伝承の狐観

伝承の狐観


狐の生態から離れ説明のつかない狐観の話。
ある時は陰気の妖獣として人間の女に化け、人間の男の精気を抜き取る。
また、男となって人間の女をを犯す老狐もいる。
白狐は瑞祥とされ、玄狐(黒狐)は人の死を暗示する吉兆の獣として扱われる。
また、黒狐は瑞祥となる場合もある。
また狐は獣の中ですこぶるインテリで読み書きが出来、未来を予知し、講義をする学者狐もいる。


狐の妖術

1.狐五十歳にして婦人に化け、百歳で神巫に化ける。
 あるいは男に化け女と交わる。
 より多くの古事を知っていたり、魅了して人を惑わす。
 千歳となって、天に通じて天狐となる。

2.狐の寿命は八百歳である。
 三百歳にもなると人に変化する。
 夜に尾を撃ち火を出したり、髑髏を頭に戴いて北斗に願い、髑髏が落ちなければ人に変化する。


伝承

狐は男にも女にも化けますが、女に化ける例の方が圧倒的に多く、理由は狐は土性で陰獣からきています。
また狐と交われば男は死に至るとも伝えられていて、これらの亜流の伝承も多数あります。

『宗高僧伝』より
 仲志玄がかつて明星の夜、林の中の墓地で休んでいると一匹の狐が現れ、髑髏を取り上げて頭の上に置き、
数回揺すり、揺すっても落ちないものを選んで頭上に載せた。
次に色々な草の葉で身を隠し、見る間に道の辺りに佇む白衣の美女となった。
女は微かにすすり泣き、見も世もあらぬ風情である。
そこへ乗馬の若者が来て、言葉を交わし、やがて共に行こうとする。
玄はたまりかねて、女は狐だと言ったが若者は信じない。
玄が錫を振り読経すると女は狐の本性を現し逃げて行ったという。

『捜神後記』より
 呉軍の顧旃が猟をしてある丘に至ると、「今日は酷く疲れた」という声がした。
一同で調べてみると丘の古墓穴の中に一匹の老孤がうずくまり、一巻きの名簿を前にし、指折り何かを数えている。
そこで犬をけしかけて老孤を食い殺させ、名簿を手にとって見ると、
名簿の名は老孤が犯そうとした女の名前で、既に犯した女の何は朱点が施されていた。
その名は百を越えていたが、旃の娘の名もその中にあった。


狐の吉凶

狐の色によって吉、あるいは凶と考えられていた。

1.白狐の吉祥
唐承相李揆が乾元初年、中書舎人であった頃、役所から帰ると庭に白狐がいた。
召使にこれを追い出させたが、客がその話を聞いてそれは祥瑞だと言った。
果たしてその翌日、李は礼部侍郎を拝命したのである。

2.黒狐の凶兆
唐の宰相、李林甫、堂中に座していると一匹の牛馬ほどの黒光りする狐を見た。
以来数日の間、常に昼間一匹の黒狐が現れたが、その年林甫は亡くなった。


狐の学徳

『捜神記』より
 呉中に胡博士という学者がいて学生に教えていたがある時見えなくなってしまった。
九月九日、士人達が打ち連れて登山遊観していると、どこからともなく書を抗議している声が聞こえてきた。
下僕に命じ探させると、空の墓穴の中に狐がずらりと並んでいた。
人を見ると狐たちは逃げ出してしまったが、一老孤だけは泰然としていた。
 これが白髪の胡博士だったのである。
 この中国の胡博士も日本に同じように伝わる幸庵などが白髪の学者老孤です。
最後には正体を知られて、住んでいた所から姿を消したり、狐の本性を見破られて死んだりします。
また日本の狐で学者なのは老孤ですが、市井の狐が読み書きできたり、歌まで詠めたりしてます。


狐の徳性

『説文解字』より  狐、有三徳。
 其色中和。
 小前大後。
 死則丘首。
 謂之三徳。

 狐には三つの徳がある。
 一つ目はその色が中和である。
 二つ目は前を小とし、後ろを大とする。
 三つ目は、死すれば丘に首す。
 これを狐の三徳という。

「死則丘首」
 狐が故郷の丘に首を向けて死ぬこと。
つまり、その本を忘れないということ。
 狐が死に際して、その首を故郷の丘に向けるのは、仁というものである。
狐は獣に過ぎないが、故郷の巣穴があった所、かつまたそこに生まれて親兄弟と楽しく過ごした所である。
その丘に向かって首を正すのは、本を忘れないという仁義の徳である。

「小前大後」
 狐は体つき、形状からも尊信されていた。
 狐は頭部が三角で小さく、腹・臀部・尾と後ろに行くにつれ肥厚。
中国人の人生観は、個人としてはその初年よりも、晩年の幸福、種族としてはその子孫の繁栄をもって真の幸慶とする。
現在より、常に後のほうを大切に考える。
そのため狐の体型は、瑞祥と考えられた。

「其色中和」
 徳の第一に挙げられているのは、土徳で、狐はその色が黄色。
黄色は中国陰陽五行思想においては、木火土金水の五元素のうち、「土気」を象徴し、中央に位する色。
そこでこれは、狐は毛が黄色い、それ故尊いとした。
 唐の時代の初めから、百姓の多くは狐神を自宅の中に祀り、狐神に仕えてその恩恵に与ることを祈求した。
その流行はめざましく、当時村のある所必ず狐神があり、狐の祭祀なくしては村は形を成さない、とまで言われていた。


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