言うのは簡単だけど・・・・


 通学路を三分の二ほど帰った頃から、便意を催してきた。我慢して歩いていたが、家のすぐ近くまで帰ったとき、二級上の子のお母さんが丁度帰宅して車から降りてこられた。その顔を見ると緊張がほぐれ急に便意が激しくなり、どうやっても我慢できないところまでになった。
 「お便所、貸して。」
 この言葉は咽の所まで出ても、なかなか勇気が出ない。このままだとおばちゃんは家に入ってしまう。ぼくはここでしくじってしまう。ぐぐぐ・・・・・・。
「お、おばちゃん!おトイレ貸して!!!」
 思いきって言うとおばちゃんはにっこり笑って、急いだ口調で答えてくれた。
「さぁさ、どうぞ、どうぞ。」

「おトイレ貸してって言うのは簡単じゃけどナ、言うのにはすごい勇気がいるんで。でも、僕が言わんと誰も代わりに言ってくれる人は居らんし、ちょっと恥ずかしかったけど、大人にならんといけんと思って言ったんで。」

 留守にすることが多い我が家では、帰っても鍵が掛かっていたら、と云う心配もあったのだろう。そして、心やすい近所のおばちゃんの顔を見たとたん、お尻の緊張が一瞬ほぐれてしまったのだろう。
 これまたたくましくなったものだと嬉しく思った。そんなことがあったことをまた正直に話してくれる。今度Uさんに会ったら、おトイレを借りたお礼を言おう。

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