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ファースト ラブ



テーマ「恋愛について。(5)」
8時15分の駅のホームで、待ち合わせをした。

貴子は身長の小柄な、一つ年下の後輩だった。

「順一先輩は好きな人いるんですか?」

「今はいないけど、」

「私とお付き合いしてくれませんか?前から、順一先輩
好きだったんです。」

貴子は小さな声でそう言うと、ちっちゃな顔を赤くして、
下を向いた。

それからの僕達は、毎朝同じ電車で、同級生に見つからない
様に少し早い電車で駅のホームで待ち合わせをした。

彼女は僕よりも、2つ前の駅で人込みに紛れて、電車を
降りた。彼女の友達も電車を降りるため、彼女は電車を
降りると、もう僕の方には振り返らず駅の階段へと向かった

切なかった。世界中で彼女の存在こそが、すべてだった。

僕らは切なくて、キスをした。街の工業団地の中にある、
公園で、「順一先輩!キスの味って、本当に檸檬の味が
するのかなぁ?」下を向く貴子に順一はキスをした。

貴子が震えているのがわかった。二人初めてのキスに
前歯が震えてカチカチと当たった。

僕はとても、貴子の事を大切に思った。

2月の貴子の誕生日に僕は貴子の誕生石のアメジストの
指輪を贈った。時給の安いセブンイレブンのバイトで、
3ヶ月かかってやっとの思いで彼女にプレゼントした。

「順一、どうもありがとう!一生大事にするね!」
細いリングで小さなアメジストのリングは貴子の指で輝いていた。

その日、僕らは結ばれた。とても幸せでこの幸せが一生
続くと思っていたし、僕は一生彼女を大切にしたいと思った

貴子のキスは優しかった。暖かな舌の感触は僕を酔わせて
くれたし、彼女の声は、カナリアみたいに僕の耳元で、
囁いてくれた。

「愛してる!」僕は貴子に始めてこの言葉を使った。
「私も順一の事、愛している。」貴子は答えた。

本当に愛の意味もわからなかったけれど、
貴子の小さな手も、丸いちっちゃな肩も僕だけの物だった。

小さな幸せ、それだけがすべてで、
世界はキラキラと輝いていた。    つづく。



ファーストラブ3(真夏の果実) 05月02日(日)



