Factory Records の Peter Saville、或いは 4AD Records の 23 Envelope 等 80 年代のポスト・パンク・シーンにおいて重要な役割を果たしたデザイナー諸氏に比べると、Les Disques Du Crepuscule で多くの(そして勿論、この "Camino Del Sol" の)デザインを手掛けた Benoit Hennebert の存在は影が薄いように感じられますが、決して忘却の彼方へ押しやられて良いものではありません。例えば 50 ~ 60 年代辺りのフランス映画のポスターだとかファッション雑誌の表紙、化粧品の広告、そんなものを想起させるちょっとレトロで、派手さは無いけれどシンプルでセンスの良いデザインが実に印象的。このスリーヴに惹かれてよく知りもしないアーティストのレコードを買ってしまったのは、私一人じゃないハズ。特に好きだったのは本作にも収録されていますが "The Boy From Ipanema" のシングル盤や本作 "Camino Del Sol" のオリジナル盤の、俗に言う「裏ジャケ」。写真のレイアウトやタイポグラフィーがなんとも絶妙でした。
と、肝心の主役たる Antena を蔑ろにしてしまいました。反省。
1 曲目はデビュー・シングル、ご存知ボサ・ノヴァの名曲 "The Girl From Ipanema" の改題。プロデュースは John Foxx ですが、彼の名前から想像されるようなテクノではありませんし、オリジナルのカラっとした明るい雰囲気からするとやや俯き気味。余りにも簡素なバック・トラックと、音の隙間を縫うように出入りするエフェクト過剰なヴォーカル。テクノ、ボサと言うよりはダブっぽい気もします。他の楽曲も概ねこんな調子。ボサ・ノヴァやジャスをベースにしているところは Isabelle のソロになってからも変わってはいないのでしょうけれど、"En Cavale" 以降のお洒落でソフィスティケイトされた都会的な感触はここには微塵もありません。スリーブ・デザインにこじつけるわけではありませんが、照りつける太陽の光の恩恵を全身に浴びる風ではなく、サン・シェイド越しにちょっと目を細めながら陽の光を見るともなく見ているような風情、とでも言いましょうか。勿論、私はこちらのほうが大好きです。
【Track Listings】 01. The Boy From Ipanema 02. Camino Del Sol 03. To Climb The Cliff 04. Silly Things
06. Achilles 07. Bye Bye Papaye 08. Noel A Hawaii 09. Les Demoiselles De Rochefort 10. Spiral Staircase 11. Unable