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前回のNG集への書き込みありがとうございました。想像するだけで固まりそうな話や、笑いをこらえるのに苦労するだろうなと思う話ばかりでとても楽しめました。「こんな話もある」という方、ひきつづきコメントいただけたらうれしいです。さて、前々回、「本番では指揮者は視界の端にとどめるぐらいのつもりで歌う」と書きました。では一体どこを向いて歌えばいいのでしょうか。ポイントは「体の方向」と「視線の位置」です。今回は「体の方向」について考えてみましょう。一般的なコンサートホールで、舞台に向かって左側からソプラノ、アルト、テノール、バスと並んでいたとします。ソプラノ、バスは指揮者に体を向ける(客席から見ると斜めを向いて立つ)ことが多いと思います。極端な合唱団では、客席から見たら端の人がほとん横向きに立っているように見えることもあります。そうなると、せっかくの声が客席に広がらずに指揮者周辺に集まってしまいます。まさに「指揮者に向かって歌っている」わけです。ですから、体の方向は指揮者に向けるのではなく、できるだけ客席に向かってまっすぐに立つように心がけてください。そのように立つと、「指揮者を視界の端の方でとらえる」という感じがおわかりいただけると思います。ソプラノは視界の左端で、バスは右端で指揮者をとらえることになるわけですね。上手い合唱団になると、ほとんど指揮者を見ていません(笑)。この立ち方は最初のうちは違和感がありますし、合唱団全体でやらないと意味がありません。指導される立場の方にも意識していただきたいことだと思います。次回は視線の位置に触れたいと思います。
September 29, 2006
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プロの歌手の歌声を間近で聞かれたことはありますか。聞かれたことがある方は、声が顔や頭全体から出ているように感じられたと思います。私たちが歌うときはどうしても「口を大きく開けて思い切り歌う」というイメージを持ってしまいます。しかし、それでは怒鳴り声になるばかりできれいな響きにはなりません。声は「出す」のではなく、眉間や額、後頭部に「響かせる」というイメージを持つことが大切です。今回はそのイメージを持つための手がかりをいくつか書いてみます。【その1】 目を見開きながら鼻からゆっくり息を吸います。すると鼻または目の奥の方に冷たいスーッとした感触を感じる部分があると思います。そのスーッとしたところに息を当てるようなつもりで声を出してみてください。【その2】まゆげをあげ、眉間に人差し指をあてます。その人差し指をふるわせるようにハミングの練習をしてみましょう。ちょっと高めの音を出すといいでしょう。指がふるえることが感じられたら、どんどんそこに声の焦点を絞っていってください。【その3】額に口があるつもりで、額がパカッとわれて声が出ているとイメージしながら歌ってみてください。【その4】後頭部(つむじのあたり)の髪の毛を少しつかんで引っ張ります。その引っ張ったところに声をあてるつもりで歌ってみてください。いずれも声の響きを集中させるためのイメージです。いろいろ変えながら声を出してみるうちに、大して力を入れていないのによく声が響く場所が見つかります。そこがあなたの発声のベストポジションです。大きな声を出す必要はありません。うなりが生じる、よく響く場所を探すつもりで声を出す練習をしてみてください。その時、目や顔、喉の奥を広げて張った状態を作っておくことが大切です。蛇足ながら今回のイメージの意味を考えてみたいと思います。私たちは大きな声を出すとき、喉に力を入れてしまいます。が、例えてみると喉は昔の蓄音機の針の部分にあたります。針からも音は出ていますが、とても小さいです。これが朝顔のような増幅器をとおって出てくると大きな音にかわります。針を強く押しつけたところで音は大きくなりません。発声もこれと同じで、喉にいくら力を入れてもつぶれてつまった声になるばかりです。今回お話しした方法は、針ではなく増幅器にあたる部分をいかに意識しうまく音を当てるかということを目的としたものです。
February 13, 2006