順一は、とても幸せだった。貴子の事を思うと、少しの時間

でも、貴子といっしょにいたかった。永遠に、永遠に、二人

の愛は続くと信じていた。しかし、神様は僕らの愛の行方を

知っていらっしゃった様だ。

或る日の朝、二人はいつもの駅で待ち合わせをした。

「おはよう!貴子、」貴子はあまり元気が無かった。

貴子は俯いたまま、僕の鞄の取ってに小さな手を回すと、

ボロポロと涙を流した。「どうしたの?」僕はただ、

切なくなった。「順一、今日は学校に行きたく無いの?」

「何で?何があったの?」

「何にも無いよ!ただ、順一といっしょにいたいの!」

「僕も、貴子といたいよ!」

「二人で、鎌倉に海を観に行かない?」

「学校サボっちゃおうか!貴子は大丈夫?」

「順一といっしょなら、怖い物無いよ!!」

僕らは、いつものホームとは、反対側に人目を避け電車に

飛び乗った。品川から、横須賀線に乗り貴子は僕の横の

窓際に座ると、窓の外を眺めていた。大船の観音様が見える

と、北鎌倉で少し長めに電車が停まると、次は鎌倉だった。

乗り継ぎで鎌倉から、僕らは藤沢行きの江ノ電に乗った。

そして、七里ヶ浜で、電車を降り、二人で稲村ガ崎の前に

ある、喫茶店に入り暫く二人は、木の葉の様に波の間に

漂うサーファーを見つめていた。

「順一、大事な話があるの。」貴子はテーブルを見つめた。

「何だよ!改まって?」暫く間が空いた。

「あれが、無いの、あれから。」

「あれって?」僕は始めピンとこなかった。

「生理が一ヶ月無いの!」
「遅れているんじゃ無いのか?ほら、たまにあるんだろ?」

「違うと思うよ!私、怖いよ。」
「じゃあ、降ろすしか、無いよ。俺達学生だしさ!」

「でも、私怖いよ!こんな事になるんだったら、あなたと
付き合わなければ良かった!あなたは、男だからいいけど
やっぱり、こういうのって、女が不利なんだわ!!。」

「そんな事言ったってしょうがないじゃん!」僕は次の
瞬間恐怖に震えた。学校に知れたらどうしよう!
親に知られない様にするには、どうしようか。もし、

知られたら、僕はどうなるんだろうか!きっと、怒られる。
僕は想像すれば想像するほど、怖くなり目の前が真っ暗に
なった。

貴子と、どうやって鎌倉から帰って来たのか、覚えていない
それからの僕は、死刑執行を言い渡された死刑囚の様に、
食事も喉を通らず、それでも何とかバイトは続けた。

お金が必要だった。貯金の無い僕は必死に働いた。学校を
休みバイトのシフトも増やしたが、お金が足りず、初めて
質屋で、ギターやら、お金になりそうな物をお金に変えた。
世間は、厳しかった。

暫くして、貴子から電話があった。「順一ごめんね、今日、
生理が来た。」貴子は電話の向こうで泣いていた。

僕は、「良かったね。」と答えると、この世にやっと魂が
僕の体に戻ってきた様な安堵感を覚えた。

この事件の後、僕らは他人に戻った。僕は彼女を愛していた
し、彼女も僕を愛してくれた。

でも、現実は、僕らは若すぎた。
僕は大きな過ちを犯した。何一つ、彼女を守る事が出来なかった。好きと愛してるの違いは、彼女のすべてを守れる事が
愛していると云う事じゃ無いのだろうか?つまり、彼女の
人生、そして彼女のすべての者を守れる強さが無ければ、
愛は守れない。

僕は貴子とサヨナラしたけど、もし僕らに子供がいたら、
どうなっていただろうと思う時がある。

もし、彼女が僕の子供を生んでいたら?僕が生んでくれと
頼んでいたら?僕らは幸せに暮らしているのだろうか?

順一は、悔しかった。愛があれば暮らして行ける何て、
嘘だと思った。

情けない自分に嫌気がさした。

死にたいと思った。悲しくて、悔しくて、天井が回るほど
酒を飲み、最終電車が終わっても駅のベンチで寝ていた
そして、タバコも覚えた、僕は自分の情けなさに泣いていた

もう、あんなに人を愛せないかもしれない。 
                つづく。


流されて、挫折の中で。 05月03日(月)



負けた負けた、初めて自分の中のプライドがポッキリ、

音を立てて折れ曲がった。

どうしようも無い痛みや苦しさにのたうち回った。

自分の蒔いた種に自分の足をすくわれ、身動き取れなかった

純情って奴は、始末に終えない。

貴子との一件は、思い出すだけで、頭から、火を噴く程、

情けなかった。

毎日、僕はママパパに行き、バーボンを煽った。

「好青年!そんな事で悩んでいたらどうする。!」

ママパパのマスター矢部さんは、僕にそう言うと、

スローなジャズをお店に流してくれた。

「順一!!失恋のキズは愛で治さなきゃ治らないよ!」

矢部さんは又、意味不明な言葉を僕に投げかけた。

店もラストになると、いつも、矢部さんの好きな、

バーバラリーの曲を流した。50年代の白人のジャズシンガーの曲だった。

その曲がかかる頃には、僕と、涼子と云うどう見ても、僕と

歳の変わらない彼女が最後に残った。

どんな、話から、涼子と仲良くなったのか?

あまり、僕は覚えていない。ただ、僕が覚えているのは、

彼女が双子の姉であった事。そして、音楽が好きな事、

そして、子猫の様に気まぐれで、つかみどころの無い子

だったと云う事だ。

僕は、毎日前向きに生きていける精神力を失っていた。

貴子の亡霊に纏わりつかれたまんまだった。

酔ったままで、気がつけば涼子にキスしていた。

涼子は拒む事無く僕の首に手を回しキスをした。

頭の中では、懐かしい貴子の顔が、目を瞑ると蘇ってきた。

僕は思った。「涼子は僕の心を埋めてくれるのかな?」

「愛は使い果たしたけれど、どうなるのかな?」

涼子は何も言わなかった。

涼子は気まぐれだった。僕は本当に涼子の事が好きなのだろうか?

いいや、好きになろうとするだけで、自分が救われる気が

していた。その後、涼子には翻弄されながら、付き合うの

だった、もちろん、涼子には、好きな男がいたのが、

わかるのは、一年ぐらい後になってから、なのだが、

順一は、何とか生きて行くのだった。   つづく。


ディスタンス 05月04日(火)



恋する二人には、距離感が存在する。

近くて、いつも側にいて、同じ感性を求めるカップル

もいれば、週末だけ逢えれば満足のカップルもいる。

恋は盲目で、この距離感を見誤ると、たちまち愛は憎しみに

変わる事もある。つまり、この距離感は千さ万別である。

順一は、この事を涼子との付き合いで思い知らされる事に

なる。

彼女に花束を。花を嫌いな女性はいない!

これは、男性の自己満足である。時と場合である。

順一は内心、涼子が他の男と(元彼)といつも比べている

のを、双子の妹に聞いていたので、知っていた。

順一は取り合えず、僕は涼子と友好的になりたいと思い、

電話や、手紙で思いを伝えようとするが、なかなか伝わらない。

映画に誘ってみたり、コンサートに誘っては見る物の、

いつも、ぎりぎりまで、ダダをこねられる。

「涼子は、俺と付き合いたく無いわけ?」飽きれて言うと

「別に、気分が乗らないから。」じゃ、行くの辞める?

「別に行かないとは、言って無いよ!」じゃあ、行こう!

「別にー!!」

こんな、意味不明な会話が続くのだった。

順一は悩んだ。涼子の事は好きだが、もっとクールに

考えてみようか?こんな事を繰り返しているうちに、

順一の気持ちは冷めて行った。二人で行った清里では、

駅のホームで喧嘩して、頬を平手打ちしてしまった。

どうやら、涼子は妹といる時に、豹変する、性格みたいだった。何故か比べられると云う防衛本能が働くらしい。

僕は、取り合えず涼子との付き合いは疲れていた。

暫く、彼女とは、付き合いを辞めるつもりだった。

順一も一度冷めると、元へは、戻れないタイプだった。

電話もしないし、涼子の事これで、終わりにするつもり

だった。

「順一、最近冷たいのね!彼女でも出来た?」

「別に、涼子には関係ないだろう?」

「私が悪かったから、許してよ!」涼子言った。

順一は可笑しかった。立場が逆転していた。

最後には、妹まで出てきて、「順一さん、涼子の事許してやって」と言われたが、ムリだった。

順一は思った。散々、人の心踏みにじっておいて、
絶対、許さないと。

「俺、彼女出来たから、さよならするよ。」

出任せを言うと、涼子は、半狂乱になり、叫んだ!

「嘘よ!!絶対嘘。じゃあ、明日その人ここに連れて来てよ。」

仕方無いので、順一は幼馴染の雅代に訳を話して、取り合えず、彼女と云うことで、ついて来てもらった。

涼子は次の日、半狂乱で死んでやるを順一の前で連呼していた。

順一は、至って笑えるぐらい冷静だった。

「死んじゃえば!」 愛はすでに使い切っていた。

恋愛に距離感は、大切である。

順一は又一つ逞しくなるのだった。   つづく。


タイムリミット 05月08日(土)



順一は、人生について目標を立てていた。

バンドマンには、甲子園がなかった。只、何者にも邪魔されない自由があった。

18の終わりまでには、何らかの形を残したいと思っていた
本気だった。

日曜日には原宿ほこてんにギターを担ぎ、歌いに行った。
ギターを抱えて歌っているのは、まだ、順一ぐらいが
珍しく、メインは竹の子族と、ローラーだった。

人込みの中、順一は歌った。

英樹は僕にこういった。
「順一さー、子供じゃ無いんだから、人生考えた方がいいよ
音楽で飯食って行くなんて夢は、途方もないんだから、
俺みたいに、堅実な人生設計した方が、いいよ!」

そう言うと、英樹は、にやけた顔でタバコをもみ消した。
順一は缶コーヒーを一口飲むと、

「いいじゃん!別に、お前の人生といっしょじゃ無くても?
俺、一度しかない人生後悔したく無いんだ!!」

そして、路上に唾を吐いた!

「俺、英樹の平凡ってわからなく無いよ。だけど、思うんだよねー。平凡て、一番難しいと思う訳よ!俺は有名になり
金も稼いで、成功した暁には、キャデラック転がして、
メルセデスに乗って、家はプール付で、ドンペリにいい女
そんな、生活しながら、平凡に戻ろうぐらいで、平凡みたいな、人生じゃ無いと、幸せじゃ無いんじゃないの?」

順一は野心に燃えていた。

しあわせなんか、望まなきゃ何も手に入らない!!
遠慮してどうする!

「平凡こそ、非凡の極みである!」

順一は自分に言い聞かせた。

その年の春僕の音楽活動は、延長戦に入った。

取り合えず、学生でいる事が、僕の目標だった。

僕の第一希望はN大学芸術学部放送学科しか無かった。

担任は5つ位受験しろと勧めるが、ここ以外僕には考えられなかった。最悪、音楽で食べて行けなくても、音楽に携わりたいと思ったからだ!

中途ハンパは嫌だった!
ウォークマンに入っている曲はMONEY!!
繰り返し、僕は聴いていた。
僕はこの不自由な街から、抜け出したかった。

金で揉めてる両親!!僕の目の前から消えていった貴子、
自分の事しか考えていない教師や事件依以来何も語らなくなった、生徒達!!何が正しくて何が正しくないのかなんて、
どうでもいいことだった。

ロックンロールは走り続ける事!!
僕の青写真は延長戦に突入、思うように結果が出ないが、
まだ、諦めたく無い、青春のタイムリミットが刻々と時を刻むのだった。           つづく。



恋をする事と愛する事の違い。 05月09日(日)




今日は、ウメが最近皆様から頂く声を元にタイトルの

テーマについて、主人公の順一と供にお話しようと思います。

順一:ウメさん、僕には、この二つの事について、よくわか   らないんだけれど?ウメさんは大人だから、教えてく   れない?

ウメ:そうだねー、まず、恋から愛になる事はあるけれど、
   愛から恋に変わる事ってまず、あまり聞かないね。

順一:そうだよね、僕は貴子の一件で、男には、やはり、
   弱いものを守る力は必要だなって思ったよ!
   愛してるってこういう事をいうんだなーって、
   同時にそう云う力が無いと云うは、とても辛くって
   悲しいと感じました。

ウメ:そうだね!今の僕はどっちかと云うと、恋していたい
   かな?愛してるなんて言葉はそう簡単に使えないな。
   愛してるは、リスクも伴うしね!!責任と云うか、

順一:ウメさん、やっぱり大人になると、ずるくなるのかな
   ?僕は、いつでも、いっしょにいたい恋しい人と、
   いっしょに居たいから、それが、愛しているに発展す
   れば、幸せなのかな?と思うんだけれど?

ウメ:僕もそう思って来たけれど、どうやら、本当に恋愛
   とかって、自分に近い人と居ると楽じゃない?
   タイプってそう言う人があてはまるよね。

順一:どちらかと云うとそうだよね!

ウメ:だけど、恋愛してると、結構勘違いするんだよね!
   同じ空気すって、同じ考え持っていて、君と僕は、
   すべていっしょみたいなさ、

順一:それって、大事じゃない?

ウメ:順一にはわからないかもしれないけれど、磁石在るじ
   ゃない、あれといっしょで、S極とS極、N極とN極は、
   くっつかないで反発しあうよね、愛する事においては
   S極とN極もしくはこれの反対じゃないと、うまくいか   無いと思うんだ!

順一:難しいねー。

ウメ:だって、似ている二人はチョットの事で、嫉妬するし
   価値観が違っただけで、涼子と順一の様にケンカに
   なるよね!!だから、愛していると云う事は覚悟いる
   から、お互いタイプがまったく違うほうが、はじめか
   ら、お互いの違いを認めていれば、喧嘩にもならない
   じゃない?

順一:面白いね、ウメさん!ナルホド!

ウメ:だから、相手に対して、自分とどう関わって欲しいか
   恋している時に見極めないとね!!

順一:うーん、少しわかった!大変なんだね!

うめ:順一わかった?又、順一遊びに来てね。

順一;又ねー、ウメさん!!

うめ:ちょっとは、答えになったかなぁ?
   皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。











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