Heikの狂暴温泉芸者

Heikの狂暴温泉芸者

焼却炉





日没の後に残された、曖昧な藍色の闇の中に、

雑木林を背にしてポツンと、

赤錆まみれでおんぼろの、

鋼の焼却炉が立っている。



大気の流れは、日が沈んでも弱まることなく、

びょうびょうと強風は吹き続き、

木々のざわめき立つ声が、遠く絶え間なく、

僕の両耳を覆う。



焼却炉の鉄の破れ目からは、

燃え盛る炎が、風にあおられて、

時折、武者震いして踊り狂う。



ll燃えろ、燃えろ、僕の記憶の残滓たち。

         ゴミと焼かれて、灰になれll



僕は焼却炉を正面から睨み、そして立ち尽くして、

つぶやくように、ひとり、歌った。



いつまでたっても、びょうびょうと吹く強風は

止む気配さえなく、

盛んに飛び散る火の粉が危なくて心配で、

ずっと僕は、水をいれたバケツを手に提げたまま、

焼却炉を見張り続けていなければならない。






二OO九年二月十七日

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