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2008.09.19
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カテゴリ: 人類学
昨日に引き続いて人類の進化に関係した話を。
かつて、分子生物学の手法が登場する以前には、人類と類人猿の分岐は1500万年以上昔のことだと考えられていたことは、昨日書きました。
その当時、人類の最古の祖先は1400万年前のラマピテクスと考えられていました。人類最古の祖先が1400万年前ということは、人類と類人猿の分岐はそれより以前、1500万年以上前、ということになります。
ところが、DNAの分析による分子生物学は、人類と類人猿(チンパンジー/ボノボ)との分岐は500万年前という、当時の常識とはかけ離れた数字を示したのです。最初は、疑念の目で見られましたが、やがて、ラマピテクスのより完全な化石が発見され、この動物が実は人間の祖先ではなく、オランウータンの祖先である可能性が高まったこと、その他の様々な証拠からも人とチンパンジーの分岐は500万年前という数字が支持され、新しい定説として定着するに至ったのです。
が、
ごく最近になって、600~700万年前の人の祖先ではないかとされる化石が次々と発見されてしまったことで、人とチンパンジーの分岐500万年前という定説が揺らいでいます。新たに発見された化石は、約600万年前のオロリン・トゥゲネンシスと、それより更に古いサヘラントロプス。特にオロリン・トゥゲネンシスは、それまで最古の人の祖先として知られていたアウストラロピテクスよりも現在のヒトに近いのではないかとも言われています。
これらのことを受けて、ヒトとチンパンジーの分岐は700万年前という説が登場しています。

実は、DNAを使った分子生物学の手法は、二つの種の遺伝的な距離を測ることはできますが、その遺伝的な距離を「分岐してから何万年」という時間的な距離に置き換えることは、本来はできないのです。ではどうやって時間的距離を測るかというと、化石資料と照合するのです。
猿(霊長目)の仲間はいくつかのグループがありますが、このうち、「真猿類」と呼ばれるグループは、アフリカ・アジア・南アメリカに住んでいます。アフリカとアジアに住んでいるのが狭鼻猿類(ヒトもその仲間)、南アメリカに住んでいるのが広鼻猿類です。

そこで、狭鼻猿類と広鼻猿類の遺伝的距離を基準として、その半分くらいの遺伝的距離なら、3500万年の半分の1700~800万年前、10分の1の遺伝的距離なら350万年前、というようなかたちで時間的距離を算出したわけです。
ところが、この計算方法は、「二つの種の間で遺伝子の変化速度は一定である」「遺伝子の変化速度は常に一定である」という二つの前提条件に基づいていて、その前提条件が本当に事実なのか、という点に弱点を抱えているのです。
加えてもう一つ、狭鼻猿類と広鼻猿類の分岐は本当に3500万年前なのか、という問題があります。つまり、南米に広鼻猿類が登場したのが3500万年前ですが、その祖先は南米に渡ってくるより以前から、すでにアジア・アフリカの狭鼻猿類の祖先とは枝分かれしていた、ということも考えられなくはないからです。
そんなこんなで、分子生物学の手法による分岐年代の推定には、どうもある程度の誤差がありそうです。500万年前と700万年前というのも、誤差の範囲内、ということになるのでしょう。

ところで、「ヒト」の定義とは何でしょう。
多分様々な定義があると思います。「考える葦」という定義もありました。
しかし、生物学的に見れば、ヒトの定義は「直立二足歩行を行う霊長類」となります。ヒトは、足と背骨を一直線に、垂直に伸ばして立ち、その姿勢で歩くことを常態にしています。このような姿勢をとることができる動物は、他のサルの仲間にはいません。否、サルの仲間どころか、ほ乳類いや全ての動物の中でも人間だけができる能力なのです。
400万年前にアフリカに暮らしていた初期の人類アウストラロピテクスは、知能程度はチンパンジーやボノボとあまり変わらなかったと推定されています。脳の容量がチンパンジー類とあまり変わらないからです。しかし、アウストラロピテクスは疑問の余地なくヒトの仲間なのです。なぜなら、直立二足歩行を行っているからです。一方、チンパンジーやボノボ(特にボノボ)は、驚くほどの知能の高さが知られていますが、それでも議論の余地なく類人猿なのです。なぜなら、直立二足歩行が行えないからです。

このことが何を示しているかというと、ヒトは脳味噌が進化したことで類人猿から分かれたのではない、ということです。ヒトは、まず二足歩行という能力を獲得したことで類人猿から分かれ、その後で知能を進化させたのです。もちろん、サルの仲間自体が、もともと進化とともに知能を発達させてきたという基本的な条件はあるのですが。
では、何故二足歩行を始めたら急激に知能が発達したのでしょう。正確なことは分かりませんが、直立二足歩行によって手が自由になったことが大きな理由ではないか、と言われます。もともとサルも手(前足)は器用な動物ですが、ヒトは直立二足歩行によって手を歩行に使う必要がなくなったので、更に手先を自由に使えるようになりました。そして、その自由な手先を最大限に使うことによって、脳の発達が促されたのではないか、というのです。
手先を使わなくても、知能が進化しなくとも、二足歩行をする限りヒトは生物学的にはヒトです。でも、高度な知能を持った「人」「人類」は、ヒトが手先をたくさん使わなければ、登場しなかったかも知れません。

ヒトが手先を使わなくなったら、知能の発展も止まってしまうのではないか、という気がします。

---------------

追記:南米最古のサルはボリビアで化石が発見されているブラニセラです。その地質年代は、私の手元にある文献によると前期漸新世つまり概ね3500万年前となっています。そこで、上記のように狭鼻猿類と広鼻猿類の分岐は3500万年前と書いたのですが、改めてインターネットで検索すると後期漸新世つまり2500万年前としているサイトが多いようです。いつのまにか1000万年も新しくなっている。
私の手元の文献は10年以上前のものなので、その後の調査で年代が改められたのかも知れません。
それから、狭鼻猿類と広鼻猿類の分岐以外にも化石資料との照合手段がないわけではありません。たとえば狭鼻猿類の中で、狭義のサルと類人猿(ヒトも含め)の分岐は、化石資料から2500-3000万年前頃と推定されており、これを基準として遺伝的な距離を分岐の年代に置き換えることもできます。その他、様々な化石資料との照合によって年代は補正されているはずですが、その数字がかなりの誤差を含んでいることは否定しようがありません。





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最終更新日  2008.09.20 13:17:27
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