GOlaW(裏口)

2008/01/17
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 始まって5分。
 物語を描く技法の巧みさに、息を飲みました。

 まるで丁寧に描きこまれた小説や、伏線をちりばめたリプレイ本のページを捲る、その時の期待と興奮。
 それが、ドラマの前で広がったんです。

 静かで、でもそこで織りなされる陰影の模様は細やかで、人を飽きさせない。

 その細やかな陰影を、香取君が自然体に演じているのがとても印象的でした。

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 香取君の演技。

 どちらかといえば『キャラクターを作り込む』役柄・演じ方の多かった香取君。
 そんな彼が、『役を生きる』ように素に近いキャラクターで演じているのはとても新鮮でした。


 主人公が『いい人』であろうとし続ける姿と、香取君の表情が見事に重なっているように思われました。

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『エロスとタナトスは仲良し』理論。

 『エロスとタナトスは仲良し』という理論があります(『新人賞の取り方教えます!』久美沙織著 徳間書店からの引用)。
 “対になる感情を描くことで、両方がより際立つ”という物語の理論です。

 この理論について、野島伸司さんは『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』(以下、『SOS』)の時のインタビューで答えています。
 要約すると
『「SOS」の直前に携わっていた作品が「フードファイト」だ。
 「フードファイト」では自分の原案を山崎純也君が思っていた以上に明るいタッチで描いていた。
 すると、悲しみがより一層際立っていた。
 明るく描くことで、悲しみが目立つことを、山崎君から教えられた』
といった内容です。


 今回も『善意と悪意』、『好意と裏切り』、『優しさと冷たさ』といった対になる感情を、意図的に入り混じらせています。そして細やかな感情の模様を描いているのです。
 その感情の模様の中に、伏線が散りばめられていて目が離せなくなるんですね。

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 『いい人』?

 『太陽と北風』の喩え話の時、雫が「父ちゃんみたいだ」といいます。
>「太陽はあまり近づくと真っ黒こげにしちゃうかもしれない」


>「自分のことしか考えない。自分さえ良ければいい。自分の為には、自分の為だけには頑張れる」
 同じ意味のことが、もう一つの比喩にも含まれています。
>「(薔薇は)他の花とは違う」
 つまり、『薔薇』も『太陽』も過去の自分を示しているんですね。


 雫の頭巾以上に深く、心の仮面(ペルソナ)を英治は被っているんですね。
 ただ今でも、『夢中になったら周りが見えない』素顔が覗いていて、同居人の直哉を突き飛ばして出て行ったりしてますが(汗)。

 ここからは推測ですが。
 英治は『近づきすぎたが故に、雫の母親を黒焦げにし、棘だらけにした』と自戒しているのかもしれませんね。
 そして、そんな自分を他の花々のようにしたいと願い、花屋になり。
 そして、『薔薇』を売らないことで、昔の自分を思い出さないようにし、他人を傷つけないようにしているのでしょう。

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 院長が怒り狂う理由。

 かつて『薔薇』であった英治が犯し、院長が怒り狂う理由。
 それは何なのかは分かりません。
 …『母親が子供を産んだ時に、怒り狂って主治医や看護婦を殴り殺した』とか、そんな可能性もないわけじゃありませんが(←いや、それはないだろ)。


>「自分のことしか考えない」
 これだけ聞くと、
“『Mの悲劇』(TBS系。稲垣君主演)で主人公・安藤衛が狙われたのと同じような理由”
という可能性もありますね(遠い目)。

 しかしながら『Mの悲劇』でも思ったのですが、『無関心』や『自己中心的』は現代人が抱え込んだ普遍的な心の闇です。
 そうでなければ、「群衆の中の孤独」なんて言葉が生まれたりしません。
 それを断罪するならば、英治だけに向かうのはおかしいと思うのです。

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 『盲目のヒロイン』?

「無神経に物を言いつつ、障害を感じさせない女性」
というのは、最近テンプレートのようになってきてますよね。

 野島伸司さんはそう言ったテンプレートを使いこなす人なので、今回も「ああ、流行りだもんね」と納得してしまったのです。

「それにしても、無神経過ぎてヒロインとしてはちと引くな…」
「しかし、盲目ってまた黄金パターンだな…」
と、思っていたら。

>「薔薇がいいわ。真っ赤な薔薇」
>「顔の印象は瞳で決まる」
 …その台詞に目が見えない人が、『言い切るなよ』と思わずツッコミ。
 ここでは普通、『いい香りがするから橘を』とか、『さみしい声をしてますね』とかですもの。

 がらんどうの部屋に、
「引っ越してきたばかりにしても、床に物を置けない生活だとしても、おかし過ぎるっ。
 しかも、今のため息って……『まるで目の見えないふりに疲れ果てた』ぐらい、異常な疲労具合だし」
とツッコンでいたんですよ。
 …いえ、それは『潜入捜査』ネタ好きの発想であって、実際にはあり得ないだろ…と思ってたら。


 …溜息の解釈は、正解でした(待て)。

 いくら人の顔の見分けが苦手な自分でも、手術場で出てきた女性が『美桜』だとはすぐに分かりましたもん。

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 雫。

>「育て方、間違ったかな…」
>「ううん、間違ってないと思うよ」
 そのさらりと言い返すニュアンスに、私はノックアウトされました。
 前半など『声優さんが声を当ててるのかな』などと本気で考えちゃうほど。可愛い以上に、演技がうまいですね。

 …不気味なまでのカリスマ少女ですが(苦笑)、周りにも愛されるのもわかっちゃうほどのいい子ですね。

 『存在を肯定されて育てられること』、それが大切なことだと私は思います。
 その意味では、一度も起こらなかった英治の教育は理想といえるかもしれません。

 そんな彼女が、これからどんな活躍をするのか楽しみです。

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 つながり。

 例え英治が、過去に大罪を犯していたとしても。
 彼が雫を育てながら築いた人脈まで、傷つけられる必要はないはず。
 英治が傷つけられようとするとき、マスターや桂子、直哉も巻き添えになるかもしれないのです。

 そこまでの権限が、あの院長にあるとは思えないのです。
 『復讐』に他人を巻き込む時、その行為は決して許されることはないのです。

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 直哉。

>「堕させようとしたことで…」
 ひょっとしたら、彼女、ほんとは妊娠してるのかもしれない。
 それでも産みたいから、『妊娠は嘘』と言ったのかもしれない。
 その意見は穿ち過ぎかな…?

 それはさておき、直哉は昔の英治そっくりなのかもしれませんね。
 だからこそ、英治は直哉を追い出せないのかもしれません。

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 単なるいい人、ではなく。
 『暴言ハンディキャップ・ヒロイン』でもなく。
 パターン化されつつある設定を壊し、もう一度研磨するように作りなおしているのがこのドラマです。

 その変化球的なものを、丁寧に緻密に描き出す姿勢に私は感服しました。
 続きが本当に楽しみです。

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 ちーずさんの『どらまのーと弐』に、このドラマのレビューがあります。
 紹介させていただきますね。
どらま・のーと弐 薔薇のない花屋

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 そして花屋の、優しく温かく切なく残酷な物語が始まった。





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Last updated  2008/01/17 05:56:28 PM
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