GOlaW(裏口)

2006/01/18
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カテゴリ: 西遊記



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 今回は“1.展開を逆算する感覚”と、“2.誰にでもできることで虚を突き、ピンチを脱するタカルシス”の二点をまず語ります。
 そしてこの二点を踏まえたうえで、『今、このドラマの存在に対し、本当に求められている事』を語りたいと思います。


 正直なところ、『フジテレビのファンタジー&特撮』という時点で、私は相当の覚悟を決めていました。そして第一話の完成度はまさに“想定通り”。
 だから第二話も「…初回と変わらないだろうなぁ…(頭痛)」と思っていました。

 すると今回、前回における指摘(“戦闘が工夫無し”、“妖術が生き生きと描かれていない”など)の改善に加え、ある二点において完成度が上がっていたんです。
 その二点とは『西遊記』のような“また旅物”や、“RPG的展開の物語”において重要となるものでした。

 そしてこれから述べる“二点”にスタッフが自覚的になり(←ここ、最重要)、その感性を大切にするならば。
 このドラマは“化ける”と確信しました。

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 今回は

に辿りつく為に、すべての状況を逆算して物語を組み立てているのがよく分かりました。
 …『全ての複線や手段・台詞などを一旦、ばらばらにしてから並べ替える』過程がリアルに想像できるのは、やっぱりTRPG好きだからかもしれませんね。この作業はTRPGでゲームマスターをやった人なら全員覚えがあるはずです。
 こう行った物語(やゲームのシナリオ)を作る場合、見せ場や脇役・小道具を生かすために、逆算を行ないます。そしてその感覚が優れているほど、視聴者(やプレイヤー)を引き込む物語を産み出す事が出来ます。

 第一回ではこの『逆算』がまったく見られませんでしたからね(雑魚戦三回とか、ボス戦がしょぼい、など)。そういったことが全く出来ない脚本&スタッフなのか、と実は勝手に思い込んでいました。
 でもちゃんと『間欠泉封じ』や『秀でた嗅覚』を生かす為に、きちんとボス妖怪の能力や策謀方法にまで結びつけた点はすごく評価します。
 『石化』と『温泉』という二つの主軸を絡ませながら、大きな破綻無く、テンポ良くちゃんと畳み掛けたのはえらい。
 やればできるんじゃないですか。

 この感覚さえ磨いていけば、間違いなく物語は洗練されていきます。…『逆もまた真なり』ですが(戦々恐々)。
 今回で見た希望の光です。

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 そしてもう一つの光は、“三蔵を喰おうとする相手に、湯船を汚して嫌がらせをする悟空”でした。
 …これ、『子供には下ネタ受けるから』とかいう安易な理由で作ったシーンだったらぶっ飛ばしますけどね(笑。ただし目は笑っていない)。


 このジャンルの物語は、昔話よりもコンピュータRPGで親しんだ人が多いんじゃないでしょうか。私も『ドラゴンクエスト』から足を突っ込んだ人間です(をひっ)。
 そういったコンピュータRPGでは、戦闘動作などは細かく指定できますが、決められたこと以外はまったく反映できません。

 でも現実は『決められたことだけが正解じゃない』。
 力ずくで相手を止めるよりも、知恵を絞って相手の意図を妨害する方が、はるかに効果的です。
 他にも『人質を安全域へ誘導』、『明かりを消す』など、色んな行動がドラマの中では出来ます。


 そしてそれが『誰にでもできる』ことであるほど、視聴者は登場人物に親しみを持ちます。それが有効であるほど、視聴者はカタルシスを感じます。
 『RPG好き、ファンタジー好き』の層はもちろん、それ以外の視聴者層を取り込むには、『誰にでもできることで、英雄になる』シーンが必要なのだと思います。
(例えば『クレヨンしんちゃん』が大人にも受ける理由のひとつのは、“5歳児が誰にでも出来ることで、劇的な活躍をする”ことだと思います)

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 『西遊記』は“また旅物”といわれるジャンルの一つです。

