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八木哲郎

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2005/06/16
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カテゴリ: カテゴリ未分類
前の日記で、学校教育では知識を教えることにのみ専念していることを書きました。学校という制度は国全体が枠組みをつくって私立学校も指導し、国のためになる国民を育成することに主眼があります。

話を変えてみます。日本国憲法では私たちのことを「国民」としていますが、アメリカの憲法では「ピ-プル」です。日本国憲法を作るとき、「ピープル」を最初「人民」と訳した。しかし、共産党が「人民」ということばを多用していたので、これは避けて「国民」とした。戦前は「臣民」だった。つまり私たちは天皇の臣下だった。この「臣民」が「国民」になり、これは妥当な言葉として受け入れられたのですが、やはりこの言葉では国という意識が先行します。
アメリカのようにピープルとすれば、これは個人になります。すると自然に教育は個人を対象とするようになる。もちろんアメリカでも国家統合の大事さを強調していますが、もとにあるのは個人です。
日本でも個人という観念が先行すれば、学校は個人が長い人生を生きていく知恵や力をどこかでつけてやらねばならないという思いが生まれたはずです。

私は30歳過ぎたサラリーマン時代に、大宅壮一のマスコミ塾というところに入りました。たまたま会社でわりと暇な部署に異動になり、夕方はあまり残業がなくなったので、夕方の時間を活用しようと思っていたときに、会社から数百メートルしか離れていないところでこの塾が開かれていました。
私は高校時代から物書きになりたいというのが志望でした。しかし、いざ、原稿用紙にむかうとどうしても書けないのです。破っては捨て、書いては捨てで、原稿用紙20枚以上書くことがどうしてもできませんでした。いったいどうしたらもっとすらすらと物が書けるようになるだろうかと必死で苦しんでいたところ、大宅壮一、草柳大蔵といったそうそうたる物書きたちが懇切丁寧にマスコミ志望の青年を指導するというので、躊躇することなく入りました。
週に2回講義があり、それが6か月か7ヶ月続いたと思います。同級生は50,60人でいろいろな人がいました。
講師は物書きが一番多くて、大宅先生以下、草柳大蔵、扇谷正造氏など著名人がそろっていて一番若い講師が永六輔氏でした。それから写真家、漫画家、編集者、学者など多彩でした。

大宅氏はノンフィクションの具体的な書き方、文章のメリハリのつけ方、一番大事なことは、文章は商品だぞということでした。扇谷氏は文章は短文がよい、それは新聞記事の書き方は短文だぞ、それで行け、というもの。いちばん印象に残ったのは渡部氏というはやりのカメラマンで、文芸春秋のグラビア写真をとっていた人ですが、4枚の見開き写真だけで百万円という話に驚きました。私は写真なんてパチッととればいいだけじゃないか程度の理解しかなかったのですが、東芝の土光社長をグラビアに4枚とるために1月くらいかけたという。まず社長の伝記を調べ、書いた本を読み、最近の新聞談話を読み、東芝の業績を調べ、土光さんの社長室で取材し、自宅まで行って、ドテラ姿で奥さんと差し向かいでメザシのおかずで食事をとっている写真をとったりしている。なんで写真だけのためにそんなに手間ひまをかけるのかというと、土光さんという人物像を正確に把握していないと、土光さんという人物を最高度に表現できないからだと渡部さんは言いました。
この塾の特色は講義だけでなく、著名な先生方と膝を交えて質問したり、議論したりする機会がありました。日ごろなら雲の上のような人と2,3メートルくらいの距離で対面し、話ができるのですからこれは大変な感激でした。こういうのは、オーラがすぐ伝わってくるのです。
というわけで、私はこの塾に6ヶ月行っただけで、目からうろこが落ちたというか、こんな教育はまったく過去18年間受けたことはなかったなとつくづく思いました。ここでの塾で受けたものは明日からでもすぐ生きていく上ですぐ役に立つ話です。教育とはほんらいこういうものではないかと頭をぶん殴られたような気持ちになりました。おれがこれまで受けてきた教育とはなんだったのかという気持ちになりました。





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Last updated  2005/06/16 10:49:22 AM


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