inti-solのブログ

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2014.04.11
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カテゴリ: 政治
竹富町教科書問題 下村文科相、協議会離脱の動きに「法の趣旨伝えたい」
沖縄県竹富町が法に反し、教科書採択地区協議会の答申とは別の中学公民教科書を使用している問題で、竹富町教委が教科書の独自採択に向けて、地区協議会からの離脱を検討していることについて、下村博文文部科学相は11日の閣議後会見で、「八重山地区は一体となって、共同採択地区として教科書を選定することが、法の趣旨からいって望ましい。法の趣旨を文部科学省として、しっかり伝える必要がある」と述べた。
今国会で成立した改正教科書無償措置法では、採択地区の範囲をこれまでの「市郡」単位から「市町村」単位に細分化。このため竹富町教委は、地区協議会から離脱すれば、独自に教科書採択ができると判断している。
一方、下村文科相は「小規模の自治体が独自に膨大な教科書を全部読み込んで適切な教科書を採択するのは、相当負担が大きい」と強調。「八重山地区は共同採択地区を設けるエリアに該当する」との認識を示した。
改正法では、採択地区を決める権限は都道府県教委にあり、竹富町が離脱するかどうかは、沖縄県教委の判断に委ねられる。下村文科相は「竹富町や県教委から報告や相談があれば、その時点で対応していきたい」と述べた。

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義務教育の教科書は、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」によって無償とされています。各教科書採択地区ごとに協議して、検定済教科書の中から、どの教科書を使うか選んでいるわけです。
教科書採択地区は、現在の法律では、「市若しくは郡の区域又はこれらの区域をあわせた地域に、教科用図書採択地区を設定しなければならない」とされています。実際の採択区は、複数の市、複数の郡にまたがっている場合もあれば、政令指定都市の場合は一つの市内に複数の採択地区がある(例えば、大阪や横浜の行政区ごと、など)場合もあります。

で、一連の問題は、石垣市・与那国町・竹富町からなる八重山教科書採択区で、2011年に教科書選定を巡る協議が決裂したことに端を発しています。石垣市と与那国町は、右翼系の育鵬社版を希望、竹富町は東京書籍版を希望。協議会としては、最初は育鵬社版を選んだものの、竹富町が拒否、再協議では東京書籍版を選んだものの、今度は石垣市と与那国町が拒否しています。再協議の際は、3市町の全教育委員による多数決で東京書籍版を選んだそうなので、こちらのほうがより公正な選定と思われるのですが※、文科省が介入して、育鵬社版を選定した最初の協議を有効としたため、竹富町がこれに従わなかったわけです。

※教育委員の数は、石垣市と竹富町が5人、与那国町が3人だそうです。ということは、過半数は7ですから、竹富町の委員以外にも、育鵬社版に反対する委員が複数存在した計算になります。

この騒動が起きたときは、民主党政権の時代です。文科省は、育鵬社版を後押しするような介入を行ったのですが、採択区の選定と異なる教科書を選んだ場合、国が教科書を無償給与できないものの、自治体が教科書を購入して生徒に無償で給与することまでは法令上禁止されていない、という解釈も示したため、竹富町が東京書籍版の教科書を使うことになりました。実際には、寄付金で購入されているので、竹富町の公費は使われていないようですが。

ところが、極右的な安部政権に変わると、対応が一変して、政府は竹富町に対して育鵬社版を使えとごり押しを始めたわけです。
で、上記の引用記事には、「沖縄県竹富町が法に反し~」と書いていますが、例によって産経新聞の言い分です。しかも、育鵬社ってのは産経の子会社ですから、およそ客観性のかけらもない視点で「法に反し」と言っているに過ぎません。

問題の法律、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」(教科書無償措置法)には、確かに

(教科用図書の採択)
第13条
4 第1項の場合において、採択地区が2以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村立の小学校及び中学校において使用する教科用図書については、当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない。




(この法律の目的)
第1条 この法律は、教科用図書の無償給付その他義務教育諸学校の教科用図書を無償とする措置について必要な事項を定めるとともに、当該措置の円滑な実施に資するため、義務教育諸学校の教科用図書の採択及び発行の制度を整備し、もつて義務教育の充実を図ることを目的とする。


と書いてあります。無償給付は受けない、教科書は国費によらず独自財源で(今回の例では寄付金を財源としたわけですが)購入する、となれば、この法律に縛られるいわれはない。実際、民主党政権時代の文科省は、そういう法令解釈をしたわけです。

ところが、自民党政権は、竹富町の反乱を粉砕しようとばかりに、教科書無償措置法を改正して、採択区内で同じ教科書を使うことを義務付けるようにしたのです。
でも、そういう改正を行った、ということは、逆にいえば今までは義務はなかった、ということですから、やっぱり今までは違法ではなかった、ということになるでしょう。

それはともかく、これまでは、採択区の範囲は「市または郡」となっていましたが、今回の改正で「市町村」となったので、竹富町が単独で採択区となることも可能になりました。
文科相は「八重山地区は一体となって、共同採択地区として教科書を選定することが、法の趣旨からいって望ましい。」などと言っているようですが、どの地区がどのように教科書採択区を構成すべきか、なんてことは、それぞれの地域の特性に合わせて地元で決めるべき問題であって、文科省が指図すべき問題ではない。実際、法律では採択区の決定権は都道府県の教育委員会にあります。別報道によれば、沖縄県教委は竹富町が単独で教科書採択区となることを認める方針だそうで、そうなればまったく問題なく、竹富町は堂々と育鵬社版以外の教科書を使えるようになるわけです。

下村文科相は「小規模の自治体が独自に膨大な教科書を全部読み込んで適切な教科書を採択するのは、相当負担が大きい」とも言っているそうですが、負担が大きいか否かを判断するのは、当該の「小規模な自治体」自身であって、文科省ではないでしょう。

私としては、国を相手に小さな自治体が一歩も退かずに頑張っている姿は、大いに応援したいです。





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最終更新日  2014.04.12 00:08:36
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