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2004.09.30
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ホテル内には、客室はもちろんクラブやシアター、プール、バーガーショップなど豊富に施設を設置している。
登録をすると人型のアイコンが与えられ、それぞれのイメージに合うよう髪型から服装まで自由に選択でき、
ホテル内を行き来しつつ、その往来で出会った人との会話を楽しむというまさにバーチャルな世界であった。
あった、と言うからにはもちろん私も体験済み。文字だけが飛び交うチャットとは異なり、
人型のアイコンといえども視線を感じるので(自分のアイコンをクリックされると、相手がこっちを見るという仕組み)
少々緊張を伴うリアルさも備わっている。

客室には、料金を支払いポイントを買えば、それで家具を購入できるので、
がらんどうの部屋がそれなりに落ち着いてみえる。

画面上のこととはいえ妙な気分になる。いったい、誰がこんなことを考えたんだろう・・・。

今はホテル内だけの世界だけど、この世界の発展上にあるものは、気のあったもの同志の次なる場、
極端に言えば結婚式場だったり、その線上にある家族だったりするのではないか。
部屋にはペット用のアイコンを購入できるようになっているが、なんとなく新たに赤ちゃんなどが登場しそうな気がする。
その次はなんだ? 職場じゃないかな。バーチャルの敷地内に数々の職場ができ、生意気に「面接」なんかがあって、
「面接」そのものがゲームとして扱われるかもしれない。
面接ゲームをクリアし、就職が決まれば今度は「昇格」に向けてのゲームも行われるだろう。
目標という人参を目の前にぶら下げて走る馬の如く猪突猛進し、気が付けば実際の現実と画面上の現実が
摩り替わっていくような感覚に陥りはしないかと考える。

バーチャルな世界で家族を作り、仕事を持ち、それが成功し、いつしか喝采を浴びるまで登りつめ、
クリックひとつで閉じる画面の世界と現実とのギャップを、ただの仮想の場として受け止められることができるのだろうか。


もちろん、画面の出会いも現実の出会いとして、私は受け止めている(「文は人なり」というように、
魅力的な会話を交わす人がおり、実際のその人への興味もそそられる)。
が、私が描いたのは、表情も音声も体温もない文字だけの会話の中で、言葉だけを頼って相手をイメージする危険な想像力と、
普段は痩せた言葉でもキーを打つ手は滑らかで、いかにして言葉を装飾し自分という人間を
イメージ通りに画面上で生かせるかに固執した人物だった。


実際に生きている現場での足元が緩むと、画面という「不確かな存在」の中に確かさを求めて
埋没の一途を辿ることになる。
他者との関わりの中から得る「評価」や「認識」によって、自己の肯定はなされるのだと思う。
その他者との「ナマ」のコミュニケーションのとり方が、下手であり、また煩わしさを感じるため、
他者の目を通して知る「自分」を認識することができず、自分を肯定する機会も損なわれるのだろう。

優しい言葉が画面の中から聞こえれば、誰だって耳を傾けたくなる。不必要な言葉は消去すればいいのだから。
実生活ではありえないクリック一つの消去が、ここでは可能になる。名前も顔も知らないことに、守られるのだ。
しかし、人との関わりにある「ナマ」の煩わしさを経て得るものから、小さな小さな歴史を築き、
目に見えない結び目を持つのだと思う。煩わしさをすり抜けた一時の安堵も、
振り返れば無味乾燥な時間の経過に過ぎない気がする。
私の描いた主人公が現実の世界を振り返ったのは、そんな自分を見る相手のけたたましい動揺やひたむきさに、
普段の「煩わしさ」が温かいものとして目に映ったからだ。

人間って面倒臭いけど、面倒臭いぶんだけ、とても関わり甲斐もある。
本来は、人との間で喜びを見出すことのできる生き物なのだから。









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Last updated  2012.04.08 01:26:41


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