葉月プラスこうさぎの部屋

葉月プラスこうさぎの部屋

第一話~第五話


って、体の力入らへんわ・・・あれ??俺おかしいんちゃう??』
とか考えているうちに・・・

バッタ~ンと音を立てて、小鉄が倒れた。

その音に気が付き慌てて、稲童丸が駆け寄る。
「小鉄?!」
倒れた小鉄はグッタリとしていて、全く動く気配がない。

すぐさま稲童丸は、小鉄の手をとり、脈の確認をした。
「・・・脈は、正常か・・・」
そして、次に額に手をやった。
稲童丸の眉間に珍しく、しわが寄った。
「熱も無い様だが・・・」

一通り調べると、稲童丸は軽々と小鉄を抱き上げ、
小鉄が毎日使っているベッドに運んで、寝かせた。

だが、全く小鉄は起きる気配が無い。
少し、心配そうに小鉄を稲童丸が覗き込む。

『いったいどうしたっていうんだ・・・』
滅多に、表情を崩さない稲童丸だが、かなり心配そうだ。
原因がわからないだけに、不安の様だ。
倒れる直前までは、いつもと変わらなかったのだから・・・

小鉄がここに居る様になってから、この様な状態になるのは、はじめてのことだった。
医学部に通う稲童丸でさえ、小鉄の体のことは詳しく知らないので、
どうしていいのか、わかりかねている様だった。


それから・・・結局その日、小鉄は目を覚まさなかった。



2話に続く。

心配な稲童丸は、小鉄のベッドの傍で寝ずに付き添っていた。

夜中も少し過ぎた頃、急に
「ゴフッ」
っと、音をたて、小鉄がどす黒い色の液体を吐き出した。
一瞬、吐血にも見えた。
「!小鉄!!」
慌てて声を掛けるが、小鉄は苦しそうに吐き出し続けている。

それも、ようやく落ち着いた頃・・・
やっと、小鉄が弱弱しく声を発した。

「にいちゃん・・・なんやのん?これ。」

そう聞かれても、今の稲童丸に答えれる状態ではないのだが・・・
「疲れが出たんじゃないかな?」
と、苦し紛れに言うのが精一杯だった。
「・・・つかれ??なん??」
自分でも自覚がない様な小鉄だった。
確かに、倒れる寸前までは、普段通り元気だったのだ。

「とりあえず、汚れた物を片付けよう。
終わったら又眠るといい。」
「うん。わかったわ・・・にいちゃん。」
と、素直にうなずき、着替える小鉄だった。


第三話に続く。

汚れてしまったものを、洗濯機に入れようとした時、
ふと、稲童丸はある事に気がついた。
先程は、気が少し動転していて気がつかなかった様だ。

『?!このにおいは・・・』

小鉄が出したものの、においが気になる様だ。
だが、そのにおいの元になる様な物は、
稲童丸は与えていないはずの物だった。

洗濯機のスイッチを入れると、再び小鉄の部屋に移動するのだった。

小鉄は、おとなしく寝ていたが、稲童丸の気配に
気がついたのか、うっすらと目を開けた。

「ごめんなぁ~にいちゃん。」
弱弱しく謝る小鉄。
「いや、それは大丈夫だ。心配しなくていいから。
今はゆっくり寝ておくんだな。」
「うん、わかったわ・・・」

安心したのか小鉄は又眠りについたのだった。


第四話に続く。


暫く、稲童丸も傍に付き添っていたが、
小鉄の症状が落ち着いた様に感じられたので、部屋を出ようとした瞬間、
いつのまにか現れていた人の気配に気がついた。

「!!蒼梧ちゃん?!」
と、その蒼梧の背後からグルルルと喉を鳴らしつつ十夜も現れた。
『全くなんでこの2人はいつも直前まで気配がないかなぁ~・・・』
そんな事を、稲童丸に言わせる蒼梧・・・恐るべし。

「やっほ~太郎ちゃん。遊びに来たわ?小鉄は??」
と、聞きながらベッドに横たわる小鉄に気がつく蒼梧だった。
「?!ちょっとぉ!!どうしたの小鉄は?何でこんな時間から寝てるの??
折角私と十夜が遊びに来てあげたっていうのに!!」
「蒼梧ちゃん・・・ちょっと、し~~~~~。やっと寝た所なんだよ。
説明するから、ちょっと部屋出ようか」
と、稲童丸は蒼梧と十夜を促すのだった。
渋々、部屋を出る蒼梧。
その後を、ちょっと溜息つきながら稲童丸が出て行ったのだった。

第五話に続く

「で、何なの?小鉄は!!
せぇ~っかく私と十夜が遊びに来てあげたってのに!
よりにもよって、寝てるなんて??ありえないわよ?」
と、今にも噛み付きそうな勢いで、稲童丸にくってかかる蒼梧。
稲童丸相手に、こんな事が出来るのは、相互ぐらいであろう。
まぁまぁ落ち着いて、といわんばかりに両手を蒼梧の肩にポンポンと置きつつ、
「いや・・・蒼梧ちゃん、小鉄は眠くて寝てるんじゃなくて、
しんどくて寝てるんだよ。」
「へ??そうなの??」
と、やっと状況がわかったみたいだった。

「そうなんだよ。急におかしくなって・・・でも、理由がわからない状態で・・・」
「え?太郎ちゃんでも、わからない事あるのねぇ~。ふ~ん。」
と、ニヤリとした蒼梧だった。
「が、理由が思いつかない訳でもないかな?」
ちぇ、っと残念そうな表情にかわる蒼梧。
一瞬だが、弱みを握ったと思ったのだろう。

「で、理由は何だったの??」
目を輝かせて詰め寄るのだった。
それに、少し逃げ腰になりつつ、説明をし始める稲童丸。

「でも、その前に、蒼梧ちゃんに確認したい事があるんだが。」

第六話に続く

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