花散る里

2011年03月16日
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ラップに韓国海苔を置いておにぎりを握る。

一升っていっても、こんなに少ないんだな・・・

それをバスタオルで包んで、保温バッグに詰めた。

寒いだろうから、温かい方がいいだろう。

車に乗り込んで燃料系を見てため息をつく。

行って帰ってこれるだろう。

でも、その後は?見つからなかったら?

・・・できるだけエコ運転するしかない。

安否確認のためか、被災地に向かう道路で


燃料に余裕があるのか、タクシーの心意気なのか。
結構とばしている。

ミツバチちゃんの家に着くと、まだ支度中。
・・・想定内。
のんびりやだし、ここの人たちはそんなに悲壮感が無い。

でもできれば3時までに戻って来たい。
道路も凍るし、吹雪いてきている。

ミツバチちゃんのほかにミツバチママも一緒に来ることに。
・・・想定外。
これは大変な道中になりそうだ。

予感は的中。


なかなか進まない。

「苗字言って。苗字確認したら下の名前確認したらいいでしょ」

つい声が荒がる。

淡々と私がリストを目で追う。

ミツバチママが探していた人は一人だけ見つかったが、


そして避難所で知っている顔に合う度に喜び合うのは見ていて微笑ましいが、
懐かし話で盛り上がり、いつまでたっても動こうとしない。

まだ避難所は何箇所もある。

焦りが顔に出てしまう。

・・・もしかしたら安置所も回らなくてはいけないのに。

遺体の引渡しはどうするんだろう。

集合住宅だから渡されても困る・・・

悪い方に頭が回る。

本当に情報が少なかった。

何もわかっていなかった。

この時点で災害伝言ダイヤルにさえつながらなかった。

やっと避難所を出て、次の避難所に向かう途中、
瓦礫の山に船や車。

ワンセグで見た光景がそこここにあった。

ヘドロを浴びた犬が、止まる車を見るたびに覗き込んでいる。

飼い主を探してるんだ。

ミツバチママは瓦礫と泥に「怖い怖い」とハンドルが怪しくなった。

「私が運転代わるから」

運転席に乗り込んでふと思った。

あの人たち、前の地震でも、その前の地震でも避難しなかった。

・・・もしかしたら家にしがみついているかも。

「ちょっと実家を覗いてきたい」

そういって、家の方にハンドルをきる。

線路がぐにゃぐにゃに曲がって、瓦礫が駅に溜まっている。

保育園の門の上に、のっているRV車。

家は、あった。

でもヘドロが溜まっていて、これ以上行けない。

「少し待ってて」

ヘドロの中をつま先で歩きながら歩いていると、
実家の西側の家に流された家が突っ込んでいた。

何とか実家の前にたどり着くと、
瓦礫の山の脇に雪かきしたようにヘドロが寄せてあって、
通路が作ってある。

居るかもしれない。

そのまま家に向かって歩くと、中で人影が動いた。

声がする。たぶん母親。

玄関まで瓦礫を乗り越えていくが、玄関が泥に埋まってなかなか開かない。

開けると二人がひょいと顔を出した。

お互いに死んだかもと思って、覚悟していた。

弟夫婦も弟夫婦の家も津波にはあったものの、無事だったらしい。

そしてこの二人、こんな中でも普通にご飯を炊いて食べていた。

その話を車に戻ってしたら、ミツバチちゃんは

「さすが、ちはやさんのご両親。妖怪だけあるね」

・・・何も言えなかった。





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最終更新日  2011年04月07日 16時36分37秒


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