“また旅物…元は『博徒が全国を流れながら事件に巻き込まれていく形式』を指す。
      そこから発展し、時代劇などに組み込まれる事となった(例:『三匹が切る!』や『水戸黄門』、『木枯らし紋次郎』)”

 つまりこの形式は、江戸時代から確立され、長い年月を経ていくつもの黄金パターンを産み出し、洗練させていったのです。
 そしてこれは今や、時代劇だけのものではありません。
 数多くのアニメやゲーム、児童文学やライトノベルに取り入れられ、更に昇華されているのです。

 今やほとんどの人たちが、この“また旅物”といわれたジャンルに対して目を肥やしています。
 物語の作り手(TRPGゲーマーなど)でなくても、頭の中に展開の雛形(テンプレート)が蓄積しているんです。

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 『これまでの月9から脱却したい』という意気込みは素晴らしいと思います。
 二度目の“また旅物”(実は2002年の『ホーム&アウェイ』も“また旅物”です)に足を踏み出し、更に“ハイ・ファンタジー(異世界物)”“妖術戦闘”という難易度を上げた勇気には感服します。

 だけど足を踏み出してしまった以上、今度は異なる責任が関係者全員に付きまといます。

 それは『特撮』をやれ、という意味では無く。
 『教育テレビ』の出張枠を作れ、という訳じゃない。
 ましてや旧作の『西遊記』の復刻作業なんて、問題外。

「フジテレビだから。本業役者を使う月9という枠だからできること」
 その意味を深く問い直して欲しいのです。
 もしそれが『間違った方向に制作費を掛けること』、『キャストの“引き出し”を無視した当て書き』と認識しているのならば。悪い事は言いません。『二度と全ての枠で』ファンタジーに手を出さないでください。

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 CG使用のセンスは特撮映画に勝てるはずが無く。
 キャラクターの作りこみでは、放送時間の長いアニメに勝てるはずが無く。
 世界背景の掘り下げは、説明を書き込めるライトノベルに勝てるはずが無く。
 道徳的な教訓は、NHKの人形劇に勝てるはずが無く。
 戦闘のカタルシスは、格闘ゲームに勝てるはずが無いんです。

 でもそれは、一つ視線をずらせば武器になります。

 コンピュータ・ゲーム(MMORPG含む)では、敵の鍋に調味料を零したりするような動作は取れません。
 小説の100の描写よりも、小道具一つや役者の表情が全てを語る事があります。
 アニメやCGよりも、生の質感がキャラクターに息を吹き込むことがあります。

 そして、まだ見つからないけれど、本当の意味の『フジだから出来る、月9の枠だから出来るファンタジーの強み』が絶対にあります。
 まずは全てのジャンルに共通する、『最低限の完成度』に達してください。
 そして、『自分達の本当の強み』を見つける為に、死ぬ気で題材とぶつかった時に、変化が訪れるでしょう。

 MMORPGやネットサーフィン、ケーブルTVに分散した視聴者さえ取り込んでしまう、大きな変化が──。

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 『西遊記』がこれから化ける可能性が0なら、私はここまで長々と語ったりはしません。

 しかし。
 脚本家さんの努力が、第二回に少しだけ垣間見えた事。
 香取君の、抑えたり悪役の時の表情の素晴らしさ。
 内村さんの渋さや、殺陣の冴え。
 伊藤さんの『キャラに命を与える演技』。
 深津さんの体当たりの演技。

 これらがある限り、私は『西遊記』に可能性を見ます。そして応援し続けます。

 香取君がこのような『ファンタジー』に関わったことを、私は何よりも喜びました。
 『ファンタジー』や『活劇』が、本当に好きだからです。
 だからこそ今、スタッフには頑張って欲しい。そして定着させるだけの完成度までたどり着いて欲しい。

 テレビ業界に与える起爆剤になるためにも、完成度をもっと上げてくれる事を願います。





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Last updated  2006/01/21 12:07:10 PM


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