ホスピスの日々を共に生きて～癌の痛み・全身のだるさ・吐き気、体の３重苦と心の苦悩、

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August 20, 2017

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カテゴリ：ホスピスの日々を共に生きて～

ホスピス 2２日目　曇り

７時１０分前、まだ目覚めない。どうぞ、今日一日穏やかな一日をお与えください。
朝　洗顔、歯磨きを行う。

「声が出ない」という。Ａ看護師に聞いたら腹が張って肺を圧迫しているので呼吸がうまく
いかなくなっているのでは？とのこと、こうして呼吸器官をも侵されていくのだろうか。

今月いっぱいは無理なのだろうか？　いよいよ覚悟の時が近づいて来たという事か。
悲しき哉　　悲しき哉　　　神様！　此処まで来たらどうぞ苦しみを取り除いてください。

あなた、辛そうですね。私には何もできないのがやり切れません。
本当に辛いのですね。せめてその辛さを私にぶつけてください。

遠く離れて暮らして３年目の頃、あなたが苦悩の中で書き送ってくれたレターの一節です。

「私の故郷に帰りたい。私の故郷は私自身のすみかです。

私自身のすみかはmawakoの中に在ります。」

既定された生き方を強いられ、周囲から期待され、生き方を規定されればされるほど、
そう生ききることができない自分自身に悩み、あなたは自分自身の裸を私にさらけ出し、
その苦悩のすべてをありのままに私に伝えてくれました。

今も私はあなたの故郷ですか？
あなた自身をありのままに、故郷であるmawakoの中で振舞ってください、
痛さも辛さも我慢せずに苦悩のすべてをさらけ出し私にぶつけてください。

平成２８年9月１４日（水曜日）　

ホスピス 2３日目　曇り

６時きっかり目覚め、されどトンチンカンなことをいう、
自分の言っていることがおかしいといい、薬の使い過ぎでおかしくなっているという。

７時過ぎ　　洗顔、髭剃り歯磨き、吐き気止めの薬（点滴）をお願いする。

背骨の部分が痛いという。体が骨ばっているので背中が苦しいのですね。
手袋をマットと体の間に滑らせ、圧を抜く。（※）
※　健康体でも長いこと椅子に腰かけていると尻が疲れてくる、そっと掌を尻の下に
くぐらせるとそこに緩衝地帯が生まれ、圧が抜け楽になる経験がある。
動くと吐き気が激しくなる夫は動かずじっとしているので体はマットに引き付けられ、
体に圧がかかる、そこに滑りの良い医療用の手袋を滑り込ませて空気を入れてやるのです。）

手袋をくぐらせると骨の形がそのまま手に伝わってくる。華奢な夫の骨はますますか細く
なってきたように思えて、私はうろたえ声を失ってしまう。夫の背中、肩へと手袋を動かし、
空気の層をつくる。黙っているのがかえって夫には辛かったようである。「mawakoが疲れる
からいい」というようになり、次第にやらなくともいいという事が多くなる。

私が何度も鼻をかむと「また、涙が鼻から出ているんだね」「可哀想だ」と声を掛けてくれる。

２時半、院長来室、

「吐き気が治まらず、苦しそうだ」と私は先生に話す。
「吐き気を薬で押さえることは限界にきており、眠ることでその苦しさを緩和する。
夜と同じ眠剤を点滴することにしましよう」とのこと。

夫の体は癌の痛み、倦怠、そして吐き気、体の３重苦と心の苦悩、

私のことでは悩まないでください。
一人死へたどるあなたの孤独には一緒にたどります。その瞬間まで一緒です。
（妻の病床日記）

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