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前回、階名で歌えるようになることの効用を書きました。今回は階名で歌いやすい「移動ド」の読み方です。シャープやフラットがたくさんついている時は、どこを「ド」と読んだらいいか困ります。今回の記事はちまたでよく知られているドの位置を知る方法です。楽譜の左端、ト音記号かヘ音記号の横に#や♭が並んでいる位置を見てください。(複数個ついている場合、一番右端に記号がついている位置に注目します。) シャープの場合は、一番右端の♯の音がついている線や間の場所を「シ」 フラットの場合は、一番右端の♭の音がついている線や間の場所を「ファ」として読むと、移動ドが簡単にみつかります。具体例をあげます。♯が1個だけのときは、五線の一番上の線のところ(固定ドの「ファ」にあたる音)についていますから、ここを「シ」と読みます。そのひとつ上の音(固定ドの「ソ」)が「ド」になります。♯が2個の時は、五線の一番上の線のところと、上から2番目と3番目の線の間(固定ドの「ファ」「ド」)の順番でつきますから、右側の「ド」の位置のところが「シ」になります。そのひとつ上の音(固定ドの「レ」)が「ド」になります。♭が1個だけの時は、固定ドの「シ」にあたる場所につきます。ここが「ファ」ですから、固定ドの「ファ」の音が「ド」になります。♭が2個の時は、固定ドの「シ」「ミ」の順でつきます。右側の「ミ」のところが「ファ」になるので、固定ドの「シ」の音が「ド」になります。♯や♭の数が増えても同じことで、一番右の♯の場所が「シ」、一番右の♭の場所が「ファ」だと覚えておくと便利です。「シャープの「シ」、フラットの「ファ」」というわけですね。結局同じことなんですが、もうひとつ別の覚え方もあります。 シャープの場合は「一番右の♯のひとつ上が「ド」」 フラットの場合は「右から二番目のフラットのある音が「ド」」どちらでも覚えやすい方を使われたらと思います。これを利用して楽譜に階名を書き込んでおくと、♯や♭がたくさんついている楽譜でも楽に歌うことができるようになります。ただ、実際に書き込むときはちょっと注意が必要です。その話はまた次回に。
May 30, 2008
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あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。さて、新年最初の記事は、タイトルにある「合唱とは『聴く』ことである」です。大多数の方はこのタイトルに違和感をおぼえられると思います。「合唱は『歌う』ことではないのか」と。違和感をもったままおつきあいください。合唱の醍醐味、それは大勢の人が集まって「ひとつのハーモニー」をつくることです。自分がどれだけいい声が出せるかということよりも、全体としてどれだけいいハーモニーが作れるかにかかってきます。全パートの声の響きが一致した瞬間、あるいは不協和音が奏でる緊張した瞬間のすばらしさを体験することができたら、もう合唱からは離れられなくなります。合唱を始めるとき、ほとんどの人は「大きな声が出せたら気持ちいいだろうなぁ」とか、「きれいな声が出せたらいいな」と考えます。が、大きな声を出すことが目的なら、別に合唱をしなくてもカラオケボックスでシャウトすればいいわけですし、きれいな声を出したければ声楽家に個人レッスンを受けた方がより効率的です。ただ、残念なことに私たちは一人で和音を歌うことができません。合唱することでハーモニーとしての楽しさが広がるわけです。では、美しいハーモニーを作るのに必要なことは何か?それは他の人の声を「聴く」ことです。隣の人の声を聴くことから始まり、自分のパート全体の音を聴く、他のパートの音を聴く、さらには全体のハーモニーや会場の反響・残響を聴くことまで、きちんと音を聴くことが合唱にとって何よりも大切だということを私はすべてのことに優先して強調しておきたいと思います。今、みなさんがどこかの合唱団の演奏を聴いているとします。仮にすごく声の大きい人がいたとしましょう。その演奏はどのようになっていると思われますか?特定の人の声ばかりが目立ち、合唱としては台無しになっているはずです。もしその声の大きい人がすごくきれいな声をしていたとしても結果は同じで、ハーモニーは崩れてしまいます。逆に自分が今舞台に立っているとします。近くで歌っている人に大声でがなられると、自分の出している音がわからなくなるばかりか、歌う気さえなくしてしまうかもしれません。(昨日書いたように、まったくの初心者はまず大きな声を出すことが大切なのですが、いつまでもそのままでは困るわけです。)このように考えてみると、合唱団員としてはいかに大声を出すかということよりもいかにハーモニーを作ることに注意を向けられるか=聴くことができるかが大切だということがおわかりいただけるのではないでしょうか。実は、きちんと聴くことができる人は歌もうまくなります。というのは、美しい声を出している人の声を聴いて知らず知らずのうちにその声にあわせていくからです。練習に行かれたら、声を出すことよりもまずまわりの音を聴くことをぜひ習慣にしてください。
January 1, 2006
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