島流れ者 - 悪意なき本音

島流れ者 - 悪意なき本音

2003.09.22
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日本から離れて3年ほど経った頃から日本にいた頃のなんでもない日常がフラッシュバックのように出ては消えるようになった。例えば会社に行く通勤途中の朝の駅までの道や、その頃よく付き合いのあった友達と通ったバー、高校の頃に入っていたバスケット部であった珍事件や、もっと遡って小学生の頃の体験などなど。最近はそれもちょっと収まったが、6年近く日本に帰ってなくて、ホームシックであった頃は、それが頻繁であった。

今日はその第一弾として、酒にまつわる話をしてみようか。初めての仕事はセールスだった。その頃はバブル経済の真っ只中。何でも高ければ良い物、見掛けが勝負、と言う今考えるとおかしなほど狂った経済の中で、その同じ会社に6年間在籍した。当時のバブル経済の例として、その辺の小さな町工場や商店でも、慰安旅行として、海外旅行に行くのはごく一般的だったり、毎年恒例のデパートで福袋では、宝石などを詰め合わせた1000万円の物まで出たほどだ。また何処の会社も人が欲しくて、青田買いは当たり前、新卒者がの説明会に行ったら昼食を会社が出すし、その弁当のそこに一万円が入っていたといううわさもあった。

わたしの会社もそういった狂った社会の流れの恩恵にあずかって、荒稼ぎをしまくっていた。事ある毎にコンテストを企画して、褒章にはアクセサリーや、毛皮のコート、海外旅行などを与えられた。旅行の経験を除いて貰ったそれらのプレゼントはすべて留学資金をひねり出している頃に現金化された。当然未練など何も無く、かなりこのお陰で助かったので感謝しているが。

その頃の私は大変な成金野郎で、現在たったの$50の買い物を3ヶ月ほどよく考えてするほどの自分でも信じられないほど金使いが荒かった。例えば、一度買い物に行くと、お高いブティックで、3着ほど服を買い、その足で数件先の靴屋ではその新しい服ごとに一足づつ似合う靴を買っていた。それから夜は、飲み屋に繰り出して、酒に弱いくせに一丁前に店で仕入れている一番高いブランデーをキープして、なんと、ウーロン茶で割ると言う大変もったいない飲み方をしていた。

こんな恐ろしい金遣いの荒さの背景には、日に平均15時間働いた後にも家に帰ってから同僚、部下などのフォロー電話で1~2時間費やし、売り上げが悪いと唯でさえ週に1日しかない休みを削られたりと、大変ストレスの溜まる仕事をしてのであった。まとまった休みが取れないため、趣味なんぞも当然持つことが出来ないばかりか、まともに彼氏も作ることも出来なかった。実はこの熱血会社はセールス社員教育の一環として、仕事が第一、プライベートは第二され、そのために付き合っている人との中が悪くなって別れる社員も多かった。

幸か不幸か、右も左も分らないうちに入った初めての会社であったため、それが当たり前と思っていた私は、そんなのでも結構楽しんで仕事をしていた。ストレス解消としては買い物、映画、そして、飲みに行くことがもっぱらだった。会社を出る頃は精神的にはくたくただったけど、まだ20代前後で肉体的に弾けていたので、平均で週に3回、多い時には毎日お気に入りのバーに会社の連中と連れ立っては溢れんばかりのエネルギーを発散していた。

そんな風に思いっきり遊んで、まだ酔いが冷め切らないうちに仕事に行くことが多かったので、時には履いた靴に模様が付いていると思ったら、実はそれは数日前の自分の吐寫物が乾いて残っていたという恥ずかしいこともあった。しかしなんたってっ経ってこれ以上酒にまつわる恥ずかしい体験をした事が無いと言う事件がおきた。

ある日、明け方3時頃まで飲んで、数時間の仮眠の後、お客との待ち合わせの駅に重たい身体を引きずりながら辿り着いた。いつものルーティーンとして、電話ボックスから会社に待ち合わせの場所に着いたと報告を入れた。それは一番稼ぎ時である土曜日で、今日の一日の行動を上司とチェックしていた。その時、何か分らないけど、何かがおかしいなーと思っていたら、なんと、履いている靴が片方ずつ違うのだ!え~!!焦りを隠し、とりあえず電話を切った。その場所は電車で1時間以上掛かる片田舎、近くの靴屋は、また電車に乗って5駅ほど行かないと無い。待ち合わせの時間が迫っていたので仕方なく、その客が表れないことを祈って待っていると、神の思し召しか、その客は待ち合わせ時間から30分経っても現れなかった。

喜びを隠しながら上司に客が来なかったと報告し、次の客との待ち合わせ場所に向かった。その駅は結構開けていたので、すぐそばの大手百貨店に飛び込んだ。靴屋は何処だ?身を低くして下を向きなるべく人目に付かないように靴コーナーに忍び寄る。さっきの田舎の駅付近では誰もわたしの靴が違うことを気づく人はいなかったが、人が多い中で、すれ違う全員がわたしのこの靴注目しているような錯覚を覚える。早く何とかしなくては!客としているデパート内でこんなに緊張したのは初めてだ。最大の難関は、どうやってこの靴コーナー入っていくか。柱の影で隠れながら、定員の様子を伺う私はまるで変質者そのもの。いかにしてこの定員にアプローチしたらいいんだろう。あれこれ考えていると、“いらっしゃいませ!”と大きな声で定員に声を掛けられびっくり。もじもじしながらそのやたらと威勢のいい定員に、”実は、今日の朝とても急いで出てきたので、この靴、互い違いに履いてきちゃったんですよ。玄関が暗かったし...”定員は、わたしの靴を見て、あ...よくそういったことありますよね”と必死で噴出しそうなのをこらえている。よくあること??そんなわけないだろ~!痛々しいほどの丁寧なこの定員の接客に恥ずかしさは倍増。多分わたしの顔は昨晩酒を飲んだ時以上に真っ赤な茹でタコ状態になっていたに違いない。一秒でも早くこの店を出たいと言う焦りから、予想外に高い靴を適当に買って嵐の如くそのデパートを去っていった。








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最終更新日  2003.09.23 18:19:11
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