逃げる太陽 ~俺は名無しの何でも屋!~

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2022.02.22
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ごおーごおーと風が吹く。
とにかくすごい風が吹く。

「このところ、毎日風が強いですよねぇ」

ご住職へのお届け物の帰り、渡り廊下の拭き掃除をしていたお坊さんと立ち話。

「そうですね。掃き掃除をしようにも、集めるそばから飛ばされてしまいまして。これも修行と頑張ってみても、あまりのことに虚しくなってしまいます」

我ながら修行が足りません、とまだ若いお坊さん。

「あはは……。虚しいの、わかります。秋の落ち葉かきもキツいですけど、こういう強風の敵わなさはまた別ですよね。大自然の脅威というか、どうにもこうにも」

話しているあいだも風が吹く。
ごおおおー! とものすごい風が吹く。



お寺の裏手には、小さな竹林がある。竹垣の補修なんかに使われるから、手入れはされてるんだけど、高さは屋根を越えている。それが、今の強風で折れそうなくらい真横に撓り、わっさーわっさーと揺れている。

「激しいヘドバンですよね」

なんとなく言った言葉に、お坊さん、吹き出した。雑巾を握りしめて笑いを堪えている。

「へ、ヘドバン」

激しく震える背中。俺、そんなに面白いこと言ったかな?

「いやー、ほら。とってもヘビーな強風ライブに、竹林オーディエンスがノリノリでヘッドバンギング──」

「な、何でも屋さん、もう、その辺で」

勘弁してください、と笑い涙の滲んだ目で懇願してくる。──そういえばこの人、ロック系の音楽が好きで、前にも声明声でその辺の歌うたってたことあったっけ。きっとヘドバンにも馴染みがあるんだろうな……。

「す、すみません」

こんなところで大声で笑ってたら、ご住職だって何かと思うだろうし、若いお坊さん、叱られちゃうかも。俺、悪いことしちゃったかな……。

そんなことを思って縮こまっていると、また、ごおおおおーっと風が吹く。大自然の奏でるサウンドに、竹林オーディエンスが激しく応えてる。折れそうで折れない、なんとも恐ろしい光景だ。



「……!」

うっかり呟いたのが、またツボに入っちゃったらしい。お坊さん、笑いに悶絶してしまった。

「……」

これ以上自分がお馬鹿を言う前に、俺はそそくさとお暇した。
掃除の邪魔して、ホントごめんなさい!





忘れていて、今日の話を書きそびれてしまいました。





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最終更新日  2022.02.22 22:23:22
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