を人の死とするならば、脳死から心停止に至る時間を、家族が死にゆく者と会話をし、受容し、納得のいくかたちで臓器提供を決心するのを、医療者がケアを通して支援する特別の時間帯として法的に設定すべきではないだろうか。

〇(長男の発言)ただ弟の臓器を利用するというのではなく、病気で苦しむ人を助ける医療に弟が参加するのを、医師は専門家として手伝うのだ、というふうに考えてほしいと思うんです。




筆者は脳死と臓器移植について、次のような見方を提案している。


■脳死は個体死(心停止、呼吸停止、瞳孔散大)に至る過程である。
脳死状態になっても人工呼吸器により呼吸を維持できるが、限界があり数日から1、2週間で不可避的に心臓と肺の機能停止をもたらし、個体死(人の死)につながる。脳死と個体死(心臓死)が全く別のものではない。

■死には「一人称(私)の死」、「二人称(連れ合い、親子、兄弟姉妹、恋人)の死」、「三人称(ヒト一般)の死」がある。
1人の患者の死は医師と家族では立場が大きく異なり、医師にとっては「三人称の死」であっても、家族には喪失感や悲嘆を伴う最も辛く厳しい「二人称の死」である。
「二人称の死」に直面する家族には、グリーフワーク(悲嘆の仕事)のための「時間」と「場」を確保しようとする新しい医療のあり方が必要である。





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最終更新日  2005年01月27日 22時29分03秒
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