非常に適当な本と映画のページ

非常に適当な本と映画のページ

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Category

カテゴリ未分類

(341)

洋画

(283)

邦画

(85)

邦書

(140)

洋書

(57)

ニュース

(736)

DVD

(8940)

Comments

Favorite Blog

まだ登録されていません
2007.05.31
XML
カテゴリ: 洋書

 Noel Hyndによるサスペンス小説。


粗筋

米国ニューヨーク市マンハッタン。
 弁護士トーマス・ダニエルズの事務所が何者かによって放火された。父親と同じ弁護士になり、亡き父親の事務所を引き継いだものの、弁護士という仕事が好きになれなかったダニエルズは、これを機に事務所を閉鎖し、弁護士業から足を洗おう、と決心する。
 そんなところ、ダニエルズの元に、ある女性――レスリー――が訪れる。彼女は言う。自分は大富豪アルバート・サンドラーの娘で、サンドラー家の遺産を相続しに着た、と。
 アルバート・サンドラーは、父の顧客の一人だった。もう何年も前に死亡している。なぜ今更、とダニエルズは思う。しかも、アルバート・サンドラーは結婚暦がなく、子供もいない筈だった。
 レスリーは説明する。アルバート・サンドラーは、第二次世界大戦中、母親と極秘裏に結婚し、その結果彼女が生まれた。アルバート・サンドラーは、母親に対し「自分は危険な任務に就いている。戻って来れないかも知れない」と言い残し、姿を消した。
 大戦後。レスリーの母親は、死んだと思ってばかりいたアルバート・サンドラーが、アメリカで在住していることを知る。彼女は、直ちに手紙を送った。それから間もなく。アルバート・サンドラーがイギリスにやってきた。アルバート・サンドラーは、妻であるレスリーの母親を殺害。娘のレスリーも殺そうとしたのだ。
 それ以降、レスリーはイギリス政府に匿われることになる。アルバート・サンドラーは、アメリカの為に働いているスパイらしい、ということだった。レスリーは、その後数回に渡って命を狙われた。レスリーは、アルバート・サンドラーが死亡したという報が入っても安心できず、隠匿生活を続けていた。
 そして最近、アルバート・サンドラーの妹であり、唯一の肉親であるとされる人物が他界した。サンドラー家の財産は、アルバート・サンドラーの娘である自分が受け取る権利がある、とレスリーは主張する。ただ、彼女には心配事があった。
 父親であり、母親を殺害した人物でもあるアルバート・サンドラーは本当に死んでいるのか、と。
 ダニエルズは乗り気ではなかったものの、弁護士として最後の仕事を引き受ける。事務所の放火も、レスリーの件が絡んでいる、と読んだからだ。なぜなら、事務所にはあるべき筈のアルバート・サンドラーが消えていたからだ。
 アルバート・サンドラーについては、父親のウィリアム・ダニエルズに聞いてみるべきだったが、ウィリアム・ダニエルズはすでに他界している。ダニエルズは、父親と共同で事務所を開いていたゼンガーを訪ねる。
 ゼンガーは、かなり昔に弁護士業を引退していた。ある日突然弁護士引退を宣言し、ウィリアム・ダニエルズに自分の分の事務所を引き渡し、さっさとケープコッドに移り住んだという。
 ダニエルズは、ゼンガーに、レスリーの件について話す。すると、ゼンガーは言う。アルバート・サンドラーはとうの昔に死亡していて、結婚なんかしていないし、子供もいない。そして、更に付け加える。その女は偽者だ、その女の仕事を引き受けるな、と。
 ダニエルズはゼンガーの言葉を無視し、調査を続ける。
 ダニエルズは、アルバート・サンドラーについて色々なことを知る。アルバート・サンドラーは、贋金作りの技術を持っていて、大戦中、その技術を活かして米国の為にスパイ活動をしていた。大戦後も、サンドラーは米国の為に働くことになる。大富豪になれたのは、贋金作りの技術を自身の利益の為に駆使し、米国がそれを黙認していたからだった。
 ダニエルズは、アメリカやイギリスの諜報員とも出会う。誰もが言う。アルバート・サンドラーに娘はいない、レスリーは偽者だ、と。
 ダニエルズが疑問を抱く度に、レスリーは別の証言をする。ダニエルズが対面したアメリカやイギリスの諜報員らこそ偽者だ、なぜなら本物は既に死亡している、と。
 ダニエルズは、誰を信じてよいのか分からなくなってしまう。
 更に調査を進めていると、ダニエルズはアルバート・サンドラーや父親のウィリアム・ダニエルズがソ連側に通じていたことを知る。どうやら、アルバート・サンドラーは大戦中にソ連側に殺されていて、大戦後にアルバート・サンドラーとして振舞っていたのはソ連が送り込んだ偽者だったらしい。レスリーの母親やレスリーを殺そうとしたアルバート・サンドラーは、すり替えの事実が表に出てはまずいと考えた偽者だったのだ。
 その事実を掴んだ時点で、ダニエルズも命を狙われるようになった。
 問題はアルバート・サンドラーに成りすましたソ連側の偽者が、どうなったか、である。ダニエルズが命を狙われている以上、現在も生きているのは確かだった。アルバート・サンドラーの偽者は、また別の人物に成りすましている可能性が高い。その人物とは誰か?
 ダニエルズは、アメリカやイギリスの諜報員が本物で、レスリーも本物である、という事実を掴むと、彼らと共につい先日他界したアルバート・サンドラーの妹の屋敷に侵入。そこで隠されていた死体を暴く。
 ウィリアム・ダニエルズと一緒に弁護士事務所を開いていたゼンガーだった。
 ゼンガーは、ある日人が変わったようになって弁護士業引退を宣言していた。その時点で本物のゼンガーは殺され、アルバート・サンドラーの偽者が彼と摩り替わったのだ。偽者のゼンガーは、さすがに本物のような弁護士活動はできなかった為、「弁護士業を引退した」ことにしたのだ。当然ながら、ウィリアム・ダニエルズもこのすり替えに一枚噛んでいた。
 ダニエルズはゼンガーの偽者を追う。ゼンガーの偽者は、潜水艦で祖国ロシアに戻ろうとしているところだった。
 ダニエルズは、レスリーの助けを借りて、ゼンガーの偽者を始末する。


楽天ブックス(large)

解説

次々と現れる登場人物全てが他の登場人物に対し「あれは偽者だ。本物は死んでいる」と主人公のダニエルズに言う。
 そんな訳で、主人公も、読者も、誰が本物で、誰が偽者で、誰が事実を述べていて、誰が嘘をついていないのか、ストーリーが進行すると共に分からなくなる。
 起承転結、というが、本作は起承転転転転転転転結、といった感じ。
 その意味では、非常にサスペンス満載の作品に仕上がっている。

 最大の問題点は、舞台設定が古い、ということか。
 本作は1977年に出版されている。当然ながら、その時期が舞台となっている。
 1977年は、冷戦の真っ只中。その一方で、第二次世界大戦の影響から完全に脱し切れていない時代でもあった。
 だからこそ第二次世界大戦に活動していたスパイとの恋で生まれた娘が、冷戦中の米ソの諜報戦に巻き込まれる、というプロットも可能だった。
 しかし、現在は21世紀。
 1970年代は30年前の話。第二次世界大戦は60年以上前の話である。
 冷戦は既に終わっていて、ソ連という国は消滅している。
 第二次世界大戦に活動していたスパイとの恋で生まれた娘……、となると、60代の老女、ということになってしまう。イマイチピンとこない。
 現在は、DNA鑑定などがあるので、娘だったら直ぐ判明する筈。証言を元にレスリーが本物か否かを決める、という部分でも時代を感じさせる。

 また、起承転結の「転」があまりにも多過ぎて、読んでいる方が疲れる、という面もある。
 もう少し簡単にしてくれ、と。
 登場人物も無駄に多い。殆どは「レスリーは偽者」と述べるだけ。その登場人物も、レスリーが逆に「その人は嘘をついている」「その人こそ偽者」に言われる。
 同じような「転」が続き過ぎなのである。

 偽者ゼンガー(偽者アルバート・サンドラー)は、何年も前に弁護士業を引退していた。そして急遽祖国ソ連に戻ることに。
 なぜ今更、と思ってしまう。
 アメリカでの生活が長過ぎて、ソ連での生活は窮屈に感じるのではないか。

 アメリカの諜報局が、偽者ゼンガー(偽者アルバート・サンドラー)の動きを全く掴んでいなかった、まさかソ連が送り込んだ偽者とすり替わっていたとは知らなかった、というのも不自然。
 本物のアルバート・サンドラーは、贋金作り屋だった。利用するなら、きちんと監視下に置いていた筈である。

 主人公のダニエルズも、弁護士の割には頭の回転が速そうに感じない(だからこそ弁護士業に飽きてしまったのか)。
 突然現れてきたレスリーの話を何でもないように信じて、特に身元確認などは行わない。
 自身の考えで行動している、というより、他人の思惑で突き動かされているだけの印象。
 主人公にしてはあまりにも頼りないのである。

 ともかく、最後まで読めたものの、古さを随所に感じさせる作品だった。
 20年前くらいに読んでいたら、印象は異なっていたかも。



関連商品:

人気blogランキングへ

楽天ブックス(large)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.05.31 09:18:41
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: