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2006.11.28
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カテゴリ: 邦書

 名探偵金田一耕助最後の事件とされている。


粗筋

企業グループを運営する五十嵐家は、代々医師を輩出する法限家との結び付きを強化した。法限家はそれが縁で法限総合病院を建てるに至った。
 五十嵐家は、縁組みや養子などで法限家を取り込んでいったが、いつの間にか五十嵐グループも法限病院も法限家の娘弥生の管理下にあった。
 昭和28年(1953年)。金田一耕助の元に、写真屋本篠徳兵衛の息子直吉が訪ねてきた。彼は、自分の奇妙な体験について話す。
 ある日、女が写真屋を訪れた。知人の結婚記念の写真を撮ってもらいたいと。直吉は承知し、指定された場所に出向かう。その場所とは、空襲で破壊されて使用されなくなった法限病院だった。直吉は、注文通りカップルの写真を撮る。新郎は毛むくじゃらの男で、新婦は写真撮影を頼みに来た女性だった。直吉は、なぜ女性が「知人の」だと言ったのかと思う。帰る途中、ジャズバンドの連中が法限病院に向かうのを見た。
 直吉は首を捻った。一体この結婚記念写真撮影は何だったのかと。警察に相談したところ、金田一を紹介されたのである。
 金田一は、この事件に興味を持つ。数日前に、法限弥生に別件で雇われていたのだ。弥生の孫娘由香理が何者かに誘拐された、と。金田一は、誘拐事件と写真撮影は何か関係があると見た。ジャズバンドのルートから、毛むくじゃらの新郎の身元が判明する。ジャズバンド「アングリー・パイレーツ」のメンバー山内敏夫だった。
 そんなところ、弥生から連絡が入る。由香理が帰ってきたので、捜査を中止しろと。金田一はそれに逆らって捜査を続ける。そこで、金田一は気付く。山内敏夫の妹とされる小雪という女が、由香理そっくりだと。しかもその小雪は、弥生の夫が別の女に生ませた子だった。
 写真屋本篠徳兵衛の元に、また撮影の依頼が来る。再び法限病院で、と。徳兵衛と、息子の直吉と、助手の房太郎は、言われたとおり病院に向かうと、そこには人間の生首が風鈴を見立てて吊り下がっていた。生首は山内敏夫のものだった。
 警察は事件捜査を開始する。山内敏夫の胴体は発見されなかった。また、妹の小雪の姿が見当たらない。警察は、小雪を巡ってジャズバンド内でもめ事が起こり、殺人に至ったのでは、と推測するが、ジャズバンドの者はどれも無罪だった。小雪の行方は不明のままだった。殺されたのでは、と思われる。
 誘拐事件について知っていた金田一は、由香理が関係しているのでは、と思う。が、法限家は今回の事件とはあくまでも無関係だと言い張った。
 事件は未解決のまま、20年が過ぎた。
 法限弥生は五十嵐グループと法限病院の実権を握り続けた。
 一方、法限由香理は親戚の五十嵐滋と結婚し、弥生の補佐役になった。由香里と滋の間に鉄也という男子が産まれる。
 昭和48年(1973年)。金田一の元に、写真屋本篠徳兵衛の息子直吉が訪れる。彼は父徳兵衛の写真屋を引き継いでいた。写真屋は、徳兵衛の時代で大発展していたが、つい最近亡くなった。直吉は、なぜ父親の写真屋が急成長したのか知らなかったが、父が死ぬ前に打ち明けた。自分は法限弥生を強請っていたのだと。その強請の証拠が手元にあるから、自分が死んだ後は法限弥生に返せと言う。さもないとお前の命が危ないと。事実、徳兵衛が亡くなった後、直吉は数回にもわたって狙われた。恐れをなした直吉は、金田一に相談しに来たのである。
 金田一はその証拠物件を預かる。
 そんなところ、とうの昔に解散していたジャズバンド「アングリー・パイレーツ」の同窓会が始まった。そこで、直吉の死体が発見される。やはり殺されたのだ。
 数日後、「アングリー・パイレーツ」の別のメンバーが殺される。その現場には弥生の曾孫で由香理の息子鉄也がいた。鉄也に直吉殺人の容疑までかかるが、いずれの事件にもアリバイがあった。
 鉄也は、手紙を受け取っていた。お前は由香理と滋の間にできた子ではない、由香理と、由香理を誘拐した山内敏夫の間にできた子だと。事実、鉄也は滋とは似つかぬ毛むくじゃらな男で、山内敏夫そっくりだった。
 直吉と「アングリー・パイレーツ」のメンバーを殺したのは、鉄也ではなく、鉄也の父滋だった。彼は息子が受け取った手紙を読み、鉄也が自分の子でないのを知った。自分が法限家すなわち五十嵐グループの実権を握る弥生と全く縁がないことを知らされ、逆上した。手紙の送り主だと判断した直吉と「アングリー・パイレーツ」のメンバーを次々殺したのである。
 実は、手紙を送ったのは直吉でも「アングリー・パイレーツ」でもなく、徳兵衛の助手だった房太郎だった。滋は房太郎も殺そうとするが、由香理に阻止される。その際、由香理は誤って射殺されてしまった。
 金田一は、弥生の元を訪れ、自分が知っている事実を告げる。20年間にわたって由香理として知られていた女性は、実は小雪だった。本物の由香理は、20年も前に死んでいた。
 山内敏夫は、由香理と同じ外観で同じ血を引きながら生活状況が全く異なる小雪を哀れんでいた。そこで由香理を誘拐し、自分と「結婚」させ、法限家に恥をかかせることにした。その「結婚」の証拠が、本篠徳兵衛の息子直吉に頼んだ写真である。来店したのが小雪で、山内敏夫と一緒にいたのが由香理だった。直吉はなぜ「知人の結婚写真」と言いながら本人が写真を撮って貰っているんだと不思議がっていたが、実は別人だったのだ。
 由香理は、誘拐犯山内敏夫に解放された後、戻って、山内敏夫を殺しに行ったのだが、逆に殺された。しかも山内敏夫も深手を負って、死んでしまった。小雪は、その現場を発見した。生前敏夫に言われたとおり、敏夫の首を切り落として風鈴に見立てた。その後、小雪は弥生の元を訪れ、彼女と相談した。すると、弥生は山内敏夫の胴体と孫由香理の死体を処分することにした。見た目が由香理とそっくりな小雪を由香理として自分の後継者に据えることにした。山内敏夫の胴体と由香理の遺体を処分した人物こそ写真屋本篠徳兵衛だった。だから本篠徳兵衛は弥生を強請れたのだ。
 なぜ弥生は自分の孫娘である由香理の遺体を処分し、彼女の死の原因となった小雪を由香理の身代わりとして保護したのか……。それは、弥生の娘で、由香理の母である万里子は、実は夫との間にできた子ではなく、五十嵐家側の叔父との間の子だった。万里子が弥生にも弥生の夫にも似ていなかったのは、それが原因だった。弥生はそのことを引け目に思っていたので、夫が他の女に生ませた子である小雪を拒絶できなかった。
 金田一は、この事実を弥生に突き付ける。弥生は何もかも認めた。金田一は、本篠徳兵衛が20年間も持っていた「証拠」を処分することに合意する。弥生は、それを見ながらあの世へ旅立つ。
 金田一は、病院坂の事件を20年間もかけて解決したが、それにいたたまれなくなり、日本を去る。アメリカに行くが、消息を絶った。


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解説

500ページ近く、原稿用紙で1000枚以上にもなる大作。ただ、そこまで長くする必要があったのか、といった内容の事件。
 ペースがのろい。
 まともに書けば300ページくらいに収まったのでは、と思ってしまう。
 横溝小説といえば複雑な家系を持った家族が登場する。本編も例外でなく、弥生の父や祖父のことや、五十嵐家と法限家の関係がくどいほど述べられている。もう少し整理できなかったのかと思う。縁組みや、孫を子として養子にするなど家系が複雑になっていて、訳が分からない部分が多かった。
 金田一耕助は名探偵で、警察も一目置いているとされているが、本編を読んだ限りなぜそうなのかと疑ってしまう。そこまで優秀な探偵とは思えなかった。
 金田一は、昭和28年に滋と一緒にアメリカに発った由香理が、実は由香理ではないことを知っていた。指紋を照合できたからだ。にも拘わらず、何の手も打たない。その為、山内敏夫殺人事件と小雪失踪事件は未解決になってしまった。20年後、本篠徳兵衛が死んで息子の直吉が訪れるまで何の行動もしなかったのである。その直吉も、金田一がきちんと手を打っていれば死なずに済んだと思われるが、彼が何もしなかった故に誤って殺されてしまった。
 金田一は直吉から預かった証拠物質について弥生に教えるが、それを弥生に渡さない。渡したのは直吉が殺され、滋が誤った人間を殺し、由香理(実は小雪)が死んだ後。彼はその時点で事件は解決したと思っているが、証拠物質を弥生に早期に渡し、滋や鉄也に事情を説明していれば、今回のことは「事件」にならず(時効は過ぎていた)、小雪も由香理として天寿を全うできた筈。しかしそうしなかった為、法限家も五十嵐家も崩壊してしまった。
 これのどこが「解決」か。
 金田一の自己満足では?
 本当に名探偵かよ、と言いたくなる。
 驚きも少ない。由香理と思われていた女性は、実は小雪で、本物の由香理はとうの昔に死んでいた、という内容は、二人がそっくりだった、という下りを読んだ時点で予想できた。由香理の許嫁で、後に由香理(実際には小雪)と結婚した滋がすり替えに気付かないなど、他の登場人物の知性を疑いたくなった。
 ストーリーそのものも現実的とはいえない。たとえ親類とはいえ、一卵性双生児でもないのに、二人の女性が許嫁さえも欺けるほどそっくりになるとは思えない(滋はかなりとろい男として描かれていたが)。水戸黄門みたいな設定である。
 金田一は今回の事件でむなしくなってアメリカに旅立ったというが、そこまでむなしくなる事件だったのか。獄門島や本陣殺人事件の方がもっとむなしい感じがしたが……。
 失敗ばかりする自分自身にむなしくなったのか。



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Last updated  2006.11.28 17:06:17
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