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2007.08.02
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カテゴリ: 洋書

 米国空軍少佐Doug Beasonによるミリタリーアクション小説。


粗筋

ウィリアム・マクグリフィン空軍少佐は、ウェンドーバー空軍基地に配置転換される。基地の司令官に任命されたのだ。
 根っからの輸送機パイロットであるマクグリフィンは、操縦桿を握る可能性が全くない任務に不満を持っていたが、パイロットのままではいつまでも昇進できないし、妻との離婚など、忘れたいことがたくさんあり過ぎた彼にとって、受け入れざるを得ない任務だった。
 ウェンドーバー空軍基地は、ネバダ州のど真ん中にある、これといった特徴のない基地。
 核兵器の保管基地アルファベースを抱えている、ということを除いて。
 アルファベースは、ソ連との核兵器削減条約に基づき、余剰の核兵器を保管していた。いわば、不要となった核兵器のゴミ捨て場である。
 ただ、ゴミといっても兵器として充分以上に通用するので、盗まれるようなことがあっては困る。アルファベースの警備体制はウサギ一匹すら出入りできないものになっていた。
 そのアルファベースに、アンソニー・ハーディングは侵入しようと計画した。核兵器を盗み出し、売り飛ばそうと。核兵器廃絶運動家の女性ビッキー・オズボーンをアルファベース所属の軍人と接触させ、情報を聞き出す。情報を元に、進入計画を立てた。ウェンドーバー基地に立ち寄る輸送機のコールナンバーを使い、襲撃部隊を乗せた偽の輸送機を潜入させる。そのままアルファベースやウェンドーバー基地の通信拠点を破壊し、同時に警備網を殲滅する。ゴタゴタを隠れ蓑にして核兵器を盗み出す……。
 マクグリフィンは、基地の司令官に就任したものの、パイロットの経験しかないので、基地運営に関しては右も左も分からない。そんなところ、知人が操縦する輸送機がウェンドーバー基地に立ち寄ることを知った。久し振りに会ってみるか、と判断し、連絡を入れようとするが、輸送機の様子がどうもおかしい。確認することに。
 その輸送機こそ、ハーディングの襲撃部隊を乗せた偽の輸送機だった。ハーディングは直ちに作戦を開始。アルファベースの通信システムと、警備体制を崩壊させる。
 マクグリフィンは、ようやく何者かがアルファベースの核兵器を狙っている、と気付く。彼はウェンドーバー基地に残った数少ない兵器を掻き集め、反撃に出ようとするが……。


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解説

核兵器の強奪計画。
 物凄い陰謀を描いた小説なのだから、物凄く盛り上がる……、と思いきや、全然盛り上がらない。
 本作は200ページちょっとで、海外の小説としてはかなり短い。したがって、サスペンスに満ちたシーンがギュウギュウ詰めになっている、と期待していたのだが、実状は100ページに相当するプロットを無理矢理200ページに伸ばしたような感じで、信じられないほど間延びする。
 本の大半は、ビッキー・オズボーンがハニートラップとなって警備兵から空軍基地に関する情報を盗み出す場面で占められている。
 その合間にマクグリフィンが「操縦桿を握れないなんて空軍任務じゃない」とぼやく場面が挿入されている。
 メインである筈の基地襲撃の場面は、最後の最後の付け足しのよう。「何を今更」という印象しか受けない。
 襲撃場面では多数の人間が死ぬのだが(100人以上)、その割にはあっさりと解決してしまい、イマイチ盛り上がらない。

 登場人物が魅力に欠けるのも問題。
 主人公マクグリフィンは、自身は輸送機のパイロットに過ぎないのに、「パイロットでない空軍の軍人は屑だ。なぜ自分はこんな任務を引き受けたんだろう」とぼやいてばかりいて、控え目に見ても優秀とは思えない。著者はこのマクグリフィンが主人公だ、と思っていて、読者にもそう思ってもらいたいようだったが、こちらとしては脇役にしか見えなかった。
 マクグリフィンよりも、敵役のビッキー・オズボーンの方が存在感がある。ただ、彼女は結局は下っ端に過ぎないので、襲撃場面に至った時点でお役御免となり(戦闘能力はないので)、無能キャラになる。
 アンソニー・ハーディングは、メインの悪役の筈だが、最後の襲撃場面を除いて下っ端のビッキー・オズボーンに完全に食われていて、核兵器強奪計画を立てられるほど有能な人物として映らなかった。襲撃場面になってようやく動くのだが、それまでがあまりにも無能なので、同じ名前の別のキャラであるかのようになってしまっている。

 ストーリーの設定もよく分からない。
 アルファベースは、核兵器の保管場所。厳重に警備されている筈なのに、襲撃部隊の侵入をあっさりと許してしまう。
 万が一襲撃され、核兵器を強奪されても対処できるよう、何らかの対策が講じられていると思いきや、全く何も講じられておらず、有能とはお世辞にも言えないマクグリフィンが単独で襲撃部隊に立ち向かう羽目になる。
 そのマクグリフィンも、完全に一人では戦えないので、支援を求めるのだが、なぜか軍司令部は状況の把握や、事態の解決よりも「きちんとした手順を踏む」ことを重要視していて、事が全く進まない。
 そもそも、主人公が侵入計画に気付くのが侵入作戦が実施されて100人以上が死んだ後、というのはどうなのか。
 このようなストーリー設定も、軍というものがいかに無能で非効率的であるかを皮肉的に描くユーモア小説としてなら成り立つが、著者は本作をユーモア小説として書いたようではない(空軍に属する軍人が、空軍を意識的に愚弄する小説を書ける訳がないのである。本作では、意識せずに愚弄しているが)。
 真剣な小説なのに、ストーリーの進展具合が真剣とは程遠い、というギャップ。
 読む方としてはただただ苛立ちを覚える。

 著者は、本作が出版された時点では現役の空軍軍人だった。
 現役の軍人なら、軍の内部事情に詳しいから、リアルでサスペンス満載の軍事アクション小説を書ける、と考えがち。
 しかし、内部事情に詳しいが故に想像力を働かせることができず、スケールの小さいものしか書けない、ということも有り得る。
 今回は、そのよい例と言える。



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Last updated  2007.08.02 08:45:32